概要
『Dreadline Express』が、2026年発売予定としてSteamに掲載されている[1]。デモ版はすでに配信中で、2026年6月15日にSteam Next Festに合わせて公開された[2]。開発は David Konecny、発行は Shoreline Games[1][2]。対応言語は英語・チェコ語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・日本語・韓国語・ウクライナ語・ポルトガル語(ブラジル)・ロシア語・簡体字中国語の11言語で、いずれもインターフェース・音声・字幕に対応しており、日本語プレイも可能とされている[1]。
どんなゲームか
公式プレスキットによれば、舞台は1950年代、ラヴクラフト的な黙示録によって破壊された地球[3]。生き残ったわずかな人類が、死の世界を横断する蒸気機関車に乗り込んでいる。プレイヤーはその乗客の一人となり、探索と会話を通じて、「human frailty and desire(人間の脆さと欲望)」をめぐる複雑な物語を少しずつ明らかにしていく[3]。ジャンルタグには「Post-apocalyptic」「Psychological Horror」「Detective」「Cult」「Lovecraftian」などが並んでいる[1]。ゲームメディアGameSpewは、この「最後の生存者を乗せた列車」という設定を映画『スノーピアサー』になぞらえつつ、両者の決定的な違いを指摘している。『スノーピアサー』の脅威が極寒の外気そのものであるのに対し、『Dreadline Express』では雪の寒さではなく「ラヴクラフト的な怪異」が脅威になるという点だ[2]。閉ざされた乗り物の中で階級や秩序をめぐる物語を描く「列車もの」という型に、理解不能な宇宙的恐怖を持ち込んだ組み合わせだと言える。
カードで知識を扱う「ストーリー・サンドボックス」
このゲームの中核は、公式が「story sandbox(物語のサンドボックス)」と呼ぶ独自のシステムだ。プレイヤーが手に入れた知識はすべてカードとして表現され、「自分のコレクションを閲覧し、つながりを見つけ、カードアルバムのページの上で計画を練る」という形で進行する[1][3]。明確な目的や選択肢を提示しないまま、非線形に探索を進めるスタイルで、インターフェース自体もゲーム世界に溶け込む「highly diegetic(徹底して物語世界に内在化された)」ものとして設計されている[3]。単なるアイテム収集ではなく、集めた手がかり同士の関連性をプレイヤー自身が読み解いていく点が、探偵役としてのゲームプレイの核になっている。公式説明にある「乗客への尋問」「列車の探索」がそれぞれどのような形でカードという単位に変換されるのか、具体的な画面表示までは、本稿で参照した資料だけでは細部を確認しきれない。
「メトロイドブレイニア」というジャンル
Steam公式ページは本作を「1st-person, psychological horror metroidbrainia(一人称の心理ホラー・メトロイドブレイニア)」と分類している[1]。「メトロイドブレイニア」は近年生まれた比較的新しいジャンル呼称で、Nintendo Lifeの解説記事によれば「進行を阻む鍵は物理的なものではなく、”精神的”なものだ」という点が定義の核心にある[4]。従来の「メトロイドヴァニア」がアイテムや能力の獲得によって新しいエリアの扉を開けるのに対し、メトロイドブレイニアでは、プレイヤー自身が謎や仕組みを理解すること――知識そのもの――が進行の鍵になる[4]。代表例として『Return of the Obra Dinn』『Fez』『Her Story』『Outer Wilds』『The Witness』などが挙げられている[4]。『Dreadline Express』のカードアルバムシステムは、集めた手がかり(知識)をプレイヤー自身がつなぎ合わせて真相に迫るという点で、まさにこのジャンルの発想を体現している。
開発者David Konecnyについて
公式プレスキットは、開発者を「enthusiastic amateur game developer and storyteller(情熱的なアマチュアのゲーム開発者・語り部)」と紹介しており、ゲーム開発歴は20年以上、チェコ共和国オロモウツを拠点に活動している[3]。ゲーム制作を自己表現の手段として捉えているとも説明されている[3]。「アマチュア」を自称しながら20年以上のキャリアを持つという経歴は、商業スタジオの看板を背負わない個人開発者が、長い時間をかけて一つの作品世界を育て上げてきたことを示している。
テーマとしての「死・自殺・暴力」
Steam公式ページは、本作が扱うテーマについて明確な注記を添えている。「The game explores such topics as mortality and consciousness. Themes of death, suicide and violence are implied through dialogue and environment.(本作は死や意識といった主題を扱う。死・自殺・暴力といったテーマが、会話や環境を通じて示唆される)」とされている[1]。ホラーとしての恐怖演出だけでなく、生と死、意識の本質を扱う心理的な重さを持つ作品であることが、公式自身によってあらかじめ明示されている。
神話の三層で見るとどこに位置するか
『Dreadline Express』は、クトゥルフや旧支配者といった原典の固有名詞を掲げる作品ではない。当サイトが整理している原典/ダーレス系拡張/TRPG設定という三層のどこに直接属するというより、「ラヴクラフト的な黙示録」という設定そのもの――人類の理解を超えた力によって世界が滅びるという構図――を借りた、雰囲気面での引用に近い。1950年代の蒸気機関車という舞台設定も、ラヴクラフトの原典が主に1920〜30年代のニューイングランドを舞台にしていたこととは時代がずれており、原典の直接的な翻案ではなく、黙示録後の世界というモチーフを独自に発展させた作品だと位置づけられる。原典が「まだ何も起きていない日常に、理解不能な力がじわじわ浸食していく」という時間軸で恐怖を描くのに対し、本作はすでに世界が滅んだ”後”から出発する点でも、原典とは異なる時間軸を選んでいる。
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- 宇宙的恐怖とは何か — 「人類の理解を超えた力」という主題そのものを確認する記事
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出典
- [1] 発売予定「2026年」、開発David Konecny・発行Shoreline Games、対応言語11言語(日本語含む、インターフェース・音声・字幕対応)、ジャンルタグ(Post-apocalyptic、Psychological Horror、Detective、Cult、Lovecraftian等)、カードアルバムのシステム「browse your collection, find connections, and plot your plans on the pages of the card album」、テーマ注記「The game explores such topics as mortality and consciousness. Themes of death, suicide and violence are implied through dialogue and environment.」の記載がある — Steam公式ストアページ「Dreadline Express」, store.steampowered.com ↩
- [2] デモ版が2026年6月15日、Steam Next Festに合わせて公開されたことが記載されている — GameSpew「Dreadline Express is Snowpiercer with a Lovecraftian twist」, gamespew.com ↩
- [3] 開発者David Konecnyが「enthusiastic amateur game developer and storyteller」であり、ゲーム開発歴20年以上、チェコ共和国オロモウツを拠点に活動していること、ゲーム制作を自己表現の手段と捉えていること、舞台が1950年代のラヴクラフト的黙示録で破壊された地球であること、生存者が蒸気機関車で死の世界を横断すること、「human frailty and desire」をめぐる物語であること、インターフェースが「highly diegetic」に設計されていることが記載されている — Dreadline Express公式プレスキット, dreadline.express ↩
- [4] 「MetroidBrainia」の定義「[A MetroidBrainia] gates progress until you have the right key for the right door… it’s mental」、従来のメトロイドヴァニアが物理的な能力獲得で進行するのに対し謎解き・情報理解が鍵になること、代表例として『Return of the Obra Dinn』『Fez』『Her Story』『Outer Wilds』『The Witness』が挙げられていることが記載されている — Nintendo Life「What The Heck Is A ‘MetroidBrainia’?」, nintendolife.com ↩