ゲーム(2026年9月17日発売予定) — O.B.O.L

O.B.O.L

海底の錆びた密室で、謎の老人と「命を左右するコイン投げ」を続ける一人称ホラー『O.B.O.L』が、2026年9月17日にSteamで発売予定と公式発表された。ストアページは「eldritch, Lovecraftian」を掲げるが、クトゥルフ・ネクロノミコンといった神話の固有名詞は本文に一つも出てこない。

公開更新作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

概要

『O.B.O.L』が、2026年9月17日にSteamで発売予定として公式ストアページに掲載されている[1]。開発はMrEliptikとWoland、パブリッシャーはMrEliptikで、いずれも大手スタジオではなく小規模な制作体制であることがうかがえる[1]。ジャンルタグには「Action, Adventure, Indie, Strategy」、キーワードタグには「Lovecraftian, Horror, Psychological Horror, Gambling, Dark, Multiple Endings, First-Person, Atmospheric」が並ぶ[1]。対応言語はインターフェース・音声・字幕のいずれも英語とフランス語のみで、日本語対応は確認できない[1]。価格は本稿執筆時点でストアページに表示されていない[1]。

どんなゲームか

公式の説明によれば、「O.B.O.L is a game about a coin flip that will determine your life.(『O.B.O.L』は、コイン投げ一つがあなたの人生を左右するゲームだ)」[1]。プレイヤーは「trapped under the ocean in a claustrophobic, eldritch, Lovecraftian horror atmosphere(海の底、閉所的で名状しがたく、ラヴクラフト的なホラーの雰囲気に閉じ込められて)」、「a claustrophobic rusty cabin under the ocean with a mysterious old man(海底の錆びた密室で、謎めいた老人と)」、「play a high stake game of head or tails against a mysterious opponent(正体不明の相手と、命がけの表裏当てを続ける)」ことになる[1]。プレイヤーは「random, often grotesque items(ランダムで、しばしばグロテスクなアイテム)」を集めて賭けの天秤を自分に有利な側へ傾けようとしながら、「your little coffin of iron(あなたの小さな鉄の棺)」を探索して手がかりを集める[1]。ゲーム中には企業の担当者が現れ、「evaluation test(評価テスト)」を通じてプレイヤーが救助に値するかどうかを判定する場面もあるという[1]。結末は単一ではなく、「Discover the story and unlock multiple endings(物語を解き明かし、複数のエンディングを解放しよう)」と説明されている[1]。

「Lovecraftian」ではあるが、固有名詞は一つも出てこない

ここで指摘しておきたいことがある。ストアページの説明文を確認する限り、「Cthulhu」「Lovecraft」「deep one」「old god」といった、クトゥルフ神話の固有名詞は一つも登場しない。使われているのは「eldritch(名状しがたい)」「Lovecraftian(ラヴクラフト的な)」という、雰囲気を形容する語だけである[1]。海底を舞台にしていることと、タグに「Lovecraftian」を掲げていることから、深きものやクトゥルフを連想する読者もいるかもしれないが、公式の説明を根拠にする限り、そうした固有の神格・存在への言及は確認できない。

この見分け方は、当サイトが別記事ですでに扱っている

固有名詞を出さずに「Lovecraftian」を名乗る作品をどう扱うかについて、当サイトはすでに「固有名詞のないラヴクラフト——『Ritual Tides』はなぜ”Lovecraftian”なのか」で、ラヴクラフト自身の定義に立ち返って基準を示している。ラヴクラフトは1927年のエッセイ「文学における超自然の恐怖」で、必要な条件を次のように書いている。「A certain atmosphere of breathless and unexplainable dread of outer, unknown forces must be present; and there must be a hint…of that most terrible conception of the human brain—a malign and particular suspension or defeat of those fixed laws of Nature(息もつかせぬ、説明のつかない、未知の外部の力への恐怖という雰囲気が必要であり、さらに、人間の脳が抱きうる最も恐ろしい概念——自然の定まった法則が悪意を持って特に停止・打倒されるという示唆が必要だ)」[2]。この定義に固有名詞は一つも登場しない。条件は「未知の外部への怖れ」と「自然法則が破られる示唆」の二つだけである。

『O.B.O.L』の場合、「謎の老人」「正体不明の相手」との命がけのコイン投げは①の条件に近づいているように見える。一方で、自然法則そのものが破られているのか、それとも単に「命を賭けたギャンブル」という状況の緊迫感が恐怖の中心なのかは、ストアページの説明だけでは判断がつかない。ここは実際に本編を確認しなければ書けない部分であり、この記事では判断を保留する。

このような「Lovecraftianを名乗るが固有名詞を持たない作品」は、近年のインディーホラーゲームで珍しくない。当サイトが『Ritual Tides』で扱った事例と合わせれば、開発元が「Lovecraftian」という語を、特定の神話設定を指す言葉としてではなく、雰囲気を表す一般名詞として使っている作品が一定数存在することになる。深淵書架がこうした作品を個別に取り上げる際は、タグや宣伝文句を鵜呑みにせず、実際にどの層(原典・後世の拡張・完全新規の借用)に属するのかを、その都度確かめる立場を取る。『O.B.O.L』についても、発売後に本編を確認できた段階で、この判断を改めて更新する。

タイトルの由来と思われる、ギリシャ神話の「オボル」

ここでもう一点、確認しておきたいことがある。ゲーム名「O.B.O.L」は、古代ギリシャの通貨単位「オボル(obolus/obol)」と綴りが一致する。オボルはドラクマの6分の1に相当する古代ギリシャの硬貨で、伝統的に、冥界へ魂を運ぶ渡し守カローンへの渡し賃として死者の口に置かれた硬貨だとされる[3]。硬貨の配置や枚数が伝承通り一貫していたかどうかまでは、本稿で参照した出典の範囲では確認できていない。

『O.B.O.L』の説明文自体に「オボル」や「カローン」への直接の言及は見当たらないため、開発元がこの神話を明示的に意図しているかどうかは確認できない。ただし、「死者の渡し賃としての硬貨」という古代ギリシャの葬送思想と、「コイン投げ一つが自分の生死を決める」という今回のゲーム設定は、偶然にしてはできすぎている符合であり、記録しておく価値はある。もしこれが意図された引用であれば、クトゥルフ神話とは別系統の――ギリシャ神話という、ラヴクラフトより遥かに古い神話体系からの引用ということになる。「Lovecraftian」というタグを掲げる作品の中身をたどっていくと、クトゥルフ神話どころかラヴクラフト自身の創作にすら行き着かず、もっと古い時代の神話や民間伝承へ遡ってしまうことがある――『O.B.O.L』はそうした可能性を考えさせる一例になっている。

関連して読むなら

出典

  • [1] 発売予定日「17 September 2026」、開発元「MrEliptik, Woland」、パブリッシャー「MrEliptik」、ジャンルタグ「Action, Adventure, Indie, Strategy」、キーワードタグ「Lovecraftian, Horror, Psychological Horror, Gambling, Dark, Multiple Endings, First-Person, Atmospheric」、対応言語(インターフェース・音声・字幕とも英語・フランス語のみ)、ゲーム概要「O.B.O.L is a game about a coin flip that will determine your life.」「trapped under the ocean in a claustrophobic, eldritch, Lovecraftian horror atmosphere」「a claustrophobic rusty cabin under the ocean with a mysterious old man」「play a high stake game of head or tails against a mysterious opponent」「random, often grotesque items」「your little coffin of iron」「evaluation test」「Discover the story and unlock multiple endings」の記載がある。「Cthulhu」「Lovecraft」「deep one」「old god」等の固有名詞は本文に見当たらない — O.B.O.L公式ストアページ, store.steampowered.com ↩
  • [2] “A certain atmosphere of breathless and unexplainable dread of outer, unknown forces must be present; and there must be a hint, expressed with a seriousness and portentousness becoming its subject, of that most terrible conception of the human brain—a malign and particular suspension or defeat of those fixed laws of Nature which are our only safeguard against the assaults of chaos and the daemons of unplumbed space.” — H. P. Lovecraft, “Supernatural Horror in Literature”(1927年), hplovecraft.com ↩
  • [3] オボルが古代ギリシャの通貨でドラクマの6分の1にあたること、伝統的に死者の口に置かれ渡し守カローンへの渡し賃を表すとされたことが記載されている — “Obol”, The Oxford Dictionary of Phrase and Fable(Elizabeth Knowles編), Encyclopedia.com所収, encyclopedia.com ↩

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました