概要
『Cthulhu Mythos ADV 闇に囁く狂気』は、「RPGツクール」シリーズで知られる株式会社Gotcha Gotcha Gamesが2022年10月にDLsite・Steamなどで発売した商業アドベンチャーゲームです(英題:Lunatic Whispers)。目覚めるとそこは異様な廃病院。混濁した記憶と頭に響く謎の声に苛まれながら、主人公は「能力」と「運」、そして時には狂気の力さえ頼りに、脱出と真実の解明を目指します。重要な選択肢の成否はダイスロールで判定され、正気度を保つことで隠された情報が読めるようになり、条件の組み合わせによって7種類のエンディングへ分岐します。DLsiteでの評価は★4.5前後(2026年7月時点)、Steamユーザーレビューは97件中72%が好評の「やや好評」で、「TRPGに興味はあるが卓を囲む準備が億劫な人におすすめ」という声が寄せられています。
クトゥルフ神話との関係
タイトルの「闇に囁く」は、ラヴクラフトの中編『闇に囁くもの』を踏まえた表現です。頭の中に直接響いてくる声、それを信じてよいのか分からないまま進む調査という本作の基本状況は、手紙と録音音声だけを頼りに正体不明の「囁き」へ近づいていく原典の構造と響き合います。ゲームデザインの面では、本作は「1人で遊べるTRPG」を明確なコンセプトとしており、能力値の決定、技能判定のダイスロール、正気度の増減といったクトゥルフ神話TRPGのセッション体験を、ゲームマスター不要のデジタルADVとして丸ごと再現しようとしています。正気度が高ければ真実に近づけるが、狂気に身を委ねることで開ける道もあるという設計は、狂気を単なるゲームオーバーではなく物語の資源として扱う近年のTRPGシナリオの潮流を汲んだものです。
独自の要素・原典との違い
ツクール公式ブランドによる商業クトゥルフ作品という出自が示す通り、本作の力点はホラー演出の過激さよりも「リプレイ可能な判定と分岐の面白さ」にあります。同じ場面でもダイスの出目次第で展開が変わるため、7種のエンディング回収を目指す周回プレイが自然と促され、レビューでも「エンディングコンプを目指して遊び続けている」という評価が見られます。一方で乱数が展開を左右する構造上、判定の失敗が続いたときのストレスは好みが分かれるところで、Steam評価が「やや好評」に留まる一因にもなっています。物語の舞台を廃病院という日本的ホラーの定番舞台に置き、原典の書簡体的な遠回しの恐怖ではなく、閉鎖空間からの脱出劇として組み立てた点も、TRPGシナリオ的な翻案といえます。本作の路線は2024年の続編『Cthulhu Mythos ADV 呪禍に沈む島』へと受け継がれ、シリーズ化しています。

