概要
深淵書架では、クトゥルフ神話TRPGだけでなく、『アーカムホラー』『Cthulhu Wars』のようなボードゲームも扱っている。どちらも同じ神話を題材にしているため混同されやすいが、遊び方そのものが根本的に異なる。既存記事「クトゥルフ神話とクトゥルフ神話TRPG、何が違うのか」が原作小説とTRPGの関係を整理したのに対し、本記事はTRPGとボードゲームというゲーム同士の違いを整理する。
違い1: 進行役(GM)の有無
クトゥルフ神話TRPGには、キーパー(ゲームマスター)という進行役が必ず存在する。キーパーは物語の状況をその場で描写し、プレイヤーの行動に応じて臨機応変に展開を裁定する人間である。
一方、『アーカムホラー』や『Cthulhu Wars』のようなボードゲームには、進行役は存在しない。全プレイヤー(または対戦相手)が、あらかじめ印刷されたルールブック・カード・盤面の指示に従って進行する。誰か一人が「物語を裁定する」立場に立つことはない。
違い2: 行動の自由度——「無限」か「有限」か
TRPGでは、プレイヤーが取れる行動に原理上の制限がない。「その扉を調べる」「NPCを説得する」「壁をよじ登る」など、キーパーが裁定できる限り、プレイヤーは思いついたどんな行動でも試みることができる。
ボードゲームでは、プレイヤーが選べる行動はカード・コマ・盤面によってあらかじめ規定された選択肢に限られる。『アーカムホラー』であれば「移動する」「探索する」「戦闘する」といった、ゲームがルールとして用意した行動の中から選ぶことになる。この「行動の有限性」こそが、TRPGとボードゲームを分ける最大の違いといえる。
違い3: ルールが規定する範囲
TRPGのルールブックは、判定の方法(ダイスの振り方、成功/失敗の基準)や世界観の設定を提供するが、「物語そのもの」は用意しない。シナリオはキーパーが用意し、実際に何が起こるかはプレイヤーの行動とキーパーの裁定によってその場で決まる。
ボードゲームのルールは、勝利条件・ターンの順序・可能な行動のすべてを事前に完結させる。『アーカムホラー』であれば「エンシェントワンの復活を阻止する」という勝利条件、『Cthulhu Wars』であれば各陣営の目標が、ゲーム開始時点で固定されている。プレイのたびに展開の細部(引いたカードやダイス目)は変わっても、ゲームが取りうる状態の範囲そのものは有限である。
まとめ
| 観点 | TRPG | ボードゲーム |
|---|---|---|
| 進行役 | いる(キーパー/GM) | いない |
| 行動の自由度 | 原理上無限 | ルールが規定する範囲内 |
| 物語の完結性 | その場で生成される | ゲーム開始時点で構造が完結 |
どちらも同じクトゥルフ神話を題材にできるが、「その場に立ち上がる物語を人間の裁定で紡ぐ」TRPGと、「あらかじめ設計されたシステムの中で勝敗を競う」ボードゲームは、体験として別物である。深淵書架のreviewsカテゴリーでは両方を扱っているので、遊び方の違いを踏まえて読み比べてみてほしい。

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