概要
科学によって人間の五感を超えた「向こう側」の存在を知覚できるようになった時、そこに広がるのは救いではなく恐怖だったという設定を扱う、ラヴクラフト屈指のセンス・オブ・ワンダー×宇宙的恐怖の融合作。
作品情報
- 執筆・発表年: 1920年執筆/1934年発表(「The Fantasy Fan」誌)
- 主題タグ: 禁断の科学、知覚の限界、目に見えない脅威
あらすじ
語り手は、10週間にわたり屋根裏の研究室に引きこもって以来、心身ともに変わり果てた旧友クロフォード・ティリングハストのもとを訪れる。ティリングハストは、人間の眠っている感覚器官を活性化させ、通常は知覚できない領域を認識可能にする電気装置を独自に開発していた。装置を起動すると、二人は日常の光景に重なるように存在する「名状しがたい形」やクラゲ状の生物など、異界の実体を知覚し始める。ティリングハストは、装置の起動によって使用人たちが姿を消したことを仄めかし、彼らが見えない存在に滅ぼされたことを示唆する。次第に狂気と悪意を露わにしていく彼は、見えない生物が迫っていると語り手を脅す。身の危険を感じた語り手は装置を銃撃。駆けつけた警察はティリングハストが卒中で死亡していたと判断し、事件は催眠術によるものと片付けられるが、語り手は「警察は、ティリングハストが殺害したとされる使用人たちの遺体を、ついに発見できなかった」という不穏な事実を書き残す。
読みどころと注目テーマ
禁断の科学装置、知覚できないだけで存在するものへの恐怖、正気を失っていく友人
執筆背景と影響
1920年に執筆されたが実に14年間発表されず、Charles Hornig編集のファンジン「The Fantasy Fan」1934年6月号でようやく日の目を見た。人間の感覚器官という生物学的な限界そのものを恐怖の主題に据えた点で、後の作品群に通底する「認識できないがゆえの恐怖」というラヴクラフト的宇宙的恐怖の原型のひとつとされる。なお同名の1986年公開映画(スチュアート・ゴードン監督)は本作の映像化であり、サイト内の派生作品レビューで別途扱っている。


