編集部注(著作権について): 本記事が扱う『星から訪れたもの』(原題: The Shambler from the Stars、1935年発表)は、パブリックドメインであるとは断定できません。ブロックは1994年まで存命で著作権管理に積極的であり、同時期の複数作品について実際の著作権更新記録が確認されています。本記事は原文からの引用を行わず、あらすじ・論評のみで構成しています。
概要
禁断の魔道書探求にのめり込んだ青年が、友人とともに『妖蛆の秘密』の一節を音読したことで、目に見えぬ「星の吸血鬼」を呼び出してしまう一編。ラヴクラフト本人をモデルにした人物を登場させ、後の三部作往復書簡の第一作となった記念碑的作品。
作品情報
- 原題: The Shambler from the Stars
- 執筆・発表年: 1935年発表(「ウィアード・テイルズ」誌9月号)
- 再録: 短編集『The Opener of the Way』(1945年)、『The Early Fears』(1994年)に収録
- 主題タグ: 禁断の魔道書『妖蛆の秘密』、目に見えぬ星の吸血鬼、ラヴクラフト本人への献辞
登場神格・用語
あらすじ
パルプ作家を志す語り手は、原稿を酷評されたことをきっかけに禁断の魔道書探求にのめり込む。ニューイングランドに住む神秘的な文通相手(ラヴクラフトを思わせる人物)の協力を得て、シカゴの古書店でルドヴィク・プリン著『妖蛆の秘密』を入手する。ラテン語の一節を友人が声に出して読んだ瞬間、目に見えぬ「星の吸血鬼」が召喚され、友人の血を吸い尽くして肥大化しながら姿を現す。惨劇を目撃した語り手は正気を失い、友人の家に放火して彷徨う。
読みどころと注目テーマ
音読という行為そのものが引き金になる禁忌の儀式、目に見えぬ怪物という恐怖の演出、ラヴクラフト本人への献辞という文学史的な逸話が本作の読みどころである。ブロック自身の証言によれば、当時のミルウォーキーの自宅住所を作中の被害者宅の住所としてそのまま用いるという、いわば「実名巻き込み」の趣向を凝らしており、フィクションと現実の境界を意図的にぼかす遊び心も見て取れる。1972年には米マーベル・コミックがアンソロジー誌『Journey Into Mystery』でこの作品をコミック化しており(脚本ロン・グーラート、作画ジム・スターリン+トム・パーマー)、パルプ雑誌発の一編が後年まで別媒体で語り継がれてきたことを示す一例となっている。
執筆背景と影響
ラヴクラフト本人に捧げられ、本人の承諾を得た上で「ラヴクラフトを思わせる人物」を作中で死なせた作品。これに応えてラヴクラフトが『闇をさまようもの』(ブロックに捧辞)を執筆し、ブロックをモデルにした「ロバート・ブレイク」を死なせ返す、という三部作往復書簡的な文学的応酬の第一作である。この応酬は、1950年にブロック自身が発表した「尖塔の影」でロバート・ブレイクの最期の真相を語り直すことで完結し、一人の作家間で15年越しに続いた稀有な文通形式のシリーズとなった。著者ロバート・ブロック(1917年4月5日-1994年9月23日)は、10代だった1933年、読み逃していた旧作を求めてラヴクラフトへファンレターを送ったことが交流のきっかけであり、ラヴクラフトは旧作を貸し与えるとともに創作活動を熱心に励ましたという。同年4月にはブロックが自作の短編2作をラヴクラフトへ送り、助言を求めた記録も残っている。後年ブロックは1959年に長編小説『サイコ』を発表し、翌1960年のアルフレッド・ヒッチコック監督による映画化によって作家としての代表作を確立することになるが、その出発点には10代の頃のこうしたラヴクラフトとの交流があった。本作で初めて世に出た魔道書『妖蛆の秘密』も、実はブロックが同年発表の別の短編「The Secret in the Tomb」で先に着想したものであり、ラテン語の題名はラヴクラフトが与えたとされる。著者とされるルドヴィク・プリンは、錬金術師にして死者を呼び戻す術に通じた魔道士で、1271年の第九次十字軍でシリアの魔術師から禁忌の知識を得た後、長寿を保ちながらもブリュッセルで魔女裁判にかけられ火刑に処されたという設定が与えられている。この書物はブロック自身の他作品でアラビア伝承やナイアーラトホテップを崇めるエジプトの秘教についての章が加筆されたほか、ラヴクラフトも「闇をさまようもの」や「時間からの影」でミスカトニック大学の禁書として言及し、後年にはスティーヴン・キングの作品にまで引用が及ぶなど、ブロックが発案した架空の魔道書としては最も息の長い波及力を持つ一つとなった。
出典
本作はブロックの著作権継承者による積極的な権利管理が確認されており、パブリックドメインであるとは断定できないため、原文からの引用は行っていません。以下は書誌的事実についての出典です。
- [1] 本作の初出は「ウィアード・テイルズ」誌1935年9月号(ISFDB Title Record #40950)。後に短編集『The Opener of the Way』(1945年)、『The Early Fears』(1994年)に再録された。ラヴクラフト「闇をさまようもの」は本作の続編として位置づけられている。— 出典: ISFDB「The Shambler from the Stars」title record, 該当ページ ↩
- [2] 1972年、マーベル・コミックがアンソロジー誌『Journey Into Mystery』で本作をコミック化(脚本ロン・グーラート、作画ジム・スターリン、トム・パーマー)。この応酬は1950年発表の「尖塔の影」でブロック自身がロバート・ブレイクの最期を語り直すことで完結した。— 出典: Wikipedia「The Shambler from the Stars」, 該当ページ ↩
- [3] ロバート・ブロック(1917年4月5日-1994年9月23日)は10代の1933年にラヴクラフトへファンレターを送ったことが交流のきっかけで、同年4月には自作短編2作の助言を求めている。1959年発表の長編『サイコ』が1960年にアルフレッド・ヒッチコック監督で映画化され代表作となった。— 出典: Wikipedia「Robert Bloch」, 該当ページ ↩
- [4] 『妖蛆の秘密』はブロックが1935年の短編「The Secret in the Tomb」で先に着想し、ラテン語題はラヴクラフトが付したとされる。著者ルドヴィク・プリンは1271年の第九次十字軍でシリアの魔術師から知識を得た後ブリュッセルで火刑に処されたという設定を持つ。ラヴクラフトも「闇をさまようもの」「時間からの影」で言及し、後年スティーヴン・キング作品にも引用された。— 出典: Wikipedia「De Vermis Mysteriis」, 該当ページ ↩





