TRPGサプリメント — Call of Cthulhu: Campfire Tales

Call of Cthulhu: Campfire Tales

少年少女の「スカウト探索者」を主人公にできるCall of Cthulhu 7版の新サプリメント。成人した探索者として他キャンペーンへ引き継ぐ成長ルールまで用意されている。2026年9月4日、Dragon Con(アトランタ)でライブActual Playが実演される。初期CoCの探索者像がどこまで拡張されたかを追う。

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概要

Chaosiumが2026年に刊行したCall of Cthulhu 7版のサプリメント『Campfire Tales』は、プレイヤーが少年少女の「スカウト探索者」を演じ、この世ならざる危険に立ち向かうことをテーマにした一冊である[1]。2026年8月27日、Chaosium公式ブログが、9月4日にアトランタで開催されるDragon Conで本作のライブActual Playを実施すると告知した[2]。単なる新作紹介にとどまらず、Call of Cthulhuというシリーズ自体が45年を経てなお、探索者という中心概念を広げ続けていることを示す発表でもある。

作品情報

出版はChaosium、ルールセットはCall of Cthulhu 7版、2026年発行。フルカラーハードカバー180ページ、ISBN 978-1-56882-559-5。著者はJoshua Hoyt・Matt Ryan・Paul Fricker、表紙イラストはNick Grey。Call of Cthulhu Starter SetまたはKeeper Rulebookのどちらかがあれば遊べる設計になっている[1]。ハードカバー(PDF込み)42.99ドル、Chaosium直販PDF・DriveThruRPG版PDFはいずれも21.99ドルで販売されている[2]。内部イラストは15名体制で描かれ、地図やハンドアウト類はJohn MalcolmとMatt Ryanが担当している[1]。単著者による小規模な追加シナリオではなく、複数の作家・画家・レイアウト担当が関わる、TRPGサプリメントとしては規模の大きい制作体制が組まれていることが分かる。

Scout探索者とは何か ── 成人への引き継ぎという新機軸

本作最大の特徴は、通常の成人探索者ではなく、少年少女の「スカウト探索者」を作成できる点にある。子供用の新技能や、ボーイスカウト/ガールスカウト的な「Merit Badges(功労章)」、逆境を扱う「Adversity」という専用システムが用意されている[1]。

さらに注目すべきは、このスカウト探索者を成人へ成長させ、他のCall of Cthulhuキャンペーンへ「一人前の探索者」として引き継ぐルールまで収録されていることだ[1]。つまり本作は単発の子供向けシナリオ集ではなく、プレイヤーが子供時代から一人のキャラクターを育て、大人になってから通常のCoCキャンペーンに合流させる、世代をまたいだプレイスタイルを公式に制度化している。

舞台設定「Westhaven」と収録シナリオ

物語の舞台は、本作のために新設された1920年代のオリジナルキャンペーン設定「Westhaven」という町である[1]。町の主要な場所や人物が紹介され、本書収録のシナリオはすべてこの町を舞台にしている。収録シナリオは以下の4本で、単発でも連続キャンペーンとしても遊べるよう設計されている[1]。

  • Tremors Below — ハイキングが思わぬ方向へ転がり、夜の森でひとりでいることより恐ろしいものがあると知る
  • Box of Evil — 奇妙な配達品をきっかけに、周囲の大人たちが隠す暗い秘密へスカウトたちが近づいていく
  • Treasure of the Secret Way — 財宝の地図が導く先で、死者たちは財宝を分け与える気がないと分かる
  • Shadow Over Westhaven — 森での週末が、町の中枢にまで触手を伸ばす陰謀を暴き出す

Dragon Conでのライブ実演

告知によれば、Dragon Con(アトランタ、Westin: Augusta 1-2)で2026年9月4日金曜19時から、Ashly May King氏がKeeper(進行役)を務め、Taylor・Whitney・Omega Jones・Abby・Katie Dematteis・London Carlisleの6名が「Wayfarer Scouts」としてプレイするライブActual Playが行われる[2]。これは製品発売後のプロモーションを兼ねた実演で、実際のプレイでスカウト探索者たちがどう神話の脅威に立ち向かうかを、その場で見せる企画である。「Actual Play」とは、脚本のない即興のセッションをそのまま観客の前で(あるいは配信で)実演する形式を指すTRPG業界の用語で、ルールブックの説明だけでは伝わりにくい「実際に遊ぶとどんな体験になるか」を、見込み客に直接体感させる販促手法として定着している。

なぜDragon Conなのか

Dragon Conは、レイバーデー(9月第1月曜)の連休に合わせてジョージア州アトランタで毎年開催される、SF・ファンタジー・ゲーム・コミック・映画・コスプレを横断する複合型ポップカルチャー・コンベンションである。2026年は40周年にあたり、9月3日から7日にかけて開催、来場者は7万5千人を超える見込みとされている[3]。TRPG専業のイベントではなく、あらゆるジャンルのファンが集まるこの巨大な場でCall of Cthulhuのライブプレイを実演するのは、既存のTRPGファン層を越えて新しいプレイヤーへ本作を紹介する狙いがあると見てよいだろう。

Merit Badgesという命名が示すもの

本作が採用した「Merit Badges」という用語は、単なる造語ではない。ボーイスカウトやガールスカウトの実際の活動で使われている「功労章」の名称そのものであり、キャンプファイヤーを囲んで語られる怪談という、アメリカの子供時代における定番の体験を下敷きにしていることは想像に難くない。タイトルの『Campfire Tales(キャンプファイヤーの怪談)』自体も、この体験をそのまま指す言葉だ。ラヴクラフト神話の宇宙的恐怖を、履修バッジを集めながら育っていく子供時代の通過儀礼と重ね合わせる発想は、従来の「大人の知識人が理解してはならないものに触れる」という恐怖の作法とは異質なものである。

初期CoCの探索者像からどう変わったか

Call of Cthulhu TRPGは1981年の初版刊行以来、45年にわたって版を重ねてきた。その間、大学教授・骨董商・ジャーナリストといった、1920年代の大人の知識階級を探索者の典型としてきた(クトゥルフの呼び声TRPG)。狂気の淵に立たされるのは、既に確立した社会的立場を持つ大人たちであり、それが本作の根幹にある「知りすぎた人間が壊れていく」という主題と結びついてきた。

『Campfire Tales』が示すのは、この前提を一度崩し、まだ何も知らない子供の視点から神話の恐怖を描くという方向転換である。しかも単に「子供版」を作って終わりにするのではなく、その子供がやがて大人になり、従来通りの探索者としてキャンペーンに合流できるという成長ルールまで用意することで、両者を地続きにした。これは、45年にわたって積み重ねられてきた「探索者」という概念そのものが、まだ拡張され続けていることを示す一例と言える。当サイトが原典・ダーレス系拡張・TRPG設定として整理している三層のうち、この種の遊び方の拡張は原典にも後続作家の設定にも存在しない、純粋にTRPGというメディアが独自に育ててきた部分にあたる。

子供を探索者に据えることには、単なる目新しさ以上の難しさも伴う。正気度を失っていく過程を子供に負わせることは、これまでのCall of Cthulhuが前提としてきた「相応の分別を備えた大人が、それでも精神を蝕まれていく」という構図とは違う重さを持つ。Merit BadgesやAdversityといった専用システムをわざわざ新設したのは、この重さを緩和しつつ、子供なりの成長物語として成立させるための工夫と見ることができる。成人へ引き継ぐルールが用意されているのも、子供時代の恐怖体験を一度限りの出来事として終わらせず、その先の人生(=キャンペーン)へ地続きに接続するための設計だろう。

「子供たちが自転車で街を駆け回りながら、大人には見えない/信じてもらえない超常的な脅威に立ち向かう」という語り口は、近年の映像作品でもたびたび取り上げられてきたジャンルであり、卓上ゲームの世界でもその感覚をそのまま遊べる形にしたいという需要は以前からあった。『Campfire Tales』は、その需要にCall of Cthulhuという40年以上の歴史を持つ既存の枠組みの中で応えた形になる。まったく新しいシステムを一から作るのではなく、正気度やスキルロールといった既存の骨格に、子供向けの新規ルールを接ぎ木するという選択は、シリーズ全体の一貫性を保ちながら遊びの幅を広げる、手堅いやり方と言えるだろう。

Dragon Conでの実演を経て、この「子供から大人へ」という遊び方がコミュニティにどれだけ定着していくかは、今後の追加サプリメントや他社製品への波及も含めて注視する価値がある。

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出典

  • [1] Call of Cthulhu: Campfire Tales 製品ページ。概要(スカウト探索者としてプレイする)、新システム(子供用技能・Merit Badges・Adversity・成人への成長ルール)、舞台設定「Westhaven」(1920年代のオリジナルキャンペーン設定)、収録シナリオ4本(Tremors Below/Box of Evil/Treasure of the Secret Way/Shadow Over Westhaven)、Call of Cthulhu Starter SetまたはKeeper Rulebookで使用可能なこと、出版情報(Chaosium、Call of Cthulhu 7版、2026年、フルカラーハードカバー180ページ、ISBN 978-1-56882-559-5、著者Joshua Hoyt・Matt Ryan・Paul Fricker、表紙Nick Grey)が明記されている — Chaosium公式, chaosium.com ↩
  • [2] “Something lurks in the pines… Call of Cthulhu Campfire Tales live play Dragon Con (Atlanta, Sept 4)”、2026年8月27日、Michael O’Brien。2026年9月4日金曜19時、Westin: Augusta 1-2でのライブActual Play実施、Keeper Ashly May King、参加者(Wayfarer Scouts)Taylor・Whitney・Omega Jones・Abby・Katie Dematteis・London Carlisle、価格(ハードカバー42.99ドル、Chaosium/DriveThruRPGのPDF各21.99ドル)が明記されている — Chaosium公式, chaosium.com ↩
  • [3] Dragon Conが2026年で40周年を迎え、9月3日から7日(レイバーデー連休)にかけてジョージア州アトランタで開催されること、来場者7万5千人超が見込まれる大規模なSF・ポップカルチャー・コンベンションであることが記載されている — “Dragon Con 2026 guide: What to know before heading downtown”, FOX 5 Atlanta, fox5atlanta.com ↩

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