TRPGサプリメント(英語、CHAOSIUM・流通ページでは2026年10月28日発売予定) — Call of Cthulhu: Keeper Companion

Call of Cthulhu: Keeper Companion

正気度・戦闘・チェイスは、何がどう変わるのか。Call of Cthulhu 7版のキーパー(進行役)向け新サプリメント『Keeper Companion』が、流通業者のページに掲載された。探索者作成の新方式、正気度・戦闘・チェイスの見直し、新規シナリオ3本が予告されているが、Chaosium公式には専用の商品ページがまだ無い。判明している目次情報を、当サイトが既に確認済みの現行7版のルールと突き合わせて整理する。

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概要

玩具・ゲームの流通業者ACD Distributionが、Call of Cthulhu 7版のキーパー(進行役)向け新サプリメント『Call of Cthulhu: Keeper Companion』の商品ページを公開している[1]。SKUはCAO23197-H、UPCは9781568826288、希望小売価格は54.99ドル、流通上の発売日は2026年10月28日、注文締切日は同年10月15日と明記されている[1]。

一方、版元Chaosiumが2026年5月25日に自社ブログで公開した「Chaosium release road map – Q3/4 2026」では、同書はSEPTEMBER(9月)の枠に置かれている[2]。ロードマップの画像には表紙が掲載されており、「CALL of CTHULHU / KEEPER COMPANION / IDEAS, OPTIONS & ADVICE」という書名、著者Mike Mason・Paul Fricker、発行元Chaosium Inc.のロゴが確認できる[2]。本稿執筆時点(2026年9月5日)で、Chaosium公式サイトには本書単体の商品ページもブログ告知も見当たらない。以下ではこの2つの一次情報を軸に、判明している内容を確認する。

どんな作品か

ACD Distributionが掲載する製品説明は次の通りである。「Packed with rules options and scenarios, the Call of Cthulhu: Keeper Companion has something for everyone, whether novices or veterans. Designed to improve your experience and help you get the most out of your games while ensuring your players maximize their fun, too!」(訳: ルールのオプションとシナリオを詰め込んだ『Call of Cthulhu: Keeper Companion』は、初心者にもベテランにも役立つ一冊だ。あなたのゲーム体験を高め、プレイヤーの楽しさも最大限に引き出すことを目指して作られている)[1]。

同ページはさらに、収録項目を次のように箇条書きで挙げている[1]。

  • 探索者作成の新方式
  • 探索者組織を作るためのシステムと、技能の見直し
  • 技能ロール・戦闘・チェイスの簡略化・オプションルール
  • 正気度ルールの再検討
  • オンラインプレイやその他の考慮点に関する助言
  • シナリオ設計・キーパー進行・怪物とNPCの扱い方に関する助言
  • 改訂された探索者シート・パルプ・ヒーローシートおよびその他のプレイエイド

そして「Plus three new scenarios, each showcasing the options in this book」(訳: さらに、本書のオプションを実演する新規シナリオ3本を収録)として、以下の3本が予告されている[1]。

  • Little Miracles — ミスカトニック大学から行方不明になった教授をめぐる、アーカム近郊を舞台にした初心者向けシナリオ
  • If I Had a Hammer — 金曜の夜、自宅でのくつろいだ時間が悪夢に変わっていくシナリオ
  • What a Puzzler! — ジグソーパズルという新しい流行を題材にした調査シナリオ

内容の粒度から見て、本書は特定のシナリオ集ではなく、キーパー向けのルール選択肢とプレイ支援を1冊にまとめた「キーパーズガイド」的なサプリメントだと分かる。Chaosiumには以前にも「Keeper’s Companion」を名乗る書籍があったが、今回の版が旧作の改訂なのか、題名だけを引き継いだ別の本なのかは、ACD・Chaosiumいずれの資料にも言及がなく確認できていない。説明文を読む限り、今回の版はルールの運用面に重心を置いている。

発売日はいつか——9月のロードマップと10月28日の流通情報

Chaosium公式ロードマップは、本書を2026年のQ3(7〜9月)に含まれる「SEPTEMBER」の列に置いている[2]。同じ列には『Call of Cthulhu Innsmouth』という別のCall of Cthulhu関連書籍も並んでおり、Keeper Companionは同月の複数リリースの一つとして扱われていた[2]。

対してACD Distributionのページは、発売日を2026年10月28日、注文締切日を10月15日としている[1]。両者の差は約1〜2か月にあたる。ここで注意したいのは、ACDの日付が「流通側が仕入れ・配本のために設定した発売日」であって、Chaosiumが自ら発売延期を告知した記録ではないという点だ。TRPG・ホビー業界では、版元のロードマップに載った予定月と、実際に書店・専門店へ商品が並ぶ月がずれることは珍しくない。したがって本稿では「延期が確定した」とは書かない。確実に言えるのは、5月時点の社内ロードマップでは9月、9月時点で確認できる流通情報では10月28日、という2つの日付が存在するという事実だけである。

なお、Chaosium Con UK(2026年5月開催)でのこの一連の発表については、編集体制を持つホビー系ニュースサイトTabletop Sentinelも報じており、「The Keeper Companion, by Mike Mason and Paul Fricker, offers up a load of optional rules, Keeper advice, and brand new scenarios to keep the Investigators busy」(訳: マイク・メイソンとポール・フリッカーによる『The Keeper Companion』は、大量のオプションルール、キーパー向けの助言、探索者たちを飽きさせない新規シナリオを提供する)と紹介し、9月の発売予定日(street date)として扱っている[3]。この記事も一次資料であるChaosiumのロードマップに基づいた二次報道であり、10月28日という日付を否定するものではない。

正気度・戦闘・チェイスは、いま何がどう動いているのか

ACDの製品説明にある「正気度ルールの再検討」「技能ロール・戦闘・チェイスの簡略化・オプションルール」という2項目は、本書の中身のうち最も遊び方に直結する部分である。ただし、具体的にどう変わるのかという中身は、現時点の公式情報からは一切分からない。ここでは、当サイトが既に確認済みの現行7版のルールを踏まえたうえで、何が「見直される対象」に当たるのかを整理しておく。

現行の7版では、正気度チェックは探索者の現在のSAN値を目標値とする1D100判定であり、出目が現在値以下なら失う量が少なく、上回るとより多く失う[4]。1回のチェックで5点以上を失うとINTロールが課され、失敗すると1D10時間の一時的狂気に陥る[4]。この一連の処理は、当サイトの「SAN値システムを徹底解説」で公式クイックスタート・ルールの記述に基づいて確認済みである。「正気度ルールの再検討」という一文だけでは、この判定式そのものに手を入れるのか、狂気の発症条件や発作表を差し替えるのか、あるいは既存ルールへのオプション(選択式の代替ルール)を足す形に留まるのかを判別できない。ACDの説明文にも「optional rules」という語が繰り返し使われていることから、既存の基本ルールを置き換えるのではなく、選べる代替案を追加する形になる可能性はあるが、これも推測の域を出ない。

技能ロールについても同様である。7版は2014年の刊行時に、能力値のパーセンタイル表記への統一、成功度(通常・ハード・イクストリームの3段階)、プッシュロール(失敗した判定をリスクを負って再挑戦する仕組み)という3つの大きな変更を導入した[5]。この土台は当サイトの「第6版と第7版はどう違う?」と「プッシュロールと成功度」で確認している。今回の「簡略化・オプションルール」が、この成功度やプッシュロールという2014年の追加要素そのものを対象にするのか、それとも対抗ロールやボーナス・ペナルティダイスといった別の周辺処理を指すのかは、現時点の公式情報だけでは切り分けられない。

チェイス(追跡)ルールについては、当サイトにはまだ現行版の具体的な処理を確認した記事が無い。したがって本稿では、現行のチェイスルールがどう変わるのかという比較そのものを行わない。分かっているのは、Keeper Companionがチェイスを「簡略化・オプションルール」の対象として明示的に挙げている、という一点だけである[1]。

技能の見直しと探索者組織——第6版から第7版への統合の延長線上か

ACDの説明にある「探索者組織を作るためのシステムと、技能の見直し」という項目も、既存の変遷と照らし合わせておく価値がある。7版は刊行時点で、〈隠れる〉と〈忍び歩き〉を〈隠密〉へ、銃器系の複数技能を〈射撃〉の専門分野へ、といった技能の統合・再編を既に行っている[6]。この経緯は当サイトの「クトゥルフ神話TRPG 技能一覧」に一覧としてまとめてある。今回の「技能の見直し」が、この2014年の再編からさらに一歩進めるものなのか、逆に不評だった統合を部分的に差し戻すものなのかは、公式の目次情報だけでは判断できない。

「探索者組織を作るためのシステム」という項目は、これまでの7版関連書籍には無かった新機軸に見える。個々の探索者ではなく、探索者たちが所属する団体・組織そのものを作成する仕組みだとすれば、単発シナリオよりもキャンペーン運用を意識したルールである可能性が高い。ただし、この一文以上の説明は現時点でどの一次資料にも見当たらず、具体的な運用イメージを本稿で描くことはできない。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

当サイトは、クトゥルフ神話を(1)ラヴクラフト自身の原典、(2)オーガスト・ダーレス以降の後続作家による拡張、(3)TRPGが独自に体系化したゲーム設定、という3つの層に分けて記録している。この枠組みで見ると、『Keeper Companion』は完全に第3層——TRPG設定——に属する書籍である。神格や地名、魔導書といった神話コンテンツそのものを扱う本ではなく、判定・正気度・戦闘といったゲームを動かす手続きを扱う本だからだ。

それでも、正気度というルールそのものの起点は原典にある。ラヴクラフトは「クトゥルフの呼び声」の冒頭で、「この世で最も慈悲深いことは、人間の心があらゆる内容を関連づける能力を持たないという事実だと私は思う」と書いた[7]。1981年にサンディ・ピーターセンらが正気度を数値化して以来、この一文が示す「知ることは救いではなく破滅への道である」という認識論的恐怖は、SAN値という加算・減算の仕組みとしてゲームに組み込まれ続けてきた。『Keeper Companion』が予告する「正気度ルールの再検討」が実際に何を変えるにせよ、変える対象になっているのは、原典のこの一文から40年以上かけて積み上げられてきた第3層の仕組みだということになる。

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出典

  • [1] SKU「CAO23197-H」、UPC「9781568826288」、MSRP 54.99ドル、Release Date 2026年10月28日、Order By Date 2026年10月15日。製品説明「Packed with rules options and scenarios, the Call of Cthulhu: Keeper Companion has something for everyone, whether novices or veterans. Designed to improve your experience and help you get the most out of your games while ensuring your players maximize their fun, too!」、収録項目(探索者作成の新方式/探索者組織作成システムと技能の見直し/技能ロール・戦闘・チェイスの簡略化・オプションルール/正気度ルールの再検討/オンラインプレイ等への助言/シナリオ設計・キーパー進行・怪物とNPC運用への助言/改訂された探索者シート等)、新規シナリオ3本(Little Miracles/If I Had a Hammer/What a Puzzler!)とそれぞれの梗概の記載がある — ACD Distribution 商品ページ「Call of Cthulhu: Keeper Companion」(2026年9月5日確認), acdd.com ↩
  • [2] 「Chaosium release road map – Q3/4 2026」(投稿者Michael O’Brien、2026年5月25日)。ロードマップの図版に、9月(SEPTEMBER)の枠として書名「CALL of CTHULHU KEEPER COMPANION」「IDEAS, OPTIONS & ADVICE」、著者Mike Mason・Paul Fricker、発行元Chaosium Inc.の表紙が掲載されている(2026年9月5日確認、ブラウザで図版を直接確認) — Chaosium Inc. 公式ブログ, chaosium.com ↩
  • [3] 「The Keeper Companion, by Mike Mason and Paul Fricker, offers up a load of optional rules, Keeper advice, and brand new scenarios to keep the Investigators busy」の記載、および9月の発売予定日(street date)としての紹介がある — Tabletop Sentinel「Chaosium Announce Raft of New Titles at Chaosium Con UK」(2026年9月5日確認), tabletopsentinel.com ↩
  • [4] 正気度チェックは現在のSAN値を目標値とする1D100判定であり、出目が現在値以下なら失う量が少なく、上回るとより多く失う。1回のチェックで5点以上を失うとINTロールが課され、失敗(出目がINT以下)すると1D10時間の一時的狂気に陥る——当サイト既存記事「SAN値システムを徹底解説」が、Chaosium『Call of Cthulhu 7th Edition Quick-Start Rules』(CHA23131)p.12の記述に基づいて確認済みの内容を参照した, shinenshoka.com/guide/san-system-explained ↩
  • [5] 7版(2014年)が能力値のパーセンタイル統一、成功度(通常/ハード/イクストリーム)、プッシュロールを導入したこと——当サイト既存記事「第6版と第7版はどう違う?」が海法紀光(4Gamer.net、2019年12月28日)および『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』の記述に基づいて確認済みの内容を参照した, shinenshoka.com/guide/6th-vs-7th-edition ↩
  • [6] 第6版の〈隠れる〉〈忍び歩き〉が第7版で〈隠密〉へ、銃器系の技能が〈射撃〉の専門分野へ統合されたこと——当サイト既存記事「クトゥルフ神話TRPG 技能一覧」を参照した, shinenshoka.com/trpg/coc-skill-index ↩
  • [7] “The most merciful thing in the world, I think, is the inability of the human mind to correlate all its contents.”(訳: この世で最も慈悲深いものは、私の考えでは、人間の心が自らの中身のすべてを関連づけられないことだろう) — H. P. Lovecraft, “The Call of Cthulhu”(1926年執筆/1928年発表、冒頭の一文)。当サイト既存記事「正気度」が確認済みの引用を参照した, shinenshoka.com/mythos-terms/sanity ↩

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