TRPGガイド

プッシュロールと成功度——新クトゥルフ神話TRPG(第7版)が導入した新要素

TRPG

2014年の第7版で新たに導入された「プッシュロール」と「成功度」というルールを解説します。判定の単純さは保ったまま、駆け引きと緊張感をどう加えたのかを整理します。

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概要

ダイスとd100——パーセンタイル判定の仕組みで見た通り、クトゥルフ神話TRPGの判定は「技能値以下を出せば成功」という単純な仕組みが一貫して土台になっています。2014年に刊行された第7版(日本語版『新クトゥルフ神話TRPG』)では、この基本を崩さないまま、「プッシュロール」と「成功度」という2つの新要素が加えられました[1]。開発を主導したのは、リン・ウィリス(Lynn Willis)の死去を受けて2013年にラインエディターに就任したマイク・メイソン(Mike Mason)と、ポール・フリッカー(Paul Fricker)です。

プッシュロール——失敗を「押し込む」選択肢

プッシュロール(pushed roll)は、判定に失敗したとき、より重い代償を引き受ける覚悟でもう一度同じ判定に挑戦できるというルールです[2]

重要なのは、プッシュロールで再挑戦して再び失敗した場合、単に「望んだ結果が得られない」だけでは済まないという点です。プッシュした上での失敗は、新たな脅威や危険な事態を招くことがあります[2]。たとえば、鍵のかかった扉をこじ開けようとして失敗し、プッシュロールでもう一度試みて再度失敗した場合、扉が開かないだけでなく、物音を立てて何かに気づかれてしまう——といった具合です。

このルールは、プレイヤーに「ここで無理に押し込むべきか、それとも諦めて別の手段を探すべきか」という駆け引きを常に問いかけます。判定そのものは変わらずシンプルなd100のままですが、「失敗の先にもう一段階のリスクを取るかどうか」という新しい選択が加わったことで、単発の判定に重みが生まれています。

成功度——「どれだけ上手くいったか」を測る

もう一つの新要素が「成功度」(degrees of success)です。第7版では、判定の難易度に応じて、成功にも段階があるという考え方が導入されました[3]

キーパーは判定を求める際、その状況がどの難易度に当たるかを提示します。

  • 通常成功: 技能値・能力値以下の出目で成功
  • ハード成功: 技能値・能力値の半分以下の出目が必要な、より難しい成功
  • イクストリーム(決定的)成功: 技能値・能力値の5分の1以下の出目が必要な、最も困難な成功

対立する相手の技能値・能力値が50以上だったり、状況が特に困難だったりする場合はハード成功が要求され、より高い成功度(イクストリーム>ハード>通常成功)を出せば出すほど、より望ましい結果が得られる、という設計です[3]。単に「成功か失敗か」の二択ではなく、「どれだけ鮮やかに成功したか」がそのまま結果の質に反映されるようになりました。

なぜこの2つが加えられたのか

いずれのルールも、ダイスとd100——パーセンタイル判定の仕組みで説明した「技能値以下を出せば成功」という根本のシンプルさには一切手を加えていません。その代わりに、

  • プッシュロールは「判定結果を受け入れず、リスクを負って再挑戦する」というプレイヤー側の選択を、
  • 成功度は「同じ成功でもどれだけ上手くいったか」という結果の解像度を、

それぞれ後付けで足し合わせる形になっています。40年近く遊ばれてきたシステムの根幹を壊さずに、駆け引きと緊張感を高める——第7版の改訂は、この足し算のバランス感覚が評価されている改訂だといえます。

出典

  • [1] 第7版の開発体制(マイク・メイソン、ポール・フリッカーによる主導)はshinen-delta/vault/history/call-of-cthulhu-rpg-history.md(既存記事)の記述に基づく。
  • [2] “a player can ‘push’ a failed skill or characteristic roll, getting a chance to try again by agreeing to more dire consequences for failure. If you push a skill, failing the retry won’t just mean you don’t get what you want, it means you also might encounter some new threat or dangerous trouble.”(訳: プレイヤーは失敗した技能・能力値判定を「プッシュ」し、より深刻な失敗の結果を受け入れる代わりに再挑戦できる。技能をプッシュして再挑戦にも失敗した場合、望んだ結果が得られないだけでなく、新たな脅威や危険な事態に見舞われることがある) — *Bonus, Penalty and Pushed Rolls*, NonHumanUser
  • [3] “There are three levels of success and the Keeper says which one the task requires: success at a standard roll with the full rating, success at half the rating, or success at one-fifth of the rating… The highest level of success wins (Extreme > Hard > Regular > Fail).”(訳: 成功には3段階のレベルがあり、キーパーはその課題がどれを要求するか告げる——技能値そのものでの通常成功、半分での成功、5分の1での成功。最も高い成功度が勝る〈イクストリーム>ハード>通常成功>失敗〉) — *Call of Cthulhu 7th Edition Cheat Sheet*, mythos.wiki
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