概要
「クトゥルフ神話TRPGの刊行史」で触れたとおり、2014年に刊行された第7版(日本語版『新クトゥルフ神話TRPG』は2019年、KADOKAWAより)は、1981年の初版以来、それまでで最も大きくルールに手が入れられた版だとされています[1]。ここでは、長らく親しまれてきた第6版から何がどう変わったのかを、具体的に整理します。
能力値のパーセンタイル表記への統一
もっとも分かりやすい変更が、能力値の表記方法です。第6版までは、STR(筋力)やCON(体力)といった能力値は3〜18程度の範囲の数値(3D6や2D6+6といった昔ながらのダイス表記)で表されていました。
第7版では、能力値による判定が技能と同じ百分率(パーセント)表記に統一されました[1]。能力値の数字は、その能力値でのダイス・ロールが成功する確率をそのまま表します——能力値が60なら60%の確率で成功する、という読み方です[3]。これにより、能力値を使った判定(例えばSTR自体をダイスで判定する場面)も、技能判定とまったく同じ手順で処理できるようになりました。ゲーム全体の遊び方を大きく変えるものではありませんが、判定の一貫性を高める整理です。
成功度(通常/ハード/イクストリーム)の導入
第7版で新たに導入されたのが、「成功の度合い」という概念です。従来は技能値以下の出目が出れば成功、それだけでしたが、第7版では次のように成功の質が細分化されました[2]:
- 通常の成功: 技能値以下の出目
- ハードな成功: 技能値の半分以下の出目
- イクストリームな成功: 技能値の5分の1以下の出目
これにより、「成功はしたが、ぎりぎりだった」のか「完璧にやってのけた」のかをルール上区別できるようになり、キーパーが結果を演出する幅が広がりました。
プッシュロールとボーナス/ペナルティダイス
もう一つの大きな追加が「プッシュロール」です。技能判定に失敗したとき、探索者が何をして食い下がるのかを述べ、それが説得力のあるものなら、もう一度だけ振り直せます。ただし賭け金は上がっていて、2回目にも失敗すればキーパーはその探索者にひどく不都合な結果を与えることになります[2]。
また、有利・不利な状況を表す「ボーナス・ダイス」「ペナルティー・ダイス」も第7版で整理された仕組みです。パーセント・ダイスの通常の一組(2D10)に「10の位」のダイスをもう1つ足して振り、ボーナスなら小さいほうの、ペナルティーなら大きいほうの「10の位」を採用します。主に対抗ロールで使われます[2]。
版の選び方——どちらで遊んでもよい
ここまで見てきた変更は、いずれもゲームの根本的な遊び方(調査を中心に、正気を保ちながら真相に迫るという構造)を変えるものではなく、判定まわりの精度や演出の幅を広げる整理が中心です。「クトゥルフ神話TRPGを初めて遊ぶ人へ」でも触れているとおり、一緒に遊ぶ仲間が使っている版に合わせるのがいちばんスムーズです。
SAN値・狂気のルールの詳細な変更点については「SAN値システムを徹底解説」、能力値の具体的な使い方については「探索者の作り方」を参照してください。
出典
- [1] 「1981年の英語版初版から数えると、40年弱にもおよぶ歴史をもつ本作だが、実は先の第6版までは、ルールやシステムにほとんど変化がなかった。(中略)そしてようやくルールにメスが入ったのが、この度の第7版ということになる」「このほかにも、能力値による判定が技能と同じ%表記に統合され、また対抗判定の方法や難易度が明確に定義されるなど、システム面の改良も細かくほどこされている」 — 海法紀光「初めてルールに手が入れられた『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』レビュー。第7版が何を目指し、何が変わったのかをざっくり解説」(4Gamer.net、2019年12月28日), 4Gamer.net ↩
- [2] 成功度について「通常の課題は、1D100で技能値以下のロールが必要である(レギュラーの成功)。難しい課題は、1D100で技能値の2分の1以下のロール結果が必要である(ハードの成功)。人間の能力の限界に近づくような課題には、1D100で技能値の5分の1以下のロールが必要である(イクストリームの成功)」。プッシュについて「探索者の行動が説得力のあるものなら、失敗した技能ロールを『プッシュ』できる。ロールをプッシュすればもう一度ダイスをロールすることができるが、賭け金がつり上がる。2回目のロールにも失敗すれば、キーパーは失敗したキャラクターにひどく不都合な結果を与えることになる」。ボーナス・ダイスについて「パーセント・ダイスの通常の一組(2D10)と一緒に『10の位』のダイスを追加してロールする。(中略)良いほう(小さい数字の)結果をもたらす『10の位』のダイスを使う」。ペナルティー・ダイスは「悪いほう(大きい数字の)結果をもたらす『10の位』のダイスを使う」 — 『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』(Chaosium Inc. 原著/KADOKAWA。クトゥルフ神話TRPG公式サイトで無料配布されている版元公式資料。2026年8月19日確認), KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト(配布ページ) ↩
- [3] 「割り振られる8つの数値は、その能力値に関するダイス・ロール(次の項目を参照)が成功する確率のパーセントを表します。例えば、能力値の数値が60なら60%の確率で成功することになります」 — 「【初心者向け】能力値からわかる“クトゥルフ神話TRPG”入門!新版で探索者を創造しよう!」(KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト、2026年8月19日確認), KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト ↩
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