概要
『Eldias一章 太陽と月編』は、同人サークル「Turn_ura」が2015年12月に発売した、「クトゥルフ+SFファンタジーRPG」を掲げるドット絵RPGです。舞台は、ナノマシンハザード「文明終焉」によって人類の文明が滅びた遠未来の惑星エルディアス。新世歴232年、記憶喪失の青年アダマスは、ティーエ村で少女サフランをかばった際に「大いなるCの血」に目覚め、翼をもがれた青き竜へと変化してしまい、世界の真実を求めて旅に出ます。4〜6人パーティでの戦闘、100種類以上の敵からDNAを吸収してスキルを習得するシステム、30人以上の仲間、兵器改造や連携スキルなど、同人RPGとしては大規模な作り込みで、想定プレイ時間は20〜30時間に及びます。DLsiteでの評価は★4.0前後(2026年7月時点)。ホラーADVが主流のクトゥルフ題材同人ゲームの中で、王道の長編RPGという形式を選んだ珍しい作品です。
クトゥルフ神話との関係
主人公が目覚める「大いなるC」の血——名を伏せられたこの頭文字がクトゥルフを指し示すことは、「クトゥルフ+SFファンタジー」という公式のジャンル表記からも明らかです。人間だと思っていた自分の内に異形の血が流れており、それが覚醒とともに肉体を変容させてしまうというモチーフは、『インスマウスを覆う影』の語り手が辿った「血の真実の発見と変容」の系譜に連なります。また、クトゥルフ神話をSFの枠組みで読み直すこと自体、ラヴクラフト作品の本来の姿に近い側面があります。『狂気の山脈にて』や『時間からの影』において、神話的存在は太古に地球へ飛来した地球外生命として描かれており、超未来の惑星を舞台に神話の血脈を語る本作の設定は、この「神話=太古のSF」という読み筋を大胆に未来側へ延長したものといえます。
独自の要素・原典との違い
原典において異形の血の覚醒は破滅か狂気を意味しますが、本作ではそれが「竜への変化」という力の獲得として描かれ、主人公は変容を抱えたまま仲間と共に世界の真実を探す旅を続けます。恐怖の源泉であるはずの神話的な血を、王道RPGの成長と冒険の原動力に転用しているわけで、コズミックホラーとしてのクトゥルフではなく「設定素材としてのクトゥルフ」を全面的に活用するタイプの作品です。DNA吸収によるスキル習得や兵器改造といったシステムも、血と変容というテーマをゲームメカニクスに落とし込んだものと読むと一貫性があります。燃え・ロボット・ファンタジーとジャンルタグが示す通り作風は熱血寄りで、ホラーを期待するプレイヤーには不向きですが、「クトゥルフの血を継ぐ者の英雄譚」という逆張りの発想と20時間超のボリュームは、神話派生作品の振れ幅を知る意味で興味深い一本です。タイトルに「一章」とある通り続章を見据えた構成で、物語は世界の謎を残しながら進みます。

