概要
『NOIR:NOAH』は、同人サークル「冥途のみやげ」が2022年11月に発売した「ダークでキュートな退廃終末クトゥルフ神話ADV」です。本記事で紹介するのは、過激な描写を再編集して配信・実況にも対応したR-15版で、ストーリー自体は原版と同一のまま、ショッキングな描写や理不尽に感じられる展開を含む物語を完全な形で追うことができます(成人向けの原版も存在しますが、物語を楽しむだけならR-15版で十分とされています)。主人公は記憶を失った実験体の少女シエル。覚えているのは自分の名前と、ある黒髪の少女の存在だけ。無人と化した研究施設には、本来大勢いるはずの「姉妹」たちの姿はなく、代わりに正体不明の化け物が徘徊しています。謎解きの難度は易しめで、エンディングは3種類、通常クリアまでは1.5〜3時間程度。DLsiteでの評価はR-15版・原版ともに★4.6〜4.9前後(2026年7月時点)と非常に高く、シリーズ累計では同人クトゥルフ系ADV屈指のヒット作となり、DLsite公式翻訳により英語・中国語・韓国語版も展開されました。
クトゥルフ神話との関係
本作は特定の神格の名前を看板に掲げるタイプの作品ではなく、「クトゥルフ神話的な終末」を世界観の前提として組み込むタイプの作品です。人類の文明が既に手遅れの形で終わってしまった後の世界、人体実験によって人ならざるものへ近づけられた少女たち、施設を徘徊する異形——これらは、人間の尺度が通用しない存在によって世界が静かに書き換えられてしまうという宇宙的恐怖の主題を、ポストアポカリプスの光景として描き直したものです。タイトルの「NOAH」が示す箱舟の意匠も、「滅びから何を残すのか」という問いを神話的な文脈で反転させて使っており、旧約の洪水譚とクトゥルフ神話的な滅びを重ね合わせる構成になっています。同サークルの前作『HELLO, HELLO WORLD!』と同一世界観の後日譚的な位置づけであることが知られており、前作から順に触れることでこの終末の意味がより立体的に見えてきます。
独自の要素・原典との違い
「ダークでキュート」というキャッチコピーの通り、本作の作風は可愛らしいキャラクター表現と容赦のない退廃・喪失の同居にあります。ラヴクラフト的な恐怖が「知ってしまった者の戦慄」を軸にするのに対し、本作は既に壊れてしまった世界を生きる少女の孤独と、姉妹たちとの記憶をめぐる感情の物語を軸に据えており、恐怖よりも切なさが後を引くという感想が多く見られます。謎解きは易しめに設計され、実績や隠し要素、クリア後のおまけも豊富で、短時間で密度の高い読後感を得られる構成です。低価格帯ながらエンディング3種と追加CGを含む75枚のCGを収録するボリュームも支持の理由となっています。なおR-15版は動画投稿が公式に許可された唯一のバージョンであり、配信文化を意識したエディション設計そのものが、同人ADVの現代的な展開例として興味深い点です。
⚠ 成人向け(R-18)版について
『NOIR:NOAH』には成人向け(R-18)版が存在します。その紹介は姉妹サイト「深淵禁書」に掲載しています(18歳未満の方は閲覧できません。リンク先の入口で年齢確認があります)。


