概要
『クトゥルフ神話RPG 水晶の呼び声』は、AlchemyBlue(シナリオ:白飯マコト)が2019年8月29日にDLsiteで発売した「クトゥルフ神話RPG」シリーズの第3作で、「その日、狂気が生まれた。」のコピーを掲げるレトロゲーム風ミステリーホラーRPGです。2016年4月、差出人が「あなた」となっている小包で美しい水晶玉を受け取った主人公は、その夜から誰かに呼ばれるような夢を見るようになり、連続変死事件の謎とともに「烏丸超常探偵事務所」の扉を叩くことになります。DLsiteでの累計DL数は7,000件超、評価は★4.8前後(2026年7月時点)とシリーズ最高で、第2章にあたる別売アペンドや本体との同梱版、シリーズ5周年を記念して3作を収録したアニバーサリーボックス、さらに『コープスパーティー』とのコラボイベントまで展開されました。2023年3月2日にはNintendo Switch版『水晶の呼び声 Plus』も配信されています。
クトゥルフ神話との関係
タイトルの「呼び声」は、ラヴクラフトの代表作『クトゥルフの呼び声』を明確に想起させます。原典で芸術家や信者たちが海底から届く「呼び声」に感応して夢に苛まれたように、本作の主人公も水晶玉を受け取って以来、何者かに呼ばれる夢に導かれて事件へと踏み込んでいきます。「境界を越えて届く声」と「見てはならないものへ近づいていく調査」という原典の二大モチーフを、現代日本の探偵事務所ものとして再構成した作りです。超常現象を専門に扱う探偵事務所という舞台立ては、素人の巻き込まれ型だった前2作に比べ、クトゥルフ神話TRPGにおける「職業探索者」のセッションに一段と近く、正気度(SAN値)を管理しながら証言と手掛かりを集めていく過程そのものがゲームの中心に据えられています。
独自の要素・原典との違い
シリーズ3作の中で本作が最も高く評価されている理由は、ホラーとミステリーの配合にあります。洋館(第1作)、山村(第2作)と閉じた空間を描いてきたシリーズが、本作では都市を舞台にした連続変死事件の捜査劇へと広がり、レトロなドット絵のまま「足で稼ぐ捜査もの」の面白さを取り込みました。「差出人があなた」という小包の不気味な仕掛けに象徴されるように、恐怖の源泉を怪物との遭遇よりも謎の構造そのものに置いている点は、怪異の正体を段階的に開示していくラヴクラフトの語りの技法に通じます。一方で、探偵事務所の面々との掛け合いなどキャラクター劇としての魅力も厚く、原典の孤独な語り手像とは対照的です。DLsite評価が第1作★4.5前後から本作★4.8前後へと着実に上がってきた到達点であり、シリーズを順に追う場合も本作から遡る場合も、同人クトゥルフRPGの現在地を知る好例といえます。


