概要
荒俣宏(あらまた ひろし、1947年-)は、博物学研究家・図像学研究家・小説家・翻訳家として活動する日本の文筆家です。中学生の頃から怪奇・幻想文学に傾倒し、H・P・ラヴクラフトやロバート・E・ハワードの作品を精力的に翻訳・紹介しました。1976年に編纂した『ク・リトル・リトル神話集』は、日本におけるクトゥルフ神話観の基礎を築いた一冊とされます。伝奇小説『帝都物語』の作者としても知られ、博物学・神秘学・妖怪研究など幅広い分野で活動を続けています。
経歴
1947年7月12日
- 東京都に生まれる
中学生時代:怪奇・幻想文学との出会い
- 中学生のうちに翻訳家・怪奇小説家の平井呈一に師事
- 平井を通じて紀田順一郎とも交流を持ち、幻想小説・怪奇小説への傾倒を深める
- 同人誌活動を通じて、鏡明とともに海外作品の翻訳に取り組み始める
慶應義塾大学卒業後:会社員として働きながらの翻訳活動
- 慶應義塾大学法学部を卒業後、日魯漁業(のちのマルハニチロ系)にプログラマとして入社
- 会社勤めのかたわら、ラヴクラフトやロバート・E・ハワードの翻訳を精力的に手がける
- 1970年、ロバート・E・ハワードの「英雄コナン」シリーズの翻訳『征服王コナン』が訳書としての処女作となり、日本に初めてヒロイック・ファンタジーというジャンルを紹介
- 翻訳の過程で生み出した「魔道」「魔道士」といった訳語は、以後の日本の幻想小説翻訳で広く定着した
1976年:『ク・リトル・リトル神話集』編纂
- 国書刊行会「ドラキュラ叢書」より、ラヴクラフトのみならず後続作家も含めた神話作品集を編纂・刊行
- 日本のクトゥルフ神話受容における基礎的な一冊として、後世まで参照され続けている
1977年:単著デビュー
- 単著としての処女作『別世界通信』を刊行
1985年:『帝都物語』でベストセラー作家に
- 伝奇小説『帝都物語』がベストセラーとなり、日本SF大賞を受賞
- 作中で陰陽道や風水を扱ったことが、これらの一般認知が広まる契機の一つとなった
1987年:『世界大博物図鑑』完成
- 博物学への関心を体系化した大著『世界大博物図鑑』シリーズを完成
- 1989年、サントリー学芸賞を受賞
2017年:京都国際マンガミュージアム館長に就任
- 妖怪研究では水木しげるに師事するなど、幅広い分野への関心を持ち続けている
影響・意義
荒俣宏は、単なる翻訳家としてではなく、博物学・神秘学・妖怪研究といった幅広い知的関心を背景に、ラヴクラフトとロバート・E・ハワードという二つの異なる系譜の幻想文学を日本に橋渡しした人物です。『ク・リトル・リトル神話集』の編纂は、日本語で複数作家によるクトゥルフ神話の広がりに触れられる初期の機会を提供し、後の翻訳出版・TRPG受容の土台を整えました。またコナン翻訳を通じて生み出した「魔道」「魔道士」という訳語は、彼自身の創作活動をも超えて、日本の幻想文学の語彙そのものに影響を残しています。



