概要
ロバート・アーヴィン・ハワード(Robert Ervin Howard, 1906-1936)は、「英雄コナン」(Conan the Barbarian)の創造者であり、剣と魔法(ソード&ソーサリー)というジャンルの父と称される作家です。テキサスの片田舎で生涯の大半を過ごしながら、Weird Tales誌を主な舞台に驚異的な多作ぶりを見せました。ラヴクラフトとの文通を通じてクトゥルフ神話にも参加し、「無名祭祀書」(Unaussprechlichen Kulten)などの要素を加えています。30歳での自死により、その創作活動は突然に断ち切られました。
生涯と創作の年表
1906年1月22日
- テキサス州ピースター(Peaster)に生まれる
- 医師である父とともに各地を転々とした後、生涯の大半をテキサス州クロス・プレインズ(Cross Plains)で過ごす
少年期
- 兄弟や遊び相手に恵まれず、読書に没頭して育つ
- 度重なるいじめの経験から、肉体の鍛錬にも打ち込んだ
1924年-1925年:作家デビュー
- 1924年11月、まだ十代のうちに処女作「Spear and Fang」をWeird Tales誌に売り込む
- 同作は1925年7月号に掲載され、以後Weird Talesが彼の主要な発表媒体となった
1928年8月:ソロモン・ケイン登場
- Weird Tales誌に「Red Shadows」を発表し、復讐に生きる清教徒の剣士ソロモン・ケイン(Solomon Kane)を世に出す
1929年8月:カル王登場
- Weird Tales誌に「The Shadow Kingdom」を発表し、アトランティス出身の王カル(Kull)を主人公とする一編を発表
- この作品は、後の「剣と魔法」ジャンルの原型の一つとされる
1930年8月:ラヴクラフトとの文通開始
- ラヴクラフトとの書簡のやり取りが始まる
- 二人は歴史観・文明論などをめぐって活発に議論を交わし、最も密接な文通仲間の一人となった
1930年代前半:クトゥルフ神話への参加
- 「The Black Stone」「The Children of the Night」などの作品を通じて、神話的要素を自作に取り込む
- 架空の学者フリードリヒ・フォン・ユンツト(Friedrich von Junzt)と、その禁断の書物『無名祭祀書』(Unaussprechlichen Kulten)を創造し、ラヴクラフト・サークルの共有財産に加えた
- ラヴクラフトもこれらの要素を自作で参照し、作家間の相互借用が行われた
1932年12月:コナン登場
- Weird Tales誌に「The Phoenix on the Sword」を発表し、最も有名な英雄コナン(Conan the Cimmerian)が公の場にデビュー
- 以後およそ3年間で17編のコナン物語が発表され、「ハイボリア時代」という架空の太古世界が築かれた
多彩なキャラクター群
- コナン、カル、ソロモン・ケイン、ブラン・マク・モーンのほか、西部劇の主人公ブレッケンリッジ・エルキンズ、拳闘家スティーヴ・コスティガンなど、ジャンルを横断する多数のキャラクターを生み出した
1936年6月11日:死
- 結核を患う母が昏睡から回復しないと知った朝、借りた拳銃で自らを撃つ
- 意識を回復することなく、同日午後に死去。30歳という若さだった
- この死は、親友として文通を続けていたラヴクラフトを深く打ちのめした
影響・意義
ロバート・E・ハワードは、ラヴクラフトの内向的な「宇宙恐怖」とは対照的に、行動と暴力に満ちた躍動的な物語世界を築きました。彼が確立した剣と魔法のジャンルは、後のファンタジー文学・映画・ゲームに計り知れない影響を与えています。クトゥルフ神話への直接の貢献は「無名祭祀書」など限られたものですが、彼が示した「別ジャンルの作家が神話の共有財産に自作の禁断の書を持ち寄る」という参加の形は、共有宇宙の開放性を体現するものでした。その早すぎる死は、ラヴクラフト・サークルにとって大きな喪失であり、ラヴクラフト自身の晩年にも暗い影を落としました。

