概要
題辞はシェイクスピアの一行、「眠りの解き明かしが私に降りてきた」です。語り手は夢について自説を述べるところから始めます。夜ごとの幻の大半は覚醒時の経験のかすかな反映にすぎない──「フロイトは子どもじみた象徴論で反対するだろうが」──それでも、ある種の夢は普通の解釈を許さず、肉体の生と「ほとんど越えられない壁」で隔てられた、別の精神的存在の領域を垣間見せているのではないか。ときには「この物質性の薄い生のほうが真の生で、地球上のわれわれの存在のほうが二次的な、仮の現象」だとさえ思う、と[1]。
その語り手が州立精神病院の研修医だった1900年から01年の冬、ジョー・スレイターという男が運ばれてきます。キャッツキル山地の猟師で、読み書きができず、隣人を殴り殺して捕まった。この男が発作のたびに語る「光の建物」「空間の海」「震えて笑う輝くもの」に、語り手は取り憑かれます。物語の後半は、学生時代に作った思考伝達装置をスレイターの額と自分の額につないだ夜の記録で、最後は天文学者の文章の引用で閉じられます[1]。
ラヴクラフトが1919年に書いた約4,300語の短編で[2]、同年10月のアマチュア誌『パイン・コーンズ』に載りました[3]。夢の中の「光の兄弟」、星の名で呼ばれる敵、3000年後の帝国と木星の第四衛星──のちの作品で繰り返される「肉体は仮の宿にすぎない」という考えが、ここで最初にまとまった形をとります。
作品情報
- 原題: Beyond the Wall of Sleep
- 執筆: 1919年[2]
- 初出: 『パイン・コーンズ』第1巻第6号、1919年10月、2–10ページ[3]
- 分量: 約4,300語(公式アーカイブ本文を機械集計)
- 語り: 一人称。州立精神病院の研修医が、後年、事件を振り返って書く
- 時: 1900年から01年の冬。装置が働いた夜は1901年2月21日
- 主題: 夢の中の別の生、思考の伝達、肉体という牢獄、星の敵
登場神格・用語
クトゥルー神話固有の神格は出てきません。以下は作中の固有名と、名を与えられていない存在。
- 語り手: 州立精神病院の研修医(インターン)。夢の生についての思索を「若いころからの夢想」と呼び、思考は原子や分子の運動で、熱や光や電気のように放射エネルギーの波に変換できると信じています。学生時代に無線電信に似た送受信装置を作り、友人と試して何も起きず、しまい込んでいました
- ジョー・スレイター(Joe Slater / Slaader): キャッツキル山地の放浪者、猟師、罠猟師。年齢不詳、外科部長は「40歳前後」と記録します。読み書きができず、伝説や昔話を聞いたこともないと医師たちは判断します
- ピーター・スレイダー: スレイターの隣人。スレイターの発作の朝、小屋の前で殺されました
- バーナード医師、フェントン医師: 前者はスレイターの目に「知的な決意のような」光を認めた医師。後者は病院長で、語り手の話を親切に聞いたあと、神経の薬と半年の休暇を与えました
- 光の兄弟(brother of light): スレイターの肉体に42年間閉じ込められていた存在。夢の中で語り手と「魂と魂で」語ります。自分と語り手を「広大な空間の放浪者、多くの時代の旅人」と呼びます
- 圧制者(the oppressor): 光の兄弟の敵。「震え、笑い、嘲る、燃える存在」。地上の人間が「アルゴル、悪魔の星」と名づけた点滅する光が、その遠い気配だと告げられます
- キャッツキル山地: スレイターの出身地。語り手は山地の住民を、三世紀近い孤立で「野蛮な退化」に沈んだ植民時代の農民の末裔として、露骨な侮蔑をこめて描いています
あらすじ
運ばれてきた男
1900年から01年の冬のある午後、四人の州警官に付き添われて、「きわめて危険な人物」と書かれた男が病院に着きます。ジョー・スレイター。中背より高く、体格はよいのに、小さな水っぽい青い目の眠たげな薄さと、まばらな黄色い髭と、だらりと垂れた下唇が、「無害な愚鈍」の印象を与えていました[1]。
医療と裁判の記録によれば、この男は仲間内でも変わり者でした。夜、普通より長く眠り、目覚めると「未知のこと」を語る。言葉づかいは土地の崩れた方言のままなのに、その調子と内容の「謎めいた荒々しさ」が、想像力のない人々をも怯えさせました。本人も聞き手と同じくらい怯え、一時間もすれば忘れて、ほかの山の住人と同じ「牛のような、半ば人のよい正常さ」に戻ります。年を取るにつれて朝の発作は激しくなり、病院に来る一か月ほど前、事件が起きました[1]。
前日の午後5時ごろからウイスキーで深く眠った男は、正午近くに突然、恐ろしい遠吠えとともに目を覚まします。雪の中へ飛び出し、両腕を上げ、真上へ跳び続けながら叫びました。「屋根と壁と床が光っている、大きな大きな小屋」へ、「遠くの大きな奇妙な音楽」のところへ行くのだ、と。取り押さえようとした二人の男に狂気の力で抗い、「輝いて震えて笑うもの」を見つけて殺すと叫び、「高く跳び上がって、邪魔するものは何でも焼き抜けて進む」と喚きます。一人を殴り倒し、もう一人に襲いかかり、正気に戻った村人が見たのは、一時間前まで生きた人間だった「見分けのつかない、どろどろの塊」でした[1]。
スレイターは森へ逃げ、数日後に遠い峡谷から叫び声が聞こえ、武装した捜索隊が出ます。三日目、木のうろで意識を失っているところを見つけられ、留置場でオールバニーから来た精神科医の診察を受けました。彼の話は単純です。日暮れに酒を飲んで寝た。目が覚めたら小屋の前の雪の中に血まみれの手で立っていて、足元に隣人ピーター・スレイダーの死体があった。それ以上は何も知らない[1]。
発作の中身
三日目の朝、最初の発作が起きます。四人がかりで拘束衣を着せるあいだ、スレイターは15分あまり、山地の方言で「光の大建築、空間の海、奇妙な音楽、影の山と谷」を語り続けます。何より、「震えて笑って自分を嘲る、謎めいた燃える存在」について。それは彼に恐ろしい不正を働いた。それを殺して復讐することが最大の望みだ。そこへ行くために「虚無の深淵を飛び、道を塞ぐものをすべて焼く」。そして突然、発作は終わり、男は鈍い驚きの顔で、なぜ縛られているのかと尋ねます[1]。
医師たちは考え込みます。読み書きができず、伝説も昔話も聞いたことのない男に、この「豪華な心象」はどこから来たのか。既知の神話や物語から来たものでないことは、彼が自分の単純な言葉でしか語らないことから明らかでした。医師たちは「異常な夢」が原因だと結論します。スレイターは殺人で裁かれ、精神障害を理由に無罪となり、語り手の勤める病院へ送られました[1]。
研修医の観察
語り手はこの患者に没頭します。スレイターは語り手の好意を感じ取り、静かな時間には格子窓のそばで藁と柳の籠を編みながら彼を認めました。家族は一度も面会に来ません。語り手は次第に「圧倒的な驚き」を覚えます。この男自身は知性も言葉も「哀れなほど劣って」いるのに、その燃えるような巨大な幻は「優れた、例外的な脳にしか思い描けないもの」だ。「キャッツキルの退化した男の鈍い想像力が、どうしてこんな光景を呼び出せるのか」[1]。
聞き取れた範囲では、スレイターは「半ば肉体を離れた夢の生」の中で、光の谷や草地や庭や都市や宮殿を漂っている。そこでは農民でも退化した男でもなく、「重要な、生き生きとした存在」で、堂々と動き回り、ただ一つの「死に至る敵」だけに阻まれている。敵は目に見えるが天上的な構造を持ち、人間の形をしていないらしく、スレイターはそれを「男」とは呼ばず「もの」とだけ呼びます。二人の関わり方から、語り手は判断します。スレイターと輝くものは対等に会っている。夢の中で、この男自身が敵と同じ種族の「輝くもの」なのだ、と[1]。
その幻が「田舎の言葉」でまったく伝えきれていないことから、語り手は結論を引き出します。本当に夢の世界があるなら、口頭の言語はその思考の伝達手段ではない。「この劣った肉体に住む夢の魂が、鈍さの単純でつかえる舌では言えないことを、必死に語ろうとしているのではないか」。年長の医師には話しません。「中年は懐疑的で、皮肉屋で、新しい考えを受け入れたがらない」。病院長からは、働きすぎだ、頭を休めろ、と父親のような注意を受けたばかりでした[1]。
装置
語り手は以前から、人間の思考は原子か分子の運動で、熱や光や電気と同じ「放射エネルギーのエーテル波」に変換できると信じていました。学生時代、「ラジオ以前の粗野な時代」の無線電信に似た送受信装置を作り、学友と試して何の結果も得られず、しまい込んであった。それを引っ張り出し、数日かけて修理します。以後、スレイターの発作のたびに、送信機を彼の額に、受信機を自分の額に当て、「知的エネルギーの仮想的な波長」を細かく調整しました。誰にも知らせずに[1]。
1901年2月21日
「それが起きたのは1901年2月21日だった」。振り返れば非現実に思え、老フェントン医師が「すべて興奮した想像力のせいだ」と言ったのが正しかったのかと、ときどき半ば思う、と語り手は書きます。その夜、スレイターは死にかけていました。手厚い看護にもかかわらず、山の自由を失ったせいか、脳の混乱が鈍い体には激しすぎたのか、「退化した肉体の中で生命の炎は低く揺れて」いた。語り手は拘束衣を着せず、代わりに「宇宙の『ラジオ』」の両端を彼と自分の頭につけます。夢の世界からの「最初で最後の伝言」を、望みなく望みながら。同室の看護人は装置の目的を理解せず、やがて居眠りを始め、語り手自身も、健康な男と死にゆく男の規則正しい呼吸に誘われて、うとうとしたに違いありません[1]。
目を覚まさせたのは「奇妙な抒情的旋律」でした。和音と振動と調和の恍惚がまわりじゅうに響き、目には「究極の美の途方もない光景」が飛び込みます。生きた火の壁と柱と梁が、宙に浮く自分のまわりで燃え、無限に高い円蓋へ伸びている。それと入れ替わりに、広い平原、優美な谷、高い山、洞窟が、万華鏡のように回る。それらは「精神と物質を半々に分け持つような、輝く、天上の、可塑的な実体」でできていて、語り手は気づきます。自分の脳がこの変容の鍵を握っていて、現れる景色はそのつど自分の心がもっとも見たいと望んだものだ。そしてここは見知らぬ場所ではない。「数えきれない永劫の昔からそうであったように、これからの永劫もそうであるように」、どの光景も音も親しいものでした[1]。
そこへ「光の兄弟」の輝くオーラが近づき、「魂と魂で、音のない完全な思考の交換」で語ります。時は勝利の近づく時。この同胞はついに「屈辱的な周期的隷属」から永遠に逃れ、「呪われた圧制者」をエーテルの果ての野まで追って、「天球を揺るがす燃える宇宙の復讐」を果たそうとしている。二人はしばらく漂い、やがて景色がぼやけ始めます。何かが語り手を地球へ──「もっとも行きたくない場所へ」──呼び戻している。光の兄弟も変化を感じ、話を結びに向かわせ、語り手よりゆっくりと消えていきます。「哀れな惑星の殻はほぼ尽きて」いて、一時間もしないうちに同胞は自由になり、圧制者を天の川に沿って追い、「無限の境界そのもの」まで行くのだと、語り手は知りました[1]。
「ジョー・スレイターは死んだ」
はっきりした衝撃で、語り手は椅子の上で目を覚まします。寝椅子の上の死にかけた男が、ためらいがちに動いていました。黄ばんだ頬にはこれまでなかった色が差し、唇は「スレイターのものより強い性格の力で」固く結ばれています。頭が語り手のほうへ鋭く向き、目が開きました。「ジョー・スレイターだった男」が、青みを深くした、輝く大きな目で語り手を見つめている。狂気も退化もそこにはなく、「高い次元の活動する精神」のある顔でした[1]。
語り手の脳は、外から働きかける安定した影響を感じ取ります。目を閉じて集中すると、求め続けた思考の伝言が来ていることが分かりました。言語は使われていないのに、「日ごろの概念と表現の結びつき」が強いために、普通の英語で受け取っているように感じられます。「ジョー・スレイターは死んだ」。眠りの壁の彼方から、「魂を石にする声、あるいは作用」が言いました[1]。
伝言はこう続きます。彼は死んだほうがよい。宇宙的存在の活動する知性を担うには不適で、粗い肉体はエーテルの生と惑星の生のあいだの調整に耐えられなかった。「あまりに獣で、あまりに人でなかった」。だがその欠陥のおかげで、あなたは私を発見した。本来、宇宙の魂と惑星の魂は出会うべきではないのに。彼は42年間、私の苦しみであり、昼の牢獄だった。私は、あなたが夢のない眠りの自由の中でなるものと同じ存在で、あなたの「光の兄弟」だ。目覚めているあなたの地上の自己に、本当の自己を告げることは許されていない。だがわれわれは皆、広大な空間の放浪者、多くの時代の旅人だ。来年、私はあなたが「古代」と呼ぶ暗いエジプトにいるかもしれず、3000年後に来る「ツァン・チャンの残酷な帝国」にいるかもしれない。あなたと私は赤いアルクトゥルスをめぐる世界へ漂い、木星の第四の月を誇らしげに這う「昆虫の哲学者」の体に住んだこともある。「地上の自己は、生とその広がりについて、なんと少ししか知らないことか」[1]。
圧制者については語れない。だが地上のあなたがたも、その遠い気配を知らずに感じてきた。その点滅する灯火に、あなたがたは何気なく「アルゴル、悪魔の星」という名を与えた。それに立ち向かって打ち負かすために、私は永劫のあいだ、肉体の重荷に阻まれながらむなしく努めてきた。今夜、私は「正当な、燃え上がる破局的な復讐」を携えたネメシスとして行く。「悪魔の星のそばの空で、私を見ていてほしい」。もう長くは語れない、ジョー・スレイターの体は冷たく硬くなり、粗い脳は望むように振動しなくなっている。あなたは宇宙での私の友で、この惑星でただ一人の友──この不快な姿の内に私を感じ、探した唯一の魂だった。また会おう。オリオンの剣の輝く霧の中でか、先史時代のアジアの荒涼とした高原でか、今夜の忘れられる夢の中でか、太陽系が消え去った永劫ののちの別の姿でか[1]。
思考の波は突然止み、夢見る者──「死者と言うべきか」──の青白い目は魚のように曇り始めます。手首は冷たく、硬く、脈がない。黄ばんだ頬はまた青ざめ、厚い唇が開いて、「退化したジョー・スレイターの、吐き気を催すほど腐った牙」が覗きました。語り手は毛布を顔にかけ、看護人を起こし、黙って自室へ戻ります。「夢を覚えていない眠りへの、しつこい、説明のつかない渇望」を抱えて[1]。
天文学者の証言
「クライマックスか。科学の平明な話が、これほどの修辞的効果を誇れるだろうか」。語り手は自分が事実と思うことを書いただけで、解釈は読者にゆだねる、と言います。上司のフェントン医師は一切を否定し、神経の疲労だと断じ、全額支給の長い休暇を与え、スレイターは「もっとも退化した共同体にも流布する粗野な伝承」から幻を得た低級の妄想症患者だったと「職業的名誉にかけて」保証しました。「それでも私は、スレイターが死んだ翌夜に空で見たものを忘れられない」[1]。
自分を偏った証人と思われないように、語り手は他人の筆に結びを譲ります。「著名な天文学の権威、ギャレット・P・サーヴィス教授」の文章から、ペルセウス座新星についての一節がそのまま引かれます。1901年2月22日、エディンバラのアンダーソン博士が、アルゴルからさほど遠くない位置に驚くべき新星を発見した。それまでその点に星は見えなかった。24時間のうちにカペラより明るくなり、一、二週間で目に見えて衰え、数か月のうちに肉眼ではほとんど見分けられなくなった[1]。本文はこの引用で終わります。
読みどころと注目テーマ
結末を他人の文章に預ける
語り手は最後の一段落を、天文学者の文章の「逐語引用」に譲ります。自分の話は上司に否定された。だから自分ではなく、事件を知らない第三者の記録で締める。新星の発見日は、装置が働いた夜の翌日です。光の兄弟が「悪魔の星のそばの空で私を見ていてほしい」と言ったことと、アルゴルの近くの新星とを結ぶ線は、読者が自分で引くことになります。語り手はその線を引かず、「解釈は読者にゆだねる」と言ったまま退きます。
器と中身
本作の中心にある考えは、光の兄弟の言葉に尽きています。粗い肉体は、宇宙的な知性の「昼の牢獄」であり、その器が壊れることが解放になる。語り手が観察の段階で立てた仮説──「劣った肉体に住む夢の魂が、鈍い舌では言えないことを語ろうとしている」──が、伝言によってそのまま裏づけられる構造です。読み書きのできない男の口から出る豪華な心象、という設定は、中身と器の落差を最大にするためのものです。
語り手の侮蔑
スレイターと山地の住民に対する語り手の言葉は露骨そのもの。「野蛮な退化」「南部の『白い屑』に正確に対応する」「生まれつき劣った男」「退化したジョー・スレイターの腐った牙」。語り手は最後まで、この男の中身にだけ関心を持ち、男自身には持たない。「彼は死んだほうがよい」という光の兄弟の言葉に語り手が異を唱えないところまで含めて、この視線が作品の一部です。
「ラジオ以前」の装置
語り手の装置は、「熱や光や電気のように」思考をエーテル波に変換できるはずだという前提で作られ、「当時の粗野なラジオ以前の時代の無線電信」に似ていたと説明されます。仮想的な波長を細かく調整する、という描写も含めて、超自然への接触が工学の言葉で語られます。夢の領域を扱いながら、そこへ至る手段が薬でも呪文でもなく自作の送受信機である点で、本作は同じ夢を扱ったヒュプノス(1922年)と対をなします。
執筆背景と影響
公式アーカイブの年譜は本作を1919年に置いています[2]。初出は同年10月の『パイン・コーンズ』第1巻第6号、2ページから10ページでした[3]。
夢の中で語り手が別の存在として生きている、という発想は、前年のポラリス(1918年)にも見られます。あちらでは語り手が夢の中で北方の都市の見張りとなり、星に嘲られます。本作の光の兄弟と圧制者アルゴルは、その構図を「星が敵」というところまで押し進めたものです。
伝言に出てくる「3000年後に来るツァン・チャンの残酷な帝国」の名は、時間からの影(1934〜35年)で、精神を交換して時代を渡る「大いなる種族」の訪問先のひとつ(あちらでは西暦5000年の帝国)として再び現れます。「多くの時代の旅人」という光の兄弟の自己紹介は、あちらの長編の骨格そのものです。
キャッツキル山地の孤立した住民を「退化」として描く視線は、3年後の潜み棲む恐怖(1922年)で、同じ山地のマーテンス一族の物語としてもう一度、今度は恐怖の対象そのものとして書かれます。家のなかの絵(1920年)のニューイングランドの奥地の老人も、同じ系列です。
出典
[1] H. P. Lovecraft, “Beyond the Wall of Sleep” (本文). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/texts/fiction/bws.aspx本記事の引用・要約はすべてこの本文に基づきます。訳文は当サイトによる試訳です。末尾のサーヴィス教授の一節も、この本文中に引用されている形で確認しました。
[2] “Lovecraft’s Fiction” (作品年譜). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/fiction/執筆時期(1919年)、および「ポラリス」1918年5月?・「潜み棲む恐怖」1922年11月・「家のなかの絵」1920年12月12日・「時間からの影」1934年11月〜35年3月の出典。
[3] “Data Page for ‘Beyond the Wall of Sleep'” (作品情報・出版履歴). The H. P. Lovecraft Archive.https://www.hplovecraft.com/writings/fiction/bws.aspx初出『パイン・コーンズ』第1巻第6号(1919年10月)2–10ページの出典。


