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忘却前夜

クトゥルフ神話をテーマにしたコズミックホラー系カードRPG『忘却前夜』を紹介。

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概要

『忘却前夜』は、B.I.A.V. Studioが開発しオルトプラス(AltPlus)がパブリッシングを手がける、基本プレイ無料のコズミックホラー系カードRPGです。スマートフォン(iOS/Android)向けに2025年8月19日にサービスを開始し、2026年3月にはSteam版も配信されました。物語の鍵となるのは「融蝕(ゆうしょく)」――世界から存在そのものが無くなっていく病です。プレイヤーは「守秘者」となり、融蝕と呼ばれる世界崩壊の危機に立ち向かいながら、失われた記憶と運命の真実に迫っていきます。公式の紹介によればメインストーリーは総テキスト量80万字超えの大ボリュームで、エピソード形式で構成された学園を舞台とする群像劇が展開されます。戦闘はデッキ構築型のターン制カードバトルで、道中で刻印や遺物を獲得しながら脅威に挑むローグライク風の構造が採られています。

クトゥルフ神話との関係

開発元のオルトプラスは公式発表の中で、本作が「クトゥルフ神話をテーマにした幻想的な世界観」を持つことを明言しています。もっとも本作の神話要素は、特定の神格や地名をそのまま登場させる引用型ではなく、「存在が世界から静かに消えていく」という融蝕の設定そのものに宇宙的恐怖の主題を溶かし込むタイプです。かけがえのない人の存在が誰にも気づかれないまま消え、世界が静かに、しかし確実に終焉へ向かっていく――この「抗いようのない浸蝕」の感覚は、人間の認識や記憶さえ信用できなくなるというラヴクラフト作品の核心を、「忘却」という誰にでも身に覚えのある現象に翻訳したものといえます。公式サイトでは、融蝕の力によって異形と化した存在との戦いが描かれることも示されており、それがもともと動物だったのか、名も知らぬ他人だったのか、あるいは大切な人だったのかも分からないという設定は、正体の判別不能性という神話的恐怖の文法を戦闘システムにまで浸透させたものです。

独自の要素・原典との違い

ラヴクラフトの原典が孤独な探索者の一人称的な恐怖を描くのに対し、本作は学園を舞台にした群像劇として、多数のキャラクターの視点から終末を多面的に描く構成を採っています。美麗なキャラクタービジュアルとスマートフォン向けの運営型カードRPGという形式も、原典の陰鬱な筆致とは対照的な現代的パッケージです。一方で「世界は静かに、確実に終焉へと向かっている」という公式サイトの一文が示す通り、キャラクターゲームの明るさの底に不可逆の滅びを敷く二層構造は、ポップな意匠とコズミックホラーを共存させる近年の日本・アジア圏タイトルの潮流に連なるものといえます。80万字超というテキスト量が示す物語重視の設計は、戦闘の攻略よりも「読む体験」を求めるプレイヤーに向いており、基本プレイ無料で始められる敷居の低さもあって、クトゥルフ神話的な終末観に物語から触れてみたい人の入口になり得る一本です。

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