編集部注(著作権について): 本記事が扱う『彼方から狩り立てるもの』(1932年「ストレンジ・テイルズ・オブ・ミステリー・アンド・テラー」誌10月号掲載)は、著作権継承者(CASiana Literary Enterprises)による同時代作品の個別更新実例があるため、パブリックドメインであるとは断定できません。本記事は原文からの引用を行わず、あらすじ・論評のみで構成しています。
概要
彫刻家の作品に宿る不気味な迫真性の正体が、肉眼では見えぬ次元から人間の魂を狩る〈彼方からの狩人たち〉であったと判明する一編。同名の異次元捕食種族の初出作品。
作品情報
- 原題: The Hunters from Beyond
- 執筆・発表年: 1932年発表(「ストレンジ・テイルズ・オブ・ミステリー・アンド・テラー」誌10月号)
- 再録: スミスの短編集『Lost Worlds』に収録
- 主題タグ: 生きているかのような彫刻作品、輪廻から脱落した魂を狩る存在、七体の粘土像
登場神格・用語
あらすじ
彫刻家シプリアン・シンコールの作品はまるで生きているかのような不気味な迫真性を持つが、それは想像力の産物ではなく、実際に彼が知覚するようになった異形の存在――肉眼では見えぬ次元から狩りを行う〈彼方からの狩人たち〉――の顕現であった。友人の語り手が訪ねると、シンコールは輪廻の環から脱落した狂人・狂女の霊魂を捕食するという七体の粘土像に囲まれており、モデルを務める美女マルタもその危険に巻き込まれていく。
読みどころと注目テーマ
生きているかのような彫刻という不気味な導入、肉眼では見えぬ次元からの捕食者、七体の粘土像という依り代の趣向が本作の読みどころである。彫刻家という主人公の設定は、スミス自身の経歴と静かに響き合う点でも興味深い。スミスは本作発表からおよそ3年後の1935年頃から、軟石を素材とした彫刻制作にも没頭するようになったことが知られており[2]、視覚芸術としての彫刻と言語芸術としての短編小説という、後に彼自身が実践することになる二つの表現形式のあいだに横たわる緊張関係を、この時点で先取りするように描いていたとも読める。物質に生命を吹き込む行為そのものへの恐れと魅惑は、スミスの幻想文学に繰り返し現れる主題の一つである。
執筆背景と影響
この作品自体はラヴクラフト固有の用語には言及しないが、後年ヘンリー・ハッセの「The Guardian of the Book」で〈彼方からの狩人〉がラヴクラフト/ダーレス系ミソスの正式な怪物として取り込まれ、以後リン・カーターらの作品にも波及した、CAS発案要素がミソス共有体系へ編入された典型例である。本作は1932年、編集者ハリー・ベイツが手がけた「ストレンジ・テイルズ・オブ・ミステリー・アンド・テラー」誌10月号に発表され、後にスミス自身の短編集『Lost Worlds』にも収録されている[1]。著者クラーク・アシュトン・スミス(1893年-1961年)は、もともと19歳で詩集『The Star-Treader and Other Poems』(1912年)を刊行し、キーツになぞらえられるほどの評価を得たロマン派詩人として出発した人物である[3]。1920年に発表した長編韻文詩「The Hashish Eater」を読んだラヴクラフトから届いたファンレターをきっかけに、二人は1937年のラヴクラフトの死まで15年にわたる文通友情を結び、互いの創造した地名や神格を戯れに借用し合う関係を築いた。世界恐慌下、老いた両親を養う必要に迫られた1929年、散文の執筆へと軸足を移したスミスは、1934年までの間に100編を超える短編を量産する多作期を送り[2]、本作もその時期に書かれた一編である。スミスはラヴクラフト・ロバート・E・ハワードとともに「ウィアード・テイルズ誌の三巨頭」と呼ばれるが、三人は生涯一度も直接顔を合わせることなく、もっぱら文通のみでこの共同体を築き上げた。スミスの没後、その文学的遺産は義理の息子ウィリアム・ドーマン教授が主宰するCASiana Literary Enterprisesが管理しており、本作を含む同時代作品について著作権継承者による個別の更新実例が確認されているため、本記事は冒頭の編集部注のとおりパブリックドメインと断定せず、原文からの引用を避けている。
出典
本作は著作権継承者による同時代作品の個別更新実例があり、パブリックドメインであるとは断定できないため、原文からの引用は行っていません。以下は書誌的事実についての出典です。
- [1] 本作の初出は「ストレンジ・テイルズ・オブ・ミステリー・アンド・テラー」誌1932年10月号(ISFDB Title Record #68941)。同誌はクレイトン社が1931年9月に創刊し、姉妹誌「アスタウンディング・ストーリーズ」と同じくハリー・ベイツが編集を務めた。本作は後にスミスの短編集『Lost Worlds』に収録された。— 出典: ISFDB「The Hunters from Beyond」title record, 該当ページ; Wikipedia「Strange Tales (pulp magazine)」, 該当ページ; Wikipedia「Clark Ashton Smith bibliography」, 該当ページ ↩
- [2] クラーク・アシュトン・スミス(1893年-1961年)は1929年から1934年にかけて100編を超える短編を量産する多作期を送り、1935年頃からは軟石を素材とした彫刻制作にも本格的に取り組むようになった。没後の文学的遺産は義理の息子ウィリアム・ドーマン教授が主宰するCASiana Literary Enterprisesが管理している。— 出典: Wikipedia「Clark Ashton Smith」, 該当ページ ↩
- [3] スミスは19歳で詩集『The Star-Treader and Other Poems』(1912年)を刊行しキーツになぞらえられたロマン派詩人として出発した。1920年の詩「The Hashish Eater」を機にラヴクラフトと文通を始め、1937年の同人の死まで15年間友情を続けた。スミス・ラヴクラフト・ロバート・E・ハワードは「ウィアード・テイルズ誌の三巨頭」と呼ばれるが、三人は生涯一度も直接会うことはなかった。— 出典: Wikipedia「Clark Ashton Smith」, 該当ページ ↩


