彼方からの狩人は、アメリカの作家クラーク・アシュトン・スミスが短編「彼方から狩り立てるもの」(The Hunters from Beyond、1932年発表)のために創造した、次元の狭間に潜む異形の捕食種族です。ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しない、スミス独自の創作に由来する拡張神話の存在です。
概要
スミスの原作は、彫刻家シプリアン・シンコールが手がけた七体の異様な彫像をめぐる物語です。シンコールは、肉眼では知覚できない次元に棲む「彼方からの狩人」と接触してしまい、その存在は彫像に憑依する形で具現化し、シンコールをはじめとする登場人物たちを襲います。物語は、シンコールの従兄で語り手を務める人物の視点から進行し、次第に常軌を逸していくシンコールの創作活動と身辺の異変を追う構成になっています。後年、ヘンリー・ハッセの短編「The Guardian of the Book」を経てラヴクラフト/ダーレス系のクトゥルフ神話に正式に取り込まれ、以後リン・カーターらの作品にも登場するようになりました。
基本プロフィール
- 初出作品(年): クラーク・アシュトン・スミス「彼方から狩り立てるもの」(The Hunters from Beyond、1932年発表)
- 創造者: クラーク・アシュトン・スミス(神話体系への編入はヘンリー・ハッセ以降)
- 区分: 独立種族(異次元の捕食者)
- 主な居住域: 肉眼では知覚できない別次元
- canon層: 拡張(スミスによる独立創作。ラヴクラフト自身の作品には登場しない)
別名・呼称
英名 Hunters from Beyond。原作の訳題は「彼方から狩り立てるもの」のほか「彼方からの狩人」とも訳され、本記事のタイトルにもなっている後者の訳が神話体系の呼称としては定着しています。
形態と特徴
彼方からの狩人そのものは通常、人間の肉眼では直接知覚できない存在として設定されています。原作では、彫刻家シンコールが象った粘土製の七体の彫像がその依り代となり、狩人がこの世に姿を現す際の媒体として機能します。彫像に憑依した際の姿は、常軌を逸した異形として描かれます。
性質・生態
彼方からの狩人は、輪廻転生の環から脱落した狂人・狂女の魂を狩って捕食する存在とされます。音もなく忍び寄り、獲物となった人間の正気を次第に蝕んでいくという性質を持ち、彫刻や像といった人工物に憑依・具現化することが知られています。原作では、彫刻家シンコールが手がけた七体の彫像それぞれに狩人が宿るとされ、粘土という可塑的な素材そのものが、本来知覚不可能な存在をこの世につなぎとめる依り代として機能する点が、スミス作品らしい発想として評価されています。
他の存在との関係
原作の時点では他の神格・存在との明確な結びつきは描かれていませんが、後年ヘンリー・ハッセが短編「The Guardian of the Book」でこの種族をラヴクラフト/ダーレス系のクトゥルフ神話に正式に組み込み、以後リン・カーターらの作品にも波及しました。これにより、スミスが独自の世界観で生み出した捕食種族が、クトゥルフ神話全体の中に位置づけられるようになった経緯があります。
主要登場作と読みどころ
- 「彼方から狩り立てるもの」(1932年発表): 唯一の原型となる原作。彫刻家シンコールが自らの手で象った七体の彫像に、次第に自分自身が追い詰められていく展開は、スミス作品らしい退廃的で幻想的な筆致で描かれます
- ヘンリー・ハッセ「The Guardian of the Book」以降: この作品を経て彼方からの狩人はクトゥルフ神話の正式なメンバーとして扱われるようになり、リン・カーターらの作品にも波及しました。スミス独自の創作がどのように神話体系へ吸収されていったかを追う好例です
- クラーク・アシュトン・スミスという作家: スミスはラヴクラフト、ロバート・E・ハワードと並んでWeird Tales誌の三本柱と称される作家で、詩人としての経歴を活かした濃密で装飾的な文体を特徴とします。「彼方から狩り立てるもの」も、幻想的で退廃的な語り口によって、視認できない怪物という抽象的な恐怖を具体的な情景として描き出しています
よくある誤解
Q. 彼方からの狩人はラヴクラフトが書いた存在ですか?
A. いいえ。彼方からの狩人はクラーク・アシュトン・スミスが1932年の短編「彼方から狩り立てるもの」で創造した独立した存在です。ラヴクラフト自身の作品には登場せず、後年ヘンリー・ハッセの作品を経てクトゥルフ神話に組み込まれました。
Q. 彼方からの狩人はどんな姿をしているのですか?
A. 単一の確定した姿は設定されていません。狩人そのものは肉眼で知覚できない存在とされ、原作では彫刻家シンコールが象った七体の粘土彫像に憑依する形でこの世に姿を現します。彫像に宿った際の見た目は常軌を逸した異形として描かれますが、狩人本来の「素の姿」は作中でも明確にされていません。
出典
- [1] 彼方からの狩人はクラーク・アシュトン・スミスが「彼方から狩り立てるもの」(The Hunters from Beyond、1932年発表)で創造した種族であり、ラヴクラフト自身の作品には登場しない — Clark Ashton Smith, “The Hunters from Beyond”(1932), Wikipedia: Clark Ashton Smith ↩
- [2] ヘンリー・ハッセ「The Guardian of the Book」を経てラヴクラフト/ダーレス系ミソスに編入され、以後リン・カーターらの作品にも登場する — Henry Hasse, “The Guardian of the Book”, Wikipedia: Cthulhu Mythos deities ↩
用語集にも彼方からの狩人(概略)として簡潔な解説があります。




