TRPGガイド — Where to Get Call of Cthulhu Scenarios in Japan

クトゥルフ神話TRPGのシナリオは、どこで手に入るのか

公式シナリオ集を買う、公式アプリの月額で読む、同人シナリオを探す——クトゥルフ神話TRPGのシナリオには入手経路が3つある。2026年8月に公式アプリで始まった「シナリオ・ライブラリー」と10月の料金改定を手がかりに、買って残るものと、契約している間だけ読めるものの違いを整理する。

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シナリオが無いと、セッションは始まらない

クトゥルフ神話TRPGを遊ぼうとしたとき、ルールブックだけでは足りない。その日プレイヤーが何を調べ、何に遭遇し、どこで終わるのか——つまりシナリオが要る。キーパーを引き受けた人が最初に直面するのは、たいていこの調達の問題だ。

日本語で遊ぶ場合、シナリオの入手経路は大きく3つある。公式のシナリオ集を書籍で買う、公式アプリの月額料金の中で読む、同人シナリオを探す。この3つは値段が違うだけでなく、手元に残るかどうかが違う。2026年8月、そのうちの1つに変化があった。

① 書籍のシナリオ集を買う

KADOKAWAから出ている公式のシナリオ集を買う経路が、いちばん分かりやすい。当サイトでも個別に扱っている。

この経路の性質は単純で、一度買えば読めなくならない。サービスが終わっても、契約をやめても、本は本棚に残る。卓のあいだ回し読みできるし、付箋も貼れる。

弱点は、目当てのシナリオがどの本に入っているか分かりにくいことだ。評判を聞いて名前だけ知っているシナリオが、どの巻の収録なのかを調べるところで止まりやすい。この引き当てのために「このシナリオはどの本に入っている?——公式シナリオ収録先の逆引き索引」を用意してある。

② 公式アプリの月額で読む

もう一つが、KADOKAWAの公式アプリ「クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUS」だ。ルールブックやソースブックをアプリ内で読む仕組みで、推奨環境はiOS 15以上・Android 12以上とされている[1]。

料金は段階制になっている。無料のフリープランでもクイックスタート・ルールと「一人炎に立ち向かう」「悪霊の家」が読め、以下は読める範囲が広がっていく[1]。

プラン月額(改定前)読める範囲
フリー無料クイックスタート・ルール、「一人炎に立ち向かう」「悪霊の家」
ライト480円新版ルールブック、スタートセット
ベーシック650円上記+クラシック版ルールブック
プレミアム1,000円アプリ内のすべてのブック(一部レンタル専用を除く)

対象の本を短期間だけ読むレンタルもあり、改定前は48時間300円だった[1]。

2026年8月、シナリオが月額に入った

2026年8月17日、このアプリに「シナリオ・ライブラリー for プレミアム」が加わった[2]。プレミアムプランの加入者は、追加料金なしで掲載シナリオを読める。初期ラインナップは5本で、いずれも既存の書き手による作品である[2]。

  • 超時空コンビニ(寺田幸弘)
  • 必ず戻るから(内山靖二郎)
  • 銀座の顔(内山靖二郎)
  • クラウド・ジョーズ~地獄の艦隊~(七峰きざし)
  • 七剣聖ハイド、見参!!(皐月野鷽)

専用ビューアは見出しリンク、ダイス、コピー&ペーストでキーパーを支援するとされ、入れ替えを前提にした棚として設計されているわけだ[2]。実際、8月25日には9月分として「ゾンビ薬と棺桶人間」(七峰きざし)、「ここで長く生きて」「ベキデアル」(いずれも内山靖二郎)の3本が追加され、公開期間は2026年11月30日までとされている[4]。初期5本と合わせて、この時点での掲載数は8本になる。

10月1日から料金が上がる

同じ8月17日に、価格改定も告知された。実施は2026年10月1日[3]。

プラン改定前改定後
ライト(月額)480円480円(据え置き)
ベーシック(月額)650円750円
プレミアム(月額)1,000円1,200円
プレミアム(年額)10,000円12,000円
レンタル300円 / 2日間600円 / 7日間

値上げは3つの有料プランのうち2つで、いちばん安いライトは据え置かれている[3]。レンタルは価格が倍になる一方で期間が2日から7日へ延びるため、単純な値上げとは形が違う。週末をまたいで下読みしたいキーパーには、2日より7日のほうが実際に合うだろう。

年額と月額では、改定後の差が開く

プレミアムには年額もある。改定後の数字で並べると、月額1,200円を12か月払えば14,400円、年額なら12,000円で、差は2,400円になる[3]。1年続ける見込みがあるなら年額のほうが安く、途中でやめる可能性があるなら月額のほうが損をしにくい。改定前(月1,000円×12=12,000円 対 年10,000円)の差は2,000円だったので、年額を選ぶ利点はわずかに広がる計算になる。

端末に保存できない、という条件

この経路には、書籍と決定的に違う条件が一つある。シナリオはアプリ内限定で、端末へのダウンロードはできないと明記されている[2]。

つまり読めるのは、アプリが動いていて、プランに加入している間ということになる。加入をやめたあとに何が読めなくなるのかまでは公式の告知に書かれていないため、ここでは断定しない。ただ、書籍を買う場合と条件が同じではないことは、料金を比べる前に頭に入れておいたほうがいい。

③ 同人シナリオを探す

3つ目が同人シナリオだ。日本のクトゥルフ神話TRPGは、原典を読む文化より先に、シナリオを書いて遊ぶ文化として広がってきた。2026年10月にはクトゥルフ神話TRPGだけを扱う同人即売会が開かれ、その次の回も既に予定されている。経緯は「日本のクトゥルフはなぜ「書く文化」になったのか」にまとめた。

数と多様さでは、この層が最も大きい。現代日本を舞台にしたもの、1人用、短時間で終わるもの、特定の人数に合わせたものなど、公式が出しにくい形のシナリオがここに集まる。自分で書く側に回りたくなったら「シナリオの選び方・作り方入門」から入れる。

3つの違いを、一つの表で

書籍公式アプリ同人
支払い方買い切り月額または年額作品ごとに買い切り(無料配布もある)
やめたあと残るアプリ内限定・端末保存不可[2]残る
探しやすさ収録先を調べる必要があるアプリ内で一覧できる数が多く、当たりを探す手間がかかる
品揃えの動き刊行のたびに増える入れ替えを前提。8月5本→9月8本[2][4]常時増え続ける

「所有」から「アクセス」へ動くのか

音楽や映像では、買って持つ形から、契約している間だけ聴ける・観える形への移行が進んだ。TRPGのシナリオにも同じことが起きるのか——というのは、今回の発表を見て浮かぶ問いだと思う。

ただし、現時点でそう言い切れる材料は無い。8月の5本から9月の8本へ、月3本ペースで増えてはいるが[2][4]、同人シナリオという買い切りの層は縮んでいないし、書籍のシナリオ集も出続けている。動きが起きるとすれば、この先も月3本前後のペースが続くか、それとも加速するかを見てからになる。当サイトとしては、断定せずに追いかける対象として置いておく。

はっきりしているのは、選択肢が1つ増えたことだ。これまでは「本を買う」か「同人で探す」の二択に近かったところへ、月額の中で読むという三つ目が入った。

版が違うと、そのままでは使えない

もう一つ、経路とは別に確認しておきたいことがある。クトゥルフ神話TRPGには版があり、シナリオはどれかの版を前提に書かれている。

先に挙げたシナリオ集を見ると、書名の頭で分かれている。「クトゥルフ神話TRPG シナリオ集 アカシック13」「クトゥルフ神話TRPG シナリオ集 星辰正しき刻」はクラシック版(第6版)側、「新クトゥルフ神話TRPG シナリオ集 ビブリオテーク13」「同 カタリスト9」「同 ピーターセンの忌まわしき物語」は新版側の書名である。買う前に、自分の卓がどちらで遊んでいるかを合わせておきたい。

公式アプリのベーシックプラン以上では、新版とクラシック版の両方のルールブックが読める[1]。版をまたいで確認したいときには、この点が効いてくる。第6版そのものについては「クトゥルフ神話TRPG(第6版ルールブック)」を、版がどう移り変わってきたかは「クトゥルフ神話TRPGの刊行史」を見てほしい。

どれを選べばいいか

  • 初めてキーパーをやる — まず無料で読める範囲を試すのが早い。フリープランでも「悪霊の家」が読める[1]。当日の進め方は「初めてキーパー(KP)をやる人へ」に書いた
  • これから続けるつもり — ルールブックを含めて読める範囲で選ぶと、アプリの月額が候補になる。ただし手元に残らない条件は確認しておく
  • 狙っているシナリオがある — 収録先を調べて書籍を買うのが確実。逆引き索引から辿れる
  • 公式で見つからない形を探している — 同人へ。人数・時間・舞台の条件で絞ると早い

そもそもTRPGを遊ぶこと自体が初めてなら、「クトゥルフ神話TRPGを初めて遊ぶ人へ」から読んでほしい。小説のクトゥルフ神話とTRPGの関係は「クトゥルフ神話とクトゥルフ神話TRPG——何が違うのか」で扱っている。

出典

  • [1] アプリ名称「クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUS」、提供元 KADOKAWA CORPORATION、推奨環境 iOS 15以上/Android 12以上。プラン構成(フリー/ライト480円/ベーシック650円/プレミアム1,000円)と各プランで読める範囲、48時間300円のレンタル — KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト「公式ルールブックアプリ」, product.kadokawa.co.jp ↩
  • [2] 「シナリオ・ライブラリー for プレミアム」2026年8月17日告知。プレミアムプラン加入者が追加料金なしで閲覧可。初期ラインナップ5本(超時空コンビニ/必ず戻るから/銀座の顔/クラウド・ジョーズ~地獄の艦隊~/七剣聖ハイド、見参!!)。ビューアは見出しリンク・ダイス・コピー&ペーストを備える。「シナリオの端末へのダウンロードはできません」と明記 — KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト, product.kadokawa.co.jp ↩
  • [3] 公式アプリ価格改定およびレンタルプラン期間変更、2026年8月17日告知・2026年10月1日実施。ベーシック月額650円→750円、プレミアム月額1,000円→1,200円・年額10,000円→12,000円、レンタル300円/2日間→600円/7日間。ライト月額480円は据え置き — KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト, product.kadokawa.co.jp ↩
  • [4] 2026年8月25日、9月分として「ゾンビ薬と棺桶人間」(七峰きざし)・「ここで長く生きて」(内山靖二郎)・「ベキデアル」(内山靖二郎)の3本が「シナリオ・ライブラリー for プレミアム」へ追加告知され、いずれも公開期間は2026年11月30日までとされている — KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト「【公式アプリ】9月の追加シナリオ公開!」, product.kadokawa.co.jp ↩
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