TRPGガイド

ひとりで遊べるクトゥルフ神話TRPG

クトゥルフ神話TRPGは、キーパー(ゲームマスター)役と複数のプレイヤーを集めなければ遊べないと思われがちです。実際には、キーパー不要で1人で最後まで進められる作品が公式に存在します。日本語で無料から試せるものと、英語で選べるシリーズを分けて紹介します。

公開作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「1人で遊べる」とはどういうことか

クトゥルフ神話TRPGは、キーパー(ゲームマスター)が1人、プレイヤーが複数人集まって遊ぶのが基本の形です。キーパーが場面を描写し、プレイヤーが探索者(キャラクター)を操って判断し、その結果をダイスで決める——この往復が普通のセッションの骨格になります。人を集める調整が要るぶん、「TRPGは1人では遊べない」と思っている人は少なくありません。

けれど、この骨格そのものを1人用に作り直した作品があります。キーパーの役目を、あらかじめ書かれた文章とルールが肩代わりする形式です。ページや項目に番号が振られていて、「Aを選べば12へ、Bを選べば27へ」というように読み進める、いわゆるゲームブックに近い作り方をします[1]。プレイヤーは自分で探索者を動かし、判定が必要な場面ではダイスを振り、その結果に応じて指示された先の項目へ進みます。会話も演技も要らず、対面する相手もいらないぶん、思い立ったときにすぐ始められます。

この形式を指して、Chaosiumは自社の1人用アドベンチャーを「ソロアドベンチャー(solo adventure)」と呼んでいます。この記事でも、キーパーがまったく要らない作品を「ソロ」、キーパー役の人間が1人だけ必要な形式(デュエット)とはっきり区別して呼びます。両者の違いは記事の後半で改めて整理します。

まず無料で試せるもの——「一人炎に立ち向かう」

日本語でいちばん手軽に試せるのが、「一人炎に立ち向かう」です。KADOKAWAが配信している公式アプリ「クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUS」の無料プランに含まれています[1]。

入手の手順は次のとおりです。

  1. スマートフォンまたはタブレットに「クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUS」をインストールする。対応環境はiOS 15以上、Android 12以上です[1]。
  2. アプリを起動し、無料プランのまま利用を始める。ダウンロード自体に料金はかかりません[1]。
  3. 無料プランで読める「クイックスタート・ルールパック」を開く。この中に、「クイックスタート・ルール(短編シナリオ付)」、1人用シナリオの「一人炎に立ち向かう」、シナリオ「悪霊の家」の3点が入っています[1]。
  4. 「一人炎に立ち向かう」を選んで読み進める。

有料プランはライト(月額480円)、ベーシック(月額650円)、プレミアム(月額1,000円。アプリ内の全ブックが読み放題)の3段階と、48時間300円のレンタルが用意されていますが、この1人用シナリオを試すだけなら無料プランの範囲で完結します[1]。

このシナリオの原語版はChaosiumが刊行する『Alone Against the Flames』です。Chaosium自身、このシナリオを「無料でダウンロードでき、遊びながらCall of Cthulhuのルールを覚えられるもの(“a free download, and teaches you the rules of Call of Cthulhu as you play through it”)」と紹介しています[2]。ルールを先に覚えてから遊ぶのではなく、遊びながらルールに慣れていく作りなので、「クトゥルフ神話TRPGとは」を読んだばかりの人が最初の1本として選ぶのに向いています。

遊ぶのに何が要るか

ソロアドベンチャーは作品ごとに、遊ぶのに必要なものが少しずつ違います。「一人炎に立ち向かう」はアプリの中でルールを覚えながら進められるので、別途ルールブックを買わなくても始められます。

一方、Chaosiumが英語で出しているソロアドベンチャーの多くは、「ルールをすでに知っている、あるいは手元にルールブックがある」ことを前提にしています。例えば『Alone Against the Dark』は、Call of CthulhuのKeeper Rulebook(キーパー用ルールブック)を用意し、鉛筆とロールプレイング用のダイスを添えて遊ぶ作品です[4]。『Alone Against the Tide』もKeeper RulebookかStarter Set(スターターセット)のどちらかに加えて、ダイスと鉛筆を要求します[5]。『Alone Against the Frost』も同様に、Call of CthulhuのRulebookかStarter Setのどちらかが要ります[6]。つまり、シナリオ単体では完結せず、ルールブック(またはスターターセット)が「読み手側の道具」として必要になる作品が多いということです。

「探索者の作成」や「正気度(SAN)の仕組み」を先に読んでおくと、こうした作品を読み進める際の負担が軽くなります。

英語で選べるもの——Chaosiumの「Alone Against」シリーズ

Chaosiumは英語で、1人用アドベンチャーを何本も刊行しています。ここでは、公式の商品ページで内容を確認できたものだけを挙げます。日本語版の有無には触れません。

Alone Against the Static

1990年代初頭、米国ダコタ・ブラックヒルズを舞台にした作品です[3]。著者はB. W. Holland、ページ数は104ページ[3]。「1人用に設計されており、キーパーは不要(“designed for a single player—no Keeper required!”)」と商品ページに明記されています[3]。Call of CthulhuのKeeper RulebookかStarter Setのどちらかと組み合わせて遊ぶ設計です[3]。2024年のENNIE Awardsでベストライティング部門(Gold)、ベストアドベンチャー・ロングフォーム部門(Silver)を受賞しています[3]。PDF版が14.99ドル、ハードカバー版も別途用意されています[3]。

Alone Against the Dark

1931年秋を舞台に、ニューヨークから始まりギリシャ、エジプト、ドイツ、南極へと展開していく作品です[4]。著者はMatthew J. CostelloとMike Mason、ページ数は102ページ[4]。Chaosiumの公式ブログは、この作品について「テンポの速い、地球規模の展開を最初から貫くアドベンチャー(“a high-octane, globe-spanning adventure that promotes its relentlessness from the get go”)」というRPG.netの評を引いています[2]。

Alone Against the Tide

マサチューセッツ州の湖畔の町エズベリー(Esbury)を舞台にした作品で、2020年刊行、ページ数は86ページです[5]。著者はNicholas Johnson[5]。Chaosiumのブログでは「当社の最新のソロアドベンチャー(“Our latest solo adventure is Alone Against the Tide”)」と紹介されています(2020年12月27日付のブログ記事の時点での表現です)[2]。

Alone Against the Frost

1920年代、カナダ北西部準州(Northwest Territories)のNorth Hanninah渓谷を舞台にした作品です[6]。著者はGlenn RahmanとGavin Inglis、ページ数は120ページ[6]。ソフトカバー版を購入するとPDF版が無料で付いてきます[6]。Chaosiumの公式ブログは、この作品を「Alone Against the Frost is the best solo adventure new Chaosium has published up to now」と評したRPG.netのレビューを引用しています[2]。

いずれも、まず手元にルールブックかスターターセットがあることが前提になる点は共通しています。

ソロとデュエット、何が違うのか

ここまで紹介した作品は、いずれも1人で最後まで完結します。相手を探す必要がありません。

これに対して、キーパー役の人間が1人だけ必要な形式があります。Chaosiumが刊行する『Does Love Forgive?』は、「キーパー1人とプレイヤー1人のための、1対1のCall of Cthulhuアドベンチャー集(“a collection of one-on-one Call of Cthulhu adventures, for one Keeper and one Player”)」と説明されています[2]。プレイヤーは1人で参加できますが、進行役であるキーパーがもう1人必要です。読み物として1人で完結するソロアドベンチャーとは、ここが決定的に違います。

同じくデュエット形式にあたるのが、GUMSHOEシステムを使った『Cthulhu Confidential』です。当サイトでも紹介記事を公開しているとおり、こちらもキーパー役とプレイヤー役が1対1で向き合う遊び方で、ソロプレイとは別の枠に入ります。

「1人で遊べるクトゥルフ神話TRPGを探している」場合、相手を探さずに完結するのはソロアドベンチャーのほうです。デュエット作品は、キーパー役を引き受けてくれる相手が1人見つかったときの選択肢として覚えておくとよいでしょう。

そのあとどこへ進むか

ソロアドベンチャーで探索者の動かし方やダイスの振り方に慣れたら、次は普通のセッションに目を向ける番です。「クトゥルフ神話TRPGとは」や「TRPGとは」で全体像を押さえ、「どのクトゥルフ神話TRPGから始める?」でどの版・どの形式が自分に合うかを確認するのが順当な流れです。

キーパーを探す、あるいは自分がキーパーを引き受けるハードルが高いと感じる場合は、まず『Cthulhu Confidential』のようなデュエット作品で「相手が1人だけ」の状態に慣れてから、複数人のセッションに進む道もあります。人を集める前に、「探索者の作成」や「正気度(SAN)の仕組み」を読んでおけば、実際のセッションで戸惑う場面を減らせます。シナリオの入手先を知りたくなったら、「シナリオはどこで手に入るか」にまとめてあります。

版元のケイオシアムとKADOKAWAについても、それぞれ紹介記事を公開しています。

関連記事

出典

  • [1] クイックスタート・ルールパックの内容について「クイックスタート・ルール(短編シナリオ付)と1人用のシナリオが無料で閲覧できます」「※ダウンロードは無料です。無料プランでも「クイックスタート・ルールパック」(クイックスタート・ルール+一人向けシナリオ「一人炎に立ち向かう」+シナリオ「悪霊の家」)がダウンロードできます」。対応環境について「推奨環境:iOS15以上 Android 12以上」。料金プランはライト月額480円、ベーシック月額650円、プレミアム月額1,000円(アプリ内のすべてのブックが読み放題)、48時間レンタル300円 — 「クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUS」(KADOKAWA公式アプリ紹介ページ、2026年9月15日確認), KADOKAWA クトゥルフ神話TRPG公式サイト ↩
  • [2] Alone Against the Flamesについて「a free download, and teaches you the rules of Call of Cthulhu as you play through it」。Alone Against the Tideについて「Our latest solo adventure is Alone Against the Tide」。Alone Against the Darkについて「a high-octane, globe-spanning adventure that promotes its relentlessness from the get go」。Does Love Forgive?について「a collection of one-on-one Call of Cthulhu adventures, for one Keeper and one Player」 — Michael O’Brien「Staying In? Try our Solo Call of Cthulhu adventures」(Chaosium公式ブログ、2020年12月27日付、2026年9月15日確認), Chaosium公式サイト ↩
  • [3] 「_Alone Against The Static_ is designed for a single player—no Keeper required!」。舞台について「Set in the Dakota Black Hills in the early 1990s」。著者「B. W. Holland」、ページ数「Page Count: 104」。必要なものについて「It is designed for use with either the Call of Cthulhu Keeper Rulebook or the Call of Cthulhu Starter Set.」。受賞歴について2024 ENNIE Awardsで「WINNER – BEST WRITING (Gold)」「WINNER – BEST ADVENTURE – LONG FORM (Silver)」 — Chaosium「Alone Against the Static – PDF」商品ページ(2026年9月15日確認), Chaosium公式サイト ↩
  • [4] 舞台について「the fall of 1931」から始まり「New York City to Greece, Egypt, Germany, and Antarctica」へと展開する。著者「Matthew J. Costello, Mike Mason」、ページ数「102」ページ — Chaosium「Alone Against the Dark」商品ページ(2026年9月15日確認), Chaosium公式サイト ↩
  • [5] 舞台について「a remote lakeside town」であるマサチューセッツ州「Esbury」。著者「Nicholas Johnson」、ページ数「86」ページ。刊行年2020年。必要なものについて「Call of Cthulhu Starter Set」または「Keeper Rulebook」に加えて「some dice and pencils」 — Chaosium「Alone Against the Tide」商品ページ(2026年9月15日確認), Chaosium公式サイト ↩
  • [6] 舞台について1920年代のカナダ、Northwest TerritoriesのNorth Hanninah valley。著者「Glenn Rahman, Gavin Inglis」、ページ数「120」ページ。必要なものについて「Armed with a pencil, some roleplaying dice, and a copy of the Call of Cthulhu Rulebook or the Call of Cthulhu Starter Set, you are ready to brave the remote wilderness as one of MU’s youngest ever professors!」。ソフトカバー購入時にPDF版が無料で付属する旨の記載あり — Chaosium「Alone Against the Frost」商品ページ(2026年9月15日確認), Chaosium公式サイト ↩
この記事だけでは物足りない方へ
この記事だけでは物足りない方へ
初めての方への紹介書籍 表紙
初めての方へ

固有名詞を覚えるのがまだ大変なら、神格・怪物をイラストと生息地図でやさしく紹介するこちらから。

『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』をAmazonで見る ↗
もっと詳しく知りたい方への紹介書籍 表紙
もっと詳しく知りたい方へ

神格・用語を横断的に調べたいなら、東雅夫による定番の事典が一冊で頼りになります。

『クトゥルー神話大事典』をAmazonで見る ↗

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました