概要
『Cafe DReAMLAND』は、個人ゲーム開発者のめとこ氏が開発し、ツクールシリーズで知られるGotcha Gotcha Gamesがパブリッシングを手がけたアドベンチャーゲームです。2025年4月30日にSteamで配信が開始されました(税込1,500円、オリジナルサウンドトラックも同時リリース)。公式ジャンルは「不思議で冒涜的なクトゥルフ神話リスペクトADV」。舞台は純喫茶「夢ノ島」で、店員のヤツメの仕事は、ちょっぴり冒涜的な「願いを叶えるドリンク」を作ること。一癖も二癖もある不思議な「お客様」たちの望みをドリンクで叶えながら日々を過ごすうち、ある人物の来店をきっかけに、店に隠された秘密と世界の真実へと物語が動き出します。ゲームはカフェシミュレーション×探索×マルチエンディングの構成で、どのドリンクを提供するかというプレイヤーの選択が物語の結末を変化させます。作者のめとこ氏は、フリーゲーム『HELLO, HELLO WORLD!』や『NOIR:NOAH』を手がけた作り手として知られています。
クトゥルフ神話との関係
本作の神話要素は「リスペクト」という言葉に集約されています。ストアページでは、クトゥルフ神話をリスペクトした作品であるものの原作や原作の登場人物、関連するテーブルゲームとの直接的な関係はなく、神話を知らなくても遊べることが明言されており、引用の正確さよりも雰囲気とモチーフの再解釈で勝負するタイプの作品です。とはいえ随所の意匠は神話ファンへの目配せに満ちています。店名の「夢ノ島」とタイトルのDReAMLANDは、ラヴクラフトが『未知なるカダスを夢に求めて』などで描いたドリームランド(幻夢境)を想起させる言葉選びですし、記憶を呼び覚ます「ラブ・クラフトコーラ」のように、作家の名を織り込んだ言葉遊びのメニューも登場します。「願いを叶える」という甘い看板の裏に冒涜的な代償の気配を漂わせる構成は、望みと引き換えに人ならざるものへ近づいていく神話作品の交渉譚の系譜を、喫茶店のカウンター越しに再演するものといえます。
独自の要素・原典との違い
かわいらしい画面と喫茶店という日常空間に、死や精神疾患、架空の宗教といった重いモチーフを同居させる作風は、めとこ氏の過去作から一貫する「ポップと退廃の二層構造」の延長線上にあります。原典の恐怖が未知との遭遇の瞬間に爆発するのに対し、本作の不穏さはドリンクを一杯ずつ作る繰り返しの中にゆっくりと沈殿していくタイプで、シミュレーションの手触りと物語の浸蝕が一体化している点が独特です。また登場人物について作者自身が「性別が全体的に胡乱」と語るなど、キャラクター描写の掴みどころのなさそのものを魅力として設計しているのも本作らしいところです。血液などのグロテスク表現やグリッチ演出を含むため苦手な方は注意が必要ですが、恐怖よりも「不思議で少し不吉な読後感」を求める人に合う一本であり、同作者の『HELLO, HELLO WORLD!』『NOIR:NOAH』を経てから遊ぶと、作家性の変奏としても楽しめる作品です。




