TRAIL OF CTHULHUサプリメント — Bookhounds of London

Bookhounds of London

Pelgrane Pressがケネス・ハイトの執筆で刊行した『トレイル・オブ・クトゥルー』のキャンペーン設定集。1930年代ロンドンで稀覯本を追う調査員「Book-Hounds」を描き、200か所以上のロケーションを収めた街区地図と新規アビリティ、書き下ろしシナリオ「Whitechapel Black-Letter」を収録する。2011年のENnie Awardsでカートグラフィー部門の銀賞を、Golden Geek Awardsでベスト・サプリメント部門を受賞した。

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概要

『Bookhounds of London』は、英国Pelgrane Pressが刊行するトレイル・オブ・クトゥルーのキャンペーン設定集である。著者はケネス・ハイト、表紙イラストはジェローム・ユグナン(Jérôme Huguenin)が手がけている[1]。公式商品ページのAuthors欄には「Kenneth Hite」とのみ記載されており、当サイトが確認した範囲では単著として扱われている[1]。ページ数は184ページ、印刷版+PDFまたはPDF単体の2形態で販売されている[1]。

公式ページの商品紹介は、本作をこう要約する。

“An Ennie- and Golden Geek-award-winning supplement for Trail of Cthulhu.”(訳:『トレイル・オブ・クトゥルー』向けの、ENnie賞・Golden Geek賞受賞サプリメント)[1]

舞台は1930年代のロンドン。稀覯本や禁断の書物を追ううちに、探索者自身が神話の恐怖へ引き込まれていく、という設定である。

どんな作品か

公式ページは、本作の内容を次のように説明している。

“Bookhounds of London is a brand new campaign setting for Trail of Cthulhu, packed with period detail, where the Investigators seek out books about horror and strangeness and become, seemingly inevitably, drawn into the horror themselves. It provides in-depth material on London in the 1930s, carefully slanted towards Mythos investigators.”(訳:『Bookhounds of London』は『トレイル・オブ・クトゥルー』向けの、時代考証を詰め込んだ新しいキャンペーン設定である。探索者たちは恐怖と怪異にまつわる書物を追い求めるうち、ほとんど必然のように、その恐怖自体に引きずり込まれていく。1930年代のロンドンについて、神話の調査員向けに周到に傾けた詳細な資料を提供する)[1]

探索者(PC)の立ち位置についても、公式ページは独特の言い回しで説明している。

“The PCs aren’t stalwart G-men or tweedy scholars exploring forbidden frontiers. Instead, they acquire maps (and maybe guidebooks) to those forbidden frontiers from fusty libraries and prestigious auction houses. They are Book-Hounds, looking for profit in mouldy vellum and leather bindings, balancing their own books by finding first editions for Satanists and would-be sorcerers.”(訳:探索者たちは、禁断の辺境を探る屈強な捜査官でも、ツイードを着た学者でもない。代わりに彼らは、かび臭い図書館や権威ある競売会から、その禁断の辺境への地図[やガイドブック]を手に入れる者たちだ。彼らはBook-Hounds――かび臭い羊皮紙や革装丁から利益を求め、悪魔崇拝者や似非魔術師志望者のために初版本を探し出すことで、自分自身の帳簿の収支を合わせている)[1]

つまり本作の探索者は、怪異と直接戦う捜査官ではなく、古書業界という生業を通じて神話に接近していく「本の狩人」として設計されている。

収録内容として、公式ページは次を挙げている[1]。

  • 1930年代ロンドンの街並みを再現した、独自の街区索引付きフルカラー地図32点と、主要建造物の見取り図
  • 200か所以上のロケーション、人脈、噂話を収めた、神話寄りに脚色されたロンドンの街区資料
  • 「Document Analysis(文書鑑定)」「Auction(競売)」「Forgery(偽造)」といった新規アビリティ、新しい職業(Occupations)とDrives
  • 新規の神話生物のステータス一式
  • 書き下ろしシナリオ「Whitechapel Black-Letter」

このシナリオについて、公式ページは次のように紹介している。

“Whitechapel Black-Letter, a brand new adventure which takes Bookhounds through the bleak East End of London on the trail of a powerful 15th century grimoire.”(訳:「Whitechapel Black-Letter」は書き下ろしの冒険シナリオで、Book-Houndsたちを、強力な15世紀の魔導書の足跡をたどりながら、荒涼としたロンドン東部(イースト・エンド)へと導く)[1]

さらに公式ページは、街区地図についてこう補足している。

“Bookhounds of London also features a complete, indexed street map of London, recreated and adapted from original sources, packed with over 200 locations essential to Investigators.”(訳:『Bookhounds of London』はまた、原資料をもとに再現・翻案した、完全な索引付きのロンドン街区地図を備えている。探索者に不可欠な200か所を超えるロケーションが詰め込まれている)[1]

架空の職業・アビリティ・神話生物の設定に、実在した1930年代ロンドンの街区資料を重ね合わせた、「古書商」という生業に寄せたキャンペーン設定であることがうかがえる。

評価と受賞歴

公式ページの見出し文が示すとおり、本作は複数の賞に関わっている。ただし、どの賞で「受賞」し、どの賞で「ノミネート止まり」だったかは、賞ごとに公式資料へ当たって確かめる必要がある。

まずカートグラフィー(地図・図版)について、公式ページはこう明記している。

“The cartography in Bookhounds won a silver ENnie award.”(訳:『Bookhounds』のカートグラフィーは、ENnie賞の銀賞を受賞した)[1]

これをEN World主催のENNIE Awards公式サイトが公開している「2011 Nominees and Winners」で照合すると、Best Cartography部門で”Bookhounds of London” (Pelgrane Press)がSilver Winner(銀賞)として記載されている[3]。一方、同じ2011年のBest Setting部門にも”Bookhounds of London”の名前があるが、こちらはSilver Winnerでも Gold Winnerでもなく、Honorable Mention(次点・栄誉言及)としての掲載にとどまっている[3]。つまり本作がENnie Awardsで実際に「受賞」したと公式に確認できるのは、Best Cartography部門の銀賞のみである。

Golden Geek Awardについては、Pelgrane Press公式ブログの2011年の記事に、次の発表がある。

“Bookhounds of London has won the prestigious Golden Geek Award 2011 for Best RPG Supplement. Armitage Files was a runner up against stiff competition from Jason Morningstar’s excellent Fiasco Companion.”(訳:『Bookhounds of London』は、権威あるGolden Geek Award 2011のBest RPG Supplement部門を受賞した。『Armitage Files』は、ジェイソン・モーニングスターの秀作『Fiasco Companion』という激しい競争を制した本作に次ぐ次点だった)[2]

版元自身の発表であり、部門・受賞年ともに明記されていることから、この受賞は公式資料で裏取りできたと判断できる。

まとめると、本作の受賞歴は「ENnie Awards 2011・Best Cartography部門 銀賞」「Golden Geek Award 2011・Best RPG Supplement部門 受賞」の2件であり、公式ページの見出し文「ENnie- and Golden Geek-award-winning」は、この2件を指した表現だと確認できる。ENnie AwardsのBest Setting部門については、受賞ではなく次点(Honorable Mention)だった点を区別して書いておく。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

本作が扱う「禁断の書物」「神話生物」といった題材そのものは、H・P・ラヴクラフトの原典に由来する。だが本作の骨格――古書商という職業を軸にした調査、Document AnalysisやAuction、Forgeryといったアビリティ、街区地図という形式でのロンドン再現――は、ラヴクラフトの作品のどこにも存在しない。GUMSHOEシステムを土台にしたトレイル・オブ・クトゥルーの追加設定として、TRPGによる神話拡張という第三層に位置づけられる作品である。GUMSHOEの設計思想については、当サイトの「GUMSHOEシステムとは」にまとめてある。

禁断の書物というテーマそのものは、ネクロノミコンをはじめとする原典の魔導書群と地続きの主題だが、本作はそれを収集・鑑定・偽造・競売という、稀覯本業界の実務に沿ったゲームメカニクスへ翻案している点が特徴である。公式ページが挙げる「Document Analysis(文書鑑定)」「Auction(競売)」「Forgery(偽造)」という3つの新規アビリティは、いずれも従来のCall of Cthulhu系TRPGが得意とする「発見と解読」の延長にはなく、古書という商品の真贋・出所・市場価値を扱う業界実務そのものをゲームの手続きに落とし込んだ点で独自性がある。探索者を「怪異と直接戦う捜査官」ではなく「利益のために危険な書物を扱う商人」として設計する発想は、GUMSHOEシステムが標榜する「手がかりを見逃さない」設計思想と、稀覯本という商材の性質――真贋の不確かさ、来歴の追跡、闇市場との近さ――を組み合わせたものと見ることができる。著者ケネス・ハイトについては、当サイトの人物記事を参照してほしい。

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出典

  • [1] Pelgrane Press Ltd「Bookhounds of London」商品ページ(取得日 2026-09-20) — https://pelgranepress.com/product/bookhounds-of-london/ ↩
  • [2] Pelgrane Press Ltd「Bookhounds of London wins Golden Geek Award」(2011年、Simon Rogers)(取得日 2026-09-20) — https://pelgranepress.com/tag/bookhounds-of-london/page/2 ↩
  • [3] ENNIE Awards公式「2011 Nominees and Winners」(取得日 2026-09-20) — https://ennie-awards.com/portfolio-item/2011-nominees-and-winners/ ↩

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