TRPG — Trail of Cthulhu

暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版

GUMSHOEシステムにより「手掛かりの取りこぼし」を排除した、調査特化型のホラーTRPG。

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概要

『トレイル・オブ・クトゥルー』(Trail of Cthulhu)は、英国Pelgrane Pressが刊行する、GUMSHOEシステムを動力源とする調査ホラーTRPGである。Chaosiumからのライセンスのもとで制作されており、デザインはケネス・ハイトが手がけた[1]。日本では、グループSNEと新紀元社が『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』として2023年8月29日に刊行している[3]。英語版の初版は、2026年9月18日時点で公式サイトに「3回目の増刷を数え、5つの言語で展開中」と紹介されている[1]。

本作が向き合っている課題は、公式ページの一文に集約されている。

“Trail of Cthulhu is designed for investigative play: the challenge is in interpreting clues, not finding them.”(訳:『トレイル・オブ・クトゥルー』は調査プレイのために設計されている。挑むべきは手がかりを「見つける」ことではなく、「読み解く」ことにある)[1]

調査ものにつきまとう、手がかりを取りこぼして物語が進まなくなる「詰み」を、ルールの土台から取り除く。その仕組みと、日本語版・第2版それぞれの現状を、以下の見出しで追う。

GUMSHOE——手がかりは「見つける」のではなく「読み解く」

GUMSHOEは、本作のシステムを設計したロビン・D・ロウズによる、調査プレイに特化した汎用ルールである。グループSNE公式サイトは「ガムシューシステムと名づけられた調査や推理に特化した汎用ルール」と紹介し、その核心をこう説明する。

適切な技能を使うか、適切な行動をとれば手がかりを取りこぼすことはありません。しかし、情報をいかに使いこなし、事件を解決するかはあなた次第![3]

Pelgrane Press自身も、第2版の紹介ページで同じ設計思想を次のように書いている。

“The revolutionary GUMSHOE rules system, by award-winning designer Robin D. Laws, speeds and streamlines play, ensuring that, as your characters plunge into Stygian subways, infiltrate forbidden libraries, and explore frigid Antarctic labyrinths, they always get the clues they need to move ever onward.”(訳:受賞歴のあるデザイナー、ロビン・D・ロウズによる革新的なGUMSHOEルールシステムは、プレイを迅速かつ滑らかに進める。キャラクターたちが冥府のような地下鉄に潜り、禁断の図書館へ忍び込み、凍てつく南極の迷宮を探索する間も、物語を前へ進めるために必要な手がかりを、常に手にできるようにするためだ)[2]

技能判定は「手がかりが手に入るかどうか」を左右しない。該当する技能を持っていれば手がかりそのものは自動的に得られ、判定はそこから先——どれだけ深く読み解けるか、どれだけ有利に立ち回れるかに使われる。探索者が謎に詰まって卓が止まる事態を、ゲームデザインの側からあらかじめ排除した仕組みである。

PulpとPurist、2つの遊び方

本作には、プレイの手触りを切り替える2つのモードが用意されている。公式ページはこう紹介する。

“Two modes of play: Pulp (for the “desperate action” feel of Robert E. Howard or Indiana Jones ) and Purist (full of philosophical horror and cosmic dread)”(訳:2つのプレイモード。Pulp[パルプ]はロバート・E・ハワードや『インディ・ジョーンズ』のような「切羽詰まった行動」の感覚を、Purist[純粋主義]は哲学的な恐怖と宇宙的な戦慄に満ちた感覚を、それぞれ志向する)[1]

第2版の紹介ページも、この2つをこう言い換えている。

“The Purist style drives you toward stories of philosophical horror and cosmic dread in Lovecraft’s starkest style, while the Pulp style offers the lurid, desperate action feel of Robert E. Howard and Indiana Jones.”(訳:Puristスタイルは、ラヴクラフトの最も苛烈な作風に沿う、哲学的な恐怖と宇宙的な戦慄の物語へとプレイヤーを導く。一方Pulpスタイルは、ロバート・E・ハワードや『インディ・ジョーンズ』のような、扇情的で切羽詰まった行動の感覚を提供する)[2]

Puristは、探索者が旧支配者の前で無力であり続ける、原典に近い絶望を志向したモードである。Pulpは、戦って切り抜ける活劇寄りのモードとなる。同じルールブック・同じGUMSHOEシステムのまま、卓ごとにどちらの手触りで遊ぶかを選べる設計になっている。

Drives——「見なかったことにして帰らない」理由を作る

調査ホラーには、もうひとつ古くからの弱点がある。公式ページはそれを率直に言葉にしている。

“A Drives mechanic that addresses the perennial horror RPG question, “Why don’t we just forget we saw anything, and go home where it’s safe?””(訳:「見なかったことにして、安全な家に帰ればいいのでは?」という、ホラーRPGにつきまとう問いに答えるDrivesという仕組み)[1]

探索者がなぜ危険を承知で調査を続けるのか、その動機をキャラクター作成の段階で言語化し、ルールに組み込んだのがDrivesである。第2版の紹介ページでは、この要素がさらに拡充されることが予告されている。

“Over a dozen compelling Drives help you explain why your character is going into that crypt at night.”(訳:10種類を超える説得力のあるDrivesが、あなたのキャラクターが夜な夜な地下墓地へ足を運ぶ理由を説明してくれる)[2]

あわせて公式ページは「Innovative rules for sanity and stability」(サニティとスタビリティに関する革新的なルール)[1]も本作の特徴として挙げている。サニティ(正気度)が長期にわたる精神の摩耗を、スタビリティ(安定度)が目の前の恐怖に対する一時的な動揺を、それぞれ別の数値として扱う設計であり、Drivesと組み合わさることで、探索者が調査を続ける動機を、プレイヤーの演技力だけに頼らずルール側から支える構造になっている。

日本語版『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版』

日本語版は、グループSNE公式サイトに次の書誌が掲載されている[3]。

  • 著:ケネス・ハイト
  • 監修:安田均・森瀬繚
  • 翻訳:トレイル・オブ・クトゥルー翻訳チーム
  • 発売日:2023年8月29日
  • 定価:4,950円(4,500円+税)
  • 発行:グループSNE / 発売:新紀元社
  • ISBN:9784775321140

公式サイトには、この「改訂版」の位置づけについて次の但し書きがある。

※本書は2020年12月に書苑新社より発売された書籍を、発売元を変更して刊行したものです。[3]

つまり2023年の改訂版は、まったくの新版ではない。2020年12月に書苑新社から出た日本語版を、発売元をグループSNE・新紀元社へ切り替えて刊行し直したものである。公式サイトはサポート情報として、エラッタ・訳語の変更(最終更新2022年5月12日)、FAQ(最終更新2021年7月2日)、クイックスタートルールと探索者用サンプルシートのPDF配布、そして『GMウォーロックVOL.2』に掲載された翻訳シナリオ「タイタニック号の悪夢」を挙げている[3]。関連書籍としては『アーカム探偵奇譚』『トレイル・オブ・クトゥルー・ジャパン』『宇宙の彼方より』『最後の黙示』の4作が並ぶ[3]。監修者のひとり森瀬繚については、当サイトの記事にまとめてある。版元Pelgrane Pressの社史は別記事にあるため、本稿では繰り返さない。

第2版で何が変わったか

Pelgrane Pressは、英語版の第2版を進めている。公式サイトの第2版ページは、2026年9月18日時点で「COMING SOON!」「PREORDER ON BACKERKIT NOW」と案内しており、クラウドファンディング・予約受付の段階にある。無料の第2版クイックスタートガイドは、このページからすでに配布されている[2]。

同ページは、第2版で加わる要素として次を挙げている[2]。

  • フルカラーになったコアルールブック
  • 10種類を超えるDrives(前述)
  • FBI捜査官から浮浪者、科学者まで、幅広い切り口で神話に挑める20種類の職業(Occupations)
  • 3つのキャンペーン・フレーム:ミスカトニック大学の学究として世界の暗部へ分け入る「Armitage Inquiry」、見知らぬ隣人が怪異と化す小さな町を描く「Beneath Unknown Skies」、トミーガンを手に神話と渡り合う「Shadows Under Chicago」
  • ナチスが太古の遺物へ迫るのを阻止する「The Hammer of the Gods」と、惨事に終わった降霊会の灰を調べる「Afterlight」、2本の導入シナリオ

同ページは、第2版が初版と完全な互換性を持つことも明記している。

“The Second Edition is wholly compatible with the original edition and its wealth of award-winning supplements”(訳:第2版は、初版および数々の受賞サプリメント群と完全に互換性がある)[2]

初版は2008年の発売以来、こうした評価を積み重ねてきた。第2版の紹介ページによれば、初版は「2008年にENWorld Awardsのベストルール賞とベストライティング賞の2部門を受賞し、2010年にはルッカ・ゲームズ・フェスティバルでベスト・ロールプレイングゲーム賞とBest of Show賞を受けた」[2]。通常の製品ページでは同じ受賞歴が「two ENnie awards for Best Rules and Best Writing」という表記で紹介されているが[1]、ENnie AwardsはEN World主催の賞の通称であり、これは同じ受賞を別の言い方で書いたものである。第2版は、この実績を土台にしたルールの整理と要素の追加として案内されている。

舞台は1930年代——原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

本作が描くのは、ラヴクラフト作品の舞台となった1930年代そのものである。公式ページは、その時代性を次のように表現している。

“…bring their cosmic malignity forward into the 1930s—a time when the creeping madness of the Great Old Ones intermingles with the sweeping cruelty of global totalitarianism.”(訳:旧支配者たちの、じわじわと広がる狂気の気配と、世界を覆う全体主義の容赦ない残酷さが交錯する時代——1930年代へと、宇宙的な悪意を運んでくる)[1]

旧支配者や神話生物、禁断の書物といった題材そのものは、ラヴクラフトの原典に由来する。だが本作は、その題材をChaosiumからのライセンスのもとGUMSHOEというゲームシステムに組み替えた作品であり、TRPGによる神話拡張の系譜に位置づけられる[1]。原典/ダーレス以降の拡張/TRPGによる拡張という三層の整理については、当サイトの別記事にまとめてある。Pulp/Purist、Drives、サニティとスタビリティといった仕組みは、原典のどのページにも存在しない、この作品固有のゲームデザインである。

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出典

  • [1] Pelgrane Press Ltd「Trail of Cthulhu」(取得日 2026-09-18) — https://pelgranepress.com/trail-of-cthulhu/ ↩
  • [2] Pelgrane Press Ltd「Trail of Cthulhu Second Edition」(取得日 2026-09-18) — https://pelgranepress.com/trail-of-cthulhu-second-edition/ ↩
  • [3] 株式会社グループSNE「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版」(取得日 2026-09-18) — https://www.groupsne.co.jp/products/ToC/index.html ↩

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