TRPG(GUMSHOEシステム・全4冊+GMスクリーン) — The Yellow King Roleplaying Game

The Yellow King Roleplaying Game

原題は『The Yellow King Roleplaying Game』(読み:ザ・イエロー・キング・ロールプレイング・ゲーム)。日本語版は本稿執筆時点で確認できていない。Pelgrane Press(ペルグレイン・プレス)がロビンD.ロウズを著者に迎え、ロバート・W・チェンバース『黄衣の王』を土台に据えたGUMSHOE系TRPG。ベル・エポックのパリ、1947年の欧州戦争、その戦後、そして「今のこの世界」という4つの時代・現実にまたがる4冊構成で、キャラクター作成を通じて4つの舞台をまたぐ点が最大の特徴。

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英語版、4冊組のスリップケース入りです。

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概要

『The Yellow King Roleplaying Game』(略称YKRPG。読みはザ・イエロー・キング・ロールプレイング・ゲーム。当サイトの試訳では「黄衣の王ロールプレイングゲーム」ほどの意味だが、日本語版は本稿執筆時点(2026年9月)で確認できていない)は、英国のPelgrane Press(ペルグレイン・プレス[8])が発売しているTRPGで、著者はGUMSHOEシステムの考案者であるロビン・D・ロウズ[1]、発行元はPelgrane Press共同経営者のサイモン・ロジャースとキャスリオナ・トビンである[4]。カバーイラストはAaron Aurelio Acevedo、Dean Engelhardt、Melissa Gay、Shel Kahn、Christian Knutsson、Jessica TC Leeの6名が手がけている[1][5]。本稿執筆時点(2026年9月)の公式商品ページによれば、価格はPDF単体からプリント&PDFセットまでの幅で44.95ポンドから81.95ポンド、SKUはPELGY01-Pで、商品カテゴリは「The Yellow King」と登録されている[1]。

原作は、ロバート・W・チェンバースが1895年に発表した連作短編集『黄衣の王』である[1]。読んだ者を狂わせる禁断の戯曲「黄衣の王」と、それを操るとされる存在「黄衣の王」、そして異星カルコサをめぐるこの原作の設定を土台に、YKRPGは全4冊の完全カラーハードカバー本を一つのスリップケースに収め、別売ではなく同梱の専用GMスクリーンとともに提供する[1]。4冊はそれぞれ独立した時代・現実を舞台とし、キャラクター作成のルールが4冊をまたいで連結されている点が、本作最大の設計上の特徴である[1]。

どんな作品か——4つの現実をまたぐキャラクター

公式商品ページによれば、YKRPGの4冊は次のように構成されている[1][5]。

  • Book 1: Paris(192ページ)——ベル・エポック期のパリを舞台にした基本ルールブック。プレイヤーはパリに留学するアメリカ人美術学生を演じ、印刷されたばかりの戯曲「黄衣の王」がこの街に現実を書き換えるようにして広まっていく中、ガーゴイルや吸血鬼、堕落した異星の王族が絡む怪事件を調査する[1][5]。基本ルール・キャラクター作成・導入シナリオを含む中核の1冊である[5]。
  • Book 2: The Wars(176ページ)——1947年の「大陸戦争(the great European conflict of 1947)」に行き詰まる兵士たちを演じる、もう一つの現実。黄衣の王とその「反逆する娘たち」が引き起こす超自然的な怪事件を、揺れ動く戦場の中で調査する[1][5]。
  • Book 3: Aftermath(168ページ)——同じ現実のさらに後、2017年の北米が舞台。公式商品ページは「カルコサに忠実な独裁体制を打倒した後の世界」とだけ紹介しているが[1]、Pelgrane Press配布のプレビューPDFはこの独裁体制の名を「カスティン政権(the Castaigne regime)」とし、1920年のクーデターでアメリカを掌握した「カスティン」という一族の王朝が、黄衣の王の助けを借りて反対勢力を弾圧し、産業を独占したと説明している[4]。5年に及ぶ抗議と武装蜂起の末に内戦へと発展し、ついにカスティン家が権力の座から追われた、というのがBook Threeの前提である[4]。元レジスタンスの闘士たちが正義の社会を再建しようとする一方、まだ完全には駆逐されていない怪物たちの掃討という役目を担わされる[1][4]。
  • Book 4: This Is Normal Now(176ページ)——「私たちが知っているこの2017年」を舞台に、超自然的な存在と現実のねじれがひそかに浸透した世界で、普通の人々が団結していく現代編[1][5]。

4冊の合計ページ数は712ページで、GMスクリーンと導入シナリオ、追加のシナリオ「The Doors to Heaven」(Sarah Saltiel執筆、Paris編向け)、ショックカード・負傷カードの2種のカードデッキ、4設定それぞれのための音楽アルバムがボーナスとして付属する[5][6]。英語圏の業界メディアEN Worldは2020年4月15日付の記事で本作を「4冊合計700ページ超、GMスクリーン、ボーナスシナリオ、2種のカードデッキ、音楽アルバムまで付いてくる」と紹介している[6]。

ルール面では、GUMSHOEシステムに次の新機軸が加えられている。プレイヤー主導の新しい戦闘システム、『GUMSHOE One-2-One』の技法を取り入れた肉体的・精神的な負傷の新しい表現方法、そして4つの設定をまたいで連結されたキャラクター作成である[1]。GUMSHOEシステムそのものの「手掛かりは必ず手に入る」という基本設計については、当サイトのGUMSHOEシステムとはで扱っている、Pelgrane Press自身のトレイル・オブ・クトゥルーと共通する土台である。

クラウドファンディングと発売までの経緯

YKRPGはKickstarterでのクラウドファンディングを経て制作された。Pelgrane Press公式ブログは2017年6月20日付の記事で「ロビン・D・ロウズによる『The Yellow King Roleplaying Game』のKickstarterは、今週水曜、6月21日午後8時(東部標準時)に開始します」と告知している[3]。実際のキャンペーンページのデータ(Wayback Machineに保存されたアーカイブより)によれば、開始日時は2017年6月21日(協定世界時23:52)、締切は2017年7月22日、目標額は23,000ポンド、最終的な集まった支援額は167,341ポンド、支援者数は2,288人で、ステータスは「successful(成立)」と記録されている[2]。目標額の7倍を超える支援を集めたことになる。

発売年については、公式資料からは単一の日付を特定できなかった。Pelgrane Pressが配布しているBook One「Paris」のプレビューPDFの奥付には「Copyright © 2019 Pelgrane Press Ltd.」とある[4]。一方、DriveThruRPGの商品ページ(Wayback Machine保存版)には「File Last Updated: April 13, 2020」「This title was added to our catalog on April 13, 2020」という記載があり[5]、EN Worldも2020年4月15日付の記事で「ロビン・D・ロウズの『The Yellow King』が、目玉が飛び出るような54.95ドルでDriveThruRPGに登場した」と、その時点で初めてDriveThruRPG経由の一般販売が始まったかのように報じている[6]。つまり、2017年のクラウドファンディング成立から、2019年の版権表示、2020年4月のDriveThruRPGでの一般販売開始という、複数の時点にまたがる情報しか確認できていない。バッカー(支援者)向けの実物発送がいつ完了したかについては、本稿で参照できた資料の範囲では確認できなかった。

本作は2020年のENnie Awardsで「Best Production Values(最優秀プロダクション価値)」部門にノミネートされている。公式サイトのノミネート・受賞者一覧では、同部門のゴールド受賞は『Thousand Year Old Vampire』、シルバー受賞は『Humblewood Box Set』で、『The Yellow King RPG』の項目には受賞を示す印が付いていない[7]。つまりノミネートにとどまり、受賞はしていない。なお同じ2020年のENnie Awardsでは、Pelgrane Pressの関連商品『Absinthe in Carcosa』(著者ロビン・ロウズ)が「Best RPG Related Product」部門でゴールドを受賞している[7]。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

当サイトが用いる区分に沿えば、YKRPGが土台とする素材は複数の層にまたがっている。

原作の戯曲「黄衣の王」そのものは、ロバート・W・チェンバースが1895年に発表した連作短編集『黄衣の王』に登場する架空の戯曲であり、ラヴクラフト自身の執筆(1917-1937年)より前の作品である。ただし当サイトの黄衣の王(戯曲)記事が整理する通り、ラヴクラフトは評論「文学における超自然の恐怖」(1927年発表)でこの作品を論じ、「闇に囁くもの」(1930年執筆)ではハスター・ハリの湖・黄の印という語をチェンバースから自作へ運んでいる。カルコサという地名だけは、ラヴクラフトの小説には一度も登場しない。つまりチェンバースの原作はラヴクラフトより早い先行作品でありながら、ラヴクラフトによる神話への取り込みという出来事自体は原典層(1917-1937年)の期間内に起きている、というねじれた位置関係にある。

そこからさらに、YKRPGが直接扱う「黄衣の王」という存在――戯曲そのものではなく、その戯曲を通じて現実を書き換える人格を持った存在としての「黄衣の王」――は、当サイトのハスター記事が示す通り、原典であるチェンバースの短編には統一的な実体が描かれていない。ハスターを神格として明確に体系立てたのはオーガスト・ダーレスであり(『潜伏するもの』1932年、『ハスターの帰還』1939年)、この層は当サイトでは「ダーレス以降の変化」として区別している。YKRPGの「黄衣の王」がダーレスの体系化を継承したものか、チェンバースの原作に立ち返って独自に再構築したものかは、本稿で確認できた公式資料の範囲では明言されていない。ただしカルコサ記事が整理する通り、ケイオシアム社の『クトゥルフの呼び声』第7版索引では「King in Yellow」という書物の項目と「King in Yellow, Avatar of Hastur」という神格の項目が別立てになっており、TRPGの世界でも「戯曲としての黄衣の王」と「化身としての黄衣の王」は必ずしも一体のものとして扱われていない。YKRPGがこのTRPG的な二分法のどちらに近いかについても、当サイトでは確認できていない。

最も明確に原典へ遡れるのは、固有名詞そのものである。Book Three「Aftermath」が前提とする「カスティン政権(Castaigne regime)」という名は、チェンバース「名誉修理者」の語り手ヒルドレッド・カスティンの姓をそのまま借りている。同短編で語られる劇中の架空文書「アメリカ帝国王朝」の書き出し「カルコサより、ヒュアデスより、ハスターより、アルデバランより」という一節とあわせて考えると、原作が断片的に示唆するだけだった「カスティン家によるアメリカ支配」というモチーフを、YKRPGは「1920年のクーデターでアメリカを掌握し、黄衣の王の助けを借りて統治した王朝」という、Book Threeの前提設定にまで具体化して引き継いでいることがわかる[4]。原典が名前だけを置いて詳細を語らなかった部分を、TRPGが物語の骨格として書き足した一例である。

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出典

  • [1] Pelgrane Press公式商品ページ「The Yellow King RPG」(2026年9月13日取得)。著者ロビン・D・ロウズ、カバーイラストAaron Aurelio Acevedo・Dean Engelhardt・Melissa Gay・Shel Kahn・Christian Knutsson・Jessica TC Lee、価格帯44.95〜81.95ポンド、SKU「PELGY01-P」であること、4冊の完全カラーハードカバー本がスリップケースと専用GMスクリーンとともに提供されること、Book Oneがベル・エポックのパリ、Book Twoが1947年の「大陸戦争(the great European conflict of 1947)」、Book Threeが「カルコサに忠実な独裁体制(a dictatorial regime loyal to Carcosa)を打倒した後」の北米、Book Fourが「the present day we know」を舞台とすること、新戦闘システム・GUMSHOE One-2-One由来の負傷表現・設定横断のキャラクター作成が新機軸であることを確認。この独裁体制の固有名(「カスティン政権」)や1920年のクーデターといった詳細は、このページ自体には記載がなく、[4]のプレビューPDFで確認した。https://pelgranepress.com/product/the-yellow-king-rpg/ ↩
  • [2] Kickstarter公式キャンペーンページ「The Yellow King Roleplaying Game from Robin D. Laws」(Pelgrane Press運営、Wayback Machine保存版、2026年9月13日取得)。目標額23,000ポンド、最終集計額167,341ポンド、支援者数2,288人、開始日時2017年6月21日(協定世界時23:52)、締切2017年7月22日、ステータス「successful」、主催者「Pelgrane Press」であることをページ埋め込みのキャンペーンデータで確認。https://web.archive.org/web/2017/https://www.kickstarter.com/projects/pelgranepress/the-yellow-king-roleplaying-game-from-robin-d-laws ↩
  • [3] Pelgrane Press公式ブログ「The Yellow King Roleplaying Game Kickstarter Launches This Wednesday at 8 pm Eastern」(2017年6月20日公開、2026年9月13日取得)。「The Kickstarter for The Yellow King Roleplaying Game, by Robin D. Laws, launches this Wednesday, June 21st, at 8 pm Eastern.」の記載を確認。https://pelgranepress.com/2017/06/20/the-yellow-king-roleplaying-game-kickstarter-launches-this-wednesday-at-8-pm-eastern/ ↩
  • [4] Pelgrane Press公式配布のプレビューPDF「The Yellow King RPG: Paris(Book One)」(2026年9月13日取得)。奥付に「Publishers: Simon Rogers and Cathriona Tobin」「Designed, Written, and Produced by: Robin D. Laws」「Copyright © 2019 Pelgrane Press Ltd.」とあること、目次が242ページ(索引含む)まであること、本文冒頭で4つの舞台(Paris/The Wars/Aftermath/This Is Normal Now)が紹介されていることを確認。Book Threeの前提として、「the totalitarian dynasty known as the Castaigne regime took over America in a 1920 coup. Aided by the King in Yellow, its kleptocratic Emperors suppressed dissent, spied on citizens and monopolized industry」「After five years of accelerating protest and insurgency, culminating in outright civil war, the Castaignes were driven from power」という記載を確認。https://pelgranepress.com/files/YellowKing/YKRPG_preview.pdf ↩
  • [5] DriveThruRPG商品ページ「The Yellow King Roleplaying Game」(Wayback Machine保存版、2026年9月13日取得)。Book 1: Paris(192ページ)・Book 2: The Wars(176ページ)・Book 3: Aftermath(168ページ)・Book 4: This Is Normal Now(176ページ)という各冊の内容とページ数、GMスクリーンPDF・ボーナスシナリオ「The Doors to Heaven」(Sarah Saltiel執筆)・ショックカード/負傷カードのPDF・4設定分の音楽アルバムが付属すること、著者ロビン・D・ロウズ、発行元Pelgrane Press、「File Last Updated: April 13, 2020」「This title was added to our catalog on April 13, 2020」の記載を確認。https://web.archive.org/web/2020/https://www.drivethrurpg.com/product/309847/The-Yellow-King-Roleplaying-Game ↩
  • [6] EN World「The Yellow King RPG Has Arrived」(Morrus、2020年4月15日公開、2026年9月13日取得)。「Robin D. Laws’ The Yellow King has landed on DriveThruRPG for an eye-watering $54.95. For that you get a lot of content — four books totaling over 700 pages, a GM screen, a bonus adventure, two card decks, and even a music album!」、Book Threeが「2017 America after a civil war」を舞台とすること、ケイオシアム版『クトゥルフの呼び声』ではKing in YellowがHastur の化身(avatar)とされているという記載を確認。https://www.enworld.org/threads/the-yellow-king-rpg-has-arrived.671523/ ↩
  • [7] ENNIE Awards公式サイト「2020 Nominees and Winners」(2026年9月13日取得)。「Best Production Values」部門に『The Yellow King RPG』(Pelgrane Press)がノミネートされ、ゴールド受賞が『Thousand Year Old Vampire』、シルバー受賞が『Humblewood Box Set』であること(『The Yellow King RPG』の項目に受賞の印が無いこと)、および「Best RPG Related Product」部門で『Absinthe in Carcosa』(Pelgrane Press、著者ロビン・ロウズ)がゴールドを受賞していることを確認。https://ennie-awards.com/portfolio-item/2020-nominees-and-winners/ ↩
  • [8] 4Gamer「クトゥルーTRPGに新たな選択肢。12月25日に発売された「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー」を徹底紹介(短編シナリオ付)」(2020年12月22日、2026年9月13日取得)。編集体制を持つ国内ゲームメディア。本文中で「英国のパブリッシャであるPelgrane Press(ペルグレイン・プレス)」という表記が使われていることを確認。この記事はPelgrane Press社のカタカナ表記の裏づけとして参照したものであり、YKRPG自体を扱った記事ではない。https://www.4gamer.net/games/545/G054553/20201222001/ ↩

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