概要
「新クトゥルフ神話TRPG(第7版)」のようなd100判定のゲームでは、調査技能の判定に失敗すると、探索者は手掛かりを見逃してしまうことがあります。ところが、トレイル・オブ・クトゥルーが採用するGUMSHOEシステムは、この前提そのものを覆します。ロビン・ロウズ(Robin Laws)が2007年に考案したこのシステムの核心は、「調査ゲームの面白さは、手掛かりを見つけることではなく、見つけた手掛かりをどう解釈するかにある」という発想です[1]。
「手掛かりは必ず手に入る」という原則
GUMSHOEシステムの調査技能は、他のTRPGのようにダイス判定を必要としません。探索者がその技能を持ってさえいれば、然るべき状況でその技能を使うと宣言するだけで、キーパー(進行役)は該当する手掛かりをそのまま伝えます[2]。たとえば「法医人類学」の技能を1点でも持つ探索者が犯行現場にいれば、判定なしでその手掛かりを入手できます[2]。
これは、調査系TRPGが抱えがちな構造的な問題——「重要な手掛かりを見逃すと、調査そのものが行き詰まってしまう」という事態を、ルールの根本から解決するための設計です[2]。
d100判定との違い
新クトゥルフ神話TRPG(第7版)のようなBRPベースのシステムでは、「目星」「図書館」といった調査技能もd100判定の対象であり、失敗すれば手掛かりを取り逃す可能性があります(→ダイスとd100——パーセンタイル判定の仕組み参照)。これはこれで「情報を得られるかどうかも運のうち」という緊張感を生みますが、シナリオの進行に不可欠な手掛かりまで判定に委ねてしまうと、物語が完全に止まってしまうリスクがあります。
GUMSHOEシステムは、この「行き詰まりのリスク」がある技能(物語上必須の手掛かりに関わる調査技能)を判定なしの自動成功とする一方、戦闘や説得など「成否が物語の分岐を生む」判定には引き続きダイスを用いる、という使い分けをしています。つまり、判定を完全になくすのではなく、「行き詰まらせてはいけない場面」を選んでダイスを外すという設計思想です。
トレイル・オブ・クトゥルーにおける実装
トレイル・オブ・クトゥルーは、Pelgrane Pressより2008年に刊行された、GUMSHOEシステムを用いる調査ホラーTRPGです。著者はケネス・ハイト(Kenneth Hite)とロビン・D・ロウズ(Robin D. Laws)、カバーイラストはジェローム・ユグナン(Jérôme Huguenin)が手がけました[3]。
1930年代を基本舞台とし、「Purist(純粋主義)」と「Pulp(パルプ)」という2つのプレイモードを備えている点も特徴です。前者は静かな絶望と無力感を重視した遊び方、後者はより活劇寄りの遊び方に対応しており、同じGUMSHOEの土台の上で異なるトーンのプレイ体験を選べるようになっています(詳しくはどのクトゥルフ神話TRPGから始める?も参照)。
まとめ——設計思想の違いを知って選ぶ
d100システムとGUMSHOEシステムは、「何のために判定を使うか」という発想そのものが異なります。前者は「手掛かりの入手そのものに緊張感を持たせたい」設計、後者は「手掛かりの入手は保証し、その先の解釈・行動にドラマを集中させたい」設計です。どちらが優れているというものではなく、遊びたい体験の質によって選ぶべきものだといえます。
出典
- [1] “*Trail of Cthulhu* is designed for investigative play: the challenge is in interpreting clues, not finding them.”(訳: 『トレイル・オブ・クトゥルー』は調査プレイのために設計されている——難しいのは手掛かりを見つけることではなく、解釈することにある) — Pelgrane Press公式 “Trail of Cthulhu” 商品ページ, Pelgrane Press ↩
- [2] “If a scene contains a core clue and a player character uses an Investigative Ability relating to that clue, the character will find it.”(訳: あるシーンにコアとなる手掛かりが存在し、探索者がその手掛かりに関連する調査系能力を使えば、その探索者は必ずそれを見つける) — Pelgrane Press公式 “GUMSHOE Rules Summary”, Pelgrane Press ↩
- [3] “Authors: Kenneth Hite, Robin D. Laws” / “Cover Artists: Jérôme Huguenin”(訳: 著者:ケネス・ハイト、ロビン・D・ロウズ/カバーアート:ジェローム・ユグナン) — Pelgrane Press公式 “Trail of Cthulhu” 商品ページ, Pelgrane Press。刊行年については “First launched in 2008, *Trail of Cthulhu* pits the investigative GUMSHOE rules against the unknowable and horrific mysteries of the Cthulhu Mythos.”(訳: 2008年に初めて発売された『トレイル・オブ・クトゥルー』は……)と、Pelgrane Press公式 “Trail of Cthulhu Second Edition” ページでも確認できる — Pelgrane Press ↩
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