概要
「クトゥルフ神話TRPGを始めてみたい」と思ったとき、最初にぶつかる壁が「クトゥルフ神話TRPG」という名前のゲームが実は一つではない、ということです。深淵書架の「派生作品総覧」で扱っている作品の中にも、独立したゲームシステムが複数あります。このページでは代表的な4つのシステムを、遊び方の設計思想という観点から比較します。「原作を知らなくても遊べる」という点はどのシステムにも共通しますが、その先の体験はかなり違います。
比較の3つの軸
システムを選ぶときに押さえておきたい軸は、次の3つです。
- 手掛かりの入手方法: 探索の判定に失敗すると手掛かりを逃し行き詰まることがあるか、それとも物語上必要な手掛かりは判定に関わらず必ず入手できる設計か
- ルールの重さ: キャラクターシートに書き込む項目数や、戦闘・判定のルールがどれだけ細かいか
- トーン・舞台設定: 1920年代の古典的な雰囲気か、現代を舞台にしているか、恐怖に振り切っているか活劇寄りか
新クトゥルフ神話TRPG(第7版)——王道・公式の入り口
1981年にアメリカのケイオシアム(Chaosium)社から刊行された『クトゥルフの呼び声(Call of Cthulhu)』が原点で、設計はサンディ・ピーターセン。日本では1990年代にホビージャパンから旧版が刊行され、現在はKADOKAWAから第7版の日本語版『新クトゥルフ神話TRPG』が流通しています。
- 手掛かり: 技能判定に成功・失敗の両方があり、判定に失敗すると手掛かりを見逃すこともある(古典的なダイス判定型)
- ルールの重さ: 中〜やや重め。能力値・技能値をキャラクターシートに細かく記入する
- 舞台: 基本は1920年代のアメリカだが、現代など他の時代設定への拡張ルールも豊富
- こんな人に: 「王道のクトゥルフ神話TRPGをまず体験したい」「サプリメント・シナリオの選択肢の多さを重視したい」人
→ 詳細は新クトゥルフ神話TRPG ルールブックのレビューへ
トレイル・オブ・クトゥルー——手掛かりで詰まらせない設計
Pelgrane PressのGUMSHOEシステムを用いたホラーTRPGで、日本では新紀元社から改訂版が刊行されています。1930年代を基本舞台とする調査ホラーです。
- 手掛かり: 本作最大の特徴。シナリオの核心となる手掛かりは、該当する技能を持っていれば判定なしで必ず入手できる(「手掛かりが見つからず物語が止まる」事態を構造的に防ぐ設計)
- ルールの重さ: やや重め。情報量が多く、初読の準備には時間がかかるとの声もある
- 舞台: 1930年代が基本。「Purist(純粋主義)」と「Pulp(パルプ)」という2つのプレイモードがあり、静かな絶望寄りにも活劇寄りにも調整できる
- こんな人に: 「手掛かりを探し当てられず行き詰まるのがストレス」「謎解きよりも物語の雰囲気そのものを味わいたい」人
→ 詳細はトレイル・オブ・クトゥルーのレビューへ
デルタグリーン——現代を舞台にしたシリアス路線
Arc Dream Publishingが刊行する、現代アメリカの非公式な政府機関「デルタグリーン」の捜査官(エージェント)としてプレイする作品です。
- 手掛かり: 古典的なダイス判定型(第7版に近い)
- ルールの重さ: 中程度。戦闘は致死性が高く設計されている
- 舞台: 1920年代ではなく現代。プレイヤーキャラクターは英雄的な探索者ではなく、家庭や仕事を抱えながら組織の命令で危険な任務に従事する「公務員」として描かれる。任務が私生活に与える影響を扱う「ホームシーン」という概念が特徴的
- こんな人に: 「1920年代よりも現代を舞台にしたい」「よりシリアス・成人向けのトーンを求めている」人
→ 詳細はDelta Greenのレビューへ
クトゥルフ・ダーク——1ページで遊べる超軽量ルール
グラハム・ウォームズリーによる非常に軽量なルールのホラーTRPGです。判定はダイス1〜3個を振るだけという極限までシンプルなシステムに絞り込まれています。
- 手掛かり: ルール上の技能リストがほぼ存在しないため、判定の失敗で手掛かりを逃すという概念自体が薄い
- ルールの重さ: 最も軽い。キャラクターシートに相当する要素もほとんどなく、「正気」「調査」「暴力」といった大まかな判定カテゴリーのみ
- 舞台: 特定の時代・設定に縛られない。一晩で完結する短編セッション向け
- こんな人に: 「準備の負担なく、今日にでも遊んでみたい」「ルールより会話と想像力で恐怖を作りたい」人
→ 詳細はCthulhu Darkのレビューへ
タイプ別早見表
| 求めるもの | おすすめ |
|---|---|
| 王道・サプリメントの多さ | 新クトゥルフ神話TRPG(第7版) |
| 手掛かりで詰まりたくない | トレイル・オブ・クトゥルー |
| 現代舞台・シリアスな任務もの | デルタグリーン |
| とにかく手軽に今すぐ遊びたい | クトゥルフ・ダーク |
まずは一つ選んで遊んでみる
どのシステムも「クトゥルフ神話の宇宙的恐怖をどうゲーム機構に翻訳するか」という同じ問いに、それぞれ違う答えを出しています。正解は一つではありません。まずは今の自分の遊びたい距離感(重厚な準備を楽しみたいか、身軽に始めたいか)に近いものを一つ選んで、実際に卓に着いてみるのが一番の近道です。セッションの流れ自体の詳細はクトゥルフ神話TRPGを初めて遊ぶ人へも参考にしてください。

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