概要
KADOKAWA公式商品ページによれば、『新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2026』は2026年5月29日発売、価格4,400円(税込、本体4,000円)、B5判160ページの書籍である[1]。編者は坂本雅之とアーカム・メンバーズ、著者に内山靖二郎、寺田幸弘、皐月野鷽、瀬戸エイジ、七峰きざしほかが名を連ねる[1]。同ページの内容紹介は「現代日本での探索をより楽しむための選択ルール及び追加設定集」だとし、職業・副業・「特徴」といった探索者の背景を充実させるルール、狂気やプッシュといった現行ルールをさらに活用するチップス、舞台を日本全国に広げるための情報、新武器を収録すると説明している[1]。公式ストアページでも価格・発売日・ISBN(9784045000416)・判型が一致して確認でき、2026年9月9日時点で在庫ありの状態を保っている[2]。
本書は前作『新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020』(2020年6月30日発売)の後継にあたる[3][4]。刊行の間隔はおよそ6年で、この間に現代日本を舞台にした探索者像がどう更新されたのかを、両書の公式商品説明が確認できる範囲で突き合わせる。
どんな作品か
『クトゥルフ2026』の内容紹介は、次の4点にまとめられる。職業・副業・探索者の「特徴」といった背景設定ルール、狂気やプッシュといった第7版ルールのさらなる活用チップス、日本全国を舞台にするための情報、そして新武器である[1][3]。著者陣は内山靖二郎、寺田幸弘、皐月野鷽、瀬戸エイジ、七峰きざしほかで、編集を坂本雅之とアーカム・メンバーズが担う体制は前作から続いている[1][4]。
対して前作『クトゥルフ2020』の内容紹介が挙げていたのは、探索者創造ガイド、80種以上の職業サンプル、14歳以下の年少探索者を作成するルール、キーパー向けの詳細ガイド、シナリオ作成支援資料、そして6本の収録シナリオだった[4]。KADOKAWA公式ストアページでも判型・ページ数(B5判160ページ)・ISBN(9784047360624)が確認できる[5]。
両書の商品ページの表記で目を引くのは、クレジットの形式である。『クトゥルフ2026』も『クトゥルフ2020』も、公式ページには「著者」「編集」の語だけが並び、「翻訳」の語は現れない[1][3][4]。同じKADOKAWAの公式ページで確認した「新クトゥルフ神話TRPG カルト・オブ・クトゥルフ」は、著者マイク・メイソンに対して「翻訳」の語を伴う坂本雅之ほかの名が記される構成だった。クトゥルフ2020/2026シリーズにはこの「翻訳」の語がなく、内山靖二郎ら著者陣が現代日本を舞台に一から書き下ろした企画である可能性が高い。
6年の差分——「職業」から「副業」「特徴」へ
前作の内容紹介が挙げていた探索者の背景要素は「職業」だけだった[4]。80種以上のサンプルという数の多さが売りだったにせよ、探索者の生計を一つの職業に収める枠組みそのものは変わらない。
『クトゥルフ2026』の内容紹介には、この「職業」に加えて「副業」「特徴」という2つの語が新たに並ぶ[1][3]。1つの職業だけでは記述しきれない探索者の生活のあり方を、複数の項目に分けて表せるようにした変更にあたる。
職業サンプルそのものも更新されている。クトゥルフ神話TRPG公式サイトのアプリ限定コンテンツ告知によれば、『クトゥルフ2026』では「2026年という新たな『現代』に合わせ、さまざまな職業のサンプルを追加」し、医療・保険・福祉系、学術・言語系、金融・ビジネス・サービス系、物流・現場インフラ系という4つの新職業カテゴリーが用意される[6]。同告知は「現実ではなかなかお目にかかれない『フィクションに近い職業』」の掲載も予告している[6]。ただしこの告知自体が「先行公開の内容は現在編集中のため、変更となる可能性がある」と明記しており、確定した個別の職業名までは公開されていない[6]。
全国という舞台、そして「活用のチップス」という追加
内容紹介にはもう一つ、前作にはなかった要素がある。「舞台を日本全国に広げる」ための情報だ[1][3]。前作の内容紹介に地理的な範囲を示す語は見当たらず[4]、この一文は今回新しく加わったものだと確認できる。
狂気やプッシュの扱いにも違いがある。プッシュロールと成功度は、「プッシュロールと成功度」で確認した通り、2014年の第7版で導入されたルールそのものだ。前作クトゥルフ2020(2020年)の時点ですでにこのルールは存在していたが、内容紹介にはこれを扱う語がなかった[4]。『クトゥルフ2026』の内容紹介はこれを「新版ルールのさらなる活用方法」という形で取り上げている[1]。すでにあるルールを現代日本の卓でどう運用するか、その知識を積み増す方向の追加である。
この「使い方を積み増す」という発想は、日本のクトゥルフ神話TRPG文化の性格とも重なる。「日本のクトゥルフはなぜ『書く文化』になったのか」で確認した通り、日本ではキーパーが自らシナリオを書く同人文化が大きな比重を占めてきた。『クトゥルフ2026』が並べる「職業」「副業」「特徴」「日本全国の舞台情報」は、個々の卓が自分のシナリオを組み立てるための材料としての性格が強い。同人文化と商業サプリメントが、材料を渡すという同じ発想を共有している一例と見てよい。
原典との距離(神話の三層のどこに立つか)
『クトゥルフ2020』『クトゥルフ2026』が舞台にする「現代日本」は、ラヴクラフト自身の原典が扱った時代でも場所でもない。当サイトの「日本におけるクトゥルフ神話の受容史」は、ラヴクラフト作品の日本語への翻訳・受容の歴史を追った記事であり、ラヴクラフト自身が日本を具体的に描写した記述は含まれていない。当サイトが確認できた範囲では、原典(第1層)に「日本」という舞台そのものが登場するという記述は見当たらない。
したがってクトゥルフ2020/2026は、原典/ダーレス系拡張/TRPG設定——三層で読み解くクトゥルフ神話の区分に照らせば、第3層(TRPGによる拡張)に属する。ただし同じ第3層の中にも、生成のされ方の違いがある。当サイトの「カルト・オブ・クトゥルフ」記事で見た通り、英語原書の翻訳に日本発祥のカルトを1つ接ぎ木する形の第3層拡張もあれば、クトゥルフ2020/2026のように、公式ページに「翻訳」の語を伴わず、日本語話者の著者陣が現代日本を舞台に一から書き下ろす形の第3層拡張もある。同じ「TRPGによる拡張」という括りの中に、翻訳を経由する経路と、経由しない経路が両方とも存在していることになる。
「クトゥルフ神話TRPGの刊行史」で確認した通り、現行の第7版日本語版『新クトゥルフ神話TRPG』は2019年にKADOKAWAから発売された。クトゥルフ2020はその翌年、クトゥルフ2026はさらに6年後に刊行された、この版の下での現代日本サプリメントという位置づけになる。
関連して読むなら
- 新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020 — 本記事で比較した前作の記事
- 探索者の作り方 — 職業・技能ポイントなど、探索者の背景を作る基本手順
- プッシュロールと成功度 — 『クトゥルフ2026』が「活用のチップス」として扱う第7版ルールそのものの解説
- 日本のクトゥルフはなぜ「書く文化」になったのか — 商業サプリメントと同人文化に共通する「材料を渡す」発想を確認できる記事
- 日本におけるクトゥルフ神話の受容史 — 原典に「日本」という舞台が存在しないことを確認した出典記事
- 新クトゥルフ神話TRPG カルト・オブ・クトゥルフ — 翻訳を経由する第3層拡張の例。クトゥルフ2020/2026との生成経路の違いを確認できる
出典
- [1] KADOKAWA公式商品ページ「新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2026」(2026年9月9日取得)。発売日「2026年5月29日」、価格「4,400円」(本体4,000円)、判型「B5判」、ページ数「160ページ」、ISBN「9784045000416」、編者「坂本雅之/アーカム・メンバーズ」、著者「内山靖二郎、寺田幸弘、皐月野鷽、瀬戸エイジ、七峰きざし、ほか」、内容紹介(「探索者の背景をより充実させるルール(職業、副業、特徴など)、狂気やプッシュといった新版ルールのさらなる活用方法、舞台を日本全国に広げるチップスや新たな武器」)を確認。https://www.kadokawa.co.jp/product/322601000219/ ↩
- [2] KADOKAWA公式ストアページ「新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2026」(2026年9月9日取得)。価格「4,400円」、判型「B5判」、寸法「182×257×10mm」、ページ数「160ページ」、ISBN「9784045000416」、在庫状況「在庫有り」を確認。https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322601000219/ ↩
- [3] クトゥルフ神話TRPG公式サイト(KADOKAWA)書籍情報ページ「新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2026」(2026年9月9日取得)。発売日「2026年5月29日」、価格「4,400円」(本体4,000円)、判型「B5判」、ISBN「9784045000416」、編者「坂本雅之/アーカム・メンバーズ」、著者「内山靖二郎、寺田幸弘、皐月野鷽、瀬戸エイジ、七峰きざし、ほか」、内容紹介の記載を確認。ページ数の表記はこのページには無い。https://product.kadokawa.co.jp/p01/product-c/322601000219.html ↩
- [4] クトゥルフ神話TRPG公式サイト(KADOKAWA)書籍情報ページ「新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020」(2026年9月9日取得)。発売日「2020年6月30日」、価格「4,290円」(本体3,900円+税)、判型「B5判」、ISBN「9784047360624」、著者「内山靖二郎、寺田幸弘、皐月野鷽、瀬戸エイジ、ほか」、編集「坂本雅之/アーカム・メンバーズ」、内容紹介(探索者創造ガイド、80種以上の職業サンプル、14歳以下のキャラクター作成ルール、キーパー向け詳細ガイド、シナリオ作成支援資料、収録シナリオ6本)を確認。https://product.kadokawa.co.jp/p01/product-c/322001000090.html ↩
- [5] KADOKAWA公式ストアページ「新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020」(2026年9月9日取得)。判型「B5判」、寸法「182×257×10mm」、ページ数「160ページ」、ISBN「9784047360624」、在庫状況「在庫あり」を確認。https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322001000090/ ↩
- [6] クトゥルフ神話TRPG公式サイト(KADOKAWA)アプリ限定コンテンツ告知「”クトゥルフ2026″先行公開!新たな職業およびフィクションに近い職業|えくすとらvol.41【アプリ限定コンテンツ】※有料プラン限定」(2026年9月9日取得)。発売日「5月29日(金)予定」、2026年という「現代」に合わせた職業サンプルの追加、新職業カテゴリー(医療・保険・福祉系、学術・言語系、金融・ビジネス・サービス系、物流・現場インフラ系)、「フィクションに近い職業」の掲載予定、「先行公開の内容は現在編集中のため、変更となる可能性」がある旨の記載を確認。https://product.kadokawa.co.jp/cthulhu/news/content/co_app/entry-1375232.html ↩

