企業プロフィール — Petersen Games - The Studio Behind Cthulhu Wars

Petersen Games

2013年のKickstarterキャンペーン「Cthulhu Wars」から始まったボードゲームスタジオ。当初の社名はGreen Eye Games、4度のKickstarterを経て現行の「O4 Edition」に至る経緯と、2020年代前半の資金難・2025年の再始動までを公式資料の範囲で追う。

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概要

Petersen Games(ピーターセン・ゲームズ)は、ボードゲーム『Cthulhu Wars』の版元として知られるアメリカのゲームスタジオである。『クトゥルフの呼び声』TRPGの原作者サンディ・ピーターセンが2013年に立ち上げたKickstarterキャンペーンを起点とし、以後4度のクラウドファンディングを重ねて現行の「O4 Edition」に至った[1]。本稿は、サンディ・ピーターセン個人の経歴(id Softwareでの『DOOM』開発などビデオゲーム時代の実績)には立ち入らず——そちらは既存記事のサンディ・ピーターセン・サンディ・ピーターセン評伝を参照——、会社としての沿革・看板作品・現行体制に絞って、公式サイトとKickstarter公式ページで確認できた事実だけをまとめる。

起点——2013年、Green Eye Gamesとしてのスタート

Kickstarterの公式キャンペーンページ「Cthulhu Wars by Sandy Petersen」の本文には、当時のチーム体制についてこう記されている。

Kickstarter公式ページ本文の英語表記では、当時のチームを”Our new company, Green Eye Games is comprised of Creative Director Robert M. Atkins, the uber talented Art Director, Richard Luong, who created all of the concept art and illustrations for the game and the legendary Design Director Sandy Petersen.”(訳: 私たちの新会社Green Eye Gamesは、クリエイティブディレクターのロバート・M・アトキンス、コンセプトアートとイラストの全てを手掛けたアートディレクターのリチャード・ルオン、そして伝説的なデザインディレクターであるサンディ・ピーターセンから成る)と紹介している[4]。

同ページはまた、自分たちを”a small team of 3 guys”(3人だけの小さなチーム)と紹介し、”We are doing this out of a garage”(ガレージから始めている)と述べている[4]。キャンペーンは2013年6月7日から7月7日までの30日間実施され、目標額4万ドルに対し、4,389人のバッカーから最終的に1,403,981ドルが集まった(目標の3,500%超)[3][4]。この最初のキャンペーンで供給されたのは、Great Cthulhu・Crawling Chaos・Black Goat・Yellow Signの4陣営による非対称戦略ゲームの核となる基本セットである[3]。

なお、現在Petersen Games公式サイトが振り返る自社の歴史では、この起点を指して「創業から10年あまり」(a little over a decade ago、2025年11月時点の文章)と表現しており、少なくとも公式側は2013年のこのKickstarterを自社の創業と位置づけている[6]。一方、当時の社名がいつ「Green Eye Games」から「Petersen Games」に変わったのか、当サイトが参照した公式資料の範囲では明記された時期を確認できなかった。

看板作品『Cthulhu Wars』——4度のKickstarterと「O4 Edition」

公式ブログ記事「The Kickstarter Origins of Cthulhu Wars」は、2013年の初回キャンペーン以降、3度の追加キャンペーン(通称Onslaught)が続いたと説明している[3]。

  • Onslaught Two:目標7.5万ドルに対し1,018,717ドルが4,420人のバッカーから集まり、2016年9月頃の発送を見込んで実施された[3]。
  • Onslaught 3:2017年7月17日から8月14日まで実施され、目標10万ドルに対し4,130人のバッカーから1,076,211ドルが集まった。新陣営「Ancients」や新マップ・中立ユニットの資金源となった[3]。
  • Cthulhu Wars: the Daemon Sultan:「Final Onslaught」と銘打たれ、2019年4月23日から5月8日までの14日間で実施。目標5万ドルに対し4,339人のバッカーから302,250ドルが集まった[3]。

同記事は、この4回のキャンペーンを合わせると2013年から2019年にかけて380万ドル超が集まり、各回のバッカー数がおおむね4,100人から4,400人という範囲で安定していたと分析している[3]。

現行の基本セットは「O4 Edition」と呼ばれる。同記事によれば、この名称はKickstarterの系譜——Onslaught 4、すなわち一連のキャンペーンの4回目にあたる波——に由来する社内呼称がそのまま製品名になったものだという[3]。当サイトが2026年9月にPetersen Games公式ストアの商品ページを直接確認したところ、O4 Editionの内容は「72体の28mmミニチュア(うち5体は巨大なGreat Old One)」「両面の全面カラーボード」「24種のFaction spellbook」「専用ダイス」「フルカラールールブック」「各陣営用プレイヤーエイドカード」で、プレイ人数2〜4人(拡張により最大8人まで対応)、プレイ時間90分、対象年齢14歳以上と明記されていた[5]。同ブログ記事は現行価格を249.00ドル(Petersen Games直販)と記しており、当サイトが確認した商品ページの表示価格(日本向け表示で39,700円)とは通貨表示が異なる[3][5]。

同ブログ記事はまた、Petersen Gamesが「クトゥルフ神話そのもの」を所有しているわけではないと明記している。

“Petersen Games owns Cthulhu Wars as a game. It doesn’t own Cthulhu, Hastur, or the wider mythos any more than any other publisher working in that shared literary space.”(訳: Petersen Gamesはゲームとしての『Cthulhu Wars』を所有しているが、クトゥルフやハスターや、より広いクトゥルフ神話そのものを所有しているわけではない。それは同じ文学的素材を扱う他のどの版元とも変わらない。)[3]

これはH・P・ラヴクラフトが築いたクトゥルフ神話がパブリックドメインの共有素材であることを踏まえた説明であり、同社は「ゲームとしてのCthulhu Wars」――ミニチュアの造形やボード、陣営メカニクス――のみを自社の知的財産として扱っているとされる[3]。

経営危機——「State of Cthulhu」が語る2020年代前半

Petersen Games公式サイトに掲載されているニュースレター「State of Cthulhu」(2025年11月6日付、創業者サンディ・ピーターセン自身の署名)は、同社が2020年代前半に経験した資金難を、かなり具体的な数字とともに振り返っている[6]。

同文書によれば、2013年から2021年の間に同社は28件のKickstarterキャンペーンを成功させ、その一方で数年のうちに小売販売だけでも事業として成立するようになり、小売売上が「会社の生涯収益の半分以上」を占めるに至ったという[6]。しかし2013年の最初のCthulhu Warsキャンペーンの時点で、すでに躓きがあったと明かしている。

“This translated to a deficit of $400,000 between that project’s final funding amount and the actual cost to fulfill it (i.e., a net margin when the dust settled of minus 35%).”(訳: これは、そのプロジェクトの最終調達額と実際の履行コストとの間に40万ドルの赤字を生んだ(つまり、全てが片付いた時点での純利益率はマイナス35%だった)。)[6]

同文書はこの数字に続けて「したがって、一般に思われているのとは逆に、Petersen Gamesは純損失を抱えた状態で事業を始めたことになる」(原文: “Thus, contrary to popular belief, Petersen Games began existence with a net loss.”)と述べている[6]。送料の見積もり誤りや欧州VATの過小評価が最初のキャンペーンで重なったこと、その後もKickstarterベースの案件は「4〜5%程度の薄い利益率」で推移していたことを挙げ、2020年代前半には倒産の淵をのぞく状態(原文: “peer into the abyss of bankruptcy”)に陥ったと述べている[6]。対応として、2020年以降は新規クラウドファンディングキャンペーンの立ち上げを止め、創業者自身が私財(ビデオゲーム業界時代に得た不動産の売却益や退職金を含め100万ドル超)を会社に投じたことも明かしている[6]。

“With revenue dropping, and expenses continuing, I personally put more than $1,000,000 into Petersen Games by selling all real estate I bought during my successful video game career, and gutting my retirement.”(訳: 収益が落ち込み支出が続く中、私は自分のビデオゲーム業界時代に築いた不動産をすべて売却し、退職金も使い果たして、100万ドル以上を個人的にPetersen Gamesへ投じた。)[6]

同文書によれば、2022年時点で未履行だったKickstarterプロジェクトの75%を履行済みとし、2025年11月の執筆時点ではバッカー向け報酬全体の83%を履行したという[6]。文中には、カナダ向けの『Cthulhu Wars Onslaught 4』の履行が「Quimbley’s」という取引先に関する事情で滞っている旨の言及もあるが、この提携そのものの詳細(開始・終了時期や契約内容)については、当サイトが参照した公式資料の範囲では確認できなかった[6]。

2025年の再始動——縮小した体制で

「State of Cthulhu」によれば、2025年6月に同社は「半休眠状態」から再始動し、それまで自社の管理下になかった在庫の約3分の2を取り戻した上で、新しいShopify製の直販サイトを立ち上げた[6]。同文書はこの再始動から5か月が経過した時点(2025年11月)での体制について、次のように述べている。

“We only have a team of 3 (including myself), as well as a group of exceedingly heroic friends and volunteers.”(訳: 私たちには私を含めてたった3人のチームしかいない。それに加えて、非常に献身的な友人とボランティアの一団がいる。)[6]

同文書は、かつて同社が10人を超えるフルタイム従業員を抱えていた時期と比較し、現在の体制ではひとつひとつの作業に以前より長い時間がかかっていると説明している[6]。未履行のKickstarter案件としては、Hyperspaceの拡張・ミニチュア、Eternal Adversary、The Gods War 2、Dinosaur 1944、Return to Planet Apocalypseなどが挙げられており、いずれも「イラスト・彫刻・レイアウト・編集は完了しており、時機を見てミニチュアの金型製作に入る」段階にあるとされている[6]。同文書の末尾には差出人の所在地として「PO Box 334, Provo, UT 84603」という私書箱の住所が記載されている[6]。

現行ラインナップ

Petersen Games公式サイトの「About Sandy Petersen」ページに掲載されている自社作品一覧(PETERSEN GAMES / BOARD GAMES)には、次のタイトルが年代とともに並んでいる[1]。

  • Cthulhu Wars(2015年)
  • Orcs Must Die(2016年)
  • Evil High Priest(2018年)
  • Glorantha the Gods War(2019年)
  • Planet Apocalypse(2020年)
  • Hyperspace(2021年)
  • Dinosaur 1944(2021年)

同社公式ブログ「Who Is Sandy Petersen?」は、Cthulhu Warsについて「陣営ごとにユニット・呪文書・勝利条件がまったく異なる非対称ゲーム」という設計思想が、後発のHyperspaceにも受け継がれていると説明している[2]。同ブログはHyperspaceを「the same design philosophy into an original world」(同じ設計思想を独自の世界観へ拡張したもの)と位置づけている[2]。

日本語圏との関わり

当サイトが参照した公式資料の範囲では、Petersen Games自身による日本語圏向けの発表(現地代理店契約や日本語版の刊行など)は確認できなかった。一方、原作者サンディ・ピーターセンについては、ケイオシアムの日本関連記事で触れた2026年10月開催の「KaijuCon 2」(名古屋)特別ゲストの一件のように、『クトゥルフの呼び声』原作者としての立場で日本のイベントに関わる例が確認できている。Petersen Games自体が主体となった日本向けの動きについては、確認でき次第あらためて記事化したい。

サンディ・ピーターセン個人記事との違い

当サイトには既に、サンディ・ピーターセン個人の経歴を扱った記事が2本ある。サンディ・ピーターセン——クトゥルフ神話をゲームに翻案した男は『クトゥルフの呼び声』設計からid Software時代、Petersen Games設立までを年表形式で追った記事、サンディ・ピーターセン評伝は『DOOM』『Quake』のレベルデザインなどビデオゲーム時代の経歴に重心を置いた人物史である。両記事とも、Petersen Games設立後の会社としての運営実態(Kickstarterの資金調達史、経営危機、現行体制)までは扱っていない。本稿はその欠けている部分——「人」ではなく「会社」としてのPetersen Games——を補うことを目的とした。

関連して読むなら

出典

  • [1] Petersen Games公式サイト「About Sandy Petersen」(2026年9月20日取得)。PETERSEN GAMES / BOARD GAMESの一覧として、Cthulhu Wars(2015)・Orcs Must Die(2016)・Evil High Priest(2018)・Glorantha the Gods War(2019)・Planet Apocalypse(2020)・Hyperspace(2021)・Dinosaur 1944(2021)が挙げられていることを確認した。https://petersengames.com/pages/about-sandy-petersen ↩
  • [2] Petersen Games公式ブログ「Who Is Sandy Petersen? The Designer Behind Call of Cthulhu, Doom, and Cthulhu Wars」(2026年7月8日付、2026年9月20日取得)。”In mid-2013, Petersen launched a Kickstarter for Cthulhu Wars, a premium asymmetric strategy board game set in the world of Lovecraftian cosmic horror. It funded successfully and arrived in 2015.”の記述、Hyperspaceを”the same design philosophy into an original world”と説明する記述、”Petersen Games is the tabletop company Sandy Petersen founded.”というFAQ回答を確認した。https://petersengames.com/blogs/news/who-is-sandy-petersen ↩
  • [3] Petersen Games公式ブログ「The Kickstarter Origins of Cthulhu Wars: From the Original Campaign to the O4 Edition」(2026年7月21日付、2026年9月20日取得)。2013年キャンペーン(2013年6月7日-7月7日、目標4万ドル、実績1,403,981ドル、バッカー4,389人)、Onslaught Two(目標7.5万ドル、実績1,018,717ドル、バッカー4,420人)、Onslaught 3(2017年7月17日-8月14日、目標10万ドル、実績1,076,211ドル、バッカー4,130人)、Cthulhu Wars: the Daemon Sultan(2019年4月23日-5月8日、目標5万ドル、実績302,250ドル、バッカー4,339人)の各数値、「O4」がOnslaught 4に由来する社内呼称であること、O4 Editionの直販価格が249.00ドルであること、”Petersen Games owns Cthulhu Wars as a game. It doesn’t own Cthulhu, Hastur, or the wider mythos any more than any other publisher working in that shared literary space.”の記述を確認した。https://petersengames.com/blogs/news/cthulhu-wars-kickstarter-history-o4-edition ↩
  • [4] Kickstarter公式キャンペーンページ「Cthulhu Wars by Sandy Petersen」(2026年9月20日取得)。ページ上部に表示された実績値(4,389人のバッカー、$1,403,981プレッジ、ファンディングゴール$40,000)、”Our new company, Green Eye Games is comprised of Creative Director Robert M. Atkins…”の記述、”We are a small team of 3 guys… We are doing this out of a garage”の記述を確認した。https://www.kickstarter.com/projects/petersengames/cthulhu-wars ↩
  • [5] Petersen Games公式ストア商品ページ「Cthulhu Wars (O4 Edition)」(2026年9月20日取得)。72体の28mmミニチュア(うち5体の巨大なGreat Old One)、全面カラーの両面ボード、24種のFaction spellbook、専用ダイス、プレイヤーエイドカード、プレイ人数2-4人(拡張で最大8人)、プレイ時間90分、対象年齢14歳以上という製品仕様、表示価格39,700円(日本向け表示)を確認した。https://shop.petersengames.com/products/cthulhu-wars-o4-edition ↩
  • [6] Petersen Games公式ニュースレター「State of Cthulhu」(2025年11月6日付、2026年9月20日取得)。創業を「a little over a decade ago」と振り返る記述、2013-2021年の28件のKickstarter成功、”This translated to a deficit of $400,000…”の記述、2020年以降の新規クラウドファンディング停止、”With revenue dropping… I personally put more than $1,000,000 into Petersen Games…”の記述、2022年時点で75%・2025年11月時点で83%のバッカー報酬履行、2025年6月の再始動とShopifyサイト開設、”We only have a team of 3 (including myself)…”の記述、未履行案件(Hyperspace・Eternal Adversary・The Gods War 2・Dinosaur 1944・Return to Planet Apocalypse等)の状況、差出人所在地「PO Box 334, Provo, UT 84603」を確認した。https://petersengames.com/pages/state-of-cthulhu ↩
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