小説 — Fane of the Black Pharaoh

暗黒のファラオの神殿

考古学者がカイロ地下に封印された「暗黒のファラオ」ネフレン=カの神殿墓所へ足を踏み入れる。ナイアーラトホテップの化身像を明確化した作品。

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暗黒のファラオの神殿

編集部注(著作権について): 本記事が扱う『暗黒のファラオの神殿』(原題: Fane of the Black Pharaoh、1937年発表)は、パブリックドメインであるとは断定できません。ブロックは1994年まで存命で著作権管理に積極的であり、同時期の複数作品について実際の著作権更新記録が確認されています。本記事は原文からの引用を行わず、あらすじ・論評のみで構成しています。

概要

考古学者がカイロ地下に封印された「暗黒のファラオ」ネフレン=カの神殿墓所へ足を踏み入れる一編。ナイアーラトホテップを唯一神として崇めた簒奪者ネフレン=カ像を明確化した作品。

作品情報

  • 原題: Fane of the Black Pharaoh
  • 執筆・発表年: 1937年発表(「ウィアード・テイルズ」誌12月号)
  • 再録: ブロックの初期ミソス作品群を集めた短編集『Mysteries of the Worm』(1981年Zebra Books版/1993年Chaosium版)に収録されているとされる
  • 主題タグ: カイロ地下の封印された神殿、あらゆる信仰を捨てた簒奪者ネフレン=カ、未来を刻んだ壁面

登場神格・用語

あらすじ

考古学者カータレット大尉は、正体不明のエジプト人に導かれ、カイロの地下深くに数千年封印されてきた「暗黒のファラオ」ネフレン=カの神殿墓所へと足を踏み入れる。いかなる王朝にも属さぬ簒奪者ネフレン=カは、あらゆる信仰を捨ててナイアーラトホテップ一神のみを奉じた人物とされ、神殿の壁面にはカータレット自身の死を含む未来の光景が刻まれている。それを目にした直後、予言通りの死が彼を襲う。

読みどころと注目テーマ

地下深くに封印された神殿という舞台、あらゆる信仰を捨てた簒奪者という異端の設定、自らの死を予言する壁画という結末の構成が本作の読みどころである。ブロックがラヴクラフト作品の断片的な示唆——「盲いた猿の神」への言及や、ナイアーラトホテップの化身が異民族の姿を取るという設定——を丹念に拾い上げ、ネフレン=カという一人の人物像として結晶化させた手際は、単なる後追いの模倣にとどまらない構築的な仕事として評価されている。実際、ネフレン=カという固有名を与えられたことで、この「暗黒のファラオ」はブロック一代の創作にとどまらず、後年編まれたテーマ別アンソロジー『The Nyarlathotep Cycle』にも代表的な一編として収録されるなど[2]、共有神話内で独立した存在として定着していくことになる。

執筆背景と影響

リン・カーターの証言によれば、本作は掲載こそ1937年12月号[1]だがラヴクラフトが『闇をさまようもの』を書く前に草稿を読んで感銘を受けていたとされ、単純な「ブロックが先、ラヴクラフトが後」の順序では割り切れない相互影響がある。ナイアーラトホテップの「暗黒のファラオ」像を明確化した作品であり、ラヴクラフト自身も「狂気の山脈にて」や「魔女の家の夢」で触れていた「盲いた猿の神」「異形の司祭王」といった断片的な意匠を、一人の簒奪者ネフレン=カという名を持つ人物へと結晶化させた点に本作最大の功績がある。ナイアーラトホテップは「魔女の家の夢」では魔女宗の「黒い男」として、本作では古代エジプトの簒奪王として、それぞれ全く異なる時代・文化圏の姿で立ち現れる[2]。この「唯一絶対の姿を持たず、常にその土地・時代にふさわしい仮面をかぶって現れる」という性質こそがナイアーラトホテップという神格の核心であり、ブロックはエジプトという舞台を選ぶことで、この神の変幻自在性を最も鮮やかな形で描き出したと言える。著者ロバート・ブロックは、この時期すでに『妖蛆の秘密』『クルテス・デ・グール』(食屍教団の書)といった架空の魔道書・教団を次々と発案しており、ラヴクラフト風の模倣作から離れて独自の作風を確立していく過渡期にあった[3]。ブロックの初期ミソス作品群は後に短編集『Mysteries of the Worm』としてまとめられ、1981年にZebra Booksから初刊行された後、1993年にはChaosiumから編者ロバート・M・プライスによる版が改めて刊行されている[4]。ネフレン=カという固有の人物像は、後年のクトゥルフ神話TRPGにおいてもエジプトを舞台とする長編シナリオの中心人物として繰り返し用いられることになり、パルプ雑誌の一短編が半世紀以上を経てなおゲームデザインの水源であり続けている稀有な例となっている。

出典

本作はブロックの著作権継承者による積極的な権利管理が確認されており、パブリックドメインであるとは断定できないため、原文からの引用は行っていません。以下は書誌的事実についての出典です。

  • [1] 本作の初出は「ウィアード・テイルズ」誌1937年12月号、編集長ファーンズワース・ライト(ISFDB Title Record #63770)。— 出典: ISFDB「Fane of the Black Pharaoh」title record, 該当ページ
  • [2] Wikipedia「Nyarlathotep」の項目では、「暗黒のファラオ(Black Pharaoh)」がナイアーラトホテップの異名の一つとして挙げられ、本作「Fane of the Black Pharaoh」がテーマ別アンソロジー『The Nyarlathotep Cycle』の収録作として言及されている。— 出典: Wikipedia「Nyarlathotep」, 該当ページ
  • [3] ロバート・ブロック(1917年-1994年)は初期作品で『妖蛆の秘密』『クルテス・デ・グール』といった架空の魔道書・教団を次々と発案し、ラヴクラフト風の模倣から独自の作風へと移行していったことが知られている。— 出典: Wikipedia「Robert Bloch」, 該当ページ
  • [4] ブロックの初期ミソス作品群を集めた短編集『Mysteries of the Worm』は1981年にZebra Booksから刊行され、1993年には編者ロバート・M・プライスによりChaosiumから改めて刊行された。— 出典: Wikipedia「Mysteries of the Worm (anthology)」, 該当ページ
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