実在の人物(作家) — SUGIMURA OSAMU

杉村修

「郷土クトゥルフ神話」というサブジャンルを掲げる岩手県出身の小説家・SF作家。地元・雫石町をモデルにした架空の町「雫町」を舞台に、ツーワンライフ・デザインエッグ・録繙堂出版などから作品を刊行している。

公開作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

杉村修
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

概要

杉村修(すぎむら おさむ)は、岩手県出身の小説家・SF作家です[2]。地元・雫石町をモデルにした架空の町「雫町(しずくまち)」という世界観を軸に、クトゥルフ神話の要素を織り込んだ作品を、ツーワンライフ・デザインエッグ・録繙堂出版といった版元から刊行してきました[1]。自身の創作の立ち位置を「郷土クトゥルフ神話」と呼び、地域の伝承・風土・想いをクトゥルフ神話と掛け合わせて自由に描くサブジャンルだと、本人公式サイト上で定義しています[7]。2026年にベルギーの教育情報サイトへ寄稿した署名記事では、自分の仕事を「クトゥルフ神話という広大な森に植えた、たった一本の新しい木」にすぎないと位置づけ、根本から革命的なものを発明したわけではなく、すでにある流れに従っただけだ、という謙抑な自己評価を残しています[5]。

基本プロフィール

  • 肩書き: 小説家、SF作家。本人公式サイトでは「クトゥルフ神話作家」の呼称も使われています[6]。
  • 出身: 岩手県[2][6]。
  • 活動の軸: 地元・雫石町をモデルにした架空の町「雫町」を舞台とする創作と、「郷土クトゥルフ神話」というサブジャンルの提唱[6][7]。
  • 所属: SFサークル「SFG」、文芸サークル「一本桜の会」、「岩手児童文学の会」(2022年のインタビュー時点)[2]。本人公式サイトによれば、これに加えて変格ミステリ作家クラブ(2022年入会)、Refugio Bizarro(2025年10月から)にも名を連ねています[6]。
  • 刊行元: ツーワンライフ、デザインエッグ、録繙堂出版など(国立国会図書館サーチで確認できた書誌の範囲)[1]。
  • 本名・生年月日: 当サイトでは調べていません。

別名・呼称

国立国会図書館サーチの書誌表記、アニマ・ソラリスのインタビュー、録繙堂出版の紹介ページ、本人公式サイトのいずれでも、著者名は「杉村修」で一貫しています[1][2][3][4][6]。当サイトが確認した範囲では、これ以外の筆名・別名にあたる情報は見つかりませんでした。

人物像・作風

杉村修の作品観をよく表しているのが、2022年のアニマ・ソラリスのインタビューでの発言です。自作について、単純にクトゥルフ神話ものと片付けるのではなく、次のように位置づけています。

クトゥルフものとして考えていただいて問題ありません。ただ、私の中ではこの作品は、クトゥルフ神話の欠片を各作品にちりばめた幻想SF短編集と考えております。[2]

この「欠片をちりばめる」という距離の取り方は、後年掲げるようになる「郷土クトゥルフ神話」にも通じる姿勢だといえます。もっとも、このインタビューに「郷土クトゥルフ神話」という語そのものは出てきません。この語をタイトルに掲げた著書が出るのは、2年後の『郷土クトゥルフ神話「虹と影」』(2024年)です[1]。

本人公式サイトの自己紹介には、「独自の世界観設定「シズク町(雫町)」を創る。「雫石クトゥルフ神話」の確立目指す。」と記されています[6]。地元・雫石町に固有の神話体系を指す「雫石クトゥルフ神話」と、より広いジャンル名としての「郷土クトゥルフ神話」を、重ねて使い分けていることがうかがえます。

2026年にベルギーの教育情報サイトdidascalia.beへ寄稿した署名記事では、自作を語る筆致がより率直になっています。サイト自体はクトゥルフ神話の専門媒体ではなく教育・研修分野の情報ポータルですが、本人が一人称で書いた署名記事である点から、本人の言葉として引用します。

On pourrait dire que j’ai planté un unique nouvel arbre dans la vaste forêt qu’est le mythe de Cthulhu. Je n’ai rien inventé de fondamentalement révolutionnaire, je n’ai fait que suivre un courant déjà existant. C’est avec cette humilité que je me présente à vous.[5]

(当サイト訳: クトゥルフ神話という広大な森に、たった一本の新しい木を植えたと言えるかもしれません。私は根本から革命的な何かを発明したわけではなく、すでに存在していた流れに従っただけです。この謙虚さとともに、私は皆さんの前に立っています。)

自分の仕事を大きく見せない、この謙抑な自己評価は、同じ記事のなかでH・P・ラヴクラフトとその後継者たちへの敬意を語る一節とも重なります。

Je tiens à préciser que je respecte profondément H.P. Lovecraft et les auteurs qui lui ont succédé. Je n’exclus pas l’horreur cosmique ; au contraire, je l’adore.[5]

(当サイト訳: H・P・ラヴクラフトと、その後に続いた作家たちを私は深く尊敬している、と申し添えておきたいと思います。宇宙的恐怖を排除しているわけではなく、むしろそれを愛しています。)

H・P・ラヴクラフト以来の系譜に連なる作家として自分を位置づけながら、それでも自分だけの語り口を岩手の風土に探る、という姿勢が読み取れます。

震災を語る言葉にも、この土地に根ざした視点が表れています。2022年のインタビューで、地元で起きた「雫石の事故」について問われた際、こう答えています。

雫石の事故は当時最悪の飛行機事故と言われていましたが、自分が物心つく頃には話の中での出来事で、まるで昔話を聞かされているような感じがしました。東北震災後に生まれた方々もこんな気持ちなのかなと今では思います。[2]

大きな出来事を、自らの体験ではなく語り継がれた記憶として受け取ってきたという感覚は、didascalia.beの記事で東日本大震災(2011年3月11日)に触れている書きぶりとも響き合います[5]。

同じインタビューでは、インタビュアーから「杉村先生の作風は児童文学と相性が良いのではないか」という評も向けられています[2]。これはあくまでインタビュアー側の見立てであり、本人がそう自己規定しているわけではありませんが、岩手児童文学の会の理事(本人公式サイトによれば2021年から)という立場と重なる指摘ではあります[2][6]。

生涯・経歴

30歳になる頃 – クトゥルフ神話との出会い 録繙堂出版「結の広場」の紹介ページに引かれている本人の言葉によれば、「私は自然豊かな日本の岩手県で生まれ育ちました。30歳になる頃にクトゥルフ神話と出会い、作品を作る決意をします。」と振り返っています[4]。

2019年 – 「いわて震災小説2020」入選 本人公式サイトによれば、2019年に「いわて震災小説2020」で近未来SF掌編「さよならプレゼント」が入選しました[6]。アニマ・ソラリスの著者紹介でも、同作の入選が経歴として紹介されています[2]。

2020年 – 『雫町ジュークボックス』刊行 ツーワンライフから『雫町ジュークボックス』を刊行しました。国立国会図書館サーチで確認できる書誌によれば、ISBNは978-4-909825-22-3です[1]。

2021年 – 岩手児童文学の会の理事に就任 本人公式サイトによれば、この年に岩手児童文学の会の理事に就任しています[6]。

2022年 – アニマ・ソラリスのインタビュー、『幻想とクトゥルフの雫』刊行 SFウェブマガジン「アニマ・ソラリス」のインタビューに応じ、自作の位置づけや所属サークルについて語りました[2]。同インタビューでは、クトゥルフ出版社の創土社に原稿を送ったところ、レーベル「クトゥルー・ミュトス・ファイルズ」からの刊行を持ちかけられ、原稿をクトゥルフ作品にアレンジして出版することが決まった、という経緯も語られています[2]。同じ年、ツーワンライフから『幻想とクトゥルフの雫』を刊行しています[1]。本人公式サイトによれば、この年に変格ミステリ作家クラブへも入会しています[6]。

2023年 – 『クトゥルフと夢の国』刊行、ふるさと納税返礼品 ツーワンライフから『クトゥルフと夢の国』を刊行しました[1]。本人公式サイトによれば、同じ年に岩手県雫石町のふるさと納税の返礼品として『アポカリプスエッジ』『雫町ジュークボックス』が選ばれました[6]。

2024年 – 『郷土クトゥルフ神話「虹と影」』刊行 デザインエッグから『郷土クトゥルフ神話「虹と影」』を刊行しました[1]。タイトルに「郷土クトゥルフ神話」を掲げた著書としては、当サイトが確認した範囲で最初のものです。同じ年、所属する文芸サークル「一本桜の会」の合同誌『花風』にも共著者として参加しています[1]。

2025年 – 『雫石と幻想語り』刊行とラジオでの朗読 録繙堂出版から『雫石と幻想語り』を刊行しました。B6判・118頁・並製本、2025年3月27日発行、価格1,320円(税込)です[3]。刊行に先立つ2025年1月24日には、IBC岩手放送のラジオ番組『ハートフルライフ〜いわて、お話しカフェ〜』で、雫石町を題材にした書き下ろし童話「光る野菊のあるところ」が奥村奈穂美アナウンサーにより朗読されています[4]。刊行後の2025年6月13日・20日・27日には、同番組で本書収録の小説「南昌山の思うところ」も朗読されました[3]。本人公式サイトによれば、同じ年に米国の「Hollywood Arts Awards」(主催: m&t media house)でBest writer awardを受賞したとされ、10月にはRefugio Bizarroのメンバーにもなっています[6]。

郷土クトゥルフ神話とは何か

「郷土クトゥルフ神話」という語の定義を、本人公式サイトの該当ページから、言い換えずそのまま引きます。

郷土クトゥルフ神話

それは人々と郷土を結ぶ、「心(想い)」、「風土」、「クトゥルフ神話」を掛け合わせて自由に描くサブジャンルです。地方には様々な伝承や文化があります。その景色を想い、クトゥルフ神話と言うジャンルに落とし込み、自分たちにしか描けないクトゥルフ神話作品を創作して見てください。[7]

対象とする表現の幅は広く、同じページで次のように書かれています。

小説・TRPG・俳句・詩・短歌・シナリオ・絵画・芸術・エンターテイメントなんでも問題ありません。[7]

創作物のタイトルに「郷土クトゥルフ神話」を冠することも歓迎する一方、地域や既存の作品への配慮も求めています。

郷土クトゥルフ神話と題してご自身の作品タイトルに入れても構いません。同人誌など市場にでてくる作品が増えますように。

創作の際は自治体や企業、地域への配慮とクトゥルフ神話作品の敬意と権利を守ってください。[7]

同ページには「例:「実在の郷土史 × 宇宙的恐怖 × 土地への愛着」」という定式化も示されています[7]。

didascalia.beの署名記事では、「郷土(KYOUDO)」という語そのものについて、フランス語話者向けにより踏み込んだ説明を書いています。

En japonais, KYOUDO (郷土) signifie la terre où l’on est né et a grandi, ou à laquelle on est attaché. En termes simples, il s’agit de prendre nos souvenirs et émotions liés à notre région natale, et de les incorporer dans la création d’histoires de Cthulhu.[5]

(当サイト訳: 日本語で「郷土(KYOUDO)」とは、生まれ育った土地、あるいは愛着を持つ土地を意味します。簡単に言えば、自分の郷土にまつわる記憶や感情を取り出し、それをクトゥルフの物語の創作に取り入れる、ということです。)

同じ記事では、自作に登場する架空の町「雫町」を例に挙げ、震災の記憶を通した手触りがこのジャンルの特徴だとも書いています。

Par exemple, dans mes récits apparaît une ville fictive appelée Shizukumachi, inspirée de ma propre région. Bien que le mythe de Cthulhu contienne parfois des scènes de peur et de cruauté, le « Mythe de Cthulhu régional » reflète, à travers mon expérience du tremblement de terre, une douceur tranquille.[5]

(当サイト訳: たとえば私の作品には、自分の郷土からインスピレーションを得た架空の町「雫町(しずくまち)」が登場します。クトゥルフ神話には恐怖や残酷な場面が含まれることもありますが、「郷土クトゥルフ神話」は、私自身の震災の経験を通して、静かなやさしさを映し出しています。)

将来への展望として、同記事はこう結ばれています。

J’ai un rêve : que le « Mythe de Cthulhu régional » dépasse les frontières du Japon, devienne un mouvement mondial et serve de pont pour la littérature fantastique internationale.[5]

(当サイト訳: 私には夢があります。「郷土クトゥルフ神話」が日本の国境を越え、世界的なムーブメントとなり、国際的な幻想文学の架け橋となることです。)

本人公式サイトによれば、この構想を発表する場として「2026年 冬の陣」と題した募集も行われています[7]。日本におけるクトゥルフ神話の受容の流れのなかに、地方の風土や個人の震災経験を接続しようとする、比較的新しい試みの一つとして位置づけられます。

主要著作と読みどころ

『雫町ジュークボックス』(ツーワンライフ、2020年) 国立国会図書館サーチで確認できる書誌によれば、ISBN978-4-909825-22-3で2020年に刊行されています[1]。タイトルの「雫町」は、後に本人公式サイトの自己紹介でも触れられる架空の町の名です[6]。

『幻想とクトゥルフの雫』(ツーワンライフ、2022年) ISBN978-4-909825-35-3[1]。同年のアニマ・ソラリスのインタビューで「クトゥルフ神話の欠片を各作品にちりばめた幻想SF短編集」と語られた時期に近い刊行です[2]。

『クトゥルフと夢の国』(ツーワンライフ、2023年) ISBN978-4-909825-43-8[1]。

『郷土クトゥルフ神話「虹と影」』(デザインエッグ、2024年) ISBN978-4-8150-4407-7[1]。タイトルに「郷土クトゥルフ神話」を掲げた著書として、当サイトが確認した範囲では最初のものです。

一本桜の会文芸誌『花風』(ツーワンライフ、2024年、共著) ISBN978-4-909825-44-5[1]。所属する文芸サークル「一本桜の会」の合同誌です。本人はこのサークルを、2022年のインタビューでこう紹介しています。

一本桜の会は、岩手の文学サークルです。メンバーの中には岩手芸術祭の最高賞(芸術祭賞)を受賞した方や岩手日報主催の「北の文学」で入選者もだしているという実力あるサークルです。[2]

『雫石と幻想語り』(録繙堂出版、2025年) ISBN978-4-909312-12-9、B6判・118頁・並製本、2025年3月27日発行、価格1,320円(税込)です[3]。版元の紹介によれば、収録作は室町期に滴石を治めた戸沢氏を題材にした「私、戸沢十郎政安は二人いた」、うぐいすの妖怪が営む旅館を描く「うぐいすのお宿」、南昌山の土砂災害を背景にした「南昌山の思うところ」、雫石とは別の世界にある「雫町」の駅を舞台にした「雫石の宇宙」、散文「雫石という土地から」、雫石の各地域を題材にした詩作、そして企画クトゥルフ神話作品として「雫石の呼び声」「雫石天文台」の全8項目です[3]。版元は、本書が雫石町のPRだけでなく「学校の郷土資料など教育現場で使われる」ことも目的の一つだと本人の言葉として紹介しています[4]。雫石町まちおこしセンター「しずく×CAN」でも販売されています[3]。

深淵書架の読者にとっての意味

クトゥルフ神話は、H・P・ラヴクラフトの原典から、ダーレス以降の拡張やTRPGを通じた広がりを経て、日本国内でも独自の受容のされ方をしてきたジャンルです。森瀬繚のように、原作を読み解き、どの設定がどの作品に由来するかを研究者的に整理する関わり方がある一方で、杉村修の「郷土クトゥルフ神話」は、地元の風土や震災の記憶を素材として物語を書き足していく、創作側からの関わり方だといえます。同じジャンルへの向き合い方が一様ではないことを示す実例として、読み比べる価値があります。

もう一つ押さえておきたいのは、本人がこの構想を「革命的な発明」だとは位置づけていない点です。didascalia.beの記事で「クトゥルフ神話という広大な森に、たった一本の新しい木を植えた」にすぎないと述べ、「すでに存在していた流れに従っただけ」だと繰り返し断っています[5]。地方独自の伝承とクトゥルフ神話を組み合わせる試みそのものは、この人物が発明したものではなく、既存の流れの延長線上にあるという自己認識です。この謙抑さを踏まえたうえで、「郷土」という切り口が、書き手ごとに異なる神話への接続の仕方をどれだけ広げられるかを見ていく、というのが今のところの位置づけになります。

出典

  • [1] 国立国会図書館サーチ「OpenSearch検索結果(杉村修)」(取得日 2026-09-17) — https://ndlsearch.ndl.go.jp/api/opensearch?creator=%E6%9D%89%E6%9D%91%E4%BF%AE&cnt=200&format=atom ↩
  • [2] アニマ・ソラリス「杉村修 著者インタビュー」(2022年5月、取得日 2026-09-17) — https://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/220501.shtml ↩
  • [3] 録繙堂出版「雫石と幻想語り」商品ページ(取得日 2026-09-17) — https://www.kksan.net/shizukuishi-and-fantasy/ ↩
  • [4] 録繙堂出版「結の広場」杉村修紹介ページ(取得日 2026-09-17) — https://www.kksan.net/cross/sugimura/ ↩
  • [5] didascalia.be「Le monde, ma région natale et le Mythe de Cthulhu」(杉村修 署名記事)(2026年5月16日、取得日 2026-09-17) — https://didascalia.be/osamu-sugimura-mythe-cthulhu-regional/ ↩
  • [6] 杉村修 公式サイト「イーハトーブ・クリエイティブ」ホーム(取得日 2026-09-17) — https://www.sugimura1988.com/ ↩
  • [7] 杉村修 公式サイト「イーハトーブ・クリエイティブ」内「郷土クトゥルフ神話」ページ(取得日 2026-09-17) — https://www.sugimura1988.com/郷土クトゥルフ神話/ ↩
この記事だけでは物足りない方へ
初めての方への紹介書籍 表紙
初めての方へ

固有名詞を覚えるのがまだ大変なら、神格・怪物をイラストと生息地図でやさしく紹介するこちらから。

『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』をAmazonで見る ↗
もっと詳しく知りたい方への紹介書籍 表紙
もっと詳しく知りたい方へ

神格・用語を横断的に調べたいなら、東雅夫による定番の事典が一冊で頼りになります。

『クトゥルー神話大事典』をAmazonで見る ↗

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました