ビデオゲーム(レトロFPS+サバイバルホラー、STEAM、2026年9月11日発売予定) — Deep Sheol

Deep Sheol

Acid Arrow StudioとSons of Welderが開発するレトロFPS『Deep Sheol』が、2026年9月11日にSteamで発売される。公式ストアページは本作を"Lovecraftian"と位置づけるが、確認できる画面や特徴の記述からは、武装した捜査官が怪物の群れを撃ち倒す設計が見えてくる。同じ開発チームが積み重ねてきた「ラヴクラフトに触発された」シリーズという文脈も含め、公式情報のみから検証する。

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東雅夫『クトゥルー神話大事典』(新紀元社)。本作はラヴクラフト作品の翻案ではないため、神話の固有名詞を出典つきで引ける事典を挙げた。

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概要

Acid Arrow StudioとSons of Welderが開発する一人称シューティングゲーム『Deep Sheol』が、Steamで2026年9月11日に発売予定である。発売元はAcid Arrow StudioとFM Simple Games Studio[1]。日本語版ストアページでは発売日が「2026年9月11日」、英語版ストアページでは「12 Sep, 2026」と一日ずれて表示されており、原因は本稿では確認できていないが、両ページとも本稿確認時点で「あと約6時間でアンロック」の表示が出ており、いずれの表記でも未発売であることは一致していた[1][2]。

対応言語は日本語を含む12言語[1]。無料デモ「Deep Sheol Demo」が配布されている[1]。Steamのジャンル欄は「アクション、アドベンチャー、インディー」で、FPSやサバイバルホラーという語はジャンル欄ではなく紹介文とタグに現れる[1][2]。価格は本稿確認時点で購入ボタン自体が表示されておらず、確認できていない。

開発元は生成AIの利用についても開示しており、ゲーム内テキストの翻訳補助と、ソースコードの記述・最適化・デバッグ支援にLLMを使用したと説明している[1]。

どんな作品か

英語版ストアページの紹介文は次のように書かれている。「冷酷な企業が支配するディストピアの未来で、特別捜査官セスは、新たな生物ガスの秘密採掘基地が沈黙した理由を解明する任務に就く。ガスは労働者と近隣の町民を血に飢えたゾンビに変えた。敵の群れを突破し、企業の暗い陰謀を暴き、この高速レトロFPSでLovecraftianな怪物たちと対峙する」(大意)[2]。機能一覧には「弾薬・薬・食料のリソース管理」「プレイヤーのバイタルステータスシステム」「重要アイテムを強調する環境分析システム」「複雑なパズル」、そして「Lovecraftianな神話観とダークSFのユニークな融合」が挙げられている[2]。

公式が公開しているスクリーンショットの一枚には、産業施設めいた石造りのアーチ門に、人間の顔を模した肉塊状の彫刻が三つ埋め込まれた光景が写っている。同じ画面の左下には、心臓・肺・脳の状態をそれぞれパーセンテージで示すバイタル表示があり、右下には銃を構えた一人称視点の腕と弾薬数が見える[3]。ここから、拠点の異形化した装飾と、資源管理を伴うFPSとしての戦闘という、紹介文の記述と一致する画作りを確認できる。

「Lovecraftian」の中身を確かめる

公式ストアページのタグ欄には「Old School」「Lovecraftian」「Resource Management」「Survival Horror」「First-Person」「Immersive Sim」「Cyberpunk」「Retro」「FPS」「Zombies」「Horror」などが並ぶ[2]。本稿確認時点で本作のユーザーレビューは0件だった[1][2]。Steamのタグは通常ユーザーの投票を反映する仕組みとして知られるが、レビューが1件も付いていない本作でこの仕組みがどこまで働いているかは、本稿では確認できていない。いずれにせよ「Lovecraftian」がタグ欄に載っている以上、これは開発元自身が用意した紹介文・特徴一覧の記述(後述)と一体のものと見るのが妥当である。

それ自体は珍しいことではない。問題は、その自己申告の中身がどこまで具体的かである。確認できる範囲の記述を見る限り、本作が名指しで挙げる固有名詞は「クトゥルフ」や「ダゴン」のような神格名ではなく、”Lovecraftian”という形容詞と、生物ガスによる怪物化、企業の陰謀、異形の彫刻装飾といったモチーフにとどまる[1][2][3]。これは当サイトの区分でいう第1層(原典)や第2層(ダーレス以降の拡張)の特定の設定を移植したものではなく、ラヴクラフト作品が持つ「未知の脅威」「人間が怪物に変質する恐怖」「不穏な偶像」といった雰囲気的要素を、企業ディストピアと生物兵器というSF設定の中に流し込んだ翻案に近い。当サイトのクトゥルフ神話ゲーム総合ガイドで確認した分類に沿えば、本作は「ライセンス直系の神話作品」ではなく「宇宙的恐怖を独自の世界観に翻案した作品」の系統に属する。

HUDと火力が語ること

原典が描く恐怖の核は、対抗不能な存在を前にした人間の無力感にある。当サイトのCall of Cthulhu: Dark Corners of the Earthの記事で確認した通り、2005年のこの先駆的タイトルはHUDをほぼ排し、前半では武器をまともに持たせないことで「戦って勝てない恐怖」を志向する設計を選んだ。

『Deep Sheol』のスクリーンショットに写るのは、これとは対照的な画面である。心臓・肺・脳のバイタルを常時パーセンテージ表示するHUD、構えた銃と弾薬数の表示、そして紹介文が明言する「敵の群れを突破する」戦闘[2][3]。当サイトのForgive Me Fatherの記事で指摘した通り、レトロFPSというジャンルはプレイヤーを強力に武装させ怪物と正面から撃ち合わせる構造そのものを前提としており、原典の核にある「対抗不能な無力感」とは根本的に相性が悪い。確認できる限りの情報から見て、『Deep Sheol』も同じ構造上の制約を共有していると考えられる。恐怖は雰囲気・彫刻・ガスによる変質といった演出面に置かれ、ゲームプレイ自体は資源管理を伴うシューティングに振り切られている可能性が高い。ただし実プレイの手触りまでは、デモや発売後のレビューを確認しない限り断定できない。

同じ開発チームの「セス・ヴィディウス」という文脈

本作の主人公は「特別捜査官セス」と名付けられている[2]。同じ開発元Acid Arrow Studioのキュレーターページを確認すると、2024年3月発売の『The Order of the Snake Scale』と2025年4月発売の『Hydra – Poseidon’s Conspiracy』の2本が、「The Dark Investigations of Seth Vidius」という名のバンドルにまとめられていることが分かる[4][6]。バンドルの説明文は「探偵セス・ヴィディウスを主人公とする2作品のセット」と明記しており、『The Order of the Snake Scale』の紹介文自体も「ラヴクラフトに触発された、ディストピアの代替宇宙を舞台にした心理的なサバイバルホラーゲーム」と記している(原文”Inspired by Lovecraft”)[5]。『Hydra – Poseidon’s Conspiracy』のキュレーターページ側の紹介文も「宇宙的恐怖(cosmic dread)への戦慄の下降」という表現を使っている[4]。

つまり本作の発売元は、少なくとも2024年から一貫して「ラヴクラフトに触発された」ディストピア企業もの・探偵ものを作り続けており、『Deep Sheol』はその延長線上に位置づけられる可能性がある。ただし本稿確認時点で「The Dark Investigations of Seth Vidius」バンドルに含まれているのは前述の2作品のみで、『Deep Sheol』は含まれていない[6]。『Deep Sheol』の「特別捜査官セス」と、既存2作の「探偵セス・ヴィディウス」が同一人物かどうかは、公式ページのどこにも明記がなく、本稿では確認できていない。それでも、同じ開発チームが「Lovecraftian」という看板を単発のマーケティング文言としてではなく、複数作にまたがる一貫した作風として使い続けている点は、タグ欄の一語だけを見るより確かな手がかりになる。

なお『The Order of the Snake Scale』のバンドルページの対応言語欄には英語とポーランド語が挙がっており、開発チームの拠点を推測させる材料ではあるが、公式のスタジオ所在地表記そのものは本稿では確認できていない[5][6]。

関連して読むなら

  • Forgive Me Father — 同じくラヴクラフト風を掲げるレトロFPS。「対抗不能な無力感」とジャンル構造の相性を先に論じた記事
  • Forgive Me Father 2 — 同シリーズの続編
  • Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth — HUDと武装を意図的に制限し「戦って勝てない恐怖」を追求した、対照的な設計のCoC公式ライセンス作品
  • Moons of Madness — 近未来の研究施設を舞台にした一人称コズミックホラー。SF設定への翻案という点で比較になる作品
  • Quake(1996) — レトロFPSというジャンルの源流の一つ
  • クトゥルフ神話ゲーム総合ガイド — 「ライセンス直系の神話作品」と「宇宙的恐怖を独自の世界観に翻案した作品」という分類を確認できる記事

出典

  • [1] Steam公式ストアページ「Deep Sheol」日本語版(2026年9月11日確認)。開発元がAcid Arrow Studio・Sons of Welder、発売元がAcid Arrow Studio・FM Simple Games Studioであること、発売日表示が「2026年9月11日」でありアンロックまで約6時間と表示されていたこと、日本語を含む12言語に対応していること、無料デモ「Deep Sheol Demo」が配布されていること、ジャンル欄が「アクション、アドベンチャー、インディー」であること、ユーザーレビューが0件であること、生成AI(LLM)をゲーム内テキストの翻訳支援とソースコードの記述・最適化・デバッグ支援に使用したと開発元が開示していることを確認。https://store.steampowered.com/app/3998990/Deep_Sheol/ ↩
  • [2] Steam公式ストアページ「Deep Sheol」英語版(2026年9月11日確認)。発売日表示が「12 Sep, 2026」でありアンロックまで約6時間と表示されていたこと、紹介文が”face Lovecraftian nightmares”および”face Lovecraftian monsters”と記していること、機能一覧に”Unique blend of Lovecraftian mythology and dark sci-fi”とあること、主人公が”Special Agent Seth”と呼ばれていること、タグ欄に「Old School」「Lovecraftian」「Resource Management」「Survival Horror」「First-Person」「Immersive Sim」「Cyberpunk」「Retro」「FPS」「Zombies」「Horror」等が並んでいることを確認。https://store.steampowered.com/app/3998990/Deep_Sheol/?l=english ↩
  • [3] Steam公式ストアページ掲載のスクリーンショット(2026年9月11日確認)。石造りのアーチ門に肉塊状の顔の彫刻が三つ埋め込まれた光景、画面左下に心臓・肺・脳のバイタルをパーセンテージ表示するHUD、右下に銃を構えた一人称視点の腕と弾薬数が表示されていることを確認。https://shared.fastly.steamstatic.com/store_item_assets/steam/apps/3998990/a2ca77b8fd88c3ff15f5fde095b82431dab5f097/ss_a2ca77b8fd88c3ff15f5fde095b82431dab5f097.1920×1080.jpg ↩
  • [4] Acid Arrow Studio Steamキュレーターページ(開発元の作品一覧、2026年9月11日確認)。同スタジオの作品として『Deep Sheol』のほか、『Hydra – Poseidon’s Conspiracy』(2025年4月26日発売、紹介文に”a chilling descent into cosmic dread”とあること)、『The Order of the Snake Scale』(2024年3月14日発売、紹介文に「ラブクラフトに触発された」とあること)、『Mage Ball』(2023年1月30日発売、魔法テーマでクトゥルフ神話とは無関係)が並んでいることを確認。https://store.steampowered.com/curator/45509669/ ↩
  • [5] Steam公式ストアページ「The Order of the Snake Scale」英語版(2026年9月11日確認)。紹介文が”Inspired by Lovecraft, a psychological survival horror game set in a dystopian, alternative universe”であること、開発元がFM Simple Games Studio・Sons of Welder・Acid Arrow Studioであること、対応言語が英語とポーランド語であること、ユーザーレビューが「Mostly Positive」(27件中74%)であることを確認。https://store.steampowered.com/app/2451470/The_Order_of_the_Snake_Scale/?l=english ↩
  • [6] Steam公式バンドルページ「The Dark Investigations of Seth Vidius」(2026年9月11日確認)。本バンドルが『The Order of the Snake Scale』と『Hydra – Poseidon’s Conspiracy』の2作品のみで構成され、探偵セス・ヴィディウスを主人公とするダブルパックとして説明されていること、『Deep Sheol』はこのバンドルに含まれていないことを確認。https://store.steampowered.com/bundle/53237/The_Dark_Investigations_of_Seth_Vidius/?l=english ↩

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