概要
『LOAD』は、同人サークル「ぶんちょ本舗」が2017年10月に発売した、クトゥルフ神話を題材とする脱出ゲームです。同サークルの『サナトリウム』と同様に「ホラーではない」ことが明言されており、驚かせる演出ではなく謎解きそのものを楽しむ設計になっています。プレイ時間は1〜2時間程度、エンディングは3種類。もともとブラウザ版がニコニコのゲーム投稿サービスで無料公開されており、DLsiteで販売されているのはダウンロード完全版という位置づけで、ストーリーは変えずに差分イラストや新規カットが追加されています。WindowsとMacの両対応で、評価は★4.3前後(2026年7月時点)。同人ゲームの中でもごく小規模な作品ですが、「怖くないクトゥルフ」を掲げるサークルの作風がよく表れた一本です。
クトゥルフ神話との関係
脱出ゲームというジャンルは、実はクトゥルフ神話の物語構造と相性の良い形式です。閉ざされた空間に閉じ込められる、部屋に残された断片的な手掛かりから状況を推理する、扉の向こうに何が待つか分からないまま開けるしかない——これらは、ラヴクラフト作品の登場人物たちが古文書や遺物を読み解きながら真実へ近づいていく調査の過程(クトゥルフの呼び声で描かれた「断片の突き合わせ」の手法)を、パズルとして純化したものと見ることができます。本作はそこからホラーの要素だけを丁寧に取り除き、神話モチーフの意匠——異形の存在や異界を思わせる道具立て——を謎解きの素材として使っています。恐怖抜きでも神話の「未知を解読する楽しさ」は成立する、ということを示す小品です。
独自の要素・原典との違い
原典のクトゥルフ神話では、調査の果てに待つのは多くの場合、破滅か、知らなければよかったという後悔です。本作はその図式を意図的に外し、謎を解くこと自体の達成感で物語を締めくくる、明るい読後感の脱出劇に仕上げています。無料のブラウザ版で気軽に試してから完全版に進めるという公開形態も、同人シーンならではの間口の広さです。『サナトリウム』がのんびりしたRPGとして、本作がパズル寄りの脱出ゲームとして、それぞれ異なるジャンルで「怖くない神話世界」を描いており、2作あわせてホラー耐性のないプレイヤーがクトゥルフ神話の雰囲気に触れる入門編として機能します。神話題材ゲームの多様性——恐怖だけがクトゥルフの遊び方ではないこと——を知る上で、記憶しておきたいサークルです。
