PCゲーム(STEAM・基本プレイ無料予定/開発中、クローズドα実施中) — Waste The Fallen

Waste The Fallen

韓国のRoyalCrowが開発するSteam向けPCゲーム『Waste The Fallen』は、公式に「コズミックホラーのエクストラクションシューター」と説明される。最初のクローズドアルファテストが2026年9月5日から9日まで北米対象で実施されている。本稿は未プレイの状態で、公式ストアページと海外報道の範囲に限定し、「戦利品を持ち帰るFPS」とコズミックホラーの相性を、ラヴクラフト原典に照らして確認する。

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概要

韓国のスタジオRoyalCrowが開発するPC向けゲーム『Waste The Fallen』は、Steam公式ストアページで「A cosmic-horror extraction shooter(コズミックホラーのエクストラクションシューター)」と説明されている[1]。プレイヤーは「Deep」と呼ばれる崩壊した世界の深部へ降下し、物資を集めて生還を目指す。ソロまたは最大3人までの協力プレイに対応し、同じ物資を狙う他プレイヤー「Deviants」との遭遇もあるPvPvE構成だ[1]。対応言語はSteamページ上で英語・韓国語・簡体字中国語の三言語のみが確認でき、日本語の記載はない[1]。

開発元・発売元はいずれもRoyalCrowとSteamページに表記されている[1]。同社に取材した韓国のゲーム専門メディアInvenによれば、RoyalCrowは2018年に設立された会社で、代表の백승훈(ペク・スンフン)氏はゲームハイ(게임하이)在籍時に『サドンアタック』『デカロン』の制作に携わった人物だという[2]。現在の筆頭株主はテンセント系列のエイスビル(에이스빌)だと同記事は伝えている[2]。この経歴・株主構成については、Inven以外の一次資料での確認が取れていない。

北米対象の最初のクローズドアルファテストは、太平洋時間2026年9月4日19時から9月8日23時59分まで(日本時間では9月5日11時から9日15時59分まで)実施されている[1][2][3]。価格モデルはSteamページ上でFree to Playと明記されている[1]。発売日はSteamページで「Coming soon」とされ、確定した日付は公表されていない[1]。

どんな作品か

Steamストアページのゲーム説明は次の通りだ。「Drop in, loot up, and get out alive: raid decaying zones for gear, survive the monsters lurking inside, and escape before the dark closes in. Solo or up to three, with other Deviants hunting the same loot.(降り立ち、装備を集め、生きて脱出せよ。朽ちた区域を襲撃して装備を手に入れ、潜む怪物を生き延び、闇が閉じる前に脱出する。ソロでも、最大3人でも。同じ戦利品を狙う他のDeviantsもいる)」[1]。

海外メディアの取材によれば、世界観の骨格は「Deep」と呼ばれる深部、そこに巣くう「Fallen」——世界の崩壊から生まれた怪物たち——、そして同じ物資を奪い合うライバルの探索者「Deviants」という3語に集約される[3][4]。各Deviantsが携える装備は「Bio-Arm」と呼ばれ、プレイヤーの正気を管理する「Sanity」システムも搭載されているという[3]。

米GamesBeatの取材にプロデューサーのByungnam Choi氏(최병남、チェ・ビョンナム)は「We wanted to make an extraction shooter that welcomes you in rather than punishing you for showing up.(現れたことを罰するのではなく、迎え入れるエクストラクションシューターを作りたかった)」と述べている[3]。Inven単独のインタビューでも、同氏の発言として「등장했다는 이유만으로 이용자를 처벌하는 것이 아니라、이용자를 맞이하는 익스트랙션 슈터를 만들고 싶었다(現れたという理由だけでプレイヤーを罰するのではなく、プレイヤーを迎え入れるエクストラクションシューターを作りたかった)」という趣旨が伝えられており[2]、GamesBeatの引用とほぼ同じ内容だ。

同氏はさらにGamesBeatの取材で「Korea has a rich history of acclaimed horror, and we wanted to bring that atmosphere into a Lovecraftian FPS.(韓国には高く評価されたホラーの豊かな歴史があり、その雰囲気をラヴクラフト風FPSへ持ち込みたかった)」と語っている[3]。Inven記事も同じ趣旨を「한국의 호평받은 공포 콘텐츠 흐름을 러브크래프트풍 FPS에 담고자 했다(韓国の高評価を得たホラーコンテンツの潮流をラヴクラフト風FPSに込めたかった)」と伝えており[2]、独立した二媒体で一致する発言として扱ってよい。ただし、これが具体的にどの韓国ホラー作品を指すのかは、両記事とも触れておらず確認できない。

「戦利品を持ち帰る」という構造は原典にあるか

エクストラクションシューターというジャンルの核は、危険地帯へ入り、物資を集め、他プレイヤーや敵から逃げ切って持ち帰る、という一往復の構造にある。持ち帰れなければ、集めた物資はその場で失われる。ここで確認したいのは、この「持ち帰る」という行為そのものが、コズミックホラーの原典と相性がいいのかどうかだ。

当サイトが扱ってきたラヴクラフト作品を見渡すと、相性がいいというより、原典が繰り返し警告してきた行為そのものに近いことが分かる。「知ってはならないものに触れ、それを持ち帰り、そのことによって危険にさらされる」という構造は、複数の代表作に共通して見られる。

もっとも直接的な例が「狂気の山脈にて」だ。ミスカトニック大学の南極探検隊は、地質学者ダイアーの手記によれば、生物学者レイクの分隊が地層から「既知のどの生物とも一致しない星形の頭部を持つ古代生物の完全な標本」を掘り当てるところから物語が動き出す[7]。地中に眠っていたものを掘り出し、標本として持ち帰ろうとするこの行為が、隊員十一名の死という惨事の引き金になる。物語の後半、ダイアーとダンフォースは地下の暗黒の海のほとりで目覚めたショゴスと遭遇し、命からがら地上へ逃げ延びる[7]。手記そのものが「後続隊への警告」という体裁を取っており、目的は今後の南極再調査を思いとどまらせることにあると冒頭で明言されている[7]。掘り出したものを持ち帰ろうとした結果として惨事が起き、生還者は「二度と行くな」という警告を残す——これはエクストラクションシューターの構造を、失敗した遠征の側からなぞった話である。

「インスマスの影」も、形は違うが同じ主題を扱っている。この作品で「持ち帰られる」のは物資ではなく、語り手自身の血筋に刻まれた事実だ。インスマスへ日帰りで立ち寄っただけの語り手は、ゼイドック・アレンの独白と、命がけの脱出行を経て町を後にする[8]。だが後日、彼が持ち帰ったのは無事だったという安心ではなく、自分の家系そのものにマーシュ家の血が流れているという発見であり、物語は彼がその血を受け入れ、暗礁の下の都市へ泳ぎ去る決意を固める場面で終わる[8]。ここでの「持ち帰り」は物ではなく自分自身の正体であり、脱出に成功したはずの一往復が、実は往復になっていなかったという反転が置かれている。

「クトゥルフの呼び声」では、持ち帰られるのは資料と手記だ。語り手フランシス・サーストンは、彫刻家ウィルコックスが夢から彫り上げた粘土板の意匠、ルグラス警部が沼地の摘発現場で得た報告、ヨハンセンの手記という、別々の人物が残した断片を突き合わせ、その作業自体によって真相にたどり着く[6]。だがサーストンが最後に望むのは、この手記が誰の目にも触れないことだ。「祈るとしよう。もし私がこの原稿より長らえなかったなら、遺言執行者たちが大胆さより慎重さを取り、これが他の誰の目にも触れないよう取り計らってくれることを」という一節[6]は、集めた知識を持ち帰ったことそのものが、彼にとって新たな危険になっていることを示している。

三作に共通するのは、「持ち帰る」という行為が達成としてではなく、危険の始まりとして描かれている点だ。『Waste The Fallen』がエクストラクションシューターというジャンルの形式を採る以上、ゲームプレイ上は物資の回収が成功として設計されているはずだが、その舞台にコズミックホラーの意匠を重ねるなら、原典が繰り返し描いてきた「持ち帰った代償」というモチーフを、ゲームがどこまで拾うのかが注目点になる。この点は、実際にプレイして確認できていない現時点では判断できない。

開発元RoyalCrowと、なぜ「罰しない」設計を選んだか

Choi氏の発言で繰り返されているのは「罰しない」という言葉だ。GamesBeatとInven双方が伝えた発言に加え、米Insider Gamingの取材では、同氏の発言としてさらに具体的な設計方針が引用されている。「We aimed to create a world where fear gradually creeps into the player, while designing a gameplay structure that rewards curiosity and deeper exploration rather than causing players to lose everything because of a single mistake.(プレイヤーにじわじわと恐怖が忍び寄る世界を作りたかった。同時に、たった一つのミスですべてを失わせるのではなく、好奇心とより深い探索に報いるゲームプレイ構造を設計した)」[5]。

同記事はまた、この方針を支える具体的な機構として「there’s an ‘oversized safebox’ feature that allows users to bank more equipment much faster, so if they fail their run, they can recouperate and move back in much more efficiently.(通常より容量の大きい「セーフボックス」機能があり、プレイヤーはより多くの装備をより速く保管できる。ランに失敗しても、より効率的に立て直して再び潜れる)」という説明を伝えている[5]。エクストラクションシューターというジャンルは一般に、死亡時に持ち物の大半を失う設計を採ることが多いが、『Waste The Fallen』はこの喪失を緩和する方向を明言している。

この設計方針は、原典が描いてきた「持ち帰りの代償」とは逆向きの選択である。ラヴクラフト作品の登場人物たちは、危険な知識や標本に触れた代償を最後まで払わされ、多くの場合その代償は取り消せない。ゲームというメディアで同じ主題を扱う以上、プレイヤーが挑戦を続けられるよう失敗の重さを調整することは設計上の要請であり、それ自体を原典からの逸脱として否定すべき理由はない。ただし、この「罰しない」方向への調整が、コズミックホラーというジャンルが本来持っていた不可逆性の感覚とどこまで両立するのかは、実際にプレイして確かめるべき論点として残る。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

『Waste The Fallen』は、ChaosiumなどTRPG『クトゥルフの呼び声』の版元による公式ライセンス表記がSteamページに確認できない[1]。したがって本稿では「クトゥルフ神話公式」とは書かず、ラヴクラフト作品の意匠を借りたLovecraftian(コズミックホラー)作品として扱う。

作中の「Sanity」システムは、原典そのものの発明ではない。ラヴクラフト作品には、狂気そのものが繰り返し描かれる主題だ。「狂気の山脈にて」というタイトルが示す通り、恐怖に触れた人間が正気を失うという結末は、複数の作品に共通している。しかし、それを数値として管理する仕組みは、1981年にケイオシアムがサンディ・ピーターセンの設計で刊行したTRPG版『クトゥルフの呼び声』が導入したSAN値に由来する。当サイトはこれを、ラヴクラフト原典(第1層)/ダーレス以降の拡張(第2層)/TRPGによる拡張(第3層)という三層で整理しており、詳しくは「原典/ダーレス系拡張/TRPG設定——三層で読み解くクトゥルフ神話」で扱っている。『Waste The Fallen』が採用する「Sanity」システムは、名称・仕組みの詳細こそ現時点の報道からは確認できないものの、「正気を数値として管理する」という発想そのものは、原典ではなく第3層のTRPGが確立した文法を受け継いだものだと考えられる。

一方、モンスター「Fallen」や、崩壊した世界の深部「Deep」という設定そのものは、報道の範囲では旧支配者名や神話固有の地名を使っていない。固有名詞を出さずに雰囲気だけを受け継ぐ作りは、原典から距離を保った意匠の借用である。この設計が意図的なものか、単に現時点の発表資料に含まれていないだけなのかは、確認できていない。

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出典

  • [1] ジャンル説明「A cosmic-horror extraction shooter」、ゲーム説明「Drop in, loot up, and get out alive: raid decaying zones for gear, survive the monsters lurking inside, and escape before the dark closes in. Solo or up to three, with other Deviants hunting the same loot.」、対応言語(英語・韓国語・簡体字中国語)、価格モデル(Free to Play)、発売日表記(Coming soon)、開発元・発売元(RoyalCrow)の記載がある — Valve Corporation「Waste The Fallen」Steam公式ストアページ, store.steampowered.com ↩
  • [2] RoyalCrowが2018年設立で代表が백승훈氏、ゲームハイ時代に『サドンアタック』『デカロン』を手掛けたこと、筆頭株主がテンセント系列のエイスビル(에이스빌)であること、プロデューサー최병남氏の発言「등장했다는 이유만으로 이용자를 처벌하는 것이 아니라、이용자를 맞이하는 익스트랙션 슈터를 만들고 싶었고…한국의 호평받은 공포 콘텐츠 흐름을…러브크래프트풍 FPS에 담고자 했습니다」、クローズドアルファが北米対象で韓国時間9月5日11時から9日15時59分まで実施されることの記載がある — 「로얄크로우의 신작 ‘Waste The Fallen’ 공개」Inven, www.inven.co.kr ↩
  • [3] プロデューサーByungnam Choi氏の発言「We wanted to make an extraction shooter that welcomes you in rather than punishing you for showing up」「Korea has a rich history of acclaimed horror, and we wanted to bring that atmosphere into a Lovecraftian FPS」、世界観の要素(Deep、Fallen、Deviants、Bio-Arm、Sanityシステム)、クローズドアルファの日程(太平洋時間9月4日19時〜9月8日23時59分)の記載がある — “South Korean studio Royal Crow announces Waste The Fallen, a Lovecraftian extraction shooter” GamesBeat, gamesbeat.com ↩
  • [4] ゲームの概要説明「Waste The Fallen is a Lovecraftian extraction shooter」、世界観の要素(Deep、Fallen、Deviants)、プロデューサー発言、クローズドアルファの日程の記載がある — “Lovecraftian extraction first-person shooter Waste The Fallen announced for PC” Gematsu, gematsu.com ↩
  • [5] プロデューサーByungnam Choi氏の発言「We aimed to create a world where fear gradually creeps into the player, while designing a gameplay structure that rewards curiosity and deeper exploration rather than causing players to lose everything because of a single mistake」、「oversized safebox」機能の説明「there’s an ‘oversized safebox’ feature that allows users to bank more equipment much faster, so if they fail their run, they can recouperate and move back in much more efficiently」の記載がある — “Waste The Fallen Is A New Extraction Game That Promises Not To Punish Players” Insider Gaming, insider-gaming.com ↩
  • [6] 引用・要約は当サイト既存記事による — 「クトゥルフの呼び声」 ↩
  • [7] 引用・要約は当サイト既存記事による — 「狂気の山脈にて」 ↩
  • [8] 引用・要約は当サイト既存記事による — 「インスマスの影」 ↩

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