概要
〈色〉は、H・P・ラヴクラフトの短編「宇宙からの色」(1927年3月執筆/1927年9月Amazing Stories発表)に登場する、名状しがたい非物質的な何かである。原典はこの存在を、地球や天のいかなる色とも一致しない「ただの色」としか呼びようがないと明言し、便宜上「色」という呼称を与えたにすぎないとしている[2][20]。物語の結びでは「宇宙から来た一つの色――私たちの知るあらゆる自然を超えた、形をなさない領域からの恐ろしい使者」と定義され[1]、姿形を持つ怪物としてではなく、隕石とともに飛来し土地そのものを内側から汚染していく作用として描かれる。
舞台はアーカム郊外、ネイハム・ガードナーの農場である。落下した隕石は縮み、分光器に未知の帯を示し、内部からは名状しがたい色の球体が見つかった。〈色〉は植物・動物・人間の順に作用を及ぼし、最終的にはガードナー一家のほぼ全員を蝕んだのち、光の柱となって井戸から夜空へ去った。跡地は「荒れ野(blasted heath)」と呼ばれる不毛の地となり、物語の結びの時点でも年に1インチほど拡大し続けているとされる[22]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 地球外の存在(原典に明確な分類の記述はない) |
| 欧文表記 | THE COLOUR OUT OF SPACE |
| 初出 | 「宇宙からの色」(1927年3月執筆/1927年9月Amazing Stories発表)[3] |
| 舞台 | アーカム郊外、ネイハム・ガードナー農場の井戸 |
| 性質 | 地球や天のどんな色とも一致しない「ただの色」[20]。姿形を持つ怪物ではなく、隕石とともに飛来し土地・生物を汚染していく作用として描かれる |
| 呼称の由来 | 便宜上「色」と呼ばれたにすぎず、原典に他の固有名は与えられていない[2] |
初出作品
「宇宙からの色」は1927年3月に執筆され、同年9月に雑誌Amazing Stories誌第2巻第6号(556ページから)に発表された[3][4]。
〈色〉という存在そのものが本作以外のラヴクラフト作品に登場するかどうかは本記事の調査範囲では確認できておらず、後述のとおりダーレス以降の体系やTRPG設定への組み込みも同様に確認できなかった。
原典での描写
老アミ・ピアースの語りによれば、すべての出来事は隕石の落下から始まった。それ以前、この一帯には魔女裁判以来これといった荒唐無稽な伝説はなく、当時でさえ、西の森は、悪魔がインディアンより古い石の祭壇のかたわらで法廷を開くというミスカトニック川の小島ほどには恐れられていなかった[5]。
夜になる頃には、アーカム中が、空から落ちてネイハム・ガードナー宅の井戸のそばの地面にめり込んだ、あの大きな岩の噂で持ちきりだった[6]。隕石は頑固に冷めることを拒み、大学を実際の興奮状態に陥れた。分光器の前で加熱すると、通常のスペクトルのどんな既知の色とも異なる輝く帯を示し、新元素や奇妙な光学的性質をめぐる息もつかせぬ議論が沸き起こった[7]。ネイハムは、隕石が一晩で縮んだと証言したが、賢者たちは石が縮むはずはないと取り合わなかった[8]。
地質学者のハンマーで叩くと、隕石は異様に軟らかく、ほとんど可塑性を帯びていたため、教授たちは標本を削り取るのではなく抉り取った[9]。原典は、隕石を調べに来た三人の教授がミスカトニック大学の所属であると明記している[26]。化学分析でも隕石はケイ素に対する奇妙な親和性を示し、木炭上での加熱でも封じ込められたガスを示さず、硼砂球試験でも完全に不活性、酸水素吹管の熱でも不揮発性という、実験室のあらゆる手順に対して不可解な振る舞いを見せた[10]。そして隕石の内部からは、大きな色のついた球体が発見される。その色は隕石のスペクトルに現れた帯に似て名状しがたく、教授たちがそれを「色」と呼んだのも類推によるものにすぎなかった[2]。
4月になると周辺の田舎の人々に一種の狂気が兆し始め、ネイハム宅の前を通る道が使われなくなり、やがて完全な廃道となる契機になった[11]。果樹園の木々はすべて奇妙な色に花開き、庭や牧草地の石の多い土壌からは、植物学者でなければ地方本来の植物相と結びつけられないような奇怪な成長物が生え出た[12]。豚は灰色になり脆くなって、死ぬ前にばらばらに崩れ始め、目と鼻面にも異様な変化が生じた[13]。
ネイハムの息子サディアスは正気を失い、母親の部屋の向かいの屋根裏部屋に閉じ込められた。鍵のかかった扉越しにサディアスと母ネイビーが互いに叫び合う声は、幼い末子マーウィンには、この世のものではない言語のように聞こえたという[14]。妻ネイビーもまた正気を失い、屋根裏に閉じ込められていた。アミ・ピアースが訪ねた際、ネイハムは妻の居場所すら即座には答えられないほど心が乱れていた[15]。
死の間際のネイハムは、「悪しき水」「ゼナスは井戸から戻らなかった」「逃げられない、引き寄せられる」という譫言を繰り返し残した[16]。夜には、井戸の黒い坑からサーチライトを弱めたような光の柱が立ち上るのが目撃され、水の抜かれた地面の水たまりに鈍い反射を投げかけた[17]。屋根裏で異形と化したネイハムは、崩れ続けながらも、ごくゆっくりと、しかし知覚できるほどに動いていたという、恐ろしい特徴を持っていた[18]。
やがて井戸から、形をなさない色の流れが湧き出し、そのまま空へ直接流れ込んでいくように見えた[19]。それはただの色だった――だが地球や天のどんな色でもなかった。アミはその色を見分け、最後のかすかな残滓が今も井戸の底に潜んでいるに違いないと悟ったため、以来決して元の彼には戻っていない[20]。他にも球体は存在したはずで、そのうち一つは自らを養って脱出し、もう一つは間に合わなかったのだろうと推測されている[21]。
跡地は「荒れ野(blasted heath)」と呼ばれる不毛の灰色の土地となり、その病巣は少しずつ、年に1インチほど広がり続けているとされる[22]。物語は、この地を水底に沈める新しい貯水池計画への言及とともに結ばれ[28]、語り手は生存者アミの身を案じながらも、彼を「灰色でねじれ、脆くなった化け物」として思い描くことを恐れている[23]。
ダーレス以降の変化
ダーレス以降の作家による扱いは、本記事の調査では確認できる一次資料が無かった。〈色〉は原典一作のみに登場する固有名を持たない現象であり、後世の作家によって体系立てて位置づけられた記録は見つかっていない。
TRPGでの扱い
TRPG『クトゥルフの呼び声』での扱いは、公式資料で確認できなかった(未確認)。
登場作品一覧
原典小説と、当サイトに個別記事がある映像化・漫画化作品を挙げる。〈色〉そのものを扱った他の原典作品は無い。
| 作品 | 分類 | 備考 |
|---|---|---|
| 宇宙からの色 | 原作小説 | H・P・ラヴクラフトによる原典[3] |
| Color Out of Space(カラー・アウト・オブ・スペース ―遭遇―) | 映画化 | 当サイトに個別記事がある実写映画化作品 |
| Die Farbe(宇宙の彼方より) | 映画化 | 当サイトに個別記事がある実写映画化作品 |
| 異世界の色彩 ラヴクラフト傑作集 | 漫画化 | 当サイトに個別記事がある漫画化作品 |
関連神格・地域・書物
原典には、〈色〉を他のクトゥルフ神話的存在や書物と結びつける記述は一切ない。以下は、原典内で明示される土地・人物との関係に限る。
地域
- アーカム — 事件が起きたネイハム・ガードナー農場の所在地であり、噂が広がった町[6]
- ミスカトニック大学 — 隕石を調査した三人の教授の所属先。原典が大学名を明記している[26]
- ネイハム・ガードナー農場/「荒れ野(blasted heath)」 — 事件の舞台そのもの。現在は不毛の灰色の土地となっている(当サイトに個別記事はない)
関わった人物(いずれも当サイトに個別記事はない)
- ネイハム・ガードナー — 隕石を発見・通報した農場主。最終的に屋根裏で崩壊していく
- アミ・ピアース — 隣人。「奇妙な日々」を語る唯一の生存者であり、彼の家がアーカム周辺の開けた土地や人通りの多い道に近いからこそ、これを語ることができたとされる[24]
- ネイビー・ガードナー — ネイハムの妻。発狂して屋根裏に閉じ込められた
- サディアス・ゼナス・マーウィン — ネイハムの息子たち。サディアスは発狂し、ゼナスは井戸に消え、マーウィンは末子として事件を目撃した
参考文献
- [1] “It was just a colour out of space—a frightful messenger from unformed realms of infinity beyond all Nature as we know it; from realms whose mere existence stuns the brain and numbs us with the black extra-cosmic gulfs it throws open before our frenzied eyes.” (訳: その色は宇宙から来た一つの色に過ぎなかった――私たちが知るあらゆる自然を超えた、形をなさない領域からの恐ろしい使者であり、その存在そのものが正気を凍りつかせ、狂乱した目の前に押し開かれる黒い宇宙外の深淵によって私たちを麻痺させるような領域からの使者だった。) — 「宇宙からの色」(1927年執筆/1927年9月Amazing Stories発表), The H. P. Lovecraft Archive
- [2] “They had uncovered what seemed to be the side of a large coloured globule imbedded in the substance. The colour, which resembled some of the bands in the meteor’s strange spectrum, was almost impossible to describe; and it was only by analogy that they called it colour at all.” (訳: 彼らは、その物質に埋め込まれた大きな色のついた球体の側面らしきものを掘り当てていた。その色は隕石の奇妙なスペクトルに現れた帯のいくつかに似ており、ほとんど描写不可能だった。それを『色』と呼んだのも、類推によるものにすぎなかった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [3] “The Colour Out of Space By H. P. Lovecraft 556″(訳: 目次「宇宙からの色 H・P・ラヴクラフト 556ページ」) — *Amazing Stories* Vol. 2, No. 6(1927年9月号)スキャン、archive.org 識別子 `Amazing_Stories_v02n06_1927-09`、archive.org(OCR本文の目次で掲載を確認、2026-09-07)
- [4] “The Colour out of Space (March 1927)”(訳: 「宇宙からの色(1927年3月)」) — H. P. Lovecraft 作品一覧(執筆年月)、hplovecraft.com
- [5] “It all began, old Ammi said, with the meteorite. Before that time there had been no wild legends at all since the witch trials, and even then these western woods were not feared half so much as the small island in the Miskatonic where the devil held court beside a curious stone altar older than the Indians.” (訳: すべては、と老アミは言った、隕石から始まったのだ。それ以前には、魔女裁判以来まったく荒唐無稽な伝説などなかった。もっとも当時でさえ、この西の森は、悪魔がインディアンより古い奇妙な石の祭壇のかたわらで法廷を開くというミスカトニック川の小島ほどには恐れられていなかった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [6] “by night all Arkham had heard of the great rock that fell out of the sky and bedded itself in the ground beside the well at the Nahum Gardner place.” (訳: 夜になる頃には、アーカム中が、空から落ちてきてネイハム・ガードナー宅の井戸のそばの地面にめり込んだ、あの大きな岩の噂で持ちきりだった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [7] “Stubbornly refusing to grow cool, it soon had the college in a state of real excitement; and when upon heating before the spectroscope it displayed shining bands unlike any known colours of the normal spectrum there was much breathless talk of new elements, bizarre optical properties, and other things which puzzled men of science are wont to say when faced by the unknown.” (訳: 頑固に冷めることを拒み、それはたちまち大学を実際の興奮状態に陥れた。分光器の前で加熱すると、通常のスペクトルのどんな既知の色とも異なる輝く帯を示し、新元素や奇妙な光学的性質について、未知のものに直面した科学者たちが口にしがちな、息もつかせぬ議論が沸き起こった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [8] “It had shrunk, Nahum said as he pointed out the big brownish mound above the ripped earth and charred grass near the archaic well-sweep in his front yard; but the wise men answered that stones do not shrink.” (訳: それは縮んだのだ、とネイハムは、前庭の古めかしい撥ね釣瓶のそばの、掘り返された土と焦げた草の上にある茶色っぽい大きな塊を指しながら言った。だが賢者たちは、石が縮むはずはないと答えた。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [9] “The professors tried it with a geologist’s hammer and found it was oddly soft. It was, in truth, so soft as to be almost plastic; and they gouged rather than chipped a specimen to take back to the college for testing.” (訳: 教授たちは地質学者のハンマーでそれを試し、異様に軟らかいことに気づいた。実のところ、ほとんど可塑性を帯びるほど軟らかく、彼らは検査のため大学へ持ち帰る標本を、削り取るのではなく抉り取った。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [10] “the wise men talked of the strange stone’s affinity for silicon. It had acted quite unbelievably in that well-ordered laboratory; doing nothing at all and shewing no occluded gases when heated on charcoal, being wholly negative in the borax bead, and soon proving itself absolutely non-volatile at any producible temperature, including that of the oxy-hydrogen blowpipe.” (訳: 賢者たちは、この奇妙な石のケイ素に対する親和性について語り合った。それはあの整然とした実験室の中で、まったく信じがたい振る舞いを見せた――木炭上で加熱しても閉じ込められたガスを何ら示さず、硼砂球試験ではまったく反応を示さず、やがて酸水素吹管の熱を含め、作り出せるいかなる温度に対しても絶対に不揮発性であることが証明された。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [11] “April brought a kind of madness to the country folk, and began that disuse of the road past Nahum’s which led to its ultimate abandonment.” (訳: 4月は田舎の人々に一種の狂気をもたらし、ネイハム宅の前を通る道が使われなくなり、やがて完全に廃道となる契機を作った。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [12] “All the orchard trees blossomed forth in strange colours, and through the stony soil of the yard and adjacent pasturage there sprang up a bizarre growth which only a botanist could connect with the proper flora of the region.” (訳: 果樹園の木々はすべて奇妙な色に花開き、庭や隣接する牧草地の石の多い土壌からは、植物学者でなければこの地方本来の植物相と結びつけられないような奇怪な成長物が生え出た。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [13] “The swine began growing grey and brittle and falling to pieces before they died, and their eyes and muzzles developed singular alterations.” (訳: 豚は灰色になり脆くなって、死ぬ前にばらばらに崩れ始めた。その目と鼻面にも、異様な変化が生じた。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [14] “he shut him in an attic room across the hall from his mother’s. The way they screamed at each other from behind their locked doors was very terrible, especially to little Merwin, who fancied they talked in some terrible language that was not of earth.” (訳: 彼は彼(サディアス)を、母親の部屋の向かいにある屋根裏部屋に閉じ込めた。鍵のかかった扉の向こうで互いに叫び合う様子は実に恐ろしく、幼いマーウィンには、二人がこの世のものではない何か恐ろしい言語で話しているように思えたほどだった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [15] “Then there flashed across the visitor’s mind a sudden thought of the mad wife, and he changed his line of inquiry. “Nabby? Why, here she is!” was the surprised response of poor Nahum, and Ammi soon saw that he must search for himself.” (訳: その時、来訪者(アミ)の心に不意に狂った妻のことが思い浮かび、彼は質問の方向を変えた。「ネイビー?ああ、ここにいるよ!」というのが、哀れなネイハムの驚いた返答であり、アミはすぐに、自分で捜さなければならないと悟った。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [16] “evil water . . . Zenas never come back from the well . . . can’t git away . . . draws ye . . . ye know summ’at’s comin’, but ’tain’t no use . . . I seen it time an’ agin senct Zenas was took” (訳: 悪しき水……ゼナスは井戸から二度と戻らなかった……逃げられない……引き寄せられる……何かが近づいてくるのは分かるが、どうしようもない……ゼナスが連れ去られて以来、何度もそれを見てきた。) — 「宇宙からの色」(1927年、ネイハムの臨終の譫言), The H. P. Lovecraft Archive
- [17] “this new glow was something definite and distinct, and appeared to shoot up from the black pit like a softened ray from a searchlight, giving dull reflections in the little ground pools where the water had been emptied.” (訳: この新しい輝きは、はっきりと際立った何かであり、黒い坑からサーチライトを弱めたような光線のように立ち上るように見え、水が汲み出された小さな地面の水たまりに鈍い反射を投げかけていた。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [18] “But the terrible thing about this horror was that it very slowly and perceptibly moved as it continued to crumble.” (訳: だが、この恐怖について何より恐ろしかったのは、それが崩れ続けながらも、ごくゆっくりと、しかし知覚できるほどに動いていたことだった。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [19] “as the shapeless stream of unplaceable colour left the well it seemed to flow directly into the sky. The veterinary shivered, and walked to the front door to drop the heavy extra bar across it.” (訳: その形をなさない、名状しがたい色の流れが井戸を離れると、それはそのまま空へ流れ込んでいくように見えた。獣医は身震いし、正面玄関へ歩み寄って、重い予備の閂を下ろした。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [20] “It was just a colour—but not any colour of our earth or heavens. And because Ammi recognised that colour, and knew that this last faint remnant must still lurk down there in the well, he has never been quite right since.” (訳: それはただの色だった――だが、地球や天のどんな色でもなかった。そしてアミがその色を見分け、この最後のかすかな残滓が今もあの井戸の底に潜んでいるに違いないと悟ったからこそ、彼は以来、決して元の彼には戻っていない。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [21] “There were other globules—depend upon that. One must have fed itself and escaped, and probably there was another which was too late.” (訳: 他にも球体はあった――それは間違いない。一つは自らを養って脱出したに違いなく、おそらくもう一つは間に合わなかったのだろう。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [22] “the blight is spreading—little by little, perhaps an inch a year. People say the colour of the neighbouring herbage is not quite right in the spring, and that wild things leave queer prints in the light winter snow.” (訳: その病巣は広がりつつある――少しずつ、おそらく年に1インチほど。近隣の草の色が春になっても正しくなく、野生の動物たちが冬の軽い雪の上に奇妙な足跡を残す、と人々は言う。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [23] “I would hate to think of him as the grey, twisted, brittle monstrosity which persists more and more in troubling my sleep.” (訳: 彼のことを、私の眠りをますます悩ませ続けている、あの灰色で、ねじれ、脆くなった化け物として思い描くのは、ぞっとすることだった。) — 「宇宙からの色」(1927年、結末部), The H. P. Lovecraft Archive
- [24] “old Ammi Pierce has never told them of anything he recalls from the strange days. Ammi, whose head has been a little queer for years, is the only one who still remains, or who ever talks of the strange days; and he dares to do this because his house is so near the open fields and the travelled roads around Arkham.” (訳: 老アミ・ピアースは、あの奇妙な日々について記憶していることを彼らに語ったことは一度もない。何年も前から少し頭がおかしいと言われてきたアミは、今もなおそこに残り、あの奇妙な日々について語る唯一の人物であり、彼がそれを語る勇気を持てるのは、彼の家がアーカム周辺の開けた野原や人通りの多い道にとても近いからにほかならない。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [25] “I doubt very much if Ammi consciously lied to me, and I do not think his tale was all a freak of madness as the townfolk had forewarned.” (訳: アミが私に意識的に嘘をついたとは、私にはとても思えない。そして彼の話が、町の人々が前もって私に警告したような、すべて狂気のいたずらだったとも思わない。) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [26] “He and his wife had gone with the three professors from Miskatonic University who hastened out the next morning to see the weird visitor from unknown stellar space”(訳: 彼と妻は、未知の恒星空間からの奇妙な来訪者を見ようと翌朝急いでやって来たミスカトニック大学の三人の教授に同行した) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [27] “When I went into the hills and vales to survey for the new reservoir they told me the place was evil.”(訳: 新しい貯水池の測量のために丘陵と谷へ入ったとき、人々はその場所が邪悪だと私に告げた) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
- [28] “The reservoir will soon be built now, and all those elder secrets will be safe forever under watery fathoms.”(訳: 貯水池はまもなく築かれ、あの古い秘密はすべて、水底の深みに永久に安全に封じられるだろう) — 「宇宙からの色」(1927年), The H. P. Lovecraft Archive
FAQ
Q. 〈色〉は生物なのですか。A. 原典は明確な生物学的定義を与えていない。姿形を持たず「宇宙からの一つの色――恐ろしい使者」と表現され[1]、化学分析でもケイ素への親和性を示しつつ加熱にも酸にも反応しない不可解な物質として描かれる[10]。一方で、球体が「自らを養って脱出した」と推測される場面もあり[21]、生物的な振る舞いに近い側面も示唆されている。生物か非生物かを判定する記述は、原典には残されていない。
Q. 〈色〉はすべて空へ去ったのですか。A. いいえ。井戸から空へ流れ去ったのは大部分であり[19]、アミはその色を見分け、最後のかすかな残滓が今も井戸の底に潜んでいるに違いないと悟っている[20]。跡地の「荒れ野」も、物語の結びの時点で年に1インチほど拡大し続けているとされる[22]。
Q. なぜ「色」と呼ばれるのですか。A. 隕石の内部に見つかった球体の色は、隕石のスペクトルに現れた帯に似て名状しがたく、教授たちが「色」と呼んだのも類推によるものにすぎなかったとされる[2]。「色」は固有名ではなく、描写する語彙が他になかったための便宜的な呼称である。
Q. 語り手はアミ・ピアースの証言をどう評価しているのですか。A. 貯水池の測量のためこの地を訪れた語り手(測量技師)[27]は、アミが意識的に嘘をついたとは思えず、町の人々が前もって警告したような、話のすべてが狂気のいたずらだったとも思わないと述べている[25]。




