PCゲーム(STEAM・2026年9月10日発売予定) — WELCOME TO ELDERFIELD

Welcome to Elderfield

農場に触手が生える2026年の"コージーホラー"。ソロ開発者Chris Coteが手がけ、Kwaleeが販売するPCゲーム『Welcome to Elderfield』が2026年9月10日にSteamで発売予定だ。農場経営・釣り・採掘・住民との交流という牧歌的な生活シムの骨格に、目玉や歯を育てる畑と「Old Gods」への遭遇を組み込んだ作品で、同時期の『The Piper of Dawn』とともに、生活シムとLovecraftian要素を掛け合わせる作例の広がりを示している。

公開更新作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

概要

『Welcome to Elderfield』は、ソロ開発者Chris Coteが手がけるPCゲームで、Kwaleeが販売元としてSteamで2026年9月10日に発売予定だ[1]。Steamのストアページ冒頭は本作を「a cozy horror RPG with hand-drawn art and dark lofi music.(手描きのアートワークとダークなローファイ音楽を持つ、コージーホラーRPG)」と紹介している[1]。無料デモが既に配信中で、対応言語は英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・簡体字中国語・ポルトガル語(ブラジル)の7言語。日本語はこの一覧に含まれておらず、日本語対応は確認できていない[1]。プレイモードはシングルプレイのみで、価格は本稿執筆時点(発売前)ではストアページに表示されていない[1]。

開発元・販売元のいずれについても、Chaosiumやそのほかのクトゥルフ神話TRPGの版元による公式ライセンス表記はストアページ上に見当たらない。したがって本作は「クトゥルフ神話公式」の作品ではなく、Lovecraftian(ラヴクラフト的)なコズミックホラーの意匠を取り込んだインディーゲームとして扱う。

どんな作品か

ストアページの説明文は、農場・釣り・採掘・交友という生活シムの骨格を、次のように具体的に列挙している。

Cultivate your land, harvest your crops, and stop the growth of unruly tentacles.(訳: 土地を耕し、作物を収穫し、手に負えない触手の成長を止めよう)[1]

grow useful crops like corn, pumpkins, teeth or eyeballs(訳: トウモロコシやカボチャ、あるいは歯や目玉といった、役に立つ作物を育てよう)[1]

Manage a variety of strange, otherworldly livestock(訳: さまざまな、奇妙で異世界的な家畜を管理しよう)[1]

go fishing, spend your afternoons mining and forage through the surrounding wilds(訳: 釣りに出かけ、午後は採掘に費やし、周囲の荒野で採集をしよう)[1]

Customize your home and character, unravel daily mysteries(訳: 自宅とキャラクターをカスタマイズし、日々の謎を解き明かそう)[1]

befriend the odd townsfolk (or even marry one!)(訳: 風変わりな住民たちと友情を築こう(結婚することさえできる!))[1]

そして、こうした牧歌的な日常のすぐ隣に、次の一文が置かれている。

For those who crave a challenge, the Old Gods are waiting(訳: 手応えを求める者には、Old Godsが待っている)[1]

encounters with ancient, Lovecraftian horrors(訳: 太古のLovecraftian的な恐怖との遭遇)[1]

農場を耕せば触手が生え、作物として歯や目玉が実り、家畜は異世界的なものになる——牧歌的な生活シムの語彙が、そのまま異常事態を語る語彙にすり替わっていく構成だ。ジャンルタグはAdventure、Casual、Indie、RPG、Simulation、Strategyの6つで、Steam Deckへの対応状況についてはストアページ上に記載がなく、確認できていない。

なぜ「日常」と「異常」を交互に置くのか

ストアページの説明文が実際に書いているのは、「the abnormal is normal, the townsfolk are odd, the eldritch beings watch over you and the local news reports seem stranger by the day.(訳: 異常なことが正常であり、住民たちは風変わりで、超越的な存在たちが見守っており、地元のニュースは日を追うごとに奇妙さを増していく)」という一文だ[1]。ここで語られているのは、ホラーが日常の外から侵入してくるのではなく、最初から日常の内側に組み込まれている、という前提そのものだ。

この対比を、英ゲームメディアPowerUpGamingは記事の中で「The contrast between comforting gameplay and disturbing discoveries is one of the key features that makes the game stand out(訳: 心地よいゲームプレイと不穏な発見との対比こそが、この作品を際立たせる特徴の一つだ)」と評している[2]。同記事は本作を「cosy agriculture with Lovecraftian horror(訳: コージーな農業とLovecraftianホラーの組み合わせ)」とも呼んでいる[2]。

ただし、この対比を開発者自身が「なぜそう設計したか」という意図として語った発言は、本稿で確認した範囲のストアページ・報道記事のいずれにも見当たらない。ここで確認できるのは、公式の製品説明が実際に「日常と異常を並列させる」という書き方をしていること、そして第三者のメディアがその効果を「対比が際立たせる」と評していることまでであり、開発者本人の設計意図として断定することはできない。

『The Piper of Dawn』という並走例

同時期のSteamには、似た組み合わせを持つもう一つの作品がある。Bone Nailが開発し、Steamの英語表記で2026年9月22日(日本語表記では23日)に発売予定の『The Piper of Dawn』だ[3]。ストアページによれば、本作はアルケミストとしてダイヤモンド・シティを舞台に、100種類を超える作物を育てる農場経営と、店の経営、複数の派閥との関係構築を組み合わせたマネジメントRPGで、ジャンルタグには「Lovecraftian」が含まれる[3]。作中には「Old Gods」「Outer Gods」という語が登場し、「Oracles」と呼ばれるガチャ的なシステムを通じてプレイヤーと関わる設計だという[3]。ストアページはさらに、本作を開発元自身の言葉で次のように位置づけている。

This is our fourth game and the official sequel to Yog-Sothoth’s Yard.(訳: これは私たちの4作目であり、『Yog-Sothoth’s Yard』の公式続編である)[3]

対応言語には英語・簡体字中国語・日本語・繁体字中国語が含まれており、日本語対応が確認できる点は『Welcome to Elderfield』と異なる[3]。

両作を並べると、共通するのは「作物を育てる」という生活シムの中心動詞に、「Old Gods」「Outer Gods」という神格カテゴリ名を直接持ち込んでいる点だ。ただし、この2作から「2026年にこの組み合わせが増えている」という一般的な傾向を実証することはできない。本稿で確認できたのはこの2つの実例であり、業界全体の統計や公式の分析記事は確認していない。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

まず用語の出どころを確認しておきたい。両作が使う「Old Gods」という呼称は、ラヴクラフト自身の原典の用語ではない。当サイトの「外なる神」の記事が確認している通り、ラヴクラフトが『未知なるカダスを夢に求めて』で実際に使った呼称は「Other Gods(他なる神々)」だった。

the blind, voiceless, tenebrous, mindless Other Gods whose soul and messenger is the crawling chaos Nyarlathotep.(訳: その巨大にして究極なる神々、盲目で声もなく、闇に閉ざされ、精神を持たぬ他なる神々——その魂であり使者であるのが、這い寄る混沌ニャルラトホテプである)[4]

「Outer Gods(外なる神)」という分類名も、原典の言葉をそのまま引き継いだものではなく、後年のTRPGなどが体系化の過程で確立したカテゴリだ。当サイトの「三層で読み解くクトゥルフ神話」が整理している通り、ラヴクラフトの小説自体には体系だった神格分類も善悪の対立構図も存在せず、そうした分類は彼の死後、TRPGというメディアがゲームとして成立させるために独自に必要とした第3層の産物だ。したがって両ゲームの「Old Gods」という表記は、原典の「Other Gods」とTRPG由来の「Outer Gods」が、マーケティングコピーの中で混ざり合った結果だと見るのが実態に近い。ゲーム側がこの語をどこまで意識的に選んでいるかは、公式説明の範囲では確認できない。

そのうえで、『Welcome to Elderfield』の骨格——牧歌的な農場の内側から、家族や日常そのものが変質していく——という構図は、TRPGの数値体系よりも、むしろ原典の中編小説に近いところに立っている。当サイトの「宇宙からの色」は、アーカム西方の農場に落ちた隕石から滲み出た「色」が、井戸水と作物と家族を外側からではなく内側から変質させていく物語だ。冒頭で語り手はこう述べている。

It is not because of anything that can be seen or heard or handled, but because of something that is imagined.(訳: 見えるもの、聞こえるもの、手で触れられるもののせいではない。想像されてしまう何かのせいなのだ)[5]

農場という最も日常的な生産の場が、目に見える怪物ではなく、作物や井戸水そのものの変質を通じて侵食されていく——この構図は、『Welcome to Elderfield』が「触手の成長を止める」「歯や目玉を作物として育てる」という形でゲームシステム化した異常性と、同じ土台に立っている。

もう一つ、当サイトの「ダニッチの怪」も参照点になる。この中編は、外部から孤立した寒村ダニッチを舞台に、一つの家系の異常な子どもの成長が、やがて村全体を襲う怪異へつながっていく物語だ。ここでも恐怖は都市から侵入してくるのではなく、閉じた共同体の内側、日常の延長線上で育っていく。『Welcome to Elderfield』の「風変わりな住民たち」「日を追うごとに奇妙さを増す地元のニュース」という設定も、閉じた田舎町という舞台そのものに異常が根を張っているという点で、この構図と重なる。

とはいえ、これらはいずれも構図の類似であり、開発者が『宇宙からの色』や『ダニッチの怪』を直接参照したという発言は、本稿で確認した範囲の資料には存在しない。ゲーム側の公式説明が「Lovecraftian」という語を使っている以上、この系譜に連なる作品だと位置づけることはできるが、個別の原典作品からの直接の影響関係を主張することはできない。

関連して読むなら

  • 宇宙からの色 — 農場に落ちた隕石が、家族と作物を内側から変質させていく中編。『Welcome to Elderfield』の「農場が侵食される」構図の下敷きにあたる
  • ダニッチの怪 — 孤立した寒村の内側で異常が育っていく物語。閉じた田舎町という舞台設定の系譜を確認できる
  • 三層で読み解くクトゥルフ神話 — 「Old Gods」「Outer Gods」といった呼称が、原典・後続作家・TRPGのどの層に由来するかを整理した記事
  • 外なる神 — ラヴクラフト自身が使った「Other Gods」という原語と、後年の「外なる神」という分類の違いを確認できる

出典

  • [1] 発売予定日2026年9月10日、開発Chris Cote・販売Kwalee、対応言語(英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・簡体字中国語・ポルトガル語(ブラジル)、日本語は含まれない)、シングルプレイ、無料デモ配信中、ジャンルタグ(Adventure, Casual, Indie, RPG, Simulation, Strategy)、Steam Deck対応の記載なし、価格未掲載であること。説明文「Welcome to Elderfield, a cozy horror RPG with hand-drawn art and dark lofi music.」「Cultivate your land, harvest your crops, and stop the growth of unruly tentacles.」「grow useful crops like corn, pumpkins, teeth or eyeballs」「Manage a variety of strange, otherworldly livestock」「go fishing, spend your afternoons mining and forage through the surrounding wilds」「Customize your home and character, unravel daily mysteries」「befriend the odd townsfolk (or even marry one!)」「For those who crave a challenge, the Old Gods are waiting」「encounters with ancient, Lovecraftian horrors」「the abnormal is normal, the townsfolk are odd, the eldritch beings watch over you and the local news reports seem stranger by the day.」の各記載がある — Steamストアページ「Welcome to Elderfield」, store.steampowered.com(2026年9月5日確認) ↩
  • [2] 「The contrast between comforting gameplay and disturbing discoveries is one of the key features that makes the game stand out」「cosy agriculture with Lovecraftian horror」の記載がある — PowerUpGaming「Welcome to Elderfield Has an Official Release Date」, powerupgaming.co.uk(2026年9月5日確認) ↩
  • [3] 開発Bone Nail、発売予定日2026年9月22日、ジャンルタグに「Lovecraftian」を含む、100種類を超える作物、「Old Gods」「Outer Gods」というガチャシステム「Oracles」との関連、対応言語に日本語を含む(英語・簡体字中国語・日本語・繁体字中国語)、「Grow over 100 unique crops, each with its own growth stages and trait modifiers」「This is our fourth game and the official sequel to Yog-Sothoth’s Yard.」の記載がある — Steamストアページ「The Piper Of Dawn」, store.steampowered.com(2026年9月5日確認) ↩
  • [4] 「the blind, voiceless, tenebrous, mindless Other Gods whose soul and messenger is the crawling chaos Nyarlathotep.」の記載がある — H. P. Lovecraft, “The Dream-Quest of Unknown Kadath”(1926–1927年執筆/1943年発表), hplovecraft.com。当サイト「外なる神」で確認済みの引用を再掲した ↩
  • [5] 「It is not because of anything that can be seen or heard or handled, but because of something that is imagined.」の記載がある — H. P. Lovecraft, “The Colour Out of Space”(1927年3月執筆/同年9月『アメージング・ストーリーズ』誌発表), hplovecraft.com。当サイト「宇宙からの色」で確認済みの引用を再掲した ↩

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました