版元(TRPG出版社) — Pelgrane Press Ltd

ペルグレイン・プレス(Pelgrane Press)

ペルグレイン・プレス(Pelgrane Press)は、『トレイル・オブ・クトゥルー』『Cthulhu Confidential』『The Fall of DELTA GREEN』など、GUMSHOEシステムでクトゥルフ神話を描き続ける英国の版元。2000年設立から現在進行中の『トレイル・オブ・クトゥルー』第2版クラウドファンディングまでを追う

公開作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

概要

Pelgrane Press(ペルグレイン・プレス[10])は、2000年に設立された英国のテーブルトークRPG出版社である。自社開発の「GUMSHOEシステム」を軸に、キャラクター重視・物語主導型のRPGを刊行してきた[1]。クトゥルフ神話に関わる読者にとってもっとも縁が深いのは、H.P.ラヴクラフトの物語世界を1930年代の調査ホラーとして再構成した『トレイル・オブ・クトゥルー』、1対1プレイに特化した『Cthulhu Confidential』、そしてArc Dream Publishingの『Delta Green』を1960年代の物語としてGUMSHOE化した『The Fall of DELTA GREEN』の3ラインである。日本では、グループSNEと新紀元社が『トレイル・オブ・クトゥルー』の改訂版を刊行しており、2026年9月現在、本国では『トレイル・オブ・クトゥルー』第2版のクラウドファンディングが進行中である。

設立と現在の経営体制

公式サイトの「About Us」ページは、会社の成り立ちを次のように説明している。

“Founded in 2000, Pelgrane Press is a UK-based tabletop roleplaying game publishing company which publishes character-focused and story-driven TTRPGs. It is co-owned by Simon Rogers and Cat Tobin.”(訳:2000年に設立されたPelgrane Pressは、キャラクター重視・物語主導型のTTRPGを刊行する英国拠点のテーブルトークRPG出版社である。共同経営者はサイモン・ロジャースとキャット・トビン)[1]

同ページの「Pelgranista Directory」(社内スタッフ紹介)によれば、共同創業者はサイモン・ロジャース(Simon Rogers)とサシャ・ビルトン(Sasha Bilton)の2人で、サシャは現在「Pelgranistas Emeritus(名誉スタッフ)」として紹介されている。サイモンは現在サバティカル中と明記されており、経営の実務は共同経営者兼マネージングディレクターのキャット・トビン(Cat Tobin)が担っている[1]。クリエイティブディレクターはGUMSHOEシステムの考案者であるロビン・D・ロウズ(Robin D. Laws)で、ライター陣にはケネス・ハイト(Kenneth Hite)、ロブ・ハインスー(Rob Heinsoo)、ガレス・ライダー=ハンラハン(Gareth Ryder-Hanrahan)らが名を連ねる[1]。

ケネス・ハイトの自己紹介文には、次のような一節がある。

“He claims to have bought the first copy of Call of Cthulhu sold in Oklahoma City, in August of 1981.”(訳:彼は1981年8月、オクラホマシティで売られた『Call of Cthulhu』の1冊目を自分が買ったと主張している)[1]

これは公式サイトが公表しているプロフィール文であり、本サイトが独自に裏付けたエピソードではない点を明記しておく。

GUMSHOEシステムという設計思想

Pelgrane Press最大の看板は、自社開発の「GUMSHOE」システムである。公式サイトは次のように説明している。

“Our groundbreaking GUMSHOE roleplaying system shifts the focus of investigative play from finding clues (or worse, not finding them) to interpreting clues, solving mysteries, and moving the action forward.”(訳:画期的なGUMSHOEロールプレイングシステムは、調査プレイの重心を「手掛かりを見つけること(あるいは見つけられないこと)」から「手掛かりを解釈し、謎を解き、物語を前に進めること」へと移す)[1]

最初のGUMSHOEゲームは、ロビン・D・ロウズが手がけた『The Esoterrorists』で、この設計思想と「GUMSHOEシステムとは」の詳しい仕組みは、当サイトの「GUMSHOEシステムとは」で扱っている。GUMSHOEはその後、複数プレイヤー向けのグループプレイ用ルールに加えて、1人のプレイヤーと1人のGMだけで遊べるよう再設計した「GUMSHOE One-2-One」にも派生しており、『Cthulhu Confidential』はこの後者の代表作にあたる。

クトゥルフ神話関連ラインの刊行史

トレイル・オブ・クトゥルー(2008年)

『トレイル・オブ・クトゥルー』の公式製品ページは、この作品を次のように紹介している。

“Trail of Cthulhu is an award-winning roleplaying game of investigative horror, powered by the GUMSHOE system and produced under license from Chaosium.”(訳:『トレイル・オブ・クトゥルー』は、GUMSHOEシステムを動力源とし、Chaosiumからのライセンスのもとで制作された、受賞歴のある調査ホラーRPGである)[2]

つまり本作は、Chaosiumが権利を持つ『Call of Cthulhu』の世界観を、Pelgrane Pressが正式にライセンスを受けて独自システムに移植した作品である。設計はケネス・ハイトが手がけ、1930年代を舞台に「Purist(純粋主義)」と「Pulp(パルプ)」という2つのプレイモードを備える。第2版の紹介ページは、初版の刊行時期と受賞歴について次のように記している。

“First launched in 2008, Trail of Cthulhu pits the investigative GUMSHOE rules against the unknowable and horrific mysteries of the Cthulhu Mythos.”(訳:2008年に発売された『トレイル・オブ・クトゥルー』は、調査型のGUMSHOEルールを、クトゥルフ神話が持つ不可知で恐ろしい謎と対峙させる) “It received two ENWorld Awards in 2008, for Best Rules and Best Writing, and the Lucca Games Festival in 2010 awarded it Best Roleplaying Game and gave it the Best of Show Award.”(訳:2008年にENWorld Awardsの最優秀ルール賞・最優秀文章賞の2部門を受賞し、2010年にはルッカ・ゲームズ・フェスティバルで最優秀ロールプレイングゲーム賞とBest of Show賞を受賞した)[3]

なお、本作の通常の製品ページでは同じ受賞歴が「won two ENnie awards for Best Rules and Best Writing」(ENnie賞2部門を受賞)と表記されており[2]、第2版紹介ページの「ENWorld Awards」という表記と、賞の呼び方が公式サイト内で揺れている。ENnie賞(ENnie Awards)はEN World主催のTRPGアワードの通称であり、実質的に同じ賞を指していると考えられるが、どちらが正式な表記かは本サイトが参照した範囲では確認できなかった。通常の製品ページはこのほか、「now in its third print run, and currently available in five languages」(現在は3回目の増刷を数え、5言語で展開中)とも記している[2]。

Cthulhu Confidential(2017年)

『Cthulhu Confidential』は、GUMSHOE One-2-Oneの旗艦作品である。著者はロビン・D・ロウズ、クリス・スパイヴィー、ルース・ティルマンの3名で、1930年代のロサンゼルス・ニューヨーク・ワシントンD.C.を舞台にした3人の主人公(私立探偵、調査報道記者、弁護士)それぞれに1本ずつ、計3本の物語を収録している[4]。GUMSHOE One-2-Oneという仕組みそのものの詳しい解説は、当サイトの「Cthulhu Confidentialとは」を参照してほしい。刊行時期について、公式サイトの担当者ブログには次の記述がある。

“Those of you receiving your Cthulhu Confidential books will notice an unsettling difference between the print version and the PDF: an empty, white void at the top of page eight.”(訳:『Cthulhu Confidential』の本を受け取った方は、印刷版とPDF版のあいだに、ある不穏な違いがあることに気づくだろう。8ページ目の上部が、空白の何もない空間になっているのだ)— キャット・トビン、2017年5月9日付の投稿[5]

この投稿は「読者が既に本を受け取っている」ことを前提に書かれており、2017年5月の時点で『Cthulhu Confidential』の印刷版が既に読者の手元に届いていたことを示している。厳密な発売日そのものは、本サイトが参照した公式ページの範囲では確認できなかった。

The Fall of DELTA GREEN(2018年)

『The Fall of DELTA GREEN』は、Arc Dream Publishingが刊行する現代版TRPG『Delta Green』を、1960年代の物語としてGUMSHOEシステムに移植した作品である。デルタグリーンという設定そのものの解説は、当サイトの「デルタグリーン入門」にまとめている。公式製品ページは次のように説明している。

“Written by ENnie Award-winning designer Kenneth Hite, The Fall of DELTA GREEN corebook adapts DELTA GREEN: THE ROLE-PLAYING GAME from Arc Dream Publishing to the award-winning GUMSHOE system. It opens the files on a lost decade of anti-Mythos operations both foreign and domestic, the last days of DELTA GREEN before the Joint Chiefs shut the program down in 1970.”(訳:ENnie賞受賞デザイナーのケネス・ハイトが執筆した『The Fall of DELTA GREEN』基本ルールブックは、Arc Dream Publishingの『Delta Green: The Role-Playing Game』を、受賞歴のあるGUMSHOEシステムに翻案したものである。国内外での対神話工作が繰り広げられた失われた10年間、そして1970年に統合参謀本部がプログラムを閉鎖するまでの「デルタグリーン」最後の日々を描く)[6]

刊行時期について公式サイトに明確な発表記事は見当たらなかったが、2018年3月20日付のFree RPG Day 2018告知記事では、本作のクイックスタート版が無料配布対象として案内されており、2018年9月1日付でケネス・ハイト自身が寄稿したコラム記事では、本文中で「FoDG, p. 300」のようにページ番号付きで本編を参照している[7]。これらから、本作は遅くとも2018年9月までには刊行されていたと判断できる。正確な発売月そのものは、本サイトが参照した公式ページの範囲では確認できなかった。

日本語版の刊行

日本語圏では、『トレイル・オブ・クトゥルー』がグループSNE・新紀元社から刊行されている。グループSNE公式サイトの製品ページは、次のように記している。

「著:ケネス・ハイト / 監修:安田均・森瀬繚 / 翻訳:トレイル・オブ・クトゥルー翻訳チーム / 発売日:2023年8月29日 / 定価:4,950円(4,500円+税)/ 発行=グループSNE / 発売=新紀元社 / ISBN:9784775321140 / ※本書は2020年12月に書苑新社より発売された書籍を、発売元を変更して刊行したものです」[8]

つまり日本語版『暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー』は、もともと2020年12月に書苑新社から刊行され、2023年8月29日に発売元を新紀元社へ変更したうえで改訂版として刊行し直された、という経緯になる。このグループSNE公式ページ本文中に、Pelgrane Pressという版元名そのものへの言及は見当たらなかった――ライセンス関係の詳細(直接契約かサブライセンスかなど)は、本サイトが参照した範囲では確認できなかった。『Cthulhu Confidential』および『The Fall of DELTA GREEN』の日本語版が存在するかどうかについても、グループSNE・新紀元社の公式サイトには記載が見当たらない。

現在進行中の展開:『トレイル・オブ・クトゥルー』第2版

2026年9月現在、Pelgrane Press公式サイトの『トレイル・オブ・クトゥルー第2版』ページは、次のように案内している。

“TRAIL OF CTHULHU 2ND EDITION — COMING SOON! PREORDER ON BACKERKIT NOW — DOWNLOAD 2E QUICKSTART NOW”(訳:トレイル・オブ・クトゥルー第2版――近日発売!いまBackerkitで予約受付中――第2版クイックスタート版はいまダウンロード可能)[3]

新版はケネス・ハイトとガレス・ライダー=ハンラハンが共同で手掛けたもので、第1版と後方互換性を持ち、『The Armitage Files』『Bookhounds of London』『Eternal Lies』『Dreamhounds of Paris』など既刊サプリメントもそのまま使えるとされる[3]。20種類の「Occupation(職業)」、Drivesメカニクスの拡張に加え、「Armitage Inquiry」「Beneath Unknown Skies」「Shadows Under Chicago」という3つの新規キャンペーンフレーム、そして2本の導入シナリオ「The Hammer of the Gods」「Afterlight」が収録される予定である[3]。

この第2版計画には興味深い経緯がある。ケネス・ハイト自身が2023年9月6日付で公開したブログ記事では、当時の見通しとして次のように書かれていた。

“Original edition creator Kenneth Hite and superstar writer-designer Gareth Ryder-Hanrahan are collaborating on the revision process under the keen eye of Pelgrane publisher Cathriona Tobin, with the goal of being ready for a Kickstarter launch this November.”(訳:初版の生みの親であるケネス・ハイトと、花形ライター兼デザイナーのガレス・ライダー=ハンラハンが、Pelgrane社の発行人キャスリオーナ・トビンの目の行き届いた監督のもと改訂作業を進めており、今年11月のKickstarter開始を目標としている)[9]

つまり当初(2023年9月時点)は「2023年11月のKickstarter開始」が目標とされていたが、本サイトが2026年9月に確認した公式サイトでは、第2版はまだ「COMING SOON」の予約受付段階にある。当初の想定から実際のクラウドファンディング開始までに数年単位の遅れが生じたと見られるが、その遅延の理由について公式サイトが説明している記述は、本サイトが参照した範囲では見当たらなかった。なお、BackerKit上での実際の支援金額・支援者数については、backerkit.comへのアクセスがアクセス拒否(403エラー)となり、本文を取得して確認することができなかった。

Trail of Cthulhuというライセンス関係が持つ意味

Pelgrane Pressの立ち位置は、クトゥルフ神話TRPGの版元史の中でやや特殊である。『クトゥルフ神話TRPGの刊行史』で扱われているとおり、『Call of Cthulhu』の版元Chaosiumから正式にライセンスを受けて派生システムを作った版元は複数存在するが、Pelgrane Pressはその中でも、GUMSHOEという完全に独自の判定システムを持ち込んだうえで神話世界を再構築した点が特徴的である。さらに、Arc Dream Publishingの『Delta Green』を『The Fall of DELTA GREEN』としてGUMSHOE化したように、他社が権利を持つ設定を版元の垣根を越えてシステム移植する、という動きを複数回行っている版元でもある。

出典

  • [1] Pelgrane Press Ltd「About Us」https://pelgranepress.com/about-us/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [2] Pelgrane Press Ltd「Trail of Cthulhu」https://pelgranepress.com/trail-of-cthulhu/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [3] Pelgrane Press Ltd「Trail of Cthulhu Second Edition」https://pelgranepress.com/trail-of-cthulhu-second-edition/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [4] Pelgrane Press Ltd「Cthulhu Confidential」https://pelgranepress.com/product-category/gumshoe-one-2-one/cthulhu-confidential/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [5] Pelgrane Press Ltd「Cthulhu Confidential: The Terror on Page Eight」https://pelgranepress.com/2017/05/09/cthulhu-confidential-the-terror-on-page-eight/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [6] Pelgrane Press Ltd「The Fall of DELTA GREEN」https://pelgranepress.com/product/the-fall-of-delta-green/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [7] Pelgrane Press Ltd「Call of Chicago: Nemesis in GREEN」https://pelgranepress.com/2018/09/01/call-of-chicago-nemesis-in-green/(取得日 2026-09-13)、および「Free RPG Day 2018 – A Cable’s Length from Shore/On a Bank, by Moonlight」https://pelgranepress.com/tag/the-fall-of-delta-green/page/4/ 内の2018年3月20日付投稿(取得日 2026-09-13) ↩
  • [8] 株式会社グループSNE「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー改訂版」https://www.groupsne.co.jp/products/ToC/index.html(取得日 2026-09-13) ↩
  • [9] Pelgrane Press Ltd「Announcing: Trail of Cthulhu 2nd Edition!」https://pelgranepress.com/2023/09/06/announcing-trail-of-cthulhu-2nd-edition/(取得日 2026-09-13) ↩
  • [10] 4Gamer「クトゥルーTRPGに新たな選択肢。12月25日に発売された「暗黒神話TRPG トレイル・オブ・クトゥルー」を徹底紹介(短編シナリオ付)」(2020年12月22日、2026年9月13日取得)。編集体制を持つ国内ゲームメディア。本文中で「英国のパブリッシャであるPelgrane Press(ペルグレイン・プレス)」という表記が使われていることを確認。同社のカタカナ表記の裏づけとして参照したもの。https://www.4gamer.net/games/545/G054553/20201222001/ ↩
この記事だけでは物足りない方へ
初めての方への紹介書籍 表紙
初めての方へ

固有名詞を覚えるのがまだ大変なら、神格・怪物をイラストと生息地図でやさしく紹介するこちらから。

『クトゥルフ神話生物解剖図鑑』をAmazonで見る ↗
もっと詳しく知りたい方への紹介書籍 表紙
もっと詳しく知りたい方へ

神格・用語を横断的に調べたいなら、東雅夫による定番の事典が一冊で頼りになります。

『クトゥルー神話大事典』をAmazonで見る ↗

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました