小説

The Tindalos Asset

〈Tinfoil Dossier〉完結編。元暗殺者エリソンが「ティンダロスの猟犬」に連なる脅威と対峙する。邦訳未刊行。

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概要

本作は2020年にTorから刊行された、ケイトリン・R・キアナンによる中編小説〈Tinfoil Dossier〉三部作の完結編。前作『Black Helicopters』、さらにその前の『Agents of Dreamland』から続く物語の結末にあたる。主人公は元暗殺者エリソン・ニコデモ(Ellison Nicodemo)。かつて秘密機関のために働いていた彼女が、終末をもたらしかねないある脅威の「再来」に対処するべく呼び戻される、という筋立てで物語が進む。三部作の中では最もプロットが明快で、単独作としても読みやすいと評される一方、それまで積み重ねられてきた陰謀論的な断片の数々が収束していく構成になっており、シリーズ読者にとっては集大成的な一冊となっている。

クトゥルフ神話との関係

タイトルにもある通り、本作はラヴクラフトと交流のあった作家フランク・ベルナップ・ロング(Frank Belknap Long)の短編「ティンダロスの猟犬」(The Hounds of Tindalos)に登場するティンダロスの猟犬を直接の題材としている。角度に潜み、鋭角を通じて獲物を追い詰めるとされるこの存在を、現代の追跡劇というスリラーの型に落とし込むことで、原典の断片的な神話設定を一つの長い物語として肉付けし直している。三部作を通じて描かれてきた「国家機関が水面下でクトゥルフ神話的脅威を処理する」という設定も本作で一つの決着を見せる。

独自の要素・原典との違い

フランク・ベルナップ・ロングの原典が短編であるのに対し、本作はそのアイデアを国家規模の陰謀・追跡劇として大きく拡張し、ティンダロスの猟犬という存在に「追う理由」「追われる者の人間ドラマ」という重層的な物語性を与えている点が最大の違いである。また三部作全体を貫く女性主人公たちの視点——駒として扱われる者が自らの意思を取り戻していく過程——が本作でも踏襲されており、単なる怪物退治譚ではなく、組織と個人、監視と自由といったテーマ性を強く帯びた着地になっている点も原典にはない独自の展開と言える。

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