概要
古い屋敷の屋根裏部屋に案内された語り手が、かつてそこに住んでいた「邪悪な牧師」にまつわる警告を受けながらも好奇心に負けて禁忌の遺品に触れてしまい、恐るべき代償を払う一篇。ラヴクラフトの書簡の一節がもとになった、没後発表の短い作品。
作品情報
- 執筆・発表年: 1933年頃執筆(書簡の一部として)/没後、1939年4月号「ウィアード・テイルズ」誌に「The Wicked Clergyman」の題で発表
- 主題タグ: 人格の乗っ取り、禁断の遺品、屋根裏部屋の因縁
登場神格・用語
(なし)
あらすじ
語り手は物静かな案内人に導かれ、かつて「邪悪な牧師」が住んでいたという屋根裏部屋に足を踏み入れる。案内人は、机の上のマッチ箱のような奇妙な物体には決して触れないよう警告して立ち去る。好奇心を抑えられない語り手はその物体に紫色の光を放つ装置を向けると、部屋に見知らぬ人物が現れる——それはアングリカン教会の聖職者の装いをした、額の異様に秀でた邪悪な風貌の男だった。男は魔道書を暖炉に投げ込んで燃やし、駆けつけた聖職者たちの一団から責め立てられた末、首を吊ろうとする。制止しようとした語り手にその男が迫ってきたため、語り手は装置の光を男に向けて撃退するが、男は階段の吹き抜けから転落して姿を消す。人々が駆けつける気配に部屋の静寂が破られ、語り手が案内人に助けられて鏡の前に連れて行かれると、そこに映っていたのは——先ほどの邪悪な牧師そのものの姿に変わり果てた、自分自身の姿だった。
読みどころと注目テーマ
わずか数百語という短さの中に、人格の乗っ取りという恐怖を凝縮した一篇。因果関係や背景説明を一切排し、断片的な書簡の体裁のまま恐怖の核心だけを鮮烈に提示する構成が特徴的。
執筆背景と影響
もともとは知人への私信の一節として書かれ、独立した作品として構想されたものではなかった。ラヴクラフトの死後、友人らの手によって短編として体裁が整えられ「The Wicked Clergyman」の題でウィアード・テイルズ誌に掲載された。断片的な生前の書簡が没後に一篇の怪奇小説として結実した、成立過程自体が興味深い作品である。


