編集部注: 本記事はクトゥルフ神話の用語ではなく、神話作品でしばしば引用される「誤解されやすい一節」についての解説記事です。
概要
「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という一節は、コズミックホラー系の作品でしばしば引用・言及されるため、クトゥルフ神話やH・P・ラヴクラフトの言葉だと思われがちである。しかし実際には、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが1886年の著書『善悪の彼岸』で書いた一節であり、ラヴクラフトの作品とは直接の関係がない。
基本プロフィール
- 分類: 誤解・俗説(クトゥルフ神話ではない)
- 原文(ドイツ語): “Wenn du lange in einen Abgrund blickst, blickt der Abgrund auch in dich hinein.”
- 出典: フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸(Jenseits von Gut und Böse)』(1886年)第4章、箴言146
なぜクトゥルフ神話だと誤解されやすいのか
この一節は「人智を超えたものを覗き見ることで、逆に自分自身が蝕まれる」という、クトゥルフ神話の中核的なテーマである宇宙的恐怖と非常に相性の良い警句である。実際、ラヴクラフト自身の作品も「禁断の知識に触れた人間が正気を失っていく」という構造を繰り返し描いており、テーマ的な親和性は高い。
このため、ホラーゲームや関連作品がクトゥルフ神話的な雰囲気を演出する際の引用句・エピグラフとして頻繁に使われており(例: 成人向けゲーム『悪魔の少女』の紹介文など)、引用された文脈だけを見た読者が「ラヴクラフトの言葉」「クトゥルフ神話の警句」だと誤解してしまうケースが多い。ニーチェの原著は1886年、ラヴクラフトの創作活動開始(1917年前後)より30年近く前であり、時系列上もラヴクラフトがこの一節を書けるはずはない。






