人物 — FRANCIS WAYLAND THURSTON

フランシス・ウェイランド・サーストン

原典

大叔父の遺品整理をきっかけに、三つの独立した資料の奇妙な一致に気づき、「クトゥルフの呼び声」全体を貫く恐るべき真実へとたどり着いてしまう調査者にして手記の書き手。

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フランシス・ウェイランド・サーストン

概要

クトゥルフの呼び声」全体を貫く手記の書き手であり、物語の視点人物。ボストン在住で、亡くなった大叔父ジョージ・ガメル・エンジェル教授(ブラウン大学セム語学名誉教授)の遺品を整理する中で、教授が生前に集めていた奇怪な資料の山に行き当たり、そこから自らも後戻りできない調査へと踏み込んでいく[1]

基本プロフィール

  • 分類: 人物(一人称の語り手・調査者)
  • 欧文表記: FRANCIS WAYLAND THURSTON
  • 初出・出典: 「クトゥルフの呼び声」(1926年執筆、Weird Tales誌1928年2月号発表)
  • 立場: 大叔父ジョージ・ガメル・エンジェル教授の相続人・遺言執行者[1]
  • 主な登場作品: 「クトゥルフの呼び声」のみ(単発の語り手であり、他作品への再登場はない)

人物像・性格

物語冒頭でサーストン自身が語るとおり、当初の姿勢は「絶対的な唯物論者」であり、複数の資料が示す奇妙な一致を、当初は偶然の域を出ないものとして退けようとしていた[2]。専門の研究者ではない一般人でありながら、遺品整理という受動的なきっかけから能動的な調査者へと変貌していく過程が、物語全体の駆動力になっている。

生涯・経歴

大叔父エンジェル教授の遺言執行者として、サーストンは教授の膨大な遺稿・資料に目を通す義務を負う[1]。その中で彼が見出したのは、性質の全く異なる三つの資料だった。ひとつは彫刻家ヘンリー・アンソニー・ウィルコックスが1925年にエンジェル教授のもとへ持ち込んだ、悪夢の中で無意識に制作したという奇怪な浅浮彫りとその記録。ふたつめは、1908年の米国考古学会年次総会でエンジェル教授自身が接触した、ルイジアナの沼地で摘発されたクトゥルフ教団に関するルグラス警部補の報告書の写し。そして三つめは、エンジェル教授が晩年、新聞記事の切り抜きとして収集し続けていた、世界各地での奇妙な事件の報告群である。

これら独立した資料が奇妙な符合を示すことに気づいたサーストンは、当初の懐疑を捨てて自ら調査を継続する。ウィルコックスへの聞き取り、ルグラス警部補への追跡調査を経て、最終的に彼はノルウェー人航海士グスタフ・ヨハンセンの手記——太平洋上で海底都市ルルイエが一時的に浮上し、その乗組員がクトゥルフ本体と直接遭遇した顛末を記した文書——にまで行き着く。

物語は、この調査の全貌をまとめたサーストン自身の手記という体裁を取っている。彼は自らが知ってしまった真実の重さに恐怖し、この記録が自分の死後に発見されることを予期して筆を置く[3][4]

他の人物・存在との関係

大叔父ジョージ・ガメル・エンジェル教授は、サーストンに調査の端緒となる資料一式を(意図せず)遺した人物であり、事件の背後にある教団の存在に気づいたがゆえに、何者かに殺害されたことが示唆される。彫刻家ヘンリー・アンソニー・ウィルコックスは、悪夢の中でクトゥルフの浅浮彫りを制作した感受性の強い青年として登場する。ノルウェー人航海士グスタフ・ヨハンセンは、サーストンが直接会うことのない人物だが、その手記が物語終盤の核心的な証言として機能する。事件の中心にある存在はクトゥルフそのものである。

主要登場作と読みどころ

  • 「クトゥルフの呼び声」(1926年執筆/1928年発表): サーストンが唯一登場する作品であり、彼の手記そのものが物語の全体構造を成す。三部構成(粘土の恐怖/ルグラス警部補の話/海からの狂気)を貫き、独立した資料が徐々に収束していく語りの構成そのものが、彼というキャラクターの調査プロセスと不可分に結びついている。

よくある誤解

Q. サーストンは専門の研究者や探偵なのですか?

A. いいえ。彼は大叔父の遺品整理を任された一般人であり、調査を始めた当初は「絶対的な唯物論者」として偶然の一致を疑ってかかっていました[2]。専門家ではない語り手が徐々に恐るべき真実に directed に近づいていく構成自体が、この作品の恐怖表現の要になっています。

Q. サーストンはクトゥルフや深きものどもと直接遭遇するのですか?

A. いいえ。彼が直接体験するのは資料の収集と調査のみで、クトゥルフとの直接遭遇はヨハンセンの手記という「伝聞のそのまた伝聞」の形で描かれます。サーストン自身は最後まで安全な調査者の立場に留まりますが、真実を知ってしまったことそのものへの恐怖に苛まれます[3]

出典

  • [1] “As my grand-uncle’s heir and executor, for he died a childless widower, I was expected to go over his papers with some thoroughness”(訳: 「大叔父の相続人にして遺言執行者として——彼は子のない未亡人として世を去ったので——私は彼の書類にかなり念入りに目を通すことを期待されていた」) — H. P. Lovecraft, “The Call of Cthulhu”(1926年執筆/1928年発表), 公式アーカイブ
  • [2] “My attitude was still one of absolute materialism, as I wish it still were, and I discounted with almost inexplicable perversity the coincidence”(訳: 「私の姿勢はなお絶対的な唯物論のそれであった——今もそうであってほしいと願う——そして私はほとんど説明のつかない強情さで、その一致を軽視した」) — 同上, 公式アーカイブ
  • [3] “I now felt gnawing at my vitals that dark terror which will never leave me till I, too, am at rest; ‘accidentally’ or otherwise.”(訳: 「今や私は、自分もまた——『事故』であれ何であれ——安らぎを得るまで決して離れることのない、あの暗い恐怖が身の内を蝕むのを感じている」) — 同上, 公式アーカイブ
  • [4] “Let me pray that, if I do not survive this manuscript, my executors may put caution before audacity and see that it meets no other eye.”(訳: 「もし私がこの手記より長く生きられないのなら、私の遺言執行者たちが大胆さよりも慎重さを優先し、これが他の目に触れぬようにしてくれることを祈るばかりだ」) — 同上, 公式アーカイブ
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