書籍(スペイン語・イラスト版、2026年9月刊行予定) — La llamada de Cthulhu

La llamada de Cthulhu(Editorial Alma版)

スペインの出版社Editorial Almaが「Clásicos ilustrados(イラスト版古典)」叢書の一冊として刊行を予告している書籍。Sebastián Cabrolの挿絵とJesús Cañadasの新訳により、「クトゥルフの呼び声」と「戸口にあらわれたもの」という恐怖の質が異なる2編を1冊にまとめている。この組み合わせの意味を、当サイトが確認済みの原典の内容と重ねて読み解く。

公開更新作成AI支援で作成

誤りの指摘・訂正依頼と編集方針は運営者情報へ。

記事内に商品プロモーションを含む場合があります
入手する
La llamada de Cthulhu(Editorial Alma版) 商品画像

新潮文庫『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』(南條竹則編訳)。本書の表題作「クトゥルーの呼び声」を収録。もう一編の「戸口にあらわれたもの」は創元推理文庫『ラヴクラフト全集3』で読める。

※上記は広告リンク(アフィリエイト)です。価格・在庫・版の詳細は必ずリンク先でご確認ください。

概要

スペインの出版社Editorial Almaが、公式商品ページで『La llamada de Cthulhu』の刊行を予告している。同社の叢書「Clásicos ilustrados(イラスト版古典)」の一冊で、著者はH. P. Lovecraft(1890-1937)、挿絵はSebastián Cabrol、翻訳はJesús Cañadasが担当する[1]。判型はハードカバー(cartoné)、寸法15.5×21.5cm、112ページ、2色刷、言語はスペイン語である[1]。

刊行日には資料によってずれがある。Editorial Alma自身の公式ページは2026年9月15日と記載しているのに対し、スペインの書籍流通サイトAgapeaは2026年9月16日と記載している[1][2]。当サイトでは両方のページに実際にアクセスしてこの食い違いを確認したが、どちらが最終的な発売日になるかは判断できない。版元の記載を優先する原則に従い、本稿では2026年9月15日を基準の日付として扱う。

価格とISBNについても、公式ページと流通側とで確認できる情報の量が異なる。Editorial Alma公式ページのページ内データは、価格欄・ISBN欄がいずれも空欄のまま公開されている(2026年9月11日確認)[1]。一方Agapeaは価格11.95ユーロ(割引後11.35ユーロ)、ISBN 9791387752828と具体的な数値を示している[2]。このISBNは末尾の並びがやや不自然に見えるが、当サイトでISBN-13のチェックデジットを検算したところ、末尾の「8」は正しい値として一致した。番号としての整合性は取れているが、これはあくまで計算上の整合性であり、版元自身がこの番号を採用していることを公式ページで確認できたわけではない。

どんな作品か

公式ページのあらすじは、本書を次のように紹介している。「La llamada de Cthulhu y El ser en el umbral confirman al estadounidense H. P. Lovecraft como el referente indiscutible del género de terror(『クトゥルフの呼び声』と『戸口にあらわれたもの』は、アメリカ人H・P・ラヴクラフトをホラーというジャンルの押しも押されもせぬ第一人者として証明する)」[1]。「El ser en el umbral」は英題「The Thing on the Doorstep」に対応するスペイン語題で、当サイトの戸口に現れたもの記事で扱った作品と同一の作品を指す。

同じあらすじ文は、本書の内容を「Dioses innombrables, posesiones, manuscritos maléficos, horrores sin forma y seres despojados de su humanidad(名状しがたき神々、憑依、邪悪な手稿、形のない恐怖、そして人間性を奪われた存在たち)」という語でまとめている[1]。名も知れぬ神という言葉は「クトゥルフの呼び声」を、憑依と人間性の剥奪という言葉は「戸口にあらわれたもの」を、それぞれ指していると読める。

Editorial Almaは、クトゥルフ神話やホラー小説を専門に扱う版元ではない。公式ページの関連商品欄には、ジョージ・オーウェル『1984』やアレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』が同じ「Clásicos ilustrados」叢書の他の巻として並んでいる[1]。本書は、ホラー専門の読者ではなく古典文学全般の読者に向けて、ラヴクラフトを一人の古典作家として差し出す企画の一冊にあたる。

なぜこの2編を1冊に選んだのか

「クトゥルフの呼び声」と「戸口にあらわれたもの」は、当サイトの既存記事で確認した通り、恐怖の系統がまったく異なる2作である。

「クトゥルフの呼び声」が描くのは、人間の側からはほとんど手の届かない巨大な存在への恐怖である。クトゥルフ本体が直接姿を見せる場面はごくわずかで、大半は夢・伝承・目撃証言という間接的な形でしか読者に届かない[3]。呪文の英訳が「彼の館にて死せるクトゥルフは夢見ながら待つ」と告げる通り、この存在は倒されるべき敵として造形されておらず、星辰が正しき位置に至るという、人間の都合とは無関係な周期で目覚める[3]。恐怖の中心は怪物そのものの造形ではなく、無関係に見えた三つの資料――ウィルコックスの夢、ルグラスの摘発報告、ヨハンセンの手記――が同じ1925年3月へ収束してしまうという、発見の構造そのものに置かれている[3]。

対して「戸口にあらわれたもの」が描くのは、隣人・配偶者・自分自身という、手の届く近さにある人間の肉体と人格が奪われていく恐怖である。エフライム・ウェイトからアセナスへ、アセナスからエドワード・ダービーへと、一つの意志が世代を超えて他人の肉体に寄生し続ける構図が物語を貫く。エドワードの手紙が「体から体へ、体から体へ――彼は決して死のうとしない」と言い表す通りである[4]。声の調子や筆跡の癖、あるいは玄関でのノックの合図という、きわめて私的な目印だけが人格を見分ける手がかりとして機能し、それすらも最後には裏切られる[4]。恐怖の規模は宇宙的な広がりを持たず、結婚という個人的な関係の内側に閉じ込められている。

一つは宇宙から来た巨大な存在への恐怖、もう一つは自分の肉体や人格そのものが奪われる恐怖である。規模も距離感もまったく異なる2種類の恐怖を1冊にまとめることで、本書はラヴクラフトという作家の振れ幅を1冊で示そうとしていると読める。公式ページのあらすじが「名状しがたき神々」と「人間性を奪われた存在たち」という両方の要素を並べて書いていることも、この組み合わせが偶然ではないことをうかがわせる[1]。

原典との距離、そして誰が本書を作ったか

本書に収める2作はいずれも、当サイトの区分でいう神話の第1層(ラヴクラフト原典)に属する。「クトゥルフの呼び声」は1926年夏に執筆され1928年に『ウィアード・テイルズ』誌に発表された作品であり[3]、「戸口にあらわれたもの」は1933年8月21日から24日にかけて執筆され1937年1月に同誌に発表された作品である[4]。本書自体は新しい神話設定を付け加えるものではなく、既存の原典テキストを新訳と挿絵という形で再提示する企画にとどまる。この点で、ダーレス以降の後世作家による書き足しを含むアンソロジー企画や、原典の「事実」を解釈対象として開放するTRPGサプリメントのような企画とは性格が異なり、本書は第1層だけで完結する構成になっている。

ただし、誰がこの本を作ったかという点には、公式ページを直接確認しても埋まらない空白が残る。公式ページの担当者一覧には「Textos de(本文)」「Autor(著者)」「Prólogo(序文)」「Ilustración(挿絵)」「Traducción(翻訳)」「Adaptación(脚色)」という項目枠が並んでいるが、このうち名前が実際に入っているのは著者H. P. Lovecraft、挿絵Sebastián Cabrol、翻訳Jesús Cañadasの3件だけで、「Prólogo」と「Adaptación」の枠には、2026年9月11日にアクセスした時点で名前が表示されていなかった[1]。当サイトが事前に得ていた情報では「Jesús Cañadasが序文を担当する」とされていたが、公式ページ上でCañadasに付されている役割は「Traducción(翻訳)」であり、「序文」ではない。序文を誰が書くのかは、公式ページからは確認できなかった。

挿絵版というジャンルの中での位置づけ

原典テキストに挿絵を添えて再刊するという企画自体は、本書だけのものではない。当サイトが確認したH.P. Lovecraft Illustrated Vol.4は、英国のジャンル専門出版社PS Publishingが、ラヴクラフト研究者S. T. Joshiを編者に迎え、代作をめぐる著者問題を扱うエッセイまで巻末に添えて刊行する挿絵版だった。読者として想定されているのは、すでにラヴクラフト作品の来歴に関心を持つ層である。

これに対し本書は、古典文学全般を扱うEditorial Almaが、オーウェルやデュマと同じ「Clásicos ilustrados」という枠組みの中にラヴクラフトを置く企画である。ラヴクラフトの来歴や神話体系の細部を掘り下げるためのエッセイは付かず、あらすじも「ホラーというジャンルの押しも押されもせぬ第一人者」という、ジャンル入門者に向けた紹介の仕方をしている[1]。同じ原典を挿絵入りで再刊するという行為でも、想定する読者の位置が異なれば、添えられる情報の量も変わる。日本国内で田辺剛が「クトゥルフの呼び声」を漫画化したクトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集も、原作の文章そのものを読み通すハードルを下げるための媒体変換という点で、本書と似た役割を担っている。ただしこちらは小説を漫画という別の表現形式に置き換える再構成であり、本書のように原典の文章をそのまま残して挿絵を添える手法とは異なる。

関連して読むなら

出典

  • [1] Editorial Alma公式商品ページ「La llamada de Cthulhu」(2026年9月11日確認)。著者H.P. Lovecraft、挿絵Sebastián Cabrol、翻訳Jesús Cañadas、判型cartoné(ハードカバー)、寸法15.5×21.5cm、112ページ、2色刷、言語castellano、叢書「Clásicos ilustrados」、ジャンル「Terror」、刊行日「15/9/2026」との記載を確認。あらすじが「La llamada de Cthulhu」と「El ser en el umbral」の2編を収めると明記していること、「Prólogo」「Adaptación」の担当者欄に名前が表示されていないこと、価格・ISBN欄が空欄であることを確認。関連商品欄にジョージ・オーウェル『1984』、アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』が同叢書の他の巻として掲載されていることも確認。https://www.editorialalma.com/libros/la-llamada-de-cthulhu-d6104 ↩
  • [2] Agapea商品ページ「La llamada de Cthulhu (Ed. 2026)」(2026年9月11日確認)。刊行日「16/09/2026」、112ページ、価格11.95ユーロ(割引後11.35ユーロ)、ISBN 9791387752828、製本「Tapa dura」との記載を確認。https://www.agapea.com/H-P-Lovecraft/La-llamada-de-Cthulhu-Ed-2026–9791387752828-i.htm ↩
  • [3] 当サイトクトゥルフの呼び声記事(既存記事、2026年9月11日参照)。原典本文からの引用・要約と出典情報の確認。 ↩
  • [4] 当サイト戸口に現れたもの記事(既存記事、2026年9月11日参照)。原典本文からの引用・要約と出典情報の確認。 ↩

続きを辿る

隣の棚

記事URLをコピーしました