ビデオゲーム(STEAM、2026年10月26日発売予定・WINDOWS対応) — Leviathan: Rhino

Leviathan: Rhino

Amortiz Games開発・solarsuit.games販売のインディーホラーゲーム。巨大なリヴァイアサンが迫る村で最後の日々を過ごす老人を描く。Steamの紹介文自身が「奴らは止められない(They cannot be stopped)」と明言しており、宇宙的恐怖の前提そのものをゲーム設計に持ち込もうとする作品として読み解く。

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東雅夫『クトゥルー神話大事典』(新紀元社)。本作は特定の原典の翻案ではないため、神話の固有名詞を出典つきで引ける事典を挙げた。

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概要

Steam公式ストアページによれば、『Leviathan: Rhino』の発売日は2026年10月26日である[1]。同ページには「このゲームはおよそ6週間後にロック解除予定です(This game plans to unlock in approximately 6 weeks)」という表示もあり、記事執筆時点(2026年9月14日)で公開まで秒読みの段階にあることがわかる[1]。開発はAmortiz Games、販売はsolarsuit.gamesで、いずれも公式ストアページの開発元・販売元表記から確認できる[1]。ストアページのシステム要件欄にはWindows向けの最小・推奨スペックのみが掲載されており、Mac・Linux向けのタブは確認できなかった[1]。価格は本稿執筆時点ではストアページに表示がなく、ウィッシュリスト登録のみ受け付けている状態である[1]。ユーザーレビューは「まだありません」と表示されている[1]。

言語対応は、ストアページの対応言語表でインターフェースと字幕にチェックが付く8言語――英語、ロシア語、簡体字中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語(スペイン)、日本語、スペイン語(ラテンアメリカ)――を確認した[1]。日本語はインターフェース・字幕ともに対応するが、フルオーディオ(吹き替え)列はどの言語についてもチェックが付いておらず、音声はテキスト表示のみで進む作りとみられる[1]。

ストアページに付けられたユーザータグは、確認できた範囲でPsychological Horror、Dark、Walking Simulator、Lovecraftian、Horror、1990’s、Idler、Atmospheric、Stylized、Simulation、Singleplayer、Hand-drawn、First-Person、Shooter、3D、Indieの16種である[1]。このうち本稿の主題に関わるのは「Lovecraftian」の一語で、「Lovecraftian Horror」ではなく単に「Lovecraftian」という形容詞タグである点は、あらかじめ押さえておきたい。

どんな作品か

ストアページの短い紹介文は、小さな村に迫る巨大なリヴァイアサンに脅かされながら最後の日々を過ごす老人を主人公とし、「不可避性、孤独、そしてどこにも行き場がなくどこにも去る理由がない一人の男」を描く実存的ホラーだと説明している[1]。

より長い紹介文(About This Game)では、この世界において「リヴァイアサン――ラヴクラフト的な規模を持つ巨大な生物」がすでに日常の一部になって久しく、人類にできるのはその動きを追跡し、通り道からどくことだけだと述べられている[1]。その上で「They cannot be stopped」――奴らは止められない、と明言される[1]。プレイヤーは一人称視点で小さな村を歩き回り、住民と話し、牛に餌をやる、隣人を訪ねる、ニュースを聞く、過去を思い出す、待つといった、ごく日常的な行動を積み重ねていく構成だという[1]。派手な戦闘や謎解きの達成目標は、少なくとも公式の紹介文からは読み取れない。

「止められない」を設計へ持ち込む試み

当サイトの宇宙的恐怖(コズミックホラー)の記事で確認した通り、ラヴクラフトは1927年の評論「文学における超自然の恐怖」で、真の怪奇小説には「混沌の襲撃と測り知れぬ宇宙の悪魔とに対する唯一の防壁である、あの不変の自然法則が、悪意をもって特異的に停止ないし打ち破られるという観念」への暗示が必要だと書いている。人間が頼みとする秩序が、外部の力の前では無力だと突きつけること自体が、宇宙的恐怖の核にある。

クトゥルフ神話を題材にした作品の多くは、この無力さを物語の前提としながらも、ゲームとしては最終的に怪物を退けたり、真相を解明したりする達成の場を用意することが多い。当サイトのConariumの記事で確認した通り、『狂気の山脈にて』を下敷きにしたこの一人称アドベンチャーでさえ、記憶を失った研究者が仲間の失踪の謎を追い、パズルを解きながら物語を前に進めるという、目標志向の遊びの構造を保っている。原典が描いた「人間中心の秩序が過去の遺物の前で崩壊する」という構図を土台にしつつも、プレイヤーには探索し、謎を解き、先へ進むという能動的な役割が残されている。

『Leviathan: Rhino』の紹介文が繰り返す「They cannot be stopped」という一文は、この前提そのものをひっくり返そうとしている。ストアページの説明を読む限り、このゲームにはリヴァイアサンを撃退する手段も、事件を解決する手段も用意されていない。プレイヤーにできるのは、牛に餌をやり、隣人を訪ね、ニュースを聞き、待つという、結末を変えない日常動作だけである。これは謎解きや戦闘という「クリアするための障害」を単に取り除いたのではなく、宇宙的恐怖が本来主張している「人間にはどうしようもない」という認識を、勝敗のない生活シミュレーションという形式そのものへ移し替えようとする試みとして読める。当サイトが原典/ダーレス系拡張/TRPG設定——三層で読み解くクトゥルフ神話で整理してきた三層のいずれにも、本作はそのままでは当てはまらない。原典の固有名詞を継承するでも、TRPGのようにルールとして体系化するでもなく、原典が抱いていた「勝てないという思想」だけを抜き出し、独立したインディーゲームの設計原理として据え直している点に、位置づけの独自さがある。

主人公の設計にも、この転換は表れている。ラヴクラフト自身の作品の語り手は、多くの場合、事件を調べる学者・研究者・書類の整理を任された遺族といった「調査する側」の人間で、物語は彼らが手を伸ばし、真相に触れ、その代償として正気を失っていく過程として進む。ストアページが説明する『Leviathan: Rhino』の主人公は、これとは対照的に、迫り来るものについて調べもせず、逃げもせず、ただ村に残ることを選んだ老人である。ユーザータグに並ぶ「Walking Simulator」と「Idler」という組み合わせも、この人物像と対応しているように見える。前者は目的地への移動そのものを主眼に置くジャンル、後者は本来ゲーム側が時間経過に応じて進行する放置的な仕組みを指す言葉で、両方とも「プレイヤーが能動的に事態を動かす」こととは別方向を向いたタグである。調べることも逃げることもしない主人公を、調べることも逃げることもできない操作体系に乗せる。ストアページの紹介文と付与されたタグの両方が、同じ一つの設計思想を別の角度から裏付けている。

現在ロック解除待ちという状態そのものについて

ストアページに表示されている「このゲームはおよそ6週間後にロック解除予定です」という一文は、Steamがコミング・スーン扱いの商品ページに機械的に表示する定型の残り時間表示であり、開発元・販売元が独自に書いた文言ではない[1]。したがってここから「予定通り進んでいる」以上の情報を読み取ることはできない。本稿執筆時点(2026年9月14日)から逆算すると、この「およそ6週間後」という表示は、確認済みの発売日である10月26日とおおむね整合する。

「発明されなかった言葉」としてのリヴァイアサン

当サイトのコズミックホラーはラヴクラフトの発明かの記事では、「宇宙的恐怖」という概念や言葉が、ラヴクラフト一人の発明ではなく、すでにあった感覚や言葉を批評と創作によって一つの系譜として体系化した経緯だったことを確認した。本作のタイトルにある「Leviathan(リヴァイアサン)」も、これと似た構図を持つ語である。

リヴァイアサンは旧約聖書のヨブ記に登場する巨大な海の怪物を指す語で、ラヴクラフトが創作した固有名詞ではない。ストアページの紹介文自体も、この生物を「ラヴクラフト的な規模を持つ(colossal creatures of Lovecraftian scale)」存在と形容するにとどまり、クトゥルフやショゴス、旧支配者といったラヴクラフト作品固有の名称を用いているとは書いていない[1]。ユーザータグも「Lovecraftian」という形容詞であって、「Cthulhu Mythos」のような神話体系そのものを指すタグではない[1]。

そして、ヨブ記がリヴァイアサンを語る箇所そのものが、すでに「人間には手に負えない」という主張になっている。41章は「あなたは釣り針でリヴァイアサンを引き上げられるか」という問いかけから始まり、この生物には剣も槍も投げ矢も刺さらず、鉄を藁のように扱うと続けていく[2]。つまり「人間の手には負えない、抗いようのない巨大な存在」という感覚は、旧約聖書の時点ですでに文章として書かれていた。本作はその古い語に、ラヴクラフトが体系化した「途方もない規模」の感覚を重ね着させて使っていることになる。

つまり本作は、聖書由来の古い怪物名に、ラヴクラフト的な「途方もない規模」と「抗いようのなさ」という感覚だけを重ね合わせた作品と見るのが正確である。当サイトが繰り返し確認してきた通り、クトゥルフ神話には公式に定まった正史がなく、「その設定は誰が、いつ作ったか」を追うことが本サイトの立場である。本作について言えるのは、ラヴクラフト原典に由来する固有名詞を使った証拠は確認できておらず、あくまで現代のインディーゲームが「Lovecraftian」という空気感を借りて独自の物語を作った作品だということである。

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出典

  • [1] Steam公式ストアページ「Leviathan: Rhino」(2026年9月14日確認)。発売日が2026年10月26日であること、「およそ6週間後にロック解除予定」と表示されていること、開発元がAmortiz Games、販売元がsolarsuit.gamesであること、システム要件欄にWindows向けの記載のみでMac・Linux向けタブが存在しないこと、短い紹介文および About This Game の全文、ユーザータグ16種(Psychological Horror、Dark、Walking Simulator、Lovecraftian、Horror、1990’s、Idler、Atmospheric、Stylized、Simulation、Singleplayer、Hand-drawn、First-Person、Shooter、3D、Indie)、対応言語表(英語・ロシア語・簡体字中国語・ドイツ語・フランス語・スペイン語(スペイン)・日本語・スペイン語(ラテンアメリカ)のインターフェース・字幕対応、全言語ともフルオーディオ非対応)、価格未表示・ウィッシュリスト登録のみであること、ユーザーレビューがまだない旨の表示を確認。https://store.steampowered.com/app/4784510/Leviathan_Rhino/?l=english ↩
  • [2] ヨブ記41章(欽定訳聖書、Public Domain)。1節「Canst thou draw out leviathan with an hook?」、26-27節「The sword of him that layeth at him cannot hold: the spear, the dart, nor the habergeon. He esteemeth iron as straw, and brass as rotten wood.」の文言を、Bible Gateway掲載の欽定訳本文で確認(2026年9月14日確認)。https://www.biblegateway.com/passage/?search=Job+41&version=KJV ↩

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