概要
『Conarium(コナリウム)』は、一人称視点のアドベンチャーゲームである。Steamの公式ストアページによれば、開発は Stormling Studios、発売元は Iceberg Interactive、リリースは 2017年6月6日[1]。
このゲームがほかの神話ゲームと違うのは、原作との関係を公式が明言している点にある。Steamの紹介文は次のように書く[1]。
Inspired by H.P. Lovecraft’s novella At the Mountains of Madness, but largely set after the original story. (H・P・ラヴクラフトの中編『狂気の山脈にて』に着想を得ているが、その大部分は原作より後の時点を舞台にしている)
「〜風」でも「〜にインスパイアされた」でもなく、原作の続きの時間を扱うと版元自身が書いている。
基本情報
Steam公式ストアページの記載による[1]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発 | Stormling Studios |
| 発売元 | Iceberg Interactive |
| 発売日 | 2017年6月6日 |
| ジャンル | アドベンチャー / インディー |
| 対応プラットフォーム | Windows / macOS / Linux |
| 対応言語 | 英語(フル音声)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジル)、ロシア語、トルコ語、ハンガリー語、中国語(簡体字) |
| Steam実績 | 26 |
| 公式サイト | conariumgame.com |
日本語には対応していない。対応言語の一覧に日本語は含まれない[1]。
ストーリーの枠組み
Steamの紹介文が語る導入は、こうである[1]。
4人の科学者が、自然の「絶対的」とされる限界に挑もうとした。プレイヤーは フランク・ギルマン として、奇妙な脈打つ音に満ちた部屋で目を覚ます。机の上の見慣れない装置が、壁に光の模様——死の舞踏——を描いている。自分が南極点近くの基地 「ウプウアウト(Upuaut)」 にいること以外、何も思い出せない。基地には誰もおらず、何かがひどく間違っているという感覚だけがある[1]。
記憶が自分を導いてくれないという状態から始まる。この設定が、プレイヤーの「知っていること」と主人公の「知らないこと」を切り離す仕掛けになっている。
クトゥルフ神話との関係
原典『狂気の山脈にて』の側
原作は、ラヴクラフトが1931年に書き1936年に『アスタウンディング・ストーリーズ』へ掲載された中編である。南極の山脈の向こうで、ミスカトニック大学の探検隊が人類以前の都市と、その建設者である古のもの、そして彼らが造ったショゴスの痕跡に行き当たる。詳しくは『狂気の山脈にて』の記事を参照してほしい。
本作はこの探検の「後」に立つ。原作が「発見してしまった」ところで終わるのに対し、本作はその発見が済んだ世界から始まる。南極基地という閉鎖環境、失われた記憶、装置(コナリウム)を使ってしまったことの帰結——舞台装置はすべて原作の続きとして組まれている。
層としてはどこか
当サイトの神話の三層でいえば、本作は第3層以降にあたる。原典(第1層、1917-1937)でもダーレス以降の拡張(第2層)でもなく、2010年代のゲームによる翻案である。
ただし本作の位置づけは、神話の設定を借りただけの作品とは違う。特定の1作を名指しして、その続きを名乗っている。神話ゲームの中では珍しい立ち方である。
遊びの設計
Steamのカテゴリ表示によれば、本作はシングルプレイヤー専用で、Steam実績・トレーディングカード・Steamクラウド・フルコントローラサポート・テレビでのRemote Playに対応する[1]。
戦闘を前面に出さず、探索とパズル、そして環境に置かれた文書を読み進めることで話が進む。「戦えない」のではなく「戦う相手がいない」という作りで、原作が持っていた「理解した瞬間に手遅れになる」構造を、ゲームの進行そのものに移している。
原作の側の事情——『狂気の山脈にて』はどう世に出たか
本作が「後」を名乗る原作は、発表の経緯そのものが込み入っている。SF Encyclopediaのラヴクラフト項は、この中編の書誌を次のように記す[4]。
At the Mountains of Madness (cut February 1936 Astounding ; restored in The Outsider and Others coll 1939 ; 1990 chap)
1936年2月に雑誌『アスタウンディング』へ載ったものは短縮版で、全文が読めるようになったのはラヴクラフトの死後、1939年のアーカム・ハウス版作品集『The Outsider and Others』からである[4]。1990年には単行本としても出ている[4]。
同項は、この作品を「The Shadow Out of Time」と並べて、ラヴクラフトがゴシック・ホラーの古い型をSF的な宇宙の描写に埋め込んだ、もっとも完成度が高く後代のSF作家への影響も大きい作品と位置づける[4]。「Great Old Ones」を人類以前の先行種族(Forerunner species)として読めるとも書いている[4]。
つまり『Conarium』が続きを名乗っている相手は、「怪物が出てくるホラー」ではなく「人類以前の歴史が明らかになる話」である。南極基地で記憶を失った科学者が主人公という本作の枠組みは、その読み方に沿っている。
原作を日本語で読むには
本作は日本語に対応していないが、原作のほうは日本語で読める。国立国会図書館の書誌から、主なものを挙げる[5]。
| 形態 | 書名 | 版元・刊行 | ISBN |
|---|---|---|---|
| 小説(訳) | ラヴクラフト全集(第4巻に収録) | 東京創元社、1985年11月、大瀧啓裕訳 | — |
| 小説(訳) | 狂気の山脈にて | 新潮社、2020年12月、南条竹則訳 | 978-4-10-240142-2 |
| 小説(訳) | 狂気の山脈にて | 星海社、2025年2月、森瀬繚 | 978-4-06-537994-3 |
| 漫画 | 狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集(全4巻) | KADOKAWA、2016年10月-2017年12月、田辺剛 | 978-4-04-728316-9 ほか |
1985年の全集から2025年の新訳まで、40年にわたって訳が出続けている。『Conarium』を遊ぶ前に原作を通しておきたいなら、どの版でも足りる。田辺剛による漫画版は別記事で扱っている。
技術と仕様
Steamのストアページによれば、本作は Unreal Engine 4 で作られている[1]。公式が挙げる主な特徴は次のとおり[1]。
- 秘密とイースターエッグを多く含む、ラヴクラフト的な物語
- Unreal Engine 4による映像
- 複数のエンディング
- 雰囲気を支えるサウンドトラック
動作環境の最低要件は、Windows 7 64bit、Intel Core i3-4160(3.60GHz)相当、メモリ6GB、GeForce GTX 480/570/670またはRadeon HD 5870/5850相当、DirectX 11、ストレージ8GB[1]。注記に「4:3の解像度には対応しない」とある[1]。
2017年のゲームとしても要求は軽い部類で、いま遊ぶぶんにはほぼ障壁にならない。macOSとLinuxにも対応しており[1]、Windows以外で神話ゲームを遊びたい場合の選択肢にもなる。サウンドトラックは別売のDLC(appid 651510)として用意されている[1]。
公式が「複数のエンディング」を挙げていることは、遊び方に影響する[1]。一度通しただけでは結末が確定しない作りで、南極基地で何が起きたのかの解釈も一つに定まらない。原作『狂気の山脈にて』が、探検隊の見たものを報告書の形で読者に渡しながら最後まで断定を避ける構成を取っていることと、この設計は響き合っている。
評価
数字はSteam公式のレビュー集計とストアページに載るMetacriticスコアによる[1][2]。ここに書く以外の点数は当サイトでは扱わない。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| Steamのレビュー評価 | やや好評(Mostly Positive) |
| レビュー総数 | 2,275件 |
| 肯定的 | 1,750件 |
| 否定的 | 525件 |
| Metacriticスコア | 71[1] |
肯定・否定の比は約77%対23%である。大絶賛でも失敗作でもない、という位置に長く落ち着いている作品といえる。
同じ「ラヴクラフト翻案の一人称アドベンチャー」でも、『Moons of Madness』はMetacritic 69、Steam「やや好評」で、ほぼ同じ帯に入る[3]。この形式の神話ゲームが受け取られてきた水準が、そのあたりにあることが分かる。
どんな人に向くか
- 『狂気の山脈にて』を読んだあとに遊ぶと、もっとも効く。公式が原作の後日を名乗っているため、原作を知らないと固有名詞が素通りする
- 戦闘のないホラーが好きな人。アクション要素を求めると肩透かしになる
- 英語が読めることが事実上の前提になる。日本語対応がない[1]
日本語で遊べる神話ゲームを探しているなら、『恐怖の世界(WORLD OF HORROR)』や『Call of Cthulhu』(Cyanide Studio版)のほうが入りやすい。神話ゲーム全体の見取り図はクトゥルフ神話ゲーム総覧にまとめてある。
関連記事
- 『狂気の山脈にて』 — 本作が続きを名乗る原作
- 古のもの / ショゴス — 原作が描いた存在
- Moons of Madness — 同じ形式の神話ゲーム
- クトゥルフ神話ゲーム総覧
出典
- [1] Steam公式ストアページ『Conarium』(appid 313780、該当ページ)。Steam公式のappdetails API(
store.steampowered.com/api/appdetails?appids=313780&l=japanese&cc=jp)で取得した内容を確認した。開発 Stormling Studios、発売元 Iceberg Interactive、発売日2017年6月6日、ジャンル「アドベンチャー/インディー」、対応プラットフォーム Windows・macOS・Linux、Steam実績26、公式サイト conariumgame.com、対応言語一覧(日本語を含まない)。紹介文の「Inspired by H.P. Lovecraft’s novella At the Mountains of Madness, but largely set after the original story.」、主人公 Frank Gilman と南極基地 Upuaut の設定。Metacriticスコア71(2026年9月15日確認)。 ↩ - [2] Steam公式のレビュー集計API(
store.steampowered.com/appreviews/313780?json=1&language=all&purchase_type=all)。レビュー評価「Mostly Positive」、総数2,275件(肯定1,750件/否定525件)(2026年9月15日確認)。 ↩ - [3] Steam公式ストアページおよびレビュー集計『Moons of Madness』(appid 1012840)。Metacriticスコア69、レビュー評価「Mostly Positive」、総数2,938件(肯定2,277件/否定661件)(2026年9月15日確認)。 ↩
- [4] SF Encyclopedia「Lovecraft, H P」(2026年6月22日更新、該当ページ)。『At the Mountains of Madness』の書誌「(cut February 1936 Astounding ; restored in The Outsider and Others coll 1939 ; 1990 chap)」、および同作と「The Shadow Out of Time」がもっとも完成度が高く後代のSF作家への影響も大きいとする評価、「Great Old Ones」を先行種族(Forerunner)として読めるとする記述を確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
- [5] 国立国会図書館サーチの書誌。『ラヴクラフト全集』(東京創元社、1985年11月、大瀧啓裕訳、該当ページ)、『狂気の山脈にて』(新潮社、2020年12月、南条竹則訳、ISBN 978-4-10-240142-2、該当ページ)、同(星海社、2025年2月、森瀬繚、ISBN 978-4-06-537994-3、該当ページ)、田辺剛『狂気の山脈にて : ラヴクラフト傑作集』(KADOKAWA、2016年10月 ISBN 978-4-04-728316-9・2017年1月 978-4-04-734440-2・2017年7月 978-4-04-734730-4・2017年12月 978-4-04-734934-6)(2026年9月15日確認)。 ↩


