ゲーム — WORLD OF HORROR

WORLD OF HORROR

1-bit美術と伊藤潤二的な不条理さを融合させたローグライトRPG。簡易平均評価8.1/10と高い支持を得る。

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概要

『WORLD OF HORROR』——日本語題 『恐怖の世界』 ——は、ターン制のローグライトRPGである。Steam公式ストアページによれば、開発は panstasz、発売元は Ysbryd Games と PLAYISM の2社、配信開始は 2023年10月19日[1]。

公式の一文が、この作品の立ち位置を言い切っている[1]。

本作は、伊藤潤二氏とH.P. Lovecraft氏へ捧げる1ビットのラブレターである。

日本のホラー漫画と、アメリカの宇宙的恐怖。この二つを並べて掲げた作品は、神話ゲームの中でも珍しい。

基本情報

Steam公式ストアページの記載による[1]。

項目 内容
開発 panstasz
発売元 Ysbryd Games / PLAYISM
配信開始 2023年10月19日
ジャンル インディー / RPG
対応プラットフォーム Windows / macOS
対応言語 英語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)
価格(Steam日本) 2,420円

日本語に対応している。当サイトが調べた神話系のPCゲームでは、これは多数派ではない。『Conarium』も『Moons of Madness』も『Stygian』も日本語がない[2]。

日本語版の発売に PLAYISM が入っていることが、その理由にあたる。

舞台——塩川町

Steamの公式紹介文が語る世界は、次のとおりである[1]。

旧き神が目覚め、狂気が渦巻く世界へ這い出てこようとしている。病院、廃校、古いアパート、鬱蒼とした森、至るところで発生する奇怪な存在と不可解な出来事が 塩川町 の住人たちの理性を削り取っていく。これは因果応報なのか?それとも人知を超えた存在の策略なのだろうか?

舞台は日本の地方都市 塩川町 である。ニューイングランドの田舎町ではない。病院、廃校、古いアパート、森——並ぶ場所はいずれも日本のホラーの定番で、アーカムでもダニッチでもない。

神話の構図だけを借りて、風景を丸ごと入れ替えた作品だといえる。

クトゥルフ神話との関係

「旧き神」が目覚める

公式紹介文は、崩壊の原因を「旧き神」の覚醒として説明する[1]。滅亡を防ぐには、崩壊を導く恐怖そのものと対峙しなければならない[1]。

旧支配者が目覚めることで世界が終わる、という枠組みはラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」(1928年)以来のものである。本作はその枠組みを、プレイヤーが周回して挑み続ける対象に変えた。

伊藤潤二とラヴクラフトを並べる

公式は、登場する存在の出自をこう書く[1]。

どの怪異においても、伊藤潤二氏およびH.P. Lovecraft氏の世界観を元に生み出された悪夢のような存在の数々があなたを歓迎するだろう。

日本の怪談的な「因果応報」と、宇宙的恐怖の「人知を超えた存在の策略」——公式紹介文自身が、この2つを並べて問いの形にしている[1]。どちらなのか分からないまま進むことが、本作の恐怖の形になっている。

層としてはどこか

当サイトの神話の三層でいえば、本作は原典(第1層)でも拡張(第2層)でもない、2020年代のゲームによる翻案である。

ただし、特定の神格名や魔道書をほとんど借りていない点で、ほかの神話ゲームとは違う。借りているのは「旧き神が目覚める」という構図と、理解の及ばないものに晒され続ける感覚のほうである。

遊びの設計

公式が挙げる要素は次のとおり[1]。

要素 内容
プレイアブルキャラクター 14人
事件(怪異) 20以上から進む道を選ぶ
エンディング ほとんどの事件にマルチエンディングが用意されている
戦闘 ターン制
その他 闇の儀式を執り行い、複数の怪異にまたがる謎を解く

1周で全部は見られない構造になっている。14人×20以上の事件×複数のエンディングという組み合わせは、一度の通しでは尽きない。「全体像を把握できないまま恐怖に晒され続ける」という原典の感覚が、周回前提のゲーム構造そのものに置かれている。

やり直せない——PLAYISM公式が明記するセーブの仕様

日本語版を出しているPLAYISM(Active Gaming Media)の公式ページは、本作のセーブについて、注意事項として次のように書いている[4]。

本ゲームのセーブは、プレイヤーがゲームを中断し、プレイ途中のゲームを後で再開できるようにするためにのみ存在します。通常のRPGなどで使われているような「セーブ」や「ロード」はできません。保存されたゲームが再開されるとセーブデータは削除され、進行がうまくいかなかった場合にプレイヤーはゲームを「再ロード」することは出来なくなります。

やり直しができない。セーブは中断のためだけにあり、再開した時点で消える。失敗した選択を巻き戻す手段は用意されていない。

これは不便な仕様ではなく、本作が何を恐怖として扱っているかの表明である。取り返しがつかないこと、知ってしまったら戻れないこと——宇宙的恐怖が扱ってきたのはそういう事態で、本作はそれをセーブ機能の設計で表している。

同ページの記述からは、ゲームの終わり方も分かる。「STA/REA/DOOMを失ってのゲーム終了、もしくは灯台の最上階に到達」したときに1周が完了する[4]。収集要素として「怪異の写本」「異端生物図鑑」「終局全書」「怪異研究論文」が用意されている[4]。

日本語版はPC以外にもある

PLAYISMの公式ページによれば、本作は PC / Nintendo Switch / PlayStation 4 で展開されている[4]。ダウンロード版に加えて、パッケージ版も国内で流通している[4]。

Steam版とコンソール版には一時期内容の差があり、PLAYISMはSteam版に統一する方針を公式に告知していた[4]。コンソール版のパッチは、Nintendo Switch が ver.1.0.3(2023年12月15日配信)、PlayStation 4 が ver.1.05(2023年12月20日配信)まで記載がある[4]。

日本語で遊べるだけでなく、日本の販売網に乗っている。これは神話ゲームとしては珍しい部類に入る。

MSペイントで描かれた1ビット

公式が明記しているとおり、本作の絵は MSペイントで描かれた1ビット(白黒2値) であり、音楽は「ホラーチップチューン」である[1]。

動作環境は極端に軽い。Windows版の最低要件は Windows 7、Intel Core i3、メモリ1GB、Intel HD Graphics 4400、DirectX 11、ストレージ500MB[1]。macOS版は Catalina 以降、メモリ8GB、ストレージ500MB[1]。

500MBという容量が、この作品の作り方を物語っている。同じ神話ゲームでも『Conarium』は8GB、『Moons of Madness』は15GBを要求する[2]。

サウンドトラックは別売DLC(appid 2658360)として用意されている[1]。

評価

数字は Steam公式のレビュー集計と、ストアページに載るMetacriticスコア による[1][3]。ここに書く以外の点数は当サイトでは扱わない。

指標 数値
Steamのレビュー評価 非常に好評(Very Positive)
レビュー総数 9,850件
肯定的 8,822件
否定的 1,028件
Metacriticスコア 77[1]

肯定率は約90%である。当サイトが調べた神話系タイトルの中で、もっとも高い肯定率にあたる[2]。

作品 Steam評価 肯定率 Metacritic
恐怖の世界 非常に好評 90% 77
Sunless Skies 非常に好評 84% 87
Sunless Sea 非常に好評 83% 81
Conarium やや好評 77% 71
Stygian 賛否両論 66% 81

Metacriticは77と中位だが、プレイヤーの肯定率は最上位にある。批評の点数と遊んだ人の満足が、ここでは同じ方向を向いていない——ただし『Stygian』とは逆向きに、である[2][3]。

どんな人に向くか

  • 日本語で神話ゲームを遊びたい人。対応言語に日本語が入っている数少ない一本[1]
  • 伊藤潤二の漫画が好きな人。公式が捧げ先として名指ししている[1]
  • 1周が短く、繰り返し遊べるものを探している人
  • 逆に、一本道の物語をじっくり追いたいなら向かない。周回で断片が繋がる構造である

神話ゲーム全体の見取り図はクトゥルフ神話ゲーム総覧にまとめてある。日本語で遊べるものとしては『Call of Cthulhu』(Cyanide Studio版)もある。

関連記事

出典

  • [1] Steam公式ストアページ『恐怖の世界(WORLD OF HORROR)』(appid 913740、該当ページ)。Steam公式のappdetails API(store.steampowered.com/api/appdetails?appids=913740&l=japanese&cc=jp)で取得した内容を確認した。開発 panstasz、発売元 Ysbryd Games / PLAYISM、配信開始2023年10月19日、ジャンル「インディー/RPG」、対応プラットフォーム Windows・macOS、対応言語に日本語を含む、Steam日本価格2,420円、DLCにサウンドトラック(appid 2658360)。紹介文の「旧き神が目覚め〜塩川町の住人たちの理性を削り取っていく」「伊藤潤二氏とH.P. Lovecraft氏へ捧げる1ビットのラブレターである」「どの怪異においても、伊藤潤二氏およびH.P. Lovecraft氏の世界観を元に生み出された悪夢のような存在の数々があなたを歓迎するだろう」「14人の個性的なプレイアブルキャラクター」「20以上の恐ろしい事件」「ほとんどの事件にはマルチエンディングが用意されている」「MSペイントで描かれた1ビットの世界と、それに共鳴するホラーチップチューン」、および最低動作環境(Windows: メモリ1GB・ストレージ500MB / macOS: Catalina・メモリ8GB)。Metacriticスコア77(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [2] Steam公式ストアページおよびレビュー集計。『Conarium』(appid 313780、Metacritic 71、Mostly Positive、2,275件・肯定1,750件、日本語非対応、ストレージ8GB)、『Moons of Madness』(appid 1012840、Metacritic 69、Mostly Positive、2,938件・肯定2,277件、日本語非対応、ストレージ15GB)、『Stygian: Reign of the Old Ones』(appid 779290、Metacritic 81、Mixed、2,524件・肯定1,675件、日本語非対応)、『Sunless Sea』(appid 304650、Metacritic 81、Very Positive、9,565件・肯定7,941件)、『Sunless Skies: Sovereign Edition』(appid 596970、Metacritic 87、Very Positive、3,479件・肯定2,934件)。肯定率は当サイトが肯定件数÷総数で算出した(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [3] Steam公式のレビュー集計API(store.steampowered.com/appreviews/913740?json=1&language=all&purchase_type=all)。レビュー評価「Very Positive」、総数9,850件(肯定8,822件/否定1,028件)(2026年9月15日確認)。 ↩
  • [4] PLAYISM(Active Gaming Media)公式サイトのゲームページ『恐怖の世界』(該当ページ)。対応機種として PC / Nintendo Switch / PlayStation 4 が並び、ダウンロード販売とパッケージ販売の取扱店が列挙されていること。注意事項の「本ゲームのセーブは、プレイヤーがゲームを中断し、プレイ途中のゲームを後で再開できるようにするためにのみ存在します。通常のRPGなどで使われているような「セーブ」や「ロード」はできません。保存されたゲームが再開されるとセーブデータは削除され〜」、プレイ完了の定義「STA/REA/DOOMを失ってのゲーム終了、もしくは灯台の最上階に到達しゲームを終了すること」、エクストラの内訳「実績、怪異の写本、異端生物図鑑、終局全書、怪異研究論文」、Steam版とコンソール版の差異をアップデートで統一する方針、パッチ(Nintendo Switch ver.1.0.3 = 2023年12月15日配信 / PlayStation 4 ver.1.05 = 2023年12月20日配信)の告知を確認した(2026年9月15日確認)。 ↩
公式トレーラー
出典: Steam公式トレーラー「v1.0 Launch Trailer」 ストアページ ↗

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