ゲーム — Call of the Sea

Call of the Sea

1930年代の南洋の孤島を舞台に、失踪した夫を追う一人称パズルアドベンチャー。恐怖ではなく幻想と情緒に軸を置いた異色のラヴクラフト系作品。

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概要

『Call of the Sea』は、一人称視点のアドベンチャーパズルである。Steam公式ストアページによれば、開発は Out of the Blue Games、発売元は Raw Fury、配信開始は 2020年12月8日[1]。

公式紹介文は、導入をこう書く[1]。

1934年、南太平洋の遥か彼方。探検中に消えた夫の痕跡を求めて海を渡ったノラが辿り着いたのは、失われた文明がところどころに残っている、地名も無く、人の記憶から忘れ去られた、緑の島の楽園でした。

「緑の島の楽園」——神話を扱うゲームとしては珍しい言葉が、公式の一行目に置かれている。

基本情報

Steam公式ストアページの記載による[1]。

項目 内容
開発 Out of the Blue Games
発売元 Raw Fury
配信開始 2020年12月8日
ジャンル アドベンチャー / カジュアル / インディー
対応プラットフォーム Windows
対応言語 英語(フル音声)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、日本語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語(ポルトガル/ブラジル)、ロシア語、中国語(簡体字/繁体字)、スペイン語(ラテンアメリカ)
Steam実績 34
価格(Steam日本) 2,300円
公式サイト calloftheseagame.com
Metacritic 78

日本語に対応している[1]。しかも対応言語は13種と多い。

当サイトがSteam公式のデータで確認した神話系PCゲーム13本のうち、日本語対応は次のように分かれる[5]。

日本語 作品
あり(8本) Call of the Sea / Call of Cthulhu (2018) / Cultist Simulator / Darkest Dungeon / DREDGE / Forgive Me Father / SONG OF HORROR / 恐怖の世界
なし(5本) Conarium / Moons of Madness / Stygian / Sunless Sea / Sunless Skies

日本語対応は半々より少し多い程度である[5]。文章量の多い作品ほど未対応の傾向があり、『Stygian』や『Sunless Sea』がその例にあたる。

ストーリーの枠組み

公式が挙げる本作の要素は、次のとおりである[1]。

  • 素敵な景色、失われた遺跡、超自然的な謎に満ちた、目も眩むほど美しい熱帯の島を隈なく探索する
  • 過去の探検中に残された手がかりを調査し、この島に起こった出来事を繋ぎ合わせ、知恵が試される様々なパズルを解く
  • 夫が失踪した真実と、彼女の本当の姿を明らかにする冒険を進めながら、主人公の人柄が描かれる
  • 感動、サスペンス、非現実的な驚きに満ちたストーリー主導の冒険

主人公ノラは 謎の病に罹っている[1]。夫を探すという目的と、自分の身体に起きていることの謎が、同じ一本の線の上にある。

声を当てているのは誰か

公式が明記しているとおり、全編でノラを演じるのは Cissy Jones である[1]。公式は同じ一文で、彼女の出演作として『Firewatch』『The Walking Dead: Season 1』『Baldur’s Gate III』を挙げる[1]。

一人称視点で、ほぼ一人の登場人物の独白によって進むゲームである以上、声の演技が作品の質を直接決める。公式が紹介文でわざわざ実績を並べているのは、そのためといえる。

クトゥルフ神話との関係

「明るい神話ゲーム」という珍しさ

神話を扱うゲームは、たいてい暗い。『Stygian』は異界へ放り出された廃墟の街、『SONG OF HORROR』は骨とう品店と孤児院と精神病院、『Conarium』は南極の無人基地である[2]。

本作の舞台は 熱帯の島 で、公式の言葉は「楽園」「目も眩むほど美しい」である[1]。画面が明るい神話ゲームという、ほかにあまりない立ち位置を取っている。

ただし内容が明るいわけではない。失われた文明の遺跡、超自然的な謎、そして主人公自身の「本当の姿」——公式が挙げる要素は、いずれも原典が扱ってきたものである[1]。

「彼女の本当の姿」

公式紹介文の「夫が失踪した真実と 彼女の本当の姿 を明らかにする」という一句が、本作と神話の距離を示している[1]。

自分が何であるかを知ってしまうという筋立ては、ラヴクラフトが繰り返し用いた型である。当サイトの深きものの記事で扱う血統の主題も、同じ系譜にある。

南太平洋という舞台の系譜

本作が1934年の南太平洋を選んだことには、神話の側の前例がある。太平洋は、クトゥルフ神話が早くから使ってきた舞台である。

ラヴクラフト自身が代作した「永劫より」(1935年)は、太平洋の失われた大陸ムーとガタノソアを扱う。その系譜を大きく広げたのがリン・カーターで、『ポナペ経典』と『ザントゥの石板』という二つの禁書を、太平洋の島と沈んだ大陸に結びつけた。

ムーという大陸そのものも、神話の発明ではない。国立国会図書館の書誌によれば、ジェームズ・チャーチワード(1852-1936)の『失われたムー大陸』は、日本でも大陸書房から1968年3月に『失われたムー大陸——太平洋に沈んだ幻の大帝国』(小泉源太郎訳)として刊行され、以後版を重ねている[4]。

年 出来事
1935年 ラヴクラフト/ヒールド「永劫より」。ムーとガタノソアが登場
1934年 本作の作中の年代
1970年代 リン・カーターが『ポナペ経典』『ザントゥの石板』で太平洋圏を拡張
2020年 本作の配信開始[1]

本作の作中年代1934年は、「永劫より」が世に出る前年にあたる。意図されたものかどうかは公式資料から確認できないが、神話が太平洋を舞台に取りはじめた時期と、本作が設定した時代は重なっている。

「失われた文明がところどころに残っている、地名も無く、人の記憶から忘れ去られた」島[1]という公式の描写は、この系譜の上に自然に載る。

層としてはどこか

当サイトの神話の三層でいえば、本作は原典(第1層)でも拡張(第2層)でもない、2020年代のゲームによる翻案である。固有の神格名を出さず、構造のほうを借りているタイプにあたる。

遊びの設計

ジャンル表記に「カジュアル」が入っていることが示すとおり[1]、本作は戦闘も追跡もないパズルアドベンチャーである。島を歩き、手がかりを読み、仕掛けを解く。

Steam実績は34、想定される遊び方は一本道の物語の通読に近い[1]。難易度の主軸はパズルの側にあり、死や失敗による緊張は主要な要素ではない。

追加コンテンツとして、サウンドトラック(appid 1475490)とアートブック(appid 1475510)が用意されている[1]。

動作環境の最低要件は、Windows 7/8.1/10 64bit、AMD FX-6100 または Intel i3-3220 相当、メモリ8GB、Radeon HD 7750 / GeForce GTX 650 相当[1]。

評価

数字は Steam公式のレビュー集計と、ストアページに載るMetacriticスコア による[1][3]。ここに書く以外の点数は当サイトでは扱わない。

指標 数値
Steamのレビュー評価 非常に好評(Very Positive)
レビュー総数 6,402件
肯定的 5,613件
否定的 789件
Metacriticスコア 78[1]

肯定率は約88%である。当サイトが調べた神話系タイトルの中で、上位の評価にあたる[2]。

作品 Steam評価 肯定率 Metacritic
恐怖の世界 非常に好評 90% 77
Call of the Sea 非常に好評 88% 78
Sunless Sea 非常に好評 83% 81
Conarium やや好評 77% 71
Moons of Madness やや好評 77% 69
Stygian 賛否両論 66% 81

同じ一人称探索型でも、『Conarium』や『Moons of Madness』とは10ポイント以上離れている[2]。パズルと語りに集中し、恐怖の演出で押さない作りが、結果として広い支持につながっている。

どんな人に向くか

  • 日本語で遊べる神話系アドベンチャーを探している人[1]
  • パズルを解くことと、物語を読み進めることが目的の人
  • ホラーの直接的な恐怖——追われる、殺される——が苦手な人。本作には戦闘も追跡もない
  • 逆に、恐怖体験そのものを求めるなら物足りない可能性がある

同じ一人称探索型でより暗いものを求めるなら『Conarium』や『Moons of Madness』がある。神話ゲーム全体の見取り図はクトゥルフ神話ゲーム総覧にまとめてある。

関連記事

出典

  • [1] Steam公式ストアページ『Call of the Sea』(appid 1042490、該当ページ)。Steam公式のappdetails API(store.steampowered.com/api/appdetails?appids=1042490&l=japanese&cc=jp)で取得した内容を確認した。開発 Out of the Blue Games、発売元 Raw Fury、配信開始2020年12月8日、ジャンル「アドベンチャー/カジュアル/インディー」、対応プラットフォーム Windows、対応言語に日本語を含む、Steam実績34、Steam日本価格2,300円、公式サイト calloftheseagame.com、DLCにサウンドトラック(appid 1475490)とアートブック(appid 1475510)。紹介文の「1934年、南太平洋の遥か彼方。探検中に消えた夫の痕跡を求めて海を渡ったノラが辿り着いたのは、失われた文明がところどころに残っている、地名も無く、人の記憶から忘れ去られた、緑の島の楽園でした」「謎の病に罹ってしまった女性、ノラとなって」「夫が失踪した真実と彼女の本当の姿を明らかにする冒険を進めていきながら、主人公の魅力ある人柄が描かれます。全編に渡ってノラを演じるのはCissy Jonesさん(Firewatch、The Walking Dead: Season 1、Baldur’s Gate IIIに出演)です」、および最低動作環境。Metacriticスコア78(2026年9月16日確認)。 ↩
  • [2] Steam公式ストアページおよびレビュー集計。『恐怖の世界/WORLD OF HORROR』(appid 913740、Metacritic 77、Very Positive、9,850件・肯定8,822件)、『Sunless Sea』(appid 304650、Metacritic 81、Very Positive、9,565件・肯定7,941件)、『Conarium』(appid 313780、Metacritic 71、Mostly Positive、2,275件・肯定1,750件)、『Moons of Madness』(appid 1012840、Metacritic 69、Mostly Positive、2,938件・肯定2,277件)、『Stygian: Reign of the Old Ones』(appid 779290、Metacritic 81、Mixed、2,524件・肯定1,675件)、『SONG OF HORROR COMPLETE EDITION』(appid 1096570、Mostly Positive、3,090件・肯定2,418件)。肯定率は当サイトが肯定件数÷総数で算出した(2026年9月16日確認)。 ↩
  • [3] Steam公式のレビュー集計API(store.steampowered.com/appreviews/1042490?json=1&language=all&purchase_type=all)。レビュー評価「Very Positive」、総数6,402件(肯定5,613件/否定789件)(2026年9月16日確認)。 ↩
  • [4] 国立国会図書館サーチの書誌。ジェームズ・チャーチワード(James Churchward、1852-1936)著・小泉源太郎訳『失われたムー大陸 : 太平洋に沈んだ幻の大帝国』(大陸書房、1968年3月、該当ページ)、および同書の1986年11月版(ISBN 4-8033-1032-7、該当ページ)(2026年9月16日確認)。 ↩
  • [5] Steam公式のappdetails APIで各作品のsupported_languagesを確認した。日本語あり: Call of the Sea(1042490)、Call of Cthulhu(399810)、Cultist Simulator(718670)、Darkest Dungeon(262060)、DREDGE(1562430)、Forgive Me Father(1590910)、SONG OF HORROR COMPLETE EDITION(1096570)、恐怖の世界(913740)。日本語なし: Conarium(313780)、Moons of Madness(1012840)、Stygian: Reign of the Old Ones(779290)、Sunless Sea(304650)、Sunless Skies: Sovereign Edition(596970)(2026年9月16日確認)。 ↩
公式トレーラー
出典: Steam公式トレーラー「Call of the Sea Accolades Trailer」 ストアページ ↗

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