一人称パズルアドベンチャー 物理版(PLAYSTATION 5 / NINTENDO SWITCH 2・2026年9月10日発売予定) — Call of the Elder Gods: Miskatonic Edition

Call of the Elder Gods: Miskatonic Edition

『時間からの影』の何が現代ゲームへ受け継がれたか。Out of the Blue Games開発、Kwalee/Microids発売の一人称パズルアドベンチャー『Call of the Elder Gods』の物理限定版「Miskatonic Edition」が、2026年9月10日にPS5・Switch 2向けに発売される。デジタル版は同年5月12日に先行発売済み。ラヴクラフト「時間からの影」を着想元に掲げる本作が、原典のどの要素を引き継ぎ、どこで離れているのかを公式資料の範囲で確認する。

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概要

フランスのパブリッシャーMicroidsは2026年5月26日(パリ発)、一人称パズルアドベンチャー『Call of the Elder Gods』のパッケージ版「Miskatonic Edition」を、2026年9月10日にPlayStation 5とNintendo Switch 2向けに小売発売すると発表した[1]。開発はスペインのOut of the Blue Games、ライセンス発売元はKwaleeで、Microidsが小売流通を担当する[1][4]。デジタル版(PC/Steam含む)はこれに先立ち、2026年5月12日にすでに発売されている[1][3]。

本作は2020年発売の一人称パズルアドベンチャー『Call of the Sea』の続編にあたる[3][4]。舞台はミスカトニック大学で、ミスカトニック大学教授ハリー・エヴァハートと学生イヴァンジェリン・ドレイトンの二人を視点人物に据える[1][2]。公式にはラヴクラフトの中編小説「時間からの影」からの着想が明記されている[1][3]。当サイトはすでに「時間からの影」「イースの大いなる種族」「ミスカトニック大学」の各記事で原典の記述を確認済みであり、本稿ではそこで確認された事実とゲーム側の公式説明を照合する。筆者は本作を未プレイであり、以下の記述はすべて公式に発表された範囲の情報に基づく。

どんな作品か

Microidsの発表文は、本作のストーリーをこう説明している。「Set after the events of the critically acclaimed Call of the Sea, this new Lovecraftian narrative puzzle adventure takes players on a journey across forgotten corners of the world.」(高い評価を得た『Call of the Sea』の出来事の後を舞台に、この新たなラヴクラフト的ナラティブパズルアドベンチャーは、プレイヤーを世界の忘れられた片隅を巡る旅へ連れ出す)[1]。同発表は続けて、二人の視点人物をこう紹介する。「Professor Harry Everhart struggles with disturbing visions」(ハリー・エヴァハート教授は、不穏な幻視に苦しめられている)、「student Evangeline Drayton is plagued by impossible dreams」(学生イヴァンジェリン・ドレイトンは、あり得ないはずの夢に悩まされ続けている)[1]。

Steam公式ストアページの紹介文はさらに詳しく、ミスカトニック大学という舞台を明示している。「All is not well at Miskatonic University. Professor Harry Everhart tries to ignore the shadows flitting at the corners of his vision, while student Evangeline Drayton is haunted with impossible dreams of an artifact uncovered a decade ago. In their search for answers, the pair will uncover revelations more ancient than anyone could have imagined.」(ミスカトニック大学では、何かがおかしい。ハリー・エヴァハート教授は視界の隅をよぎる影を無視しようとしているが、学生イヴァンジェリン・ドレイトンは、十年前に発掘されたある遺物についてのあり得ない夢に取り憑かれている。答えを探すうちに、二人は誰も想像しなかったほど太古の真実を暴くことになる)[3]。開発元Out of the Blue Games公式サイトは、舞台の広がりをこう描写する。「from the firelit libraries of a New England mansion to the red sands of the Australian outback, through frozen wastelands and otherworldly cities out of time」(ニューイングランドの屋敷の、暖炉の火に照らされた書斎から、オーストラリア・アウトバックの赤い砂地へ、凍てついた荒野を抜けて、時間の外にある異界の都市へ)[4]。ゲームエンジンはUnreal Engine 5、ジャンルはアドベンチャー、一人プレイ専用でPEGI 12のレーティングが付されている[2]。声優はYuri LowenthalとCissy Jonesで、Microidsの発表文は両者を「returning talents(続投する演者)」と呼んでいる[1][4]。作曲はEduardo De La Iglesiaが担当する[1]。

『時間からの影』から何を受け継いだか——舞台とテーマの対応

公式に名指しされている着想元は、ラヴクラフトが1934年11月から1935年3月にかけて執筆し、1936年6月『アスタウンディング・ストーリーズ』誌に発表した中編「時間からの影」だ[1][3]。当サイトの同作記事によれば、原典の主人公ナサニエル・ウィンゲート・ピーズリーはミスカトニック大学の経済学教授で、1908年の講義中に昏倒したのち5年4か月13日にわたって別人格に入れ替わり、以後20年以上、太古の地球に君臨する円錐形の知的種族「イースの大いなる種族」に関する悪夢に苦しめられる。1934年、西オーストラリアの大砂漠で夢と瓜二つの巨石遺跡が見つかったという知らせを受け、ミスカトニック大学の後援でその地へ赴いたピーズリーは、単身地下へ降りて自らの悪夢の正体と対面する。

Out of the Blue Gamesが挙げる舞台の描写——「ニューイングランドの屋敷」「オーストラリア・アウトバックの赤い砂地」「時間の外にある異界の都市」[4]——を並べると、原典の骨格との対応がはっきり見える。ミスカトニック大学を拠点に据えている点、オーストラリアの砂漠が舞台の一つになっている点、そして「時間の外(out of time)」という言い回しが「時間からの影(The Shadow Out of Time)」という原題そのものを踏まえている点は、着想元として名指しされているだけあって一致度が高い。さらに、学生イヴァンジェリン・ドレイトンが「十年前に発掘されたある遺物についてのあり得ない夢」に悩まされているという設定[3]も、原典でピーズリーが自分の悪夢の正体を知らないまま20年以上苦しみ続けたという構図と、悪夢が現実の発掘物と結びついていく発端の形が近い。

名指しされていないもの——「大いなる種族」は本当に出てくるのか

一方で、本稿が確認できた公式説明の範囲に、原典の核心である「イースの大いなる種族」や、彼らが用いる「精神交換」という語は一度も出てこない。当サイトの「イースの大いなる種族」記事が確認している通り、この種族は精神を時代を越えて他者の肉体へ投射し、逆に相手の精神を自らの時代へ拘禁して尋問するという手法によって、あらゆる時代の知識を蒐集する。ゲーム側の説明にある「不穏な幻視」「あり得ない夢」「誰も想像しなかったほど太古の真実」[1][3]という表現は、この種族の存在を示唆しているようにも読める。ただし公式資料がそれを明言している箇所は見当たらなかった。タイトルにある「Elder Gods(旧神)」という語が具体的にどの存在を指すのかも、公式説明だけでは判断のしようがない。

この点は当サイトの立場からすると見過ごせない。当サイトの「旧神」記事が確認している通り、「旧神」はラヴクラフト自身の原典には存在しない概念で、オーガスト・ダーレスが後年、「旧支配者」と戦う善なる神々として体系化した第2層(ダーレス以降の拡張)の用語だ。着想元として名指しされている「時間からの影」は第1層(原典)の作品であり、そこに「旧神」という善悪の対立構図は無い。つまり本作のタイトルは、着想の中身では第1層の設定(イースの大いなる種族、ミスカトニック大学、オーストラリアの遺跡)を引きながら、看板には第2層由来の語を掲げているという、層をまたいだ組み合わせになっている可能性がある。「Elder Gods」がダーレス的な意味で使われているのか、単に「太古の神々」を指す一般的な言い回しとして採用されているだけなのかは、本稿で確認した資料からは判断できない。

前作『Call of the Sea』とのつながりで、確認できること・できないこと

当サイトはすでに前作『Call of the Sea』を記事化している。その記事によれば、2020年発売の前作は、原因不明の病に侵された女性ノラが、消息を絶った夫ハリーの探検隊を追って南太平洋の孤島にたどり着くところから始まる、戦闘要素のない一人称パズルアドベンチャーだ。今回の『Call of the Elder Gods』で視点人物の一人になっているのが「ハリー・エヴァハート教授」であることを踏まえると、前作でノラが追っていた夫ハリーと同一人物である可能性は高いように見える。実際、Microids・Out of the Blue Gamesとも声優を「returning talents(続投する演者)」と呼んでおり[1][4]、続編である旨も繰り返し明記されている[3][4]。

ただし、本稿で確認した公式資料の中に、「このハリー・エヴァハートは前作でノラが探した夫と同一人物である」と直接明言した一文は見つからなかった。声優の続投と「続編」という位置づけから推測できる範囲にとどまり、名字を含めた人物の同一性そのものを明言する公式の記述は未確認である。この点は推測で断定せず、確認できていないこととして扱う。

物理版「Miskatonic Edition」の中身と、日本語対応・国内発売の現状

Microidsの発表文は、Miskatonic Editionの同梱物を次のように列挙している。「Call of the Elder Gods base game、Digital Soundtrack、Set of 3 postcards、Evangeline Drayton ID card、The Art of Call Of The Elder Gods Artbook」[1]——本編に加えて、デジタルサウンドトラック、ポストカード3枚組、イヴァンジェリン・ドレイトンの学生証、アートブック『The Art of Call of the Elder Gods』が同梱される。この内訳はMicroidsの製品ページでも重複して確認できる[2]。

言語対応については、資料によって範囲が異なる。Steamの言語一覧では、日本語を含む多数の言語がテキスト対応として掲載されている(デジタルPC版)[3]。ところが、物理版Miskatonic Editionの仕様を示すMicroids公式製品ページを見ると、「Texts: EFIG」——英語・フランス語・イタリア語・ドイツ語の4言語——としか書かれておらず、日本語は挙がっていない[2]。デジタル版(PC/Steam)の言語対応が、そのままパッケージ版(PS5/Switch 2)にも及ぶのかどうか。この点は本稿で確認した公式資料の範囲では判断できず、むしろMicroids公式製品ページの記載を見る限り、物理版のテキスト対応に日本語は含まれていない可能性の方が高いように読める。日本国内での正規販売・日本語ローンチについても、Microids・Out of the Blue Games・Steamいずれの公式情報にも記載を見つけられなかった。海外の小売サイトでは予約情報が複数見つかったものの、通常の商品ページであるため本稿の出典には採用していない。価格もMicroids公式製品ページには記載が無く、いくらになるのかは分からないままである。

原典との距離(神話の三層のどこに立つか)

当サイトは「原典/ダーレス系拡張/TRPG設定——三層で読み解くクトゥルフ神話」で、ラヴクラフト原典(1917-1937年)、ダーレス以降の拡張(1939年-)、TRPGによる拡張(1981年-)を分けて記録する方針を取っている。本作が公式に名指ししている着想元は、この分類でいう第1層——ラヴクラフト単独の作品「時間からの影」(1934-35年執筆/1936年発表)だ。舞台となるミスカトニック大学、オーストラリアの砂漠、「時間の外」という原題を踏まえた表現は、いずれも第1層の要素と対応している。

一方、タイトルにある「Elder Gods」は前述の通り第2層(ダーレス以降の拡張)に由来する語で、本作がその意味でこの語を使っているのかは確認できていない。また、本作がChaosium社のTRPG『クトゥルフの呼び声』のライセンス作品である、あるいは公式に「クトゥルフ神話」を名乗っているという記載は、本稿で確認した資料のどこにも見当たらない。公式の説明が使う語は一貫して「Lovecraftian(ラヴクラフト的)」であり[1][3]、「Cthulhu Mythos」という語も確認できていない。したがって本作は、Chaosiumのライセンスに基づく公式クトゥルフ神話作品ではなく、ラヴクラフトの原典(パブリックドメインの著作)を直接の着想元とするLovecraftian作品として扱うのが適切だ。

関連して読むなら

  • 時間からの影 — 本作が公式に着想元として名指しする原典。ミスカトニック大学、オーストラリアの砂漠、イースの大いなる種族が登場する
  • イースの大いなる種族 — 原典の核心にいる時間を超える知的種族。精神交換の手法を確認できる
  • ミスカトニック大学 — 本作の主舞台。原典で繰り返し舞台となってきた架空の大学の来歴
  • Call of the Sea — 本作の前作。ノラと夫ハリーの物語
  • 旧神 — タイトルに使われている語の、ダーレスによる原義

出典

  • [1] Microids “Call of the Elder Gods: Miskatonic Edition coming September 10, 2026 for PlayStation 5 and Nintendo Switch 2″(2026年5月26日、パリ発のプレスリリース)。開発Kwalee/Out of the Blue Games、発売Microids、パッケージ版は2026年9月10日にPS5・Switch 2向け小売発売、デジタル版は同年5月12日に発売済みであること、同梱物「Call of the Elder Gods base game、Digital Soundtrack、Set of 3 postcards、Evangeline Drayton ID card、The Art of Call Of The Elder Gods Artbook」、ストーリー説明「Set after the events of the critically acclaimed Call of the Sea, this new Lovecraftian narrative puzzle adventure takes players on a journey across forgotten corners of the world.」「Professor Harry Everhart struggles with disturbing visions」「student Evangeline Drayton is plagued by impossible dreams」、着想元「Inspired by H P Lovecraft’s ‘The Shadow out of Time’」、声優「returning talents Yuri Lowenthal (Spider-Man, Arcane, Final Fantasy VII Rebirth) and Cissy Jones (Firewatch, Starfield, Baldur’s Gate III)」、作曲Eduardo De La Iglesiaの記載がある — microids.com ↩
  • [2] Microids公式製品ページ「Call of the Elder Gods: Miskatonic Edition」(2026年9月確認)。対応プラットフォーム「PlayStation 5, Switch 2」、発売日「September 10th 2026」、ジャンル「Adventure」、1プレイヤー、PEGI 12、対応テキスト言語「Texts: EFIG」の記載がある — microids.com ↩
  • [3] Steam公式ストアページ「Call of the Elder Gods」(2026年9月確認)。開発Out of the Blue Games、発売Kwalee、デジタル発売日「12 May, 2026」、対応言語一覧に日本語を含む多言語が記載されていること、紹介文「All is not well at Miskatonic University. Professor Harry Everhart tries to ignore the shadows flitting at the corners of his vision, while student Evangeline Drayton is haunted with impossible dreams of an artifact uncovered a decade ago. In their search for answers, the pair will uncover revelations more ancient than anyone could have imagined.」、着想元「Inspired by H P Lovecraft’s ‘The Shadow out of Time’」、声優Yuri Lowenthal・Cissy Jonesの記載がある — store.steampowered.com ↩
  • [4] Out of the Blue Games公式サイト「Call Of The Elder Gods」ページ(2026年9月確認)。開発元の自己紹介「Out of the Blue is an independent game development studio focused on developing narrative and puzzle adventures」、本作が「a sequel to 2020’s critically acclaimed Call of the Sea」であること、舞台の描写「from the firelit libraries of a New England mansion to the red sands of the Australian outback, through frozen wastelands and otherworldly cities out of time」、声優について「Starring returning talents Yuri Lowenthal (Spider-Man, Arcane, Final Fantasy VII Rebirth) and Cissy Jones (Firewatch, Starfield, Baldur’s Gate III)」の記載がある — outbluegames.com ↩

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