小説 — The Hunt

狩りたてるもの

遺産目当てにいとこを殺害した青年が、いとこが呼び出した神イオドに夢の世界を超えて追い詰められる。イオドの集大成的作品。

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狩りたてるもの

編集部注(著作権について): 本記事が扱う『狩りたてるもの』(1939年「ストレンジ・ストーリーズ」誌6月号掲載)は、個別の著作権更新記録を本記事執筆時点で確認できていないため、パブリックドメインであるとは断定できません。本記事は原文からの引用を行わず、あらすじ・論評・書誌的事実のみで構成しています。

概要

遺産目当てにいとこを殺害した青年が、いとこが死の間際に呼び出した神イオドに夢の世界を超えて追い詰められる一編。サイト既存記事『クラーリッツの秘密』で断片的にしか語られなかったカットナーの主神イオドの姿が、初めて完全な形で描かれる集大成的作品であり、単独名義で神話ものを量産していたカットナーの初期キャリア終盤を象徴する一作でもある。復讐する神格が現実の空間ではなく夢という逃げ場のない領域から追い詰めてくるという構図は、カットナーが単なる怪物描写にとどまらない心理的な恐怖の作り手であったことを示す一例でもある。

作品情報

  • 原題: The Hunt
  • 執筆・発表年: 1939年発表(「ストレンジ・ストーリーズ」誌6月号、通巻第1巻第3号、102ページ)
  • 主題タグ: 遺産目当ての殺人、夢の世界を超えて追い詰める神、生きたまま埋葬される運命

登場神格・用語

あらすじ

遺産目当ての青年アルヴィンは、いとこのウィルを殺害し相続権を手に入れる。だがウィルは死の間際に神イオドを呼び出していた。逃亡するアルヴィンは悪夢のような幻視に苛まれながら、触手を持つ神イオドに夢の世界を超えて追い詰められていく。イオドは彼の生命力を吸い尽くし、意識だけを残したまま彼を麻痺させ、最終的に生きたまま埋葬される運命に陥れる。作中では『妖蛆の秘密』への言及もある。

読みどころと注目テーマ

本作の読みどころは、遺産目当てという卑近な動機で始まった殺人が、夢という逃げ場のない領域にまで追い詰められていく恐怖の構図にある。現実の法や追跡からは逃れられても、眠りに落ちた瞬間から始まる悪夢そのものは避けようがなく、加害者アルヴィンは目覚めている間も眠っている間も安息を得られない。イオドという神が単に殺人者を罰する超自然的な「因果応報」の執行者としてではなく、生命力そのものを吸い上げる捕食者として描かれる点も、カットナーがラヴクラフト流の宇宙的恐怖と、より直接的な肉体的恐怖とを併せ持つ書き手であったことをうかがわせる。「生きたまま埋葬される」という結末は、動くことも叫ぶこともできないまま意識だけが存続するという、当時のパルプ雑誌の読者に強い衝撃を与えた定番の恐怖モチーフでもあり、本作はそれをイオド神話と結びつけて再構成している点に独自性がある。加害者であるアルヴィンの視点に寄り添って語られる構成そのものも読みどころのひとつで、読者は彼に同情する余地をほとんど与えられないまま、それでも彼が徐々に追い詰められていく過程を息をひそめて見守ることになる。復讐する側の神格イオドが姿を明確に見せず、あくまで夢という間接的な回路を通じてしか介入してこない点も、直接的な怪物描写に頼らずに恐怖を持続させるカットナーらしい手法と言える。

執筆背景と影響

クラーリッツの秘密』で断片的にしか描かれなかった主神イオドの姿が初めて完全な形で描かれる、カットナー神話体系の集大成的作品。『妖蛆の秘密』への言及がある点で本流神話とも接続する。本作は「ストレンジ・ストーリーズ」誌1939年6月号(ベター・パブリケーションズ社刊、通巻第1巻第3号)の102ページに掲載された[1]。同号にはロバート・ブロックの単独作「Unheavenly Twin」「The Seal of the Satyr」(ターレトン・フィスク名義)に加え、カットナーとブロックの合作「The Body and the Brain」(キース・ハモンド名義)も収録されており[2]、当時20代前半だったカットナーとブロックがロサンゼルス周辺で互いに影響し合いながら旺盛に執筆していた時期の一端をうかがわせる号でもある。カットナー自身は1936年に「墓場の鼠」で「ウィアード・テイルズ」誌にデビューし、H・P・ラヴクラフトを中心とする文通仲間「ラヴクラフト・サークル」との縁を通じて神話創作に関わるようになった作家で、イオドやヴォルヴァドスといったマイナー神格を自ら考案してミソスに追加した一人でもある[3]。1940年にはC・L・ムーアと結婚し、以後は夫婦での合作執筆が中心となっていくため、「狩りたてるもの」はカットナーが単独名義で神話ものを量産していた最後期にあたる作品のひとつという位置づけにもなる。

出典

本作はパブリックドメインであるとは断定できないため、原文からの引用は行っていません。以下は書誌的事実についての出典です。

  • [1] 「The Hunt」はStrange Stories誌1939年6月号(Vol.1 No.3、発行元Better Publications, Inc.、132ページ、定価15セント)の102ページに掲載された短編として記録されている。— 出典: ISFDB「Publication: Strange Stories, June 1939」, 該当ページ
  • [2] 同号の目次には、ロバート・ブロックの単独作2本(「Unheavenly Twin」「The Seal of the Satyr」、後者はターレトン・フィスク名義)と、ブロック・カットナー合作「The Body and the Brain」(キース・ハモンド名義)が掲載されていることが確認できる。— 出典: ISFDB「Publication: Strange Stories, June 1939」目次一覧, 該当ページ
  • [3] ヘンリー・カットナー(1915-1958)は1936年に「The Graveyard Rats(墓場の鼠)」でWeird Tales誌にデビューし、ラヴクラフトへの文通仲間の集まり「ラヴクラフト・サークル」を通じてC・L・ムーアと知り合った(1940年結婚)。イオド・ヴォルヴァドスといったマイナー神格を自ら考案してクトゥルフ神話に追加したことでも知られる。— 出典: Wikipedia「Henry Kuttner」, 該当ページ
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