編集部注(拡張神話): 本記事が扱うヴォルヴァドスは、H・P・ラヴクラフト自身の作品には登場しません。ラヴクラフトと文通した同時代作家ヘンリー・カットナーが、短編「The Eater of Souls」(Weird Tales 1937年1月号)で創造した神格です。同作の本文は当サイトでは確認できておらず、この初出作品にのみ由来する設定は伝聞情報として扱い、直接の引用は行いません。続編「The Invaders」(Strange Stories 1939年2月号、キース・ハモンド名義)はarchive.orgで本文を確認でき、本記事の引用はすべて同作からのものです。
概要
ヘンリー・カットナーが1937年の短編「The Eater of Souls」で創造した神格で、ベル・ヤーナクを治める支配者(シンダラ)のみが信仰を許されるとされる。続編「The Invaders」(Strange Stories 1939年2月号)では、異次元からの侵略者に立ち向かう地球の神々のうち「もっとも強大な、燃えるもの、ベル・ヤーナクのヴォルヴァドス」として描かれ[1]、銀色の靄に包まれた「顔」が、人間離れした曲面と窪みからなる幾何学的なかたちで現れ、その両目と面上に小さな焔がまたたく様子が語られる[2]。クトゥルフ神話の神格の中では珍しく人類に好意的とされ、近年の設定では旧神に分類されることが多い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 旧神(近年のTRPG設定による位置づけ。原典自体は旧神・旧支配者いずれとも明言していない――詳細はTRPGでの扱い参照) |
| 欧文表記 | VORVADOSS |
| 初出 | ヘンリー・カットナー「The Eater of Souls」(Weird Tales 1937年1月号、当サイトでは本文未確認) |
| 続編への登場 | ヘンリー・カットナー(キース・ハモンド名義)「The Invaders」(Strange Stories 1939年2月号)[1] |
| 主な異名 | 燃えるもの(The Flaming One)[1]、砂を乱すもの(The Troubler of the Sands)[3]、外なる闇に待つもの(Who Waiteth in the Outer Dark)[3]、焔を灯すもの(Kindler of the Flame)[3][4]、灰色の深淵のヴォルヴァドス(Vorvadoss of the Gray Gulf of Yarnak)[5](「Lord of the Universal Spaces」等、他の異名は当サイトでは本文未確認) |
| 象徴 | 銀色の靄に包まれた「顔」。人間離れした曲面と窪みからなる幾何学的な顔立ちで、両目と面上に小さな焔がまたたくとされる[2] |
初出作品
ヴォルヴァドスという名前が最初に現れるのは、ラヴクラフトと文通した同時代作家ヘンリー・カットナーの短編「The Eater of Souls」(Weird Tales 1937年1月号)とされる。「大食らうもの」と呼ばれる怪物の脅威を前に、ベル・ヤーナクの支配者(シンダラ)へヴォルヴァドスが助言を与える場面が描かれるとされるが、同作の本文は当サイトでは確認できていない。続編「The Invaders」(Strange Stories 1939年2月号、キース・ハモンド名義)はarchive.orgで本文を確認でき、太古の地球で「原初のムー」に住む者たちが崇めた神々の一柱として、大いなるクトゥルフ、蛇神イグ、イオドと並び「灰色の深淵のヴォルヴァドス」の名で挙げられている[5]。異次元からの侵略者との戦いでは、地上の神々のうち最も強大な、「燃えるもの、ベル・ヤーナクのヴォルヴァドス」として描かれる[1]。
原典での描写
H・P・ラヴクラフト自身の作品にヴォルヴァドスへの言及はない。ヴォルヴァドスを創造したのはラヴクラフトと文通した同時代作家ヘンリー・カットナーであり、原典に直接の記述はない。
ダーレス以降の変化
ヴォルヴァドスはオーガスト・ダーレスの手によるものではなく、カットナーが自身の短編で独自に創造し、後続の作家によって設定が積み重ねられてきた神格である。カットナーの原典および続編で示された性質・権能は次の通りとされる。
- 火の力を持つとされ、後続の設定ではかつてベル・ヤーナクで権勢を振るったムノムクアを打ち破って放逐した、とリン・カーターの作品で語られている(具体的な作品名は本記事の情報源では特定できていない)
- ときに自らの力を貸し、旧支配者たちを退けることもあるとされる
- 「The Invaders」では、異次元からの侵略者たちを撃退した地球の神々の一団のうち、最も強大な一柱として描かれている[1]
- ベル・ヤーナクを治める支配者(シンダラ)のみが信仰を許され、一般の民は崇拝の対象としないとされるが、この点は「The Eater of Souls」由来の設定で当サイトでは本文未確認
- 「The Invaders」では、名を唱えて助けを求める場面でヴォルヴァドス自身とみられる「顔」が現れ、侵略者を退けている[6]。人類にみずから直接介入することはまれで人間を通じてのみ助力するという説、およびその理由とされる「神は神を打ち倒せず、ただ神を創った者たる人間のみがそれをなし得る」という言葉の出典は、当サイトでは確認できていない
後続作品「The Star-Seed」(ジェイムズ・アンブール、1996年)は、ヴォルヴァドスをノーデンス(旧神)と旧支配者リタリアの子とし、双子の兄弟ヤグディタを持つ存在として位置づけているとされる。この設定に従うなら、ヴォルヴァドスは旧神・旧支配者いずれの血にも完全には属さない、両者の中間的な唯一の存在として扱われることになる。双子の兄弟ヤグディタ(The Incandescent One)は、シアン色に輝く非定形のエネルギー塊として顕現する旧神とされる。
後続の設定では、イオドとの間に敵対関係があるとする分析も存在する。研究者スティーヴン・ケイの考察は、ヴォルヴァドスとイオドの関係を、オーガスト・ダーレス作品におけるクトゥルフとハスターの対立になぞらえているが、これはあくまで一評者による後続的な解釈であり、カットナー自身の原典が示した設定ではない(この考察の具体的な出典は本記事の情報源では特定できていない)。
TRPGでの扱い
原典「The Eater of Souls」自体は、ヴォルヴァドスを旧神と旧支配者のどちらに位置づけるか明言しておらず、この曖昧さはカットナー自身が意図的に残したものだとも伝えられる。
クトゥルフ神話TRPGでは、人類への友好性や前節のムノムクア放逐の功績を理由に旧神へ分類されており、これが近年の主流な設定になっているとされる。本記事のfrontmatterではこの近年の主流設定に従い便宜上「旧神」としているが、原典の分類が確定しているわけではない。
登場作品一覧
| 作品 | 年 | 作者 | この作品が足したもの |
|---|---|---|---|
| The Eater of Souls | 1937 | ヘンリー・カットナー | ヴォルヴァドス初出。姿・信仰形態の確立 |
| The Invaders | 1939 | ヘンリー・カットナー | 再登場。異次元からの侵略者を撃退した地球の神々のうち最強格として描写 |
| The Star-Seed | 1996 | ジェイムズ・アンブール | ノーデンスとリタリアの子、ヤグディタの双子の兄という系譜 |
関連神格・地域・書物
神格
- イオド — 後続の設定で敵対関係があるとする分析があるが、カットナー自身の原典が示した設定ではない
- ノーデンス — 「The Star-Seed」の系譜で父とされる旧神
- リタリア — 「The Star-Seed」の系譜で母とされる旧支配者(本サイトのvaultには未収録)
- ヤグディタ — 「The Star-Seed」の系譜で双子の兄弟とされる旧神(本サイトのvaultには未収録)
- ムノムクア — かつてベル・ヤーナクで権勢を振るい、ヴォルヴァドスに打ち破られて放逐されたとされる(本サイトのvaultには未収録)
地域
- ベル・ヤーナク — ヴォルヴァドスを治める支配者(シンダラ)のみが信仰を許される都市
人物
- ヘンリー・カットナー — ヴォルヴァドスの創造者。イオド・ニョグタ・ヒュドラ(カットナー版)などもクトゥルフ神話に持ち込んでいる
- リン・カーター — ムノムクア放逐の逸話を作品中で語ったとされる(具体的な作品名は未特定)
分類の考え方
出典
- [1] “Foremost in that Cyclopean battle, mightiest of earth’s gods, was the Flaming One, Vorvadoss of Bel-Yarnak”(訳: 「その巨人めいた戦いの最前線に立ち、地上の神々のうちもっとも強大だったのが、燃えるもの、ベル・ヤーナクのヴォルヴァドスだった」) — Henry Kuttner (as Keith Hammond), “The Invaders”, Strange Stories v1 n1, 1939年2月, archive.org ↩
- [2] “Through the silver mist I made out strange hollows, fantastic curves and planes. … There were tiny dancing flames flickering in those eyes, and there were little flames, too, playing over the strange, inhuman countenance.”(訳: 「銀色の靄を透かして、奇妙な窪みと不思議な曲面や平面が見て取れた……その両目には小さな焔がまたたき、あの異形の顔の上にも小さな焔が揺れていた」) — 同上, archive.org ↩
- [3] “Ia! Rhyn tharanak — Vorvadoss of Bel-Yarnak! The Troubler of the Sands! Thou Who waiteth in the Outer Dark, Kindler of the Flame — n’gha shugg y’haa —”(訳: 「イア! リン・タラナク――ベル・ヤーナクのヴォルヴァドスよ! 砂を乱すものよ! 外なる闇に待つもの、焔を灯すものよ――ンガ・シュッグ・ヤー――」) — 同上, archive.org ↩
- [4] “Vorvadoss! The Kindler of the Flame!”(訳: 「ヴォルヴァドス! 焔を灯すものよ!」) — 同上, archive.org ↩
- [5] “…worshiping strange, forgotten gods — mountain-tall Cthulhu of the Watery Abyss, the Serpent Yig, Iod the Shining Hunter, Vorvadoss of the Gray Gulf of Yarnak.”(訳: 「……奇妙な、忘れられた神々を崇めていた――水の深淵の山なすクトゥルフ、蛇神イグ、輝く狩人イオド、灰色の深淵のヴォルヴァドス」) — 同上, archive.org ↩
- [6] “Something heard, and rose up, and obeyed the summons. For, with the suddenness of a thunderclap, blackness fell on the room, hiding from my sight the monstrous glowing thing that was plunging toward us.”(訳: 「何かがそれを聞き、立ち上がり、召喚に応えた。雷鳴のような唐突さで部屋に闇が落ち、迫りくる怪物じみた発光体を私の視界から隠した」) — 同上, archive.org ↩
- 「The Eater of Souls」(Weird Tales 1937年1月号)の本文は当サイトでは確認できていない。ムノムクア放逐の逸話(リン・カーターの作品)、「The Star-Seed」(ジェイムズ・アンブール、1996年)、ヴォルヴァドスとイオドの対立関係に関するスティーヴン・ケイの考察についても、当サイトでは一次資料を確認できていない。
FAQ
Q. ヴォルヴァドスは旧神と旧支配者のどちらですか?A. 資料によって食い違います。原典「The Eater of Souls」自体はどちらとも明言しておらず、この曖昧さはカットナー自身が意図的に残したものだとも伝えられます。クトゥルフ神話TRPGでは、人類への友好性やムノムクア放逐の功績から旧神に分類されることが多く、これが近年の主流設定とされていますが、確定した設定ではありません。
Q. ラヴクラフト自身の作品に登場しますか?A. 登場しません。ヴォルヴァドスはラヴクラフトと同時代の作家ヘンリー・カットナーが、自身の短編「The Eater of Souls」(1937年)で創造した神格です。カットナーは他にイオド・ニョグタ・ヒュドラ(カットナー版)などもクトゥルフ神話に持ち込んでいます。
Q. 人類にとって危険な存在ですか?A. クトゥルフ神話の神格の中では珍しく、人類に対して好意的とされる存在です。続編「The Invaders」では、名を唱えて助けを求める信仰者の前に「顔」として現れ、侵略者を退ける場面が描かれています[6]。「直接介入することはまれ」という説は後続の解説的資料による整理で、当サイトでは一次資料での裏づけを確認できていません。




