小説 — THE MUSIC OF ERICH ZANN

エーリッヒ・ツァンの音楽

貧しい学生が、下宿の最上階に住む口のきけない老ヴィオラ奏者ツァンと交友。ツァンが夜ごと窓の外の「底知れぬ暗黒の深淵」に向かって狂気的な音楽を奏でる怪異を目撃する。

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エーリッヒ・ツァンの音楽

「私はこの街の地図を注意深く調べ尽くしたが、あの「オーセイユ街」を再び見つけることは、ついにできなかった」

— H・P・ラヴクラフト「エーリッヒ・ツァンの音楽」(1922年発表)冒頭部

概要

直接的な神話の固有名詞は登場しないが、「音楽」という言語外の媒体を通じて宇宙の虚無と対峙する、ラヴクラフト作品中最も芸術性の高い傑作短編。

作品情報

  • 執筆・発表年: 1921年執筆/1922年発表(「ナショナル・アマチュア」誌)
  • 主題タグ: 言語外の恐怖、深淵を拒む音楽、消失した街路

登場神格・用語

  • 宇宙的恐怖

あらすじ

パリの傾斜した奇怪な街路「オーゼイユ通り」の怪しげな下宿に住む貧しい学生は、最上階から聞こえる異様なヴィオラの調べに魅了される。演奏者は口のきけない老人エーリッヒ・ツァンであった。学生は彼と親しくなるが、ツァンは最上階の窓から外を見ることを極度に恐れ、夜な夜な狂気じみた激しい演奏で「何か」を防ぐように音の壁を作っていた。ある夜、ツァンが発狂したような演奏を行う最中、窓の鎧戸が暴風によって吹き飛ばされる。学生が窓の外を覗くと、そこにはパリの街並みではなく、星すらもない底知れぬ無限の暗黒と、狂った音響の嵐が吹き荒れていた。ツァンはヴィオラを弾きながらすでに死亡しており(動く屍)、学生は恐怖で夜の通りへと逃げ出す。その後、彼は二度と「オーゼイユ通り」を発見することができなかった。

読みどころと注目テーマ

深淵からの風、芸術と狂気、非在の空間

執筆背景と影響

ラヴクラフトが自作の中で最も愛した短編の一つ。直接的な神話大系の設定に依存せず、言語や視覚を超えた「音」による宇宙的恐怖の表現に成功している。

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